都営地下鉄

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都営地下鉄(とえいちかてつ)は、東京都地下高速電車条例[1]に基づき東京都が経営する地下鉄である。モノレール・軌道・バス事業とともに地方公営企業管理者の権限下で東京都交通局が事務を行っている。

東京都特別区及びその周辺地域に浅草線三田線新宿線大江戸線の4路線がある。2000年10月14日から2008年3月14日まで利用可能だったパスネットの符丁はTO。パスネット対応カードをTカードの名称で取り扱っていた。

路線[編集]

都営地下鉄4路線の概要
記号 路線番号 路線名 区間 キロ程 色名
  A 1号線 浅草線 西馬込駅(A-01) - 押上駅(A-20) 18.3km ローズ
  I 6号線 三田線 目黒駅(I-01) - 西高島平駅(I-27)[* 1] 26.5km ブルー
  S 10号線 新宿線 新宿駅(S-01) - 本八幡駅(S-21) 23.5km リーフ
  E 12号線 大江戸線 放射部:新宿駅(E-27) - 光が丘駅(E-38) 12.9km マゼンタ
環状部:都庁前駅(E-28) - 春日駅(E-07) - 両国駅(E-12) - 大門駅(E-20) - 六本木駅(E-23) - 新宿駅(E-27) 27.8km
  1. 三田線のうち、目黒駅(I-01) - 白金高輪駅(I-03)の2.3kmは東京都交通局が第二種鉄道事業者東京地下鉄第一種鉄道事業者
他は東京都交通局が第一種鉄道事業者。
都営地下鉄の路線図

路線は上表の通り、計4路線ある。なお、路線番号(計画路線名)は東京地下鉄線との連番である。

東京の地下鉄は、帝都高速度交通営団(営団地下鉄)が建設するものとされていたが、1957年6月の都市交通審議会において、地下鉄建設を営団だけでなく、複数の事業主体で進めるべきであるとした。そのため、既に営団が受けていた第1号線の免許を、東京都及び京浜急行電鉄に譲渡したことが始まりである。その後、第6号線と第10号線も都市計画決定の過程で、東京都が建設するものとして調整された。

乗入他者軌間及び構造の都合で、浅草線が標準軌、三田線が狭軌、新宿線が変則軌間、大江戸線が標準軌ベースのリニア方式となっているため、自力走行できるような互換性がない。これは建設当時、浅草線は京浜急行電鉄・京成電鉄と、三田線は東武鉄道(のちに計画段階で中止)・東京急行電鉄と、新宿線は京王電鉄との相互直通運転を考慮し、各路線とも直通先の方式を採用したからである。また大江戸線は、建設費削減のためミニ地下鉄方式を採用したことによって電化方式が独特だが、標準軌であるため浅草線へ回送入線が可能である。

このほか、京成成田スカイアクセスの開業と併せた計画路線として、浅草線の分岐線が日本橋駅 - 東京駅 - 東銀座駅で計画されており、東京駅接着ともいわれる。それと同時に、同線の蔵前駅の改築と待避線の設置も計画されている(これとは別に宝町駅三田駅にも待避線設置が可能との調査結果が出ている)。

相互直通運転路線[編集]

車両[編集]

現有車両[編集]

過去の車両[編集]

運賃[編集]

