トンネル
トンネル(tunnel、tʌnl)とは、地上から目的地まで地下や海底、山岳などの土中を通る人工の、または自然に形成された土木構造物であり、断面の高さあるいは幅に比べて軸方向に細長い地下空間をいう。1970年のOECDトンネル会議で「計画された位置に所定の断面寸法をもって設けられた地下構造物で、その施工法は問わないが、仕上がり断面積が2m²以上のものとする」と定義された[1]。
人工のものは道路、鉄道(線路)といった交通路(山岳トンネル、地下鉄など)や水道、電線等ライフラインの敷設(共同溝など)、鉱物の採掘、物資の貯留などを目的として建設される。
日本ではかつて中国語と同じく隧道(すいどう、ずいどう[2])と呼ばれていた。常用漢字以外の文字(隧)が使われているために、第二次世界大戦後の漢字制限や用語の簡略化、外来語の流入などの時代の流れにより、今日では一般的には「トンネル」と呼ばれるようになったが、トンネルの正式名称に「隧道」と記されることも多い。
鉄道や道路のトンネルには「入口」「出口」が決められており、起点に近い方が「入口」となっている。新幹線で例えると、東京寄りの坑口が「入口」であり、その逆が「出口」である。
目次
特徴[編集]
山岳地帯においては、地上の地形に関わらず曲線・つづら折れ・勾配を減少させ、自動車や鉄道の高速走行や大量輸送が容易になる。また強風・積雪時の通行規制(豪雪地帯の峠越えは積雪による冬季閉鎖で通行出来ない箇所が多い)を減らすことができる[3]。坑口付近を除いて景観を損ねず(景観破壊にならない)、森林破壊にもつながりにくい(生態系の保持)。海底トンネルや水底トンネルであれば、大型船の通行(橋であれば、橋の下を通過する大型船に高さ制限や幅制限が発生してしまう)に影響が無いといった長所が挙げられる。特に急峻な地形が連続する地域では不可欠な設備である。
その一方、短所もある。トンネルに作用する土圧や水圧のため断面積はあまり大きくはできず、通行する車両には車両限界が設定され、従って輸送能力に制限が加わってしまうことが多い。また、断面積を大きくとるほど掘削に要する費用も増大する。地質によっては崩落を防ぐための補強で建設費が嵩むことがある。地下水位に影響を与えることもある。
長大トンネルにおいては換気が困難で、空気が汚れやすい[4][5]。また充分な酸素が供給されないと乗客の健康を脅かし、車両の走行性能も低下する。火災時に一酸化炭素などの有毒ガスが溜まりやすいことや、場合により危険物積載車の通行が規制されることもこれに起因する。また海底トンネルや水底トンネルは内部の湿度が高く、車両やトンネル内設備が腐食しやすい。
歴史[編集]
トンネルは世界各地に古くから人間の手によって造られてきた。トンネルの歴史は古く、灌漑用水路として古代に造られているが、交通路としての建設は紀元前2000年頃にユーフラテス川の河底を横断する歩行者用のトンネルがバビロンに造られたのが最初とされている。また、古代ローマや古代ギリシアには数多くのトンネルが造られ、現在に至るまで使用されているものも存在する。日本では山岳信仰があったため山に穴を開けることがためらわれ、トンネルは発達しなかった。代わりに峠は発達し、五街道をはじめ各地で整備が行われた。
機械動力の無い時代、あるいはその確保が困難な場合、トンネルの掘削はツルハシやノミなどの器具を用いた人力に頼るしかなかった。日本においては青の洞門(大分県中津市本耶馬渓町)や中山隧道(新潟県長岡市-魚沼市間)がその端的な例である。
近代になり鉄道技術が発達すると、ヨーロッパにおいて鉄道を通すためのトンネルが多く作られるようになり、著しくトンネルの掘削技術が向上した。イギリスではトーマス・テルフォードやロバート・スチーブンソンなどの優れた技術者が多く誕生した。
ダイナマイトが発明されると、これを用いた発破によってトンネル建設の効率は飛躍的に高まった。さらに、様々な建設機械・工法の出現によってトンネル技術は21世紀になっても進化を続けている。
