日本の政治
日本の統治機構 | ||
---|---|---|
日本国憲法 | ||
天皇 | ||
立法 | 行政 | 司法 |
国会 ・衆議院 ・参議院 |
内閣 ・内閣総理大臣 ・国務大臣 ・行政機関 |
裁判所 ・日本の裁判所 ・最高裁判所 ・下級裁判所 |
地方自治 | ||
地方公共団体 ・地方議会 |
・首長 | |
国民(主権者) | ||
・日本の選挙 | ・日本の政党 |
日本の政治(にほんのせいじ)は、日本国憲法に定められた体制に基づいて行われる。そのため、日本は、立憲主義に基づく国家であると言える。また、日本の司法・行政は、憲法と国会が定める法律以下、明文化された法令に基づいて行われる。そのため、日本は法治国家であると言える。
日本国憲法は、主権が国民に存する国民主権を定める。また、政治上の権力を立法権・行政権・司法権の三権に分け、それぞれを国会・内閣・裁判所に配する権力分立の体制を定める。国会を国権の最高機関とする議会制民主政治が行われ、国会と内閣の協働による議院内閣制が採られる。さらに、「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」として、世襲君主である天皇を置く。天皇は国政に関する権能を有しないと憲法で定めている。
日本国憲法はまた、地方自治を定める。日本の地方自治は、全国を47の地域に隈なく分けた都道府県と、都道府県の中をいくつかの地域に隈なく分けた市町村の、2段階の地方公共団体によって担われる。すべての都道府県と市町村には、各々、議事機関である議会と執行機関である首長(都道府県知事、市町村長)が置かれる。地方公共団体は、法律の範囲内で条例を制定することができる。
日本国憲法の三大原理としてよく挙げられるのは、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の3つである。日本の政治は、この3つの原理と、その根本にある個人の尊重(個人の尊厳)を基調として行われる。
目次
国制・政体[編集]
日本の国制(国家の形態)もしくは政体は、立憲君主制(立憲君主国)であるか、共和制(共和国)であるか、議論がある。
立憲君主制であることの根拠は、次の3つに集約される。まず第一に、公選の大統領などを置かないことから共和制であるとは言えないこと。第二に、世襲君主たる天皇を持つこと。第三に、近代的意味の憲法を持つことから専制君主制ではないこと。以上から、日本は立憲君主制を採る立憲君主国であるとする。
一方、共和制であることの根拠は、君主に措定された天皇が、国政に関する権能を有していないことを最大の根拠とする。現に、政治上の権力を行使するのは、司法部を除き、公選された者を中心として構成され、共和制に準じる体制を採る。さらに、法律によって首相公選制が施かれた場合には、大統領を置く共和制とほぼ変わりなくなる。以上から、日本は共和制を採る共和国であるとする。
講学上、日本は立憲君主制を採る立憲君主国であるとする意見が有力である。また、政府の公式見解も、日本は立憲君主制の国であるとする(1973年(昭和48年)6月28日の参議院内閣委員会における内閣法制局長官答弁)。もっとも、大日本帝国憲法(明治憲法)下における統治権の総攬者としての天皇をいただくという意味での立憲君主制でないことも、また明らかであるとする。ただ、立憲君主というラベリングは復古的な意図があるとして異議を唱える立場もある。
他方、君主制、民主制といった区分によるよりも、民主主義国家と呼ぶのが実態に沿っているとの立場もある[1]。
元首[編集]
日本の国家元首については議論がある。その候補には、天皇、内閣総理大臣、その他の機関などが挙げられる。もっとも、そもそも「元首」が日本において何を意味するかについて議論が錯綜しているため、水掛け論になりがちである。