大人普通旅客運賃(小児半額・端数は1円単位で切り捨て)。2014年6月1日改定。

  • 下表はICカード利用時の運賃である。切符の運賃は10円単位で、端数は切り上げる(小児半額・端数は10円単位で切り上げ)。
キロ程 運賃(円)
初乗り4km 174
5 - 9km 216
10 - 15km 267
16 - 21km 319
22 - 27km 370
28 - 46km 422
  • 目黒駅 - 白金高輪駅相互間の運賃は、現在は都営地下鉄より低廉な東京地下鉄の運賃を同局も適用する(目黒 - 白金高輪間ICカード165円(小児82円)・切符170円(小児90円))。同区間の都営線回数券(大人1,700円(小児900円))も発売される。
  • 団体客向けに団体割引が行われている。
  • 満70歳以上の東京都民に発行されている乗車券「東京都シルバーパス」を利用することができる。
連絡特殊割引
東京地下鉄線と連絡して利用する場合は、発駅から着駅までに両社局線を1回乗り継ぐことにより、最も低廉となる経路の併算運賃から大人70円、小児40円を割り引く。
空港連絡特殊割引
  1. 都営地下鉄各駅(泉岳寺駅をのぞく)と泉岳寺駅連絡京急線羽田空港国際線ターミナル駅もしくは羽田空港国内線ターミナル駅との発着、または都営地下鉄各駅(押上駅をのぞく)と押上駅連絡京成線成田空港駅、もしくは空港第2ビル駅との発着となる連絡普通運賃は、2社局の併算額から大人60円、小児30円を割り引く(ただし、上記の東京地下鉄線との連絡特殊割引が適用される場合をのぞく)
  2. 泉岳寺駅及び押上駅連絡で、都営地下鉄線に跨り、京急線羽田空港国内線ターミナル駅もしくは羽田空港国際線ターミナル駅京成線成田空港駅または空港第2ビル駅との2駅間発着となる連絡普通運賃は、3社局の併算額から大人90円、小児50円を割り引く。
開始当初は、「エアポートきっぷ」という企画乗車券の扱いで、事前の乗車券の購入が必要であり、パスネットが割引対象にならなかった。しかし、2005年8月24日から空港連絡特殊割引となったため、すべての乗車を割引運賃で計算することとなった。
北総線に係る連絡割引
都営地下鉄各駅(押上駅をのぞく)と押上、京成高砂連絡で北総線各駅との発着となる普通運賃は、3社局の併算額から大人30円、小児20円を割り引く。また、都営地下鉄各駅(同前)と北総線大町駅 - 印旛日本医大駅間各駅との発着となる大人普通運賃については、40円を割り引く(ただし、上記の東京地下鉄線との乗り継ぎ割引が適用される場合をのぞく)。
その他の連絡割引
他社との接続駅付近の、特定の区間について、大人20円、小児10円(京王線 - 大江戸線の乗り継ぎに限り、大人・小児とも10円)の連絡割引運賃が設定されている。以下に例示する。
接続駅 接続会社 都営線の駅 乗継対象の路線の駅
押上駅 京成電鉄 浅草線:浅草駅 - 本所吾妻橋駅 京成押上線:京成曳舟駅 - 八広駅
浅草駅 東武鉄道 浅草線:浅草橋駅 - 押上駅
大江戸線:新御徒町駅 - 両国駅
東武伊勢崎線とうきょうスカイツリー駅 - 東向島駅
東武亀戸線曳舟駅 - 小村井駅
泉岳寺駅 京浜急行電鉄 浅草線:五反田駅 - 大門駅
三田線:芝公園駅 - 白金高輪駅
京急本線品川駅 - 新馬場駅
目黒駅 東京急行電鉄 三田線:白金高輪駅 - 白金台駅 東急目黒線不動前駅 - 西小山駅
新宿駅 京王電鉄 新宿線:新宿三丁目駅 - 曙橋駅
大江戸線:国立競技場駅 - 西新宿五丁目駅
京王線京王新線):初台駅-笹塚駅
小田急電鉄 新宿線:新宿三丁目駅-曙橋駅
大江戸線:都庁前駅 - 西新宿五丁目駅
小田急小田原線南新宿駅 - 代々木上原駅
中井駅 西武鉄道 大江戸線:中野坂上駅 - 新江古田駅 西武新宿線西武新宿駅 - 野方駅
練馬駅 西武鉄道 大江戸線:落合南長崎駅 - 練馬春日町駅 西武池袋線東長崎駅 - 練馬高野台駅
西武有楽町線小竹向原駅 - 新桜台駅(全線)
西武豊島線は対象外

定期券[編集]

都営地下鉄では、通勤・通学定期券のほかに全線を対象にした全線定期券も発売されている。有効期間はいずれも1か月・3か月・6か月の3種類がある。また、以下のような場合に割引が適用されている。

  • 都営地下鉄・都バス連絡定期券/都営地下鉄・都電連絡定期券
  • 都営地下鉄線と東京地下鉄線との連絡、または都営地下鉄線と押上駅・京成線経由で北総線各駅との連絡の場合にも割引が適用される。