日本最初の西洋式トンネルは、東海道本線の神戸市内にあった石屋川隧道である。1871年(明治4年)完成。天井川であった石屋川の下をくぐっていたが、同区間の高架化により消滅した。また、日本人技術者のみで最初に造られたトンネルは、東海道本線の大津市内にあった逢坂山隧道である。1880年(明治13年)完成。新線切り替えにより廃止され、名神高速道路建設などにより部分的に消滅したが、東側の坑口が現存する。
トンネルの施工[編集]
工法[編集]
矢板工法[編集]
掘削した壁面に矢板(やいた)という木板(主に松が使用され「松矢板(まつやいた)」と呼ばれた)や鉄板(「鋼矢板(こうやいた)」と呼ばれる)をあてがい、支保工という支柱で支え、その内側をコンクリートなどで固める「巻き立て」によって仕上げる。日本では1980年代の東北新幹線・上越新幹線建設までこの方法が取られていた。しかしながら、事前調査の不足も重なり、特に蔵王トンネルでは工期が3年延びたほか、中山トンネルでは出水の連続から多数の迂回坑建設や300基を越える直上ボーリングの実施が必要となり、総工費が膨れ上がり、開業後の速度制限をももたらした[6]。今後の新幹線や高速道路にますます必要となる長大トンネルには技術的に不足があるのは明らかであった。これらが転機となって、その後は中山トンネルの一部で試行されたNATM が主流工法となり、それまでの経験工学からの転換という意味合いを含め、今までの工法として在来工法とも呼ばれる。
シールド工法[編集]
シールドマシンを用いた工法。TBM工法[編集]
トンネルボーリングマシンを用いた工法。新オーストリアトンネル工法[編集]
NATM(ナトム)とも言う。掘削した部分を素早く吹き付けコンクリートで固め、ロックボルトを岩盤奥深くにまで打ち込んで地山自体の保持力を利用する工法。開鑿(開削)工法[編集]
オープンカット工法とも呼ばれる。地表面を掘り下げてトンネルの構造物を構築し、後で埋め戻す工法。地表面に近い部分や、駅のように大規模になる施設の構築に用いられる。初期(1960年代まで)に建設された地下鉄では主流の工法であったが、1970年代以降は地下鉄網の拡充からより深い位置にトンネルを建設せざるを得なくなり、駅部分を除いてはシールド工法が主体となっている。また開削工法にシールド工法を組み合わせた工法としてオープンシールド工法がある。
沈埋トンネル工法[編集]
複数のケーソン(潜函)を水底に沈め、これを接続してトンネルとする工法。トンネル工事と安全確保[編集]
労働基準法には坑内労働に係る規定が設けられている。
- 労働基準法第63条
- 使用者は、満18才に満たない者を坑内で労働させてはならない。
- 労働基準法第64条の2
- 使用者は、次の各号に掲げる女性を当該各号に定める業務に就かせてはならない。
- 妊娠中の女性及び坑内で行われる業務に従事しない旨を使用者に申し出た産後1年を経過しない女性
- 坑内で行われるすべての業務
- 前号に掲げる女性以外の満18歳以上の女性
- 坑内で行われる業務のうち人力により行われる掘削の業務その他の女性に有害な業務として厚生労働省令で定めるもの
かつて労働基準法は女性のトンネル建設への従事など坑内労働を全面的に禁じていた(旧64条2項)。この規定は男女雇用機会均等法などの流れの中でも見直されないままであったが、2005年になって国によりこの規制の見直しについての検討が始まり[7]、2007年に改正労働基準法が施行され基準が改められた[8]。
なお、ずいどう等新設工事に従事する労働者の労働者災害補償保険の労災保険率は業種別で最高となる89/1000(2012年(平成24年)4月1日改定)であり、トンネル建設工事の危険性が高いことを示している[9]。
トンネルの分類[編集]
場所による分類[編集]