天皇が元首であることの根拠には、日本国憲法の規定から、次の3点が挙げられる。まず第一に、天皇を「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」たる地位であると定めていること(1条)。第二に、行政権の属する内閣の長である内閣総理大臣の任命(6条1項。国会の指名に基づく。)や、司法権を行使する最高裁判所長官の任命(同条2項。内閣の指名に基づく。)、および「国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関」(41条)である国会の召集(7条2号)・解散(7条3号)など、内政上の重要な行為の多くを「国事に関する行為」(国事行為)として天皇が行うと定めていること(7条。内閣の助言と承認による。)。第三に、これも国事行為として、「全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証」すること(7条5号)、「批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証」すること(7条8号)、「外国の大使及び公使を接受」すること(7条9号)など、通常元首が行うとされている外交上の重要な行為を天皇が行うと定めていることなど。これらの規定から、対内的にも対外的にも、天皇が元首であるとする。
また、内閣総理大臣が元首であることの根拠は、主要国首脳会議(サミット)などの国際会議で日本国を代表する立場にあることなどが挙げられる。さらには、行政権の属する内閣が元首であるとしたり、国権の最高機関である国会が元首であるとするなど、特定の組織を元首とする意見もある。
政府の公式見解では、天皇は元首であるとする(1990年(平成元年)5月14日の参議院予算委員会における内閣法制局長官答弁)。もっとも、「天皇は国の象徴であり、さらにはごく一部では…外交関係において国を代表する面」もあるという限定された意味における「元首」であるとする。
国の政治[編集]
憲法上は国会を「国権の最高機関」と定め、「国の唯一の立法機関」とすることから、付与される政治上の権力は国会が最も大きい。しかし、憲法は内閣にも法案提出権を付与し、国会で成立する法案の大半は内閣提出法案であることから、実質的には内閣の権限が最大となっており、いわゆる行政国家現象が顕著である。さらに、内閣提出の法案は、内閣の下にある行政組織が作るため、行政組織の幹部職員、いわゆる官僚(キャリア公務員)が実権を握る官僚国家であるとも言われる。
また、裁判所には違憲立法審査権が付与される。裁判所は、法律をはじめとする国の法令や行政行為について、それが憲法に反していることを宣言することができる。この権限は、国家の行為の適否について、終局的に判断する権限であることから、最も強い権限のはずである。このような体制を指して、司法国家と言われる。しかし、裁判所はいわゆる司法消極主義に立つとされ、国会や内閣(いわゆる政治部門)の判断に対し、異議を差し挟むことには謙抑的である。
政治制度(国)[編集]
立法[編集]
日本国憲法は、国会を「国権の最高機関」であり「国の唯一の立法機関」と定める。国会は、衆議院と参議院からなる(二院制)。いずれも国民から直接選挙され、全国民を代表する国会議員で構成される。衆議院議員と参議院議員を兼ねることはできない。
国会議員[編集]
衆議院議員の任期は4年だが、衆議院が解散された場合には任期前に資格を失う。衆議院解散は内閣が決定し、天皇が行う。内閣は、衆議院で内閣不信任の決議案が可決され、または信任の決議案が否決された場合(69条解散)、または憲法7条に基づいて(7条解散)、衆議院の解散を決定する。衆議院議員の選挙を総選挙という。参議院議員の任期は6年で、3年ごとに半数が改選される。参議院議員の選挙を通常選挙という。
衆議院の総選挙は小選挙区制と比例代表制(拘束名簿式)が併用される小選挙区比例代表並立制が採用され、参議院の通常選挙は選挙区制(大選挙区制、中選挙区制)と比例代表制(非拘束名簿式)が併用される。定数は、衆議院が480(小選挙区選出議員300、比例代表選出議員180)、参議院が242(選挙区選出議員146、比例代表選出議員96)。
国会の会期[編集]
国会は毎年1回召集される。これを常会(通常国会)という。また、内閣が自ら、あるいは一定数の国会議員の要求により、内閣が臨時に国会の召集を決定することもできる。これを臨時会(臨時国会)という。例年、1月に常会が召集され、9月頃に臨時会が召集される。総選挙後には特別会(特別国会)が召集され、内閣総理大臣を指名する。