2006年10月25日から、都営地下鉄の定期乗車券購入(全線定期券・連絡定期券を含む)にJCBVISAマスターカード等の一般クレジットカードが使用できるようになった。当初は定期券発売所のみの取り扱いだったが、追って2007年3月4日から自動券売機(IC定期券発売機の配備されていない一部の駅をのぞく)でも開始されている。

回数券[編集]

都営地下鉄では終日利用可能な回数券のみ発売しており、時差回数券・土日回数券・東京地下鉄や相互乗り入れ先との連絡回数券は発売していない。券面に記載された運賃の区間ならどの区間でも利用可能である。

一日乗車券[編集]

自局発売分[編集]

都営まるごときっぷ
都営地下鉄・都営バス都電荒川線日暮里・舎人ライナーの全線に、1日限りで何回でも乗車できる。大人700円・小児350円。これは、東京地下鉄線およびJR線に比べて地下鉄普通運賃が割高であることや、都営バスの広い路線網から、割安に利用できる機会の多いものである。
例を挙げれば、都営バス(23区内は1乗車210円)と地下鉄170円区間を乗り継いだ往復普通運賃は760円、また、新宿線新宿 - 本八幡間の往復運賃は720円であり、この乗車券の方がより安くなる(片道大人運賃が360円以上の区間を往復利用するには、こちらの乗車券が安くなる)。
前売り券は、他社管理の押上駅目黒駅白金台駅白金高輪駅新宿線新宿駅をのぞく各駅の窓口・定期券発売所、都電・都バス営業所・支所・分駐所で購入できる。購入日から、6か月以内の1日に限り使用できる。前売り券はスクラッチ式になっており、乗車する日付の部分を硬貨などで削って使用する。また、非磁気券のため自動改札機は通れない。以前は大人・小児別々の券を発行していたが、現在は大人・小児同一の券を発行している。
当日券は、都営地下鉄各駅の自動券売機や都電の車内で購入する場合には定期券サイズの磁気券で発行され、自動改札機を利用できる。これに限り、現金のほかにパスネットPASMOSuicaでも購入できる。
都バスの運転士から当日券を購入する場合は、感熱紙を使用した定期券サイズの非磁気券となり、自動改札機を通ることはできない。そのため、券面には「有人改札専用」と表記され、「ラミネート加工(パウチ等)をしないでください」という注意書きがある。バス共通カード・PASMO・Suicaや回数券類では購入できない。
2007年秋から、ぐるっとパスとセットになった一日乗車券が発売されている。
2008年3月30日に新たな都営交通として日暮里・舎人ライナーが開業するにあたり、同日より「都電・都バス・都営地下鉄一日乗車券」から名称が変更された。ただし、発売額は以前の「都電・都バス・都営地下鉄一日乗車券」と同額で、2008年3月29日以前に発売された前売り券でも日暮里・舎人ライナーの利用が可能である。
都営地下鉄ワンデーパス(期間限定)
都営地下鉄全線に、1日限りで何回でも乗車できる。大人500円・小児250円で発売(片道大人運賃が260円以上の区間を往復利用するには、こちらの乗車券が安くなる)。当日券のみの発売で、土曜・休日ダイヤで運行する日を中心に発売・利用できる。期間限定での発売で、発売期間はその都度、東京都交通局のホームページや中吊り広告、駅のポスターで案内される。以前は、企画を行う度にサイズが違い、かつ自動改札機を通れなかったが、現在は定期券サイズとなり、自動改札機を利用できるようになっている。なお、この乗車券で都バス・都電に乗車することはできない(購入時に確認の画面が表示される)。また、他社管理駅は有人通路の利用となる場合がある。
都営地下鉄・東京メトロ一日乗車券
都営地下鉄と東京地下鉄の全線が、一日限りで何回でも乗車できる。大人1,000円・小児500円で当日券は自動券売機で発売。この乗車券では都営バス・都電荒川線・日暮里・舎人ライナーを利用できない。
東京フリーきっぷ
都営地下鉄全線・都電・都バス・東京地下鉄全線及びJR線の都区内区間が、1日に限りで何回でも乗車できる。大人1,590円・小児800円で発売。自動改札機対応の磁気券となっている。
  • かつては、「わくわくマリンきっぷ」「くりはま花の国セット往復乗車券」「わくわくランドきっぷ」といった特別企画乗車券も発売されていた。