山岳トンネル[編集]
山を貫通するように掘られたトンネル。トンネル中央部を高く、両端の出口を低くする逆 V 字型の勾配(拝み勾配)とすることで自然排水が可能である。但し立地条件などから片勾配となっているものも少なくないがこれでも自然排水は可能である。
都市トンネル[編集]
都市の建造物の中や地下を通るトンネル。首都高速道路に於けるトンネルの殆どや地下鉄の多くはこれである。滑走路等を避けて空港の地下を通るトンネルもある。傾斜は周囲の構造物などによって大きく異なる。
水底トンネル[編集]
川底や海底に掘られたトンネル。構造的に中央部が低くなるため、排水を機械的に行う必要がある。
水中トンネル[編集]
例えば水族館の水槽の中などに作られた観賞用の通路で、アクリル樹脂などで透明になっていてトンネルの外の水中を眺められる構造になっている[10]。
用途による分類[編集]
道路トンネル[編集]
自動車用[編集]
自動車用の長大トンネルには大規模な換気設備や、非常ボタン・消火設備などの防災設備が設置されている。また、日本においては道路法で長さ 5,000 m 以上並びに水底・水際の道路トンネルは危険防止のため危険物積載車通行が禁止されている。
最近建設されるトンネルは車同士のすれ違いが出来るよう、2車線確保できる断面積にする場合が多い。2車線未満のトンネルは一方通行や片側交互通行、車両幅制限、大型車の通行規制などで対応する場合がある。
高速道路や主要道路を中心に、ラジオの再送信を行っているケースもある。なお、トンネル内で交通事故や火災などが発生した場合、全ての放送局の再送信を休止して、緊急時の正しい行動を周知する放送を流す。これは、再送信している全ての周波数で同じものが流れる。
トンネルの入り口手前に一般道路・高速道路問わず、信号機を設置している場合がある(写真参照)。また高速道路ではトンネルの長さなどに関係なく必ず全てのトンネルの入り口にトンネル情報表示器が設置される。長大トンネルではトンネル内にも設置される。
歩行者用[編集]
自動車用のトンネルにおいて歩道が設置されている場合、排気ガス対策から自動車用のトンネルとは別に併行してトンネルが設置されている場合がある。関門国道トンネルでは、人道用と車道用とが2層になっている。
また、歩行者専用に地下道が設置されている場合、道路や鉄道を立体的に横断するために地下横断歩道が設置されている場合がある。
鉄道トンネル[編集]
鉄道用のトンネル。鉄道トンネルでは特に、単線のものを単線トンネル、複線のものを複線トンネルと呼ぶことが多い。換気が困難な長大トンネルや、特に列車運転頻度の高い線区のトンネルは早く(蒸気機関車が一般的であった時代)から電化されている。 電化を前提としていない古くからある鉄道トンネルでは、電化の際に建築限界の小ささから通過できる車両に制限がかかったり(中央本線など)、架線などの必要なスペースが取れないため、問題となる。解決策として、断面積の大きい新トンネルを掘削し、旧トンネルを廃止したり(常磐線、赤穂線、呉線など)、複線化の際に単線トンネルを掘削し、路盤を下げるなどで旧トンネルを改良し、単線トンネルを2本並べた形にする方法(山陽本線、東北本線など)がある。また、複線化と電化を同時に行い、新線に複線トンネルを新設する場合も多い(北陸本線の北陸トンネルや函館本線の神居古潭駅 )。 なお、鉄道車両の高速化に伴い、トンネル微気圧波などが問題となったため、トンネルの出入口付近に、少しでも圧力変化を穏やかにするための構造を設けている場合もある。
こちらも道路トンネル同様、長大トンネルでは入口手前に信号機が設置され、使用している信号機は踏切などで使用されている特殊信号発光機(おもに回転型)が使用されている。
水路トンネル[編集]
