国土交通省
国土交通省は、日本の行政機関の一つ。略称は国交省(こっこうしょう)。
国土の総合的かつ体系的な利用、開発及び保全、そのための社会資本の整合的な整備、交通政策の推進、気象業務の健全な発達並びに海上の安全及び治安の確保を図ることを任務とする(国土交通省設置法第3条)。
目次
概要[編集]
上記の国土交通省設置法第3条に示された任務を達成するため、国土計画、都市、道路、建築物、住宅、河川、港湾、官庁営繕、国土の測量、交通・観光政策、気象業務、防災対策、周辺海域の治安・安全確保など、国土・交通・社会資本整備に関する事項を管轄する。
英語表記は当初 Ministry of Land, Infrastructure and Transport(land 国土、infrastructure 建設・インフラ、transport 交通・運輸)としていたが、2008年1月8日の観光庁発足にあわせて、「観光」を意味する tourism を加え、Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism とした。
沿革[編集]
2001年(平成13年)1月6日、中央省庁再編に伴い、陸水空の運輸や鉄道・港湾・船舶・自動車交通・気象等を所管する運輸省、都市計画・道路・建築物・住宅・河川・官庁営繕など社会資本整備の建設事業を所管する建設省、北海道の総合開発事務(河川・治山・農業・港湾・官庁営繕等)を行う北海道開発庁、土地・水資源・離島振興・災害対策・大都市圏政策など総合的な国土行政に関する国土庁の4省庁を統合して誕生した。当該再編にあたっては、特に規模の大きなものであった。
国土交通省の発足に当たっては、旧・運輸省の運輸政策局と旧・建設省の建設経済局を統合して「総合政策局」が、旧・国土庁の大都市圏整備局、地方振興局のそれぞれ一部を統合して「国土計画局」が、旧・建設省の都市局と旧・国土庁の大都市圏整備局、地方振興局のそれぞれ一部を統合して「都市・地域整備局」が、旧・国土庁の土地局と長官官房水資源部を統合して「土地・水資源局」が、旧・運輸省の海運局と海上技術安全局を統合して「海事局」が、いずれも新設されたほか、旧・建設省からは、河川局、道路局、住宅局が、旧・運輸省からは、鉄道局、自動車交通局、航空局、港湾局が、そのまま移行した。旧・北海道開発庁は単独の北海道局を構成した。なお、旧・国土庁の防災局は内閣府に移管された。
2008年(平成20年)10月1日、観光庁の新設、海難審判庁の事故原因究明業務と航空・鉄道事故調査委員会の統合による運輸安全委員会の新設、船員労働委員会の廃止と同委員会業務の中央労働委員会及び交通政策審議会などへの移管を内容とする組織改正を実施した。中央省庁における新たな外局の設置は、いわゆる中央省庁再編以来初めてである。
2011年7月1日、省内横断的な体制の確立や関連する行政の一元化等を図るために局の再編が行われ、水関連行政を一元化するため、河川局と土地・水資源局水資源部、都市・地域整備局下水道部を再編して「水管理・国土保全局」に、土地・水資源局のうちの土地行政部局と総合政策局のうちの建設産業行政部局を再編して「土地・建設産業局」に、国土計画局と都市・地域整備局を「国土政策局」と「都市局」にそれぞれ再編したほか、「国際統括官」が設置され、自動車交通局は「自動車局」に改称された。
所掌事務[編集]
国土交通省設置法第4条は計128号に及ぶ所掌事務を列記している。具体的には以下などに関することがある。
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組織[編集]
国土交通省の内部組織は一般的に、法律の国土交通省設置法、政令の国土交通省組織令および省令の国土交通省組織規則が階層的に規定している。
幹部[編集]
- 国土交通大臣(法律第2条第2項)
- 国土交通副大臣(2人)(国家行政組織法第16条)
- 国土交通大臣政務官(3人)(国家行政組織法第17条)
- 国土交通事務次官(国家行政組織法第18条)
- 技監(法律第5条)
- 国土交通省の所掌事務に係る技術を統理する。次官級。
- 国土交通審議官(3人)(法律第5条)
- 国土交通省の所掌事務に係る重要な政策に関する事務を総括整理する。次官級。
内部部局等[編集]
- 大臣官房(政令第2条) - 人事課(政令第22条)、総務課、広報課、会計課、地方課、福利厚生課、技術調査課、官庁営繕部(政令第2条第2項)
- 官庁営繕部 - 管理課(政令第22条第2項)、計画課、整備課、設備・環境課