他社発売分[編集]

東京1DAYきっぷ
京浜急行電鉄が発売している。都営まるごときっぷと、品川駅までの往復割引乗車券をセットにした割引乗車券(品川 - 泉岳寺間は乗り降り自由)。泉岳寺駅以外の京急線全駅で購入が可能。
京急羽田・ちか鉄共通パス
京浜急行電鉄が発売している。都営地下鉄・東京メトロ一日乗車券と、羽田空港国内線ターミナル - 泉岳寺間の往復割引乗車券をセットにした割引乗車券。羽田空港国内線ターミナル駅のみ発売。ただし、この乗車券で都バス・都電と日暮里・舎人ライナーに乗車することはできない。
TOKYO探索きっぷ
京王電鉄東武鉄道首都圏新都市鉄道が発売している。都営まるごときっぷと、都営地下鉄の接続駅までの往復割引乗車券をセットにした割引乗車券。京浜急行電鉄でもかつてこの名称で発売していた。
  • 京王電鉄では、新宿駅以外の全駅で購入が可能。京王線・井の頭線の乗車駅から新宿までの往復割引乗車券と、都営交通一日乗車券がセットになっている。
  • 東武鉄道では、谷塚駅以北で購入が可能(ただし、竹ノ塚駅以南および東上線全駅を発着する乗車券は発売されていない)。東武本線の乗車駅から押上または浅草までの往復割引乗車券と、都営交通一日乗車券がセットになっている。
  • 首都圏新都市鉄道では、新御徒町駅以外の全駅で購入が可能。つくばエクスプレス線の乗車駅から新御徒町までの往復割引乗車券と、都営交通一日乗車券がセットになっている。

なお、都営地下鉄各駅で購入できる乗車券のうち、一部(企画乗車券、自動券売機により発売する定期乗車券等)は他社が管理する押上(京成電鉄管理)、目黒(東京急行電鉄管理)、白金台及び白金高輪(東京地下鉄管理)、新宿線新宿(京王電鉄管理)の各駅では取り扱いをしない。これにあたって、同局ではこれらの駅で不発売の乗車券を購入するために、当該乗車券を発売する各駅との間を往復乗車する場合、それにかかる普通運賃を当該乗車券購入時に払い戻し、及び無料の乗車券を交付している。この取り扱いは東京地下鉄と異なり、当該定期券等を自動券売機で購入する場合にも適用される。このほか、新宿駅には大江戸線の駅(東京都交通局管理)もあり、こちらでは当該乗車券を取り扱う。

また、上記各乗車券を提示するだけで都内にある100以上のスポットで割引などを受けられる「ちかとく」サービスも利用出来る。

列車速度[編集]

最高速度[編集]

  • 浅草線・大江戸線:全線70km/h
  • 三田線:白金高輪駅 - 西高島平駅間 75km/h、目黒駅 - 白金高輪駅間 80km/h(同区間は都営地下鉄の乗務員が東京地下鉄の運転取扱規定により運転する)
  • 新宿線:全線75km/h

駅通過速度[編集]

  • 浅草線・三田線・新宿線:55km/h
  • 大江戸線:25km/h

通常、駅を通過するのは回送列車のほかに、営業運転では浅草線のエアポート快特と新宿線の急行のみ。それ以外はすべて各駅に停車する。電車が通過する際には、警報音をホームで鳴打する。

保安方式[編集]

  • 浅草線:一部区間のみC-ATS(デジタル伝送を利用し、ATS-Pに匹敵する機能を持つ。2007年3月16日までは全区間で1号型ATSで、京成・新京成・北総・京急・芝山と同じだった。直通各社も2010年度までにC-ATSに更新準備中)。
  • 三田線・大江戸線:CS-ATC(三田線は1999年12月2日まではT型ATS(※注))※注:T型ATS=かつて乗り入れ予定のあった東武鉄道と、共同開発したパターン型ATS
  • 新宿線:D-ATC2005年5月13日まではCS-ATC)