国会は会期制が採られており、会期不継続の原則と一事不再議の原則が定められている。会期不継続の原則とは、会期独立の原則ともいわれ、継続審議の議決がなされない限り、会期中に議決に至らなかった議案は廃案(消滅)となる原則である。一事不再議の原則とは、一度議決された議案は、同一会期中に再度提出できないという原則である。
常会の会期は150日間で、延長は1回のみ許される。臨時会と特別会の会期は時に応じて国会が定め、延長は2回まで許される。なお、会期の決定及び延長については衆議院の優越が認められ、衆参の議決が不一致の場合及び参議院が議決をしない場合は衆議院の議決が国会の議決となる。
立法過程[編集]
法律案(法案)は、各々の国会議員、および内閣により提出される。国会議員から提出された法案を議員立法あるいは衆法(衆議院議員が提出した法案)・参法(参議院議員が提出した法案)といい、内閣から提出された法案を内閣提出法案(政府提出法案)あるいは閣法という。現在、1会期における提出法案のうち、おおむね30%が議員立法で、70%が内閣提出法案となっている。成立率(提出された法案のうち成立したものの割合)は、議員立法が20%程度で、内閣提出法案は80%以上。したがって、成立する法律のほとんどは内閣が提出したものである。これは、国会から内閣総理大臣を選出し、その内閣総理大臣が内閣を組む議院内閣制を採っていることの帰結である。内閣総理大臣を輩出する与党と内閣は、協働して内閣提出法案の成立に努める。
内閣提出法案の成立過程
- 内閣提出法案の原案は、それを所管する各省庁が第一次案を作成し、関係省庁や与党との意見調整、審議会への諮問、公聴会での意見聴取などが行われる。
- 法律案提出の見通しがつくと、主管官庁は法文化作業を行い、法律案の原案を作成する。
- 主管官庁で法律案の原案ができると、原案は内閣法制局の予備審査を受ける。内閣法制局では、憲法や他の法令との整合性、法文の配列や用語などについて審査する。
- 予備審査が終わると、主任の国務大臣から内閣総理大臣に対し、国会提出について閣議請議の手続を行う。閣議請議の窓口である内閣官房は、受け付けた請議案を内閣法制局に送付する。内閣法制局は最終的な審査を行い、必要に応じて修正し、内閣官房に回付する。
- 閣議請議された請議案は、閣議において、内閣法制局長官からその概要の説明が行われる。異議なく閣議決定されると、正式な法律案となる。この法律案は、内閣総理大臣から国会(衆議院または参議院)に提出される。
議員立法の成立過程
- 議員は、法律案の策定にあたって、公設秘書・私設秘書、政策担当秘書、議院法制局や国立国会図書館の職員、関係省庁や地方公共団体の公務員、その他のブレーン、民間企業や団体、一般国民など、多くのスタッフと協議する。特に、議院法制局は、立法技術の専門的な見地から、憲法や他の法令との整合性調査、法律案要綱の作成、法律案の条文化などを行い、法律案の局内審査と法制局長決裁を行う。
- 議院法制局の審査を経た法律案は、依頼者である議員に手交され、所属政党内の法案審査手続きにかけられる。
- 議員が議案を発議するには、衆議院においては議員20人以上、参議院においては議員10人以上の賛成を要する。ただし、予算を伴う法律案を発議するには、衆議院においては議員50人以上、参議院においては議員20人以上の賛成を要する。
- 議院法制局の審査を経て、所定の賛成者をそろえた法律案は、議長に提出される。
国会に提出された法律案の過程
- 提出された法律案は、提出された議院(先議の議院)の議長により、適当な委員会に付託される。
- 法律案を付託された委員会では、まず、主任の国務大臣が法律案の提案理由説明を行い、審査に入る。審査は、議員から国務大臣・副大臣・大臣政務官その他の公務員などに対し、法律案に関する質疑応答の形式で行われる。委員会での質疑、討論が終局したときには、委員長が終局を宣言し、表決に付す。