水を流すためのトンネル。運河において、山を避けてトンネルを掘り、船舶の航行が可能なトンネルがある(例:イギリスのバーミンガム近くのネザートン・トンネル )。用水路で、河川トンネルともいうものがある。暗渠を参照。また、下水道についてもトンネルが用いられる。下水処理場そのものをトンネルに設置した例もある[11]。
貯蔵用トンネル[編集]
大量のワインの貯蔵には地下の倉(ワインカーヴ)が用いられる。この地下蔵を掘るにもトンネル掘削技術が用いられるが、一方、廃道となったトンネルをワイン貯蔵用に再利用する場所もある[12]。
栽培用トンネル[編集]
キノコ等の菌類の栽培には湿度が要るが日光が不要などの状況があり、廃道となったトンネルを転用している場所もある[13]。
断面・形態[編集]
山岳トンネルは多くが馬蹄型又は卵型の開口部を持つ。ニワトリの卵が縦方向の衝撃・圧力に強い構造であるように、このようなアーチを構成することによって山から受ける圧力に耐える構造としている。この種のトンネルが並列したものを特にメガネトンネルと称する。
シールドマシンによって掘削されたトンネルは基本的に断面が真円であるが、シールドマシンの発展に伴い、長方形や馬蹄形などにも掘削できるようになった。道路トンネルの場合、上部に換気路・中央部に道路本体・下部に電気回路や排水路を設ける。
開削トンネルや沈埋トンネルは断面が箱形である。
本坑と先進坑[編集]
トンネル掘削の際、本坑と呼ばれる主となるトンネルに並行して、先進坑(先進導坑)と呼ばれる断面積の小さいトンネルを掘削することがある。先進坑は本坑に先行して掘削を行い、工事中は本坑を掘削する際の地質把握や水抜きとして、開通後は緊急時の避難ルート(避難坑)や保守通路として、それぞれ役割を持つ。
在来工法では文字通り「先進」として小断面にて導坑を掘り、それを切り広げて本坑を掘削する。支保を行いながらの掘削で1本(底設導坑:下半部の真中)或いは2本(側壁導坑:下半部の両壁)の導坑をまず掘削し、その後トンネルの上半部を掘削、導坑の支保を取り除きながらの下半部の掘削となる。
換気装置[編集]
前述の通り、特に道路トンネル内部は排気ガスがこもりやすい構造となりがちであることから、道路トンネルの設計においては換気装置の検討が重要となってくる。
トンネル内の換気方法としては、自動車交通により発生する空気の流れ(交通換気)やトンネルそのものを抜ける風(自然風)を利用して換気を行う「自然換気方式」と、何らかの機械設備を用いて強制的に換気を行う「機械換気方式」の2つに大分される[14]。自然換気方式は特別な装置が不要な一方で、適用可能な長さや交通量に制限が生ずる方式であり、一定以上の規模のトンネルにおいては機械換気方式が採用されることが多い。
機械換気方式には、主に以下のような3種類が挙げられる[14]。
- 縦流換気方式
- トンネル天井にジェットファンと呼ばれる大型の送風機をぶら下げたり、送風機の機能を持つ換気口を設けるなどして縦断方向の空気の流れを強制的に作り、トンネルの坑口または中間部から排気ガスを排出すると同時に、外部から直接トンネル内部に新鮮な空気を送り込む方法。
- 交通換気力を有効に活用する方法で、換気ダクトが不要なためトンネル断面を小さくできることから機械換気方式の中ではコスト面で最も有利な方式である。ただし、交通量が少なかったり、逆に交通量が増えすぎて旅行速度が低下すると交通換気力が低下して十分な換気が困難になる。また自然風の変動を受けやすい方式でもある。
- 自動車排出ガス規制の強化に伴い、長大トンネルであっても強力な換気機能を備える必要がなくなりつつあることから、後述の横流換気方式から切り替えられるケースがある。
- 半横換気方式
- トンネルの一部を仕切って「換気ダクト」とし、新鮮な空気をトンネルの坑口などに設けた吸気口から換気ダクトを通じて車道内に一様に供給し、排気ガスを新鮮な空気によって坑口から押し出す方法。