各種無線機器への対応[編集]

経営状況[編集]

路線別収支[編集]

都営地下鉄4路線の純損益推移(▲は赤字)[注釈 4]
年度 浅草線 三田線 新宿線 大江戸線 合計 出典
2012年度 103億3900万円 44億9200万円 082億2400万円 123/▲104億5700万円 122億6700万円
2011年度 078億5300万円 36億4900万円 095億4300万円 123/▲123億9500万円 086億5000万円
2010年度 086億6000万円 41億4300万円 098億3300万円 132/▲132億3800万円 093億9900万円
2009年度 096億7600万円 41億0200万円 106億5300万円 120/▲120億7700万円 123億5500万円
2008年度 155億1400万円 41億9700万円 121億9700万円 115/▲115億8000万円 203億2900万円
2007年度 088億4900万円 33億3500万円 111億9300万円 123/▲123億9800万円 109億8000万円
2006年度 067億1400万円 21億7000万円 093億2800万円 156/▲156億2800万円 025億8400万円

経営状況は、2004年平成16年)度は約134億7,000万円の赤字、2005年度で約38億7300万円の赤字と、長年赤字に苦しんでいた。しかし近年、赤字幅は大幅に減少してきており、地下鉄事業を始めてから47年目である2006年度には、25億2800万円の純利益を計上した。

上表からわかるように、直近6年度では浅草線・三田線・新宿線は黒字となっている。大江戸線のみが赤字となっているが、これは減価償却費が大きな負担となっているためである(2011年度は約204億9500万円)。ただし乗車料収入については約361億2800万円と、4路線の中では最も多い。なお、2008年度浅草線の純利益が大幅に増加したのは、主に旧馬込工場跡地の売却(63億円あまり)によるものである。

累積欠損金が過大なため、過去に財政再建団体に転落したことがある。近年においての単年度の黒字決算はじめ大江戸線の有利子負債の償却等により欠損金の削減は進んではいるが2012年度末においても約4,001億3500万円の欠損金が発生している状態である。

東京地下鉄(東京メトロ)との統合議論[編集]

都営地下鉄には、過去に何度か民営化構想や帝都高速度交通営団(現・東京地下鉄)との統合構想、他社への売却構想などが出たことがある。2013年12月まで、東京都交通局の最高責任者であった前東京都知事猪瀬直樹は、2012年東京都知事選挙直後に開かれた記者会見で、猪瀬の前職の都知事である石原慎太郎が手がけてきた地下鉄一元化を引き続き推進していく方針を表明している。その後2013年2月20日に行われた施政方針演説の中で、猪瀬は東京地下鉄の株式を東京都が保有する形での一元化を具体的な方法論として示し、演説の時点で進められていたサービス一体化への取り組み(九段下駅ホームの改良工事や乗り継ぎ割引適用の拡大など。いずれも同年3月16日に完成または運用開始)を「経営一元化への一里塚」と位置づけた。

一連の統合議論の発端となったのが、2009年6月26日のJNNTBS系列)のニュースで、東京都交通局が東京地下鉄との統合交渉を行い、東京地下鉄の株式上場を条件に上下分離方式(東京地下鉄が第二種鉄道事業者で東京都交通局が第三種事業者にする方式が有力)で統合する覚書に合意したと報じられた。2009年度に計画されている東京地下鉄の株式上場が統合の条件で、株価の動向次第では先送りされる可能性があるとも報じられている。JNNのカメラ取材に対し、当時の都知事であった石原は「覚書は交わしたんだけど、それ(統合)は時期の問題、タイミングの問題でしょう。ユーザーのためには絶対そう(統合)すべきだと思います」とコメントしている。さらに、6月29日には続報として、株式上場後も最終的な割合で国23%、東京都20%の出資を維持することで調整を進めていると伝えた。

2009年11月11日に行われた東京地下鉄の2009年9月中間連結決算の記者会見の場において、なお両者が統合に向けた協議を続行中であることが明らかにされた。また、2010年3月5日に行われた石原知事の記者会見では、上場予定の東京地下鉄株を東京都が購入する考えを明らかにした。