- 委員会における法律案の審査が終了した後、法律案の審議は本会議に移される。本会議では、法律案を付託された委員長から委員会での審査について報告が行われる。必要に応じて討論として、法律案に反対の立場からの演説、賛成の立場からの演説が行われる。討論の後、議長から委員会表決の結果報告が告知され、採決に入る。
- 本会議で法律案が可決されると、議長から他の議院に法律案が送付される。送付を受けた議院においても、委員会の審査、本会議の審議を経て、採決が行われる。
- 法律案は、憲法に特別の定めのある場合(地方自治特別法など)を除き、衆議院および参議院の両議院で可決したとき法律となる。
- 法律が成立したときは、後議の議院の議長から、内閣を経由して天皇に奏上される。奏上された案文は天皇が決済(自筆の署名をし、御璽を押印)し、内閣に戻される。
- 法律は、奏上された日から30日以内に公布されなければならない。法律の公布に当たっては、主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署する。法律は官報に掲載することで公布される。
- 公布された法律は、附則に定められた日に施行される。施行日は、「公布の日から起算して○年を超えない範囲内において政令で定める日」と附則に定めることもできる。
政党[編集]
日本国憲法には政党に関する規定はない。政治資金規正法は、「政治団体」のうち、国会議員を5人以上有するもの、または直近の総選挙または直近の通常選挙もしくは直近の通常選挙の前の通常選挙における得票総数が有効投票総数の100分の2以上あるものを「政党」と定義している。
この「政党」には、届出・収支報告義務を定め、政治資金の透明化を行うとともに、政党のうち、国会議員を有するものに政党交付金による助成を行っている。
戦後の政治状況[編集]
戦後10年間は小党が分立する状態が続いたが、1955年(昭和30年)に日本社会党の右派と左派が統一し、日本民主党と自由党が合同(保守合同)して自由民主党が成立したことにより、55年体制が確立した。55年体制では自由民主党が常に与党となり、国会では自由民主党の総裁が内閣総理大臣に指名された。自由民主党の一部議員が離党して作った新自由クラブとの連立政権が組まれた時期(1983年から1986年まで)を除き、長らく自由民主党の単独内閣が続いた。
1993年(平成5年)に自由民主党が分裂し、宮沢内閣の不信任決議案が衆議院で可決され、衆議院は解散された。自由民主党の一部議員は離党して新政党を作り、このあと行われた総選挙で、自由民主党は大きく議席を減らした。この選挙後に召集された国会で、日本新党の細川護煕が内閣総理大臣に指名され、日本社会党、新生党、公明党、日本新党、民社党、新党さきがけ、民主改革連合の連立により、細川内閣が組まれた。この連立は次の羽田内閣でも維持されたものの、少数与党内閣となった。
1994年(平成6年)、羽田内閣は内閣総辞職を行い、国会は日本社会党の村山富市を内閣総理大臣に指名し、自由民主党、日本社会党、新党さきがけの連立内閣(自・社・さ連立政権)が組まれた。この連立は次の第1次橋本内閣でも維持された(閣外協力は第2次橋本内閣の1998年6月まで)。
1999年(平成11年)1月、小渕内閣は自由民主党と自由党の連立内閣(小渕内閣第1次改造内閣)となり、同年10月には公明党も加わった(小渕内閣第2次改造内閣、自自公連立内閣)。翌2000年に自由党は分裂して、離党した一部議員が保守党(後に保守新党)を結成し、連立に残留した(第1次森内閣、自公保政権)。この連立は、次の小泉内閣でも維持されたが、2003年11月の総選挙後に保守新党が自民党に吸収され、自民党・公明党の連立(自公連立政権)となった。自公連立は、その次の安倍内閣、続く福田康夫内閣でも維持されている。
現在の政治状況[編集]
2007年(平成19年)4月現在、国会には以下の主要政党があり、院内会派(新党日本、新党大地を除く)を組んでいる。
現在の与党は自由民主党と公明党。自由民主党の総裁である福田康夫が内閣総理大臣を勤め、公明党と連立政権を組んでいる。民主党が二大政党として頭角を現しつつあるが、政権交代を実現するまでには至っていない。
行政[編集]
行政権は内閣に属する。