- トンネルポータルの上部に天井板を設けて、天井板で区切られたスペースを換気ダクトとすることも多いが、シールドトンネルの場合はデッドスペースとなる道路の下にダクトを通す事が多い。また、鋼製のダクトをトンネル内に配管させるケースもある。
- 新鮮な空気の供給に関しては交通量や自然風に影響されない換気方式であるが、換気ダクトや換気機を必要とするためコスト面では不利となる。また、換気風は坑口に向かって大きくなるため、適用延長に限界がある。
- 横流換気方式
- 半横換気方式と同様にトンネルの一部を仕切って「換気ダクト」のスペースを設け、さらにこれを「排気ダクト」と「送気ダクト」に分割し、新鮮な空気を送気ダクトを通じて車道内に供給すると共に、排気ダクトを通じて排気ガスを強制的に排出する方法。
- トンネルポータルの上部に天井板を設けて、天井板の上部に隔壁を設けて排気ダクトと送気ダクトとして確保することも多いが、シールドトンネルの場合はデッドスペースとなる道路の下にダクトを通す事が多い。山手トンネル(首都高速道路)でも横流換気方式を採用しているが、シールド工法区間では道路下にダクトを通しており、天井板はついていない[15]。
- 送気用の換気機と排気用の換気機がそれぞれ別に必要となることからコスト面では最も不利な方法であるが、トンネル内の縦断方向に換気風を起こす必要がなく、トンネル延長や交通量、自然風に影響されないため、最も安定した換気方式と言える。
- 嘗ては長大トンネルに多く採用されていたが、天井板が存在することの圧迫感や、ジェットファンの性能向上等もあって近年では少数派になりつつあった。更に2012年12月に笹子トンネル天井板落下事故が発生、老朽化した天井板の危険性が指摘される様になったことから、全国において天井板撤去、縦流換気方式への転換が進み、都市間高速道路においては、全ての区間において、トンネル全体を天井板で覆う横流換気方式のトンネルは消滅した。(ただし、都市高速道路や一般道には、残存している区間が存在する。)
- なお、海底トンネルなどではこれらの方式を組み合わせた換気方式も見られる。
記録を持つトンネル[編集]
最長・最短[編集]
- 世界最長のトンネルは、ニューヨーク市へ続く水道トンネル、キャッツキルアケダクトで、全長 147.2 km。
- 人間が往来するトンネルとして世界最長のものは、鉄道トンネルである津軽海峡線の青函トンネルで、全長 53.85 km、海底部長 23.3 km。
- 海底部が世界最長の鉄道トンネルは、英仏海峡トンネルで、全長 50.49 km、海底部長 37.9 km。
- 世界最長の鉄道の山岳トンネルは、スイスのレッチュベルクベーストンネルで、全長約 34.6 km。
- 世界最長の狭軌鉄道の山岳トンネルは、スイスのフェライナトンネルで、全長 19.0 km。
- 日本最長の狭軌鉄道の山岳トンネルは北陸トンネルで、全長 13.87 km。
- 日本最長の連続した地下鉄トンネルは、都営地下鉄大江戸線で、光が丘 - 都庁前 - 大門 - 両国 - 都庁前の全線が該当し、 40.7 km。
- 日本の私鉄で最長の鉄道トンネルは、北越急行の赤倉トンネルで、全長10,472 m。
- 世界最長の道路トンネルは、ノルウェーのラルダールトンネルで、全長 24,510 m。
- 日本最長の道路トンネルは、関越自動車道にある関越トンネルで、全長は上り線が 11,055 m、下り線は 10,926 m。
- 日本最短の鉄道トンネルは、吾妻線の樽沢トンネルで、全長わずか 7.2 m である。八ッ場(やんば)ダム建設に伴う線路付け替えにより、用途廃止予定。
総数・総延長[編集]
世界で最もトンネルが多い国は中国で、約8,600個所、総延長約 4,375 km となっている(2004年)。うち、鉄道トンネルは6,876個所、総延長約 3,670 km で世界一、道路トンネルは1,972個所、総延長約 835 km となっている。
主なトンネル[編集]