2010年6月19日に行われた東京地下鉄株主総会では東京都副知事(当時)の猪瀬直樹が出席し、両者の統合に関して協議を続けるように主張した。

同年8月3日から国土交通省鉄道局主導により「東京の地下鉄の一元化等に関する協議会」が行われ、東京地下鉄と東京都交通局の代表者に加え東京都副知事の猪瀬と国土交通審議官財務省理財局次長も参加しての協議が行われている。11月16日に行われた第3回の協議会で、国側は資産などを合計した企業価値から負債を差し引いた「株式価値」について、東京地下鉄が4000億から6000億円のプラスであるのに対し、都営地下鉄は1800億から7300億円のマイナスとの試算結果を示し、現状のまま統合すると(完全民営化を予定しており、国が保有する株式を売却することになる)東京地下鉄の株式の価値を棄損するとして、統合のためには都営地下鉄のさらなる債務圧縮が必要、と統合に消極的な姿勢を示した。これに対して猪瀬は「株をいかに高く売るかだけがテーマでなく、利用者の目線で考えて、利用者のためにどうするかということで一元化を進めるべきである。株式価値だけを全面に押し出すのはおかしい」と反論している。

2011年、国が東日本大震災被災地の復興財源捻出のため、保有する東京地下鉄株の売却を検討するという問題に対して、石原知事や猪瀬副知事(共に当時)は東京地下鉄株が売却された場合は東京都がその全株式を購入し、過半数を保有するという姿勢を見せている。

なお、東京都交通局は都営地下鉄だけでなく、都営バス都電荒川線新交通システム日暮里・舎人ライナー上野動物園モノレールといった各種交通機関の運行も行っているが、これらの運行や駅・車両などの管理はどの業者が行うのかなどといった点について議論が行われているかどうかは不明である(なお、都営バスの一部の路線等を委託されているはとバスには東京地下鉄やそのグループであるメトロ文化財団も出資している)。

その他[編集]

  • 今後は新たなホームドア設置等の投資を検討している。ホームドア設置については既に全駅設置済みの三田線、2013年4月に全駅での設置が完了した大江戸線に続いて、新宿線でも実施予定である。
  • 一部の駅では関係団体の財団法人東京都営交通協力会に業務委託を行っている。
  • 東京地下鉄と共同で、案内サインシステムの更新を行っている。以前は小川町駅などで見られるタイプへの更新がされていた。しかし2007年末から、東京地下鉄のものにやや似た、新宿三丁目駅などで見られるタイプのサインへの更新が行われている。東京地下鉄に似たタイプのサインから、ローマ字のマクロンが省略されるようになった(「東京地下鉄#英字表記」も参照)。
  • 政府が都営地下鉄の24時間運行化を検討している。金・土曜の深夜限定の24時間化といった案も出ている[4]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ただし、定期ダイヤでは京成本線 京成成田-成田空港間・京成成田スカイアクセス 印旛日本医大-成田空港間・京成東成田線・芝山鉄道線・京急本線堀ノ内-浦賀間には東京都交通局の車両は乗り入れず、他社車両により同区間と浅草線との直通運転が行われる。
  2. 吊り手棒を車体から絶縁して送信アンテナとしている(「新車ガイド 東京都交通局6300形(三田線用)」、『鉄道ファン』1993年9月号)。
  3. 3.0 3.1 三田線の目黒 - 白金高輪間は東京地下鉄(東京メトロ)が第一種鉄道事業者としてトンネル施設を保有しており、三田線の他区間とは整備状況が一致していない。同区間は東京メトロ全線で使用可能となる2013年3月21日より携帯電話が使用可能となっている。
  4. 便宜上、百万円未満は四捨五入した。


  1. 東京都地下高速電車条例
  2. 都営大江戸線向け12-600形が甲種輸送される(鉄道ファンrailf.jp)
  3. 引用エラー: 無効な <ref> タグです。 「uq-news-20121213」という名前の引用句に対するテキストが指定されていません
  4. 都営地下鉄を24時間運行 3大都市圏に特区検討、日本経済新聞(2013年4月16日)、2013年4月16日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]