- 総合政策局 - 総務課(政令第36条)、政策課、安心生活政策課、環境政策課、海洋政策課、官民連携政策課、物流政策課、公共事業企画調整課、技術政策課、国際政策課、海外プロジェクト推進課、情報政策課、行政情報化推進課、公共交通政策部(政令第2条第2項)
- 公共交通政策部 - 交通計画課(政令第36条第2項)、交通支援課
- 国土政策局 - 総務課(政令第62条)、総合計画課、広域地方政策課、国土情報課、地方振興課、離島振興課
- 土地・建設産業局 - 総務課(政令第71条)、企画課、土地市場課、地価調査課、地籍整備課、不動産業課、不動産市場整備課、建設業課、建設市場整備課
- 都市局 - 総務課(政令第81条)、都市政策課、都市安全課、まちづくり推進課、都市計画課、市街地整備課、街路交通施設課、公園緑地・景観課
- 水管理・国土保全局 - 総務課(政令第91条)、水政課、河川計画課、河川環境課、治水課、防災課、水資源部(政令第2条第2項)、下水道部、砂防部
- 水資源部 - 水資源政策課(政令第91条題2項)、水資源計画課
- 下水道部 - 下水道企画課(政令第91条題3項)、下水道事業課
- 砂防部 - 砂防計画課(政令第91条題4項)、保全課
- 道路局 - 総務課(政令第105条)、路政課、道路交通管理課、企画課、国道・防災課、環境安全課、高速道路課
- 住宅局 - 総務課(政令第114条)、住宅政策課、住宅総合整備課、安心居住推進課、住宅生産課、建築指導課、市街地建築課
- 鉄道局 - 総務課(政令第122条)、幹線鉄道課、都市鉄道課、財務課、鉄道業務政策課、技術企画課、施設課
- 自動車局 - 総務課(政令第130条)、安全政策課、環境政策課、技術政策課、自動車情報課、旅客課、貨物課、審査・リコール課、整備課
- 海事局 - 総務課(政令第140条)、安全・環境政策課、海事人材政策課、外航課、内航課、運航労務課、船舶産業課、安全基準課、検査測度課、海技課
- 港湾局 - 総務課(政令第157条)、港湾経済課、計画課、産業港湾課、技術企画課、海洋・環境課、海岸・防災課
- 航空局 - 総務課(政令第164条)、航空戦略課、航空ネットワーク部(政令第2条第2項)、安全部、交通管制部
- 航空ネットワーク部 - 航空ネットワーク企画課、航空事業課、空港施設課、首都圏空港課、環境・地域振興課
- 安全部 - 安全企画課、空港安全・保安対策課、運航安全課、航空機安全課
- 交通管制部 - 交通管制企画課、管制課、運用課、管制技術課
- 北海道局 - 総務課(政令第182条)、予算課、地政課、水政課、港政課、農林水産課
- 政策統括官
- 政策統括官
- 国際統括官
審議会等[編集]
- 国土審議会(法律第6条)
- 社会資本整備審議会(法律第6条)
- 交通政策審議会(法律第6条)
- 運輸審議会(法律第6条)
- 中央建設工事紛争審査会(建設業法、法律第6条)
- 中央建設業審議会(建設業法、法律第6条)
- 土地鑑定委員会(地価公示法、法律第6条)
- 国土開発幹線自動車道建設会議(国土開発幹線道路建設法、法律第6条)
- 中央建築士審査会(建築士法、法律第6条)
- 独立行政法人評価委員会(独立行政法人通則法、法律第6条)
施設等機関[編集]
- 国土交通政策研究所(政令第191条)
- 国土技術政策総合研究所(政令第191条)
- 国土交通大学校(政令第191条)
- 航空保安大学校(政令第191条)
特別の機関[編集]
- 国土地理院(法律第27条第1項) - 支所(法律第28条第3項)
- 小笠原総合事務所(小笠原諸島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律 、法律第27条第2項)
- 海難審判所(海難審判法、法律第27条第2項) - 地方海難審判所(海難審判法第11条)
地方支分部局[編集]
国土交通省の地方支分部局は地方整備局、北海道開発局、地方運輸局、地方航空局および航空交通管制部の5区分がある(法律第30条)。
- 地方整備局(法律第30条) - 総務部(政令第208条第4項)、企画部、建政部、河川部、道路部、港湾空港部、営繕部、用地部、事務所(法律第32条)
- 北海道開発局 - 開発監理部(政令第210条第3項)、事業振興部、建設部、港湾空港部、農業水産部、営繕部、開発建設部(法律第34条)
- 地方運輸局 - 総務部(政令第213条第3項)、企画観光部、交通環境部、鉄道部、自動車交通部、自動車技術安全部、海事振興部、海上安全環境部、運輸監理部(法律第36条)、運輸支局(法律第37条)