地下鉄や水道のトンネルも含めたリスト(日本国内、国外を含む)としては延長別トンネルの一覧を参照。
鉄道トンネル[編集]
日本国内[編集]
トンネル |
事業者 |
線区 |
全長 (m) |
備考 |
---|---|---|---|---|
新登川トンネル | JR北海道 | 石勝線 | 5,825 | |
新狩勝トンネル | JR北海道 | 根室本線 | 5,790 | |
青函トンネル | JR北海道 | 海峡線、北海道新幹線(予定) | 53,850 | |
津軽トンネル | JR北海道 | 海峡線 | 5,880 | |
八甲田トンネル | JR東日本 | 東北新幹線 | 26,455 | |
岩手一戸トンネル | JR東日本 | 東北新幹線 | 25,808 | |
福島トンネル | JR東日本 | 東北新幹線 | 11,705 | |
蔵王トンネル | JR東日本 | 東北新幹線 | 11,215 | |
清水トンネル | JR東日本 | 上越線(上り) | 9,702 | |
新清水トンネル | JR東日本 | 上越線(下り) | 13,490 | |
大清水トンネル | JR東日本 | 上越新幹線 | 22,221 | |
榛名トンネル | JR東日本 | 上越新幹線 | 15,350 | |
中山トンネル | JR東日本 | 上越新幹線 | 14,857 | |
魚沼トンネル | JR東日本 | 上越新幹線 | 8,625 | |
飯山トンネル | JR東日本 | 北陸新幹線 | 22,225 | 建設中(ただし貫通済み) |
六十里越トンネル | JR東日本 | 只見線 | 6,359 | |
仙山トンネル | JR東日本 | 仙山線 | 5,361 | |
仙台トンネル | JR東日本 | 仙石線 | 3,530.5 | 地下区間(広義の地下鉄) |
仙岩トンネル | JR東日本 | (秋田新幹線)、田沢湖線 | 3,915 | |
押角トンネル | JR東日本 | 岩泉線 | 2,987 | |
樽沢トンネル | JR東日本 | 吾妻線 | 7.2 | 日本一短い鉄道トンネル |
東京トンネル | JR東日本 | 横須賀線(所属は東海道本線) 総武本線 |
9,532 | 地下区間(広義の地下鉄) |
笹子トンネル | JR東日本 | 中央本線 | 4,670 | 下りの長さ。上りは4,656m |
塩嶺トンネル | JR東日本 | 中央本線 | 5,994 | |
丹那トンネル | JR東海 | 東海道本線 | 7,841 | 熱海側の一部区間はJR東日本に属する |
新丹那トンネル | JR東海 | 東海道新幹線 | 7,959 | |
日本坂トンネル | JR東海 | 東海道新幹線 | 2,174 | |
大原トンネル | JR東海 | 飯田線 | 5,063 | |
北陸トンネル | JR西日本 | 北陸本線 | 13,870 | |
頸城トンネル | JR西日本 | 北陸本線 | 11,353 | |
新逢坂山トンネル | JR西日本 | 東海道本線 | 2,335 | 複々線のトンネルとしては日本最長 複々線の山岳トンネルはほかには東山トンネルしかない |
六甲トンネル | JR西日本 | 山陽新幹線 | 16,250 | |
安芸トンネル | JR西日本 | 山陽新幹線 | 13,000 | |
新関門トンネル | JR西日本 | 山陽新幹線 | 18,713 | |
犬寄トンネル | JR四国 | 予讃線 | 6,012 | |
関門トンネル | JR九州 | 山陽本線 | 3,614 | 下りの長さ。上りは3,604m。 |
篠栗トンネル | JR九州 | 福北ゆたか線 | 4,550 | |
第三紫尾山トンネル | JR九州 | 九州新幹線 | 9,987 | |
長崎トンネル | JR九州 | 長崎本線 | 6,173 | |