国会議員の中から、国会の議決によって内閣総理大臣が指名される。内閣総理大臣は天皇に任命される。内閣総理大臣は国務大臣を任命し、内閣総理大臣と国務大臣の合議体である内閣を構成する。内閣総理大臣は国務大臣を任意に罷免することができる。内閣総理大臣は国会議員の中から指名されるが、国務大臣は過半数が国会議員であればよい。
以下の場合には内閣は総辞職する。
- 衆議院による内閣不信任→衆議院が解散されないとき
- 内閣総理大臣が欠けたとき
- 衆議院議員の総選挙の後に初めて国会が召集されたとき
司法[編集]
司法権は最高裁判所および法律により設置される下級裁判所に属する。
終審裁判所である最高裁判所は、長たる裁判官(最高裁判所長官)とその他の最高裁判所裁判官から構成される。最高裁判所長官は内閣が指名し、天皇が任命する。その他の最高裁判所裁判官は、内閣が任命する。最高裁判所長官とその他の最高裁判所裁判官は、任命後、国民審査を受ける。その後10年を経過するごとに、さらに国民審査を受ける。最高裁判所の裁判官は、法律で定めた年齢(70歳)に達すると退官する。
下級裁判所(高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所)の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿により、内閣が任命する。下級裁判所の裁判官は、任期を10年とし、再任されることができる。下級裁判所の裁判官の定年は65歳(簡易裁判所裁判官は70歳)である。
地方の政治[編集]
都道府県および市町村の議会の議員、都道府県知事および市町村長は、すべて住民に選挙され、任期はいずれも4年間である。
政治制度(地方)[編集]
日本の政治の基本的性格[編集]
地政学的条件[編集]
日本は極東の島国として、食糧及び原材料の自給率の低い少資源国である。よって資源を確保するためには近隣諸国との交易が欠かせられず、友好関係を築く必要があるが最近は海洋権益を求め日本と排他的経済水域をめぐる問題や日本の領土である尖閣諸島に対して領有権を主張する中華人民共和国(中国)との関係も微妙となっており、核兵器を開発して地域不安をもたらしている朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との関係も冷え込んでいるなど、必ずしも安定したとはいえない情勢にある。
アメリカ合衆国は自国と中東とをつなぐ重要な地域である極東の安定化を望んでおり、日本と日米安全保障条約を締結し、ともに日本および極東の安定化に努めている。こうした国内事情や地域情勢から、日本は海洋国家として成長していくべきという主張も多い。とりわけ自己資源のない国内事情を打開するためには通商によるエネルギーの安定した供給を図り、また日本人の食糧を支える漁業や外国産輸入食品の供給を支える海域の安定は不可欠であり、日米同盟を基調とした国連や地域秩序レベルでの安全保障を確立すべきであるというのが主な理由である。
近年ではアメリカとの外交関係をより強化する親米派、中国など東アジアとの共生を重視する親中派はじめとする論陣とに別れ、国際政治の力学としてどのような対外政策をとるべきかという議論も高まりつつある。しかし、日本は憲法上、平和主義をめぐる論争があり、国家戦略の方向性としてはその決定的な方向付けは定まっていないのが現状である。
平和主義をめぐる論争[編集]
今日、日本の国是といわれる平和主義であるが、戦後以来その解釈をめぐっては大きな議論を巻き起こしてきた(日本国憲法および憲法改正、立憲主義、平和主義の項参照)。とりわけ、地政学的条件において極東の情勢不安が指摘される中で、日本は戦後以来一貫して日米同盟を堅持し、事実上アメリカの覇権主義と核の傘の下で平和を維持してきた。
自衛権をめぐる憲法上の正当性としては日本全体としては自衛権の正当性を許容する世論も強いが、一方で憲法学の立場から自衛権そのものの違憲性やあるいは集団的自衛権や自衛隊の存在、自衛隊による国際貢献など運用面や部分的否定論者も多く、賛否をめぐる議論も多岐にわたる。こうした中、今日高まっている極東の危機意識や日米同盟の変化から日本の自主防衛のあり方をめぐる賛否は大きな議論となっており、近年憲法改正の是非をめぐる国民投票の実施を進める動きもある。