- 地方航空局 - 総務部(政令第218条第3項)、空港部、保安部、事務所(法律第39条)
- 航空交通管制部
地方整備局[編集]
地方運輸局[編集]
地方航空局[編集]
航空交通管制部[編集]
外局[編集]
- 観光庁(国家行政組織法第3条第2項別表第1、法律第41条) - 総務課(政令第223条の3)、観光産業課、国際観光政策課、国際交流推進課、観光地域振興部(政令第223条)
- 気象庁 - 総務部(政令第226条)、予報部、観測部、地震火山部、地球環境・海洋部、気象研究所(政令第234条)、気象衛星センター、高層気象台、地磁気観測所、気象大学校、管区気象台(5)(法律第48条第1項)、沖縄気象台(法律第48条第2項)、海洋気象台(4)(法律第48条第1項)
- 運輸安全委員会(国家行政組織法第3条第2項別表第1、運輸安全委員会設置法、法律第41条第2項) - 事務局(運輸安全委員会設置法第17条)
- 前身は航空・鉄道事故調査委員会と海難審判庁である。2008年10月1日に両組織が廃止・統合されて発足した。
- 海上保安庁(国家行政組織法第3条第2項別表第1、海上保安庁法、法律第41条第2項) - 総務部(政令第246条)、装備技術部、警備救難部、海洋情報部、交通部、海上保安大学校(政令第254条)、海上保安学校、管区海上保安本部(11)(政令第258条)
所管法人[編集]
国土交通省が主務省として所管する独立行政法人は土木研究所、建築研究所、交通安全環境研究所、海上技術安全研究所、港湾空港技術研究所、電子航法研究所、航海訓練所、海技教育機構、航空大学校、自動車検査独立行政法人、鉄道建設・運輸施設整備支援機構、国際観光振興機構、水資源機構、自動車事故対策機構、空港周辺整備機構、都市再生機構、奄美群島振興開発基金、日本高速道路保有・債務返済機構および住宅金融支援機構の19法人である。なお、これら法人のうち、奄美群島振興開発基金および住宅金融支援機構は財務省との共管である。また、水資源機構の水路事業部所管業務は農林水産省・厚生労働省・経済産業省との共管である。
所管特殊法人は新関西国際空港株式会社、北海道旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社、九州旅客鉄道株式会社、日本貨物鉄道株式会社、東京地下鉄株式会社、成田国際空港株式会社、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社、首都高速道路株式会社、阪神高速道路株式会社および本州四国連絡高速道路株式会社の13法人(いずれも株式会社形式)である。
特別の法律により設立される民間法人(特別民間法人)には2012年4月1日現在、日本勤労者住宅協会、軽自動車検査協会、日本小型船舶検査機構および日本水先人会連合会がある。。地方共同法人には日本下水道事業団がある。また、特別の法律により設立される法人として船員災害防止協会を厚生労働省と共管している。認可法人は所管しない。
2012年8月1日の時点で所管する特例民法法人の数は593法人(うち特例社団法人420、特例財団法人173)。これらは、2008年12月1日の新公益法人制度の施行より、すべて公益法人(社団法人、財団法人)から特例民法法人に移行したものである。
旧公益法人の一覧は「Category:財団法人 (国交省所管)」および「Category:社団法人 (国交省所管)」を参照。
財政[編集]
2012年度(平成24年度)一般会計における当初予算(歳出)は4兆5960億4600万円である。組織別の内訳は国土交通本省が4兆2226億3000万円と全体の約92%を占め、以下、国土技術政策総合研究所が36億5200万円、国土地理院が89億7600万円、海難審判所が9億2200万円、地方整備局が349億4500万円、北海道開発局が560億7400万円、地方運輸局が218億2800万円、地方航空局が20億800万、観光庁が108億5300万円、気象庁が588億8400万円、運輸安全委員会が20億6000万円、海上保安庁が1732億1200万円と続く。歳入予算の合計は294億8000万円である。科目別の内訳は、政府資産整理収入が20億7300万円、雑収入が274億700万円となっている。
国土交通省はまた、一般会計とはべつに社会資本整備事業特別会計と自動車安全特別会計の2つの特別会計を所管する。
職員[編集]