真崎トンネル | 三陸鉄道 | 北リアス線 | 6,532 | 非電化の区間では日本最長 |
赤倉トンネル | 北越急行 | ほくほく線 | 10,472 | JRを除く山岳トンネルで日本最長 |
鍋立山トンネル | 北越急行 | ほくほく線 | 9,130 | 土木史上稀に見る難工事 |
薬師峠トンネル | 北越急行 | ほくほく線 | 6,199 | |
霧ヶ岳トンネル | 北越急行 | ほくほく線 | 3,727 | |
第一飯室トンネル | 北越急行 | ほくほく線 | 3,279 | |
北神トンネル | 北神急行電鉄 | 北神線 | 7,276 | |
新青山トンネル | 近鉄 | 近鉄大阪線 | 5,652 | 大手私鉄の山岳トンネルでは最長 |
新生駒トンネル | 近鉄 | 近鉄奈良線 | 3,494 | (旧)生駒トンネルは3,388m |
生駒トンネル | 近鉄 | 近鉄けいはんな線 | 4,737 | |
新紀見トンネル | 南海電気鉄道 | 南海高野線 | 1,853 | 紀見トンネル(上り線)は1915年開通の1,562m |
谷津トンネル | 伊豆急行 | 伊豆急行線 | 2,796 | |
正丸トンネル | 西武鉄道 | 西武秩父線 | 4,811 |
日本以外[編集]
トンネル | 国/事業者 | 線区 | 全長 | 備考 |
---|---|---|---|---|
英仏海峡トンネル | フランス - イギリス間ドーバー海峡 | 50.49km | ||
烏鞘嶺トンネル | 中国/中国国鉄 | 蘭新線 | 20.5km | |
シンプロントンネル | スイス - イタリア国境/スイス連邦鉄道(スイス国鉄) | 19.8km | ||
新フルカトンネル | スイス/マッターホルン・ゴッタルド鉄道 | 15.4km | ||
新観音トンネル | 台湾/台湾鉄路管理局 | 北廻線 | 10.3km | |
レッチュベルクベーストンネル | スイス/BLS | 34.6km | ||
オーレスン・リンク | デンマーク - スウェーデン間エーレスンド海峡 | 4.05km | ||
グレートベルト・リンク | デンマーク大ベルト海峡 | 8.024km | ||
ゴッタルドベーストンネル | スイス/スイス国鉄 | 約57km | 建設中(貫通済) |
道路トンネル[編集]
日本国内[編集]
日本以外[編集]
トンネル | 所属する国、道路 | 長さ | 備考 |
---|---|---|---|
ラルダールトンネル | ノルウェー | 24,510m | 道路トンネルでは世界最長 |
クロスシティトンネル | オーストラリア | 約2.1km | |
雪山トンネル | 台湾・国道5号 | 12.9km | 道路トンネルでは台湾最長 |
構想・その他[編集]
トンネル内の安全確保[編集]
トンネルはその構造から災害発生時や事故発生時の避難行動や救出活動が比較的難しくなる。
高速道路での安全対策[編集]
日本の高速道路のトンネルでは、50mの間隔で押しボタン式通報装置と消火器(5本)、200m間隔で非常電話が設置されている[19]。また、長大トンネルの入口にはトンネル入り口用信号機や入口表示板が設置され、トンネル内で火災が発生した際には赤灯火の信号や「進入禁止火災」などの表示が行われる[19]ほか、非常停車スペースを途中に確保したり、道路用トンネルに並行して一回り小さい避難用のトンネルを設けている場合がある。
鉄道での安全対策[編集]
主なトンネル事故[編集]
- 肥薩線列車退行事故(1945年8月22日、国鉄肥薩線)
- 近鉄大阪線列車衝突事故(1971年10月25日、近鉄大阪線)
- 北陸トンネル火災事故(1972年11月6日、国鉄北陸本線)
- 日本坂トンネル火災事故(1979年7月11日、東名高速道路)
- 豊浜トンネル岩盤崩落事故(1996年2月10日、北海道古平町国道229号線)