政治的環境[編集]
今日の日本の政治は三権分立の下により、憲法上、日本の政治指導者とされる内閣総理大臣は国会議員の中から指名により選出され、各省庁の長である国務大臣はその過半数を国会議員から選ぶ必要がある(内閣、内閣総理大臣、国務大臣の項参照)。国会は二院制をとっており、議席の過半数を占める会派が与党となり首班指名を受けることにより、組閣を行う。国民の参政権としては選挙権が20歳以上の男女とされ(選挙権付与はサミット参加国では日本以外すべて18歳である)、政治家に立候補する資格である被選挙権は地方議員や衆議院議員が25歳以上なのに対して、参議院議員や自治体首長などは30歳とされている。
旧来の政治家輩出のシステムは「地盤(後援組織)、看板(知名度)、鞄(資金)」のいわゆる「三バン」を有することが政治家としての条件とされ、圧力団体の支持や、有力政党の公認を得ることが政治家として成功する上での第一の条件のようにすら考えられてきた。必ずしも個人としての能力本位ではなかった。そうしたことから「政治は金がかかる」というイメージがつきまとい、戦後政治においては政財界の癒着による汚職から金権政治としてしばしば批判を受けることもあった。近年は地方分権も進み、情報公開制や政策評価など政治の透明度を求める声もあり、利権政治的側面はかつてほどはなくなったといわれている。
ただし、長く続いた金権政治により有権者の政党離れが進み、近年は無党派層の増大傾向が著しい。そうしたことから今日、無所属議員の方がかえって当選する場合においてしばしば有利となる傾向がある。逆に政党の公認が重荷になるケースもある。近年の国政選挙では無党派層をいかに自分の陣営に取り込めるかが焦点となるケースが多い。そのため都市部では従来の組織型選挙に代わり、政治家個人の人気やパフォーマンスにより大衆票を集めるケースが多いと言われている。
また、日本は二世議員が多いことも確かであり、父母の政治的地盤を継承により、事実上の世襲による風潮には批判的な声も多い。一方で個人のレベルでは父ないし近親の政治家の姿を幼い頃から見て育っているため、政治的感覚や政策への知識に優れ、一概に悪いとは言えない。むしろ、二世輩出を主として許容する政治家の登用体制に問題があり、二世であるかないかを問わず、個人としての資質を評価すべきという意見もある。近年はそうした世情を反映してか、与野党ともに一般に公募を行っている政党も多い。
脚注[編集]
- ↑ これは、政体とは、古代にアリストテレスによって説かれた「統治権の所在」によって、君主制、貴族制、民主制といった政治形態を区分する考えであり、近代以降、ファシズム国家、政教一致国家、軍部独裁国家の出現などにより、そういった区分方法自体が現実に適合しなくなったとする見解に基づく。大日本帝国憲法の下では、日本の政体は国体思想と一体になって語られ、「天皇親政の神権国家」(「国体明徴声明」)、君主制国家であった。ここでは、統治の主体としての天皇には、統治される客体としての臣民が呼応した。これに対して、日本国憲法の下では、日本は君主制国家でも民主制国家でもないとする。その理由として、第一に天皇は「国政上、一切の権能を持たない」象徴であると規定され、第二に君主規定がないので「立憲」君主は存在しないとし、第三に統治権も国民のみにあり、また戦前のように「臣民」ではなく「国民」であり、第四に「民主」という日本語は大正時代に「君主」の対概念として作られたものであり、日本では天皇機関説の排撃のように、君主と民主は同時に並存しない、と捉えられてきたことなどを挙げる。
名言・出来事[編集]
- 五箇条の御誓文(五蒡の掲示)
- 自由民権運動
- 大日本帝国憲法
- 日本国憲法
- 護憲運動(第一次・第二次)
- 普通選挙法
- シーメンス事件
- 教科書疑獄
- 帝人事件
- 昭電汚職
- 55年体制
- バカヤロー解散
- 造船疑獄
- 国会「黒い霧」事件
- ロッキード事件
- ハプニング解散
- 死んだふり解散
- リクルート事件
- 毒まんじゅう
- ゼネコン汚職
- 中央省庁再編
- 郵政解散