一般職の在職者数は2011年1月15日現在、国土交通省全体で6万728人(うち、女性5169人)である。本省(外局以外の部分)および外局別の人数は本省が4万2390人(4258人)、観光庁101人(6人)、気象庁5407人(355人)、運輸安全委員会175人(14人)、海上保安庁1万2655人(536)となっている。
行政機関定員令に定められた国土交通省の定員は特別職を含めて5万7763人である。本省及び各外局別の定員は省令の国土交通省定員規則に定められており、本省4万1414人、観光庁102人、気象庁5382人、運輸安全委員会176人(事務局職員)、海上保安庁1万2689人となっている。
職員構成上の特色として、技術系職員(技官)の採用比率が高いことが挙げられる。国土交通省におけるI種職員(いわゆるキャリア)の採用実績については、毎年7割前後を技術系職員が占めており、その大半が「理工I」と呼ばれる一般工学系試験による採用となっている。技官のトップである技監職が設けられているほか、事務方のトップである事務次官(国土交通事務次官)に技官が就任する比率も文部科学省と並んで高い。
国土交通省の一般職職員は非現業の国家公務員なので、労働基本権のうち争議権と団体協約締結権は国家公務員法により認められていない。団結権は認められており、職員は労働組合として国公法の規定する「職員団体」を結成し、若しくは結成せず、又はこれに加入し、若しくは加入しないことができる(国公法第108条の2第3項)。ただし、海上保安庁職員は職務の性質から団結権も認められておらず、労働組合結成や加入してはならない(国公法第108条の2第5項)。
2011年3月31日現在、人事院に登録された職員団体の数は単一体5、支部437の計442団体となっている。うち単一体1、支部9が管理職員がつくる職員団体である。なお、管理職員の職員団体が存在する府省は国土交通省のみである。組合員数は非管理職員が2万1184人、管理職員が596人で、組織率はそれぞれ54.2%、9.8%となっている。現存する主な職員団体には国土交通労働組合(国交労組)、全北海道開発局労働組合(全開発)、国土交通省職員組合(国交職組)、国土交通省管理職ユニオン、沖縄国家公務員労働組合気象支部および国総研横須賀職員組合がある。
国交労組は2011年9月に国土交通省労働組合共闘会議が2011年9月に単一化して発足した。共闘会議は国土交通省全建設労働組合(全建労)、全運輸労働組合(全運輸)、全運輸省港湾建設労働組合(全港建)、全気象労働組合(全気象)、海員学校職員組合(全海員)および海技大学校職員組合(海技大労組)の6単組で構成されていた。結成当初の組織人員は公称約1万7000人と国交省内で最大である。加盟単産は国公労連(全労連系)。
国交職組は前身を建設省職員組合(建職組)といい、建設省が国土交通省へ統合されたことに伴い現名に改称した。組合員数は約800人と少数派組合となっている。1960年代の建設省時代に全建労から分裂して結成された旧全官公・同盟系の第2組合を源流とし、現在も単産は国交労組とは異なり国公連合(連合系)に加盟している。ほかに全開発と沖縄国家公務員労働組合気象支部も国公連合に組織されている。
広報[編集]
国土交通省が編集する白書には「国土交通白書」、「土地白書」、「観光白書」、「日本の水資源」、「首都圏白書」、「気象業務はいま」(通称:気象白書)および「海上保安レポート」(旧称:海上保安白書)の7種類がある。うち、「土地白書」「観光白書」「首都圏白書」は、それぞれ土地基本法第10条、観光立国推進基本法第8条および首都圏整備法第30条の2の規定により、毎年度、政府が国会に提出する報告書ないし施策文書が収録される。例えばには、「土地白書」は「地価、土地利用、土地取引その他の土地に関する動向及び政府が土地に関して講じた基本的な施策に関する報告」と「土地に関する動向を考慮して講じようとする基本的な施策を明らかにした文書」が収録される。「観光白書」および「首都圏白書」も同様である。
定期刊行の広報誌としては、大臣官房広報課が編集発行事務を行っている『国土交通』が隔月刊で発行されている。国土交通省発足の2001年から月刊で、国土交通省の編集協力の下、前身各省庁の広報誌を編集していた所管4団体(運輸振興協会、建設広報協議会、国土計画協会、北海道開発協会)による共同編集発行という体制で発行されていたが、2009年3月号をもって休刊した。編集発行の主体を4法人から国土交通省に変更し、刊行頻度も隔月刊に減らして2009年12月に再刊した。