- 福岡トンネルコンクリート塊落下事故(1999年6月27日、山陽新幹線)
- 笹子トンネル天井板落下事故(2012年12月2日、中央自動車道)
トンネルと文化的影響[編集]
日本では「山の中に女が入ると、女神である山の神の嫉妬に遭い事故が起こる」という迷信が長らく信じられてきた。そのためトンネルや坑道などへの立ち入りは長らく女人禁制であった。
また、度々トンネルは怪談や都市伝説の舞台になる。トンネル内で、工事中あるいは開通後の事故で死んだ人の亡霊が現れる、といったたぐいである。有名なところでは、石北本線常紋トンネルにおいてはいわゆる「タコ部屋労働」が原因であるとして、また肥薩線第二山の神トンネルにおいてはそこで発生した乗客轢死事故が原因であるとして亡霊話がしばしば語られる。
トンネルの貫通の際に採取された石を貫通石(かんつうせき)といい、安産のお守りとして用いられる。最近では各高速道路会社などが販売することもある。
企業・団体・集団・著名人の長期の業績・状態・売上不振や、スポーツチームの長期の連敗・下位低迷などを「トンネル」と表現されることがある。
脚注[編集]
- ↑ トンネルとは?、一般社団法人日本トンネル技術協会
- ↑ 「すい」は漢音、「ずい」は呉音でどちらも正しい読み方
- ↑ より稀な例としては、川沿いや谷底の道が冬季に雪崩の危険があることからトンネルで迂回することもある。
- ↑ トンネルでは基準の10倍超 - 東大など、高速道路上の二酸化窒素濃度を調査(2012年1月13日マイナビニュース)
- ↑ 長いトンネル、外気は禁物…NO2基準の50倍(2012年1月14日読売新聞)
- ↑ 『東北新幹線工事誌 黒川・有壁間』(日本国有鉄道仙台新幹線工事局編)及び『上越新幹線工事誌 大宮・水上間』(日本鉄道建設公団東京新幹線建設局編)による
- ↑ 厚生労働省:女性の坑内労働に係る専門家会合報告書
- ↑ 改正労働基準法(妊産婦等の坑内労働の就業制限関係)の施行について
- ↑ 労災保険率表 平成24年4月1日改定
- ↑ 例:旭川市・旭山動物園
- ↑ 下水処理場なんでも一番・その2_日本最初のトンネル式下水処理場
- ↑ 産業遺産保存・活用事例集33_甲州市勝沼地域におけるワイン貯蔵庫・遊歩道としての活用
- ↑ 「予防医療.com」・特集・キノコ多糖体
- ↑ 14.0 14.1 道路交通技術必携2007,p116 社団法人交通工学研究会 2007年PDF
- ↑ 品川線の秘密13 トンネルの換気方式PDF - 東京SMOOTH(首都高速道路特設サイト)内
- ↑ 月報KAJIMA 2001 October
- ↑ ジオスター(株)
- ↑ 『南日本新聞』 2012年2月14日付 4面(新武岡トンネル貫通)
- ↑ 19.0 19.1 高速道路のトンネルで火災が発生した場合の対処とは? 日本自動車連盟 2013年12月10日閲覧。
参考文献[編集]
関連項目[編集]
- 延長別トンネルの一覧
- 延長別日本のトンネルの一覧
- 延長別日本の道路トンネルの一覧
- 土木工学 - 岩盤工学
- 坑道
- トンネル式便所
- 覆道 - 雪崩や落石、土砂崩れから道路を守るために作られた建造物
- 公共事業
- 雪中トンネル
- 切通し
- 監査廊
妖怪ウォッチ2。延々トンネルが登場する
外部リンク[編集]
- 社団法人トンネル技術協会
- 鹿島建設の建築誌博物館ホームページ(鹿島建設)
- 水底トンネル等における危険物積載車両の通行禁止又は制限について(日本高速道路保有・債務返済機構)
- 危険物積載車両の通行規制を実施している水底トンネル等PDF (国土交通省)
- トンネル撮るネン - トンネルが持つ怖いイメージを払拭した、アートとして捉えた写真サイト。
- トンネル写真館(みちと標識の写真館) - 長大道路トンネルの画像を集めたサイト。