連続立体交差
連続立体交差(れんぞくりったいこうさ)とは、都市計画や交通計画に用いられる用語で、鉄道を高架化、あるいは地下化することで、道路との交差部分が連続的に立体交差化された状態のことである。
目次
概要
鉄道と道路が平面交差する踏切では、列車の通過時に道路交通が遮断されるため、交通容量低下による渋滞、街の分断などの問題が発生する。特に列車本数の多い都市部の踏切は遮断率が高く、「開かずの踏切」となっている場合も多い。さらに日本の法規制では、原則的に遮断されていなくても一時停止が義務付けられているため、踏切の存在自体が信号機同様に道路容量を低下させる原因となっている。
このため、鉄道と道路の立体交差化が検討されることになるが、鉄道と複数の幹線道路とが交差し、その交差する幹線道路間の距離が350m 以上ある区間において、3ヵ所以上で鉄道と道路を立体交差させ、連続する複数の踏切を同時に解消する事業を特に連続立体交差事業という。規模が大きくまちづくりに深く関るため、都道府県や政令指定都市といった地方自治体が事業主体となり、都市計画事業(都市計画道路・都市高速鉄道などの都市施設の整備)として行われる。事業費の9割程度は補助金によって賄われ(残りは鉄道事業者の負担)、財源には道路特定財源(自動車税やガソリン税など)が用いられる。
方法としては、道路側での対応(鉄道を陸橋でまたぐかトンネルで抜ける形に変更)と鉄道側での対応(鉄道路線を高架線または地下化)の2通りがあるが、連続的に立体交差を行なう特性上鉄道側の高架化や地下化がほとんどで、近年では、多くの鉄道路線の高架化や地下化にこの事業が適用されている。また路線の前後との兼ね合いから、既に立体交差化された箇所について線路と道路との上下を入れ替える逆立体交差化(鉄道の上を越えていた道路を地平に下ろし、鉄道が道路の上を連続立体交差で越えるように変更する、など)が行なわれる場合もある。
高架化工事の進め方としては、まず隣接地に仮線用の用地を取得して線路を移設し、次に元の線路の跡地に高架橋を建設し、そのあとその高架橋の上に線路を移設するといった流れを踏むことが殆どである。しかし周辺が住宅地であるなど用地取得の難航が予想される場合は、営業中の線路の真上に高架橋を建設する直上高架方式を取る場合がある。この場合、特に基礎工事の段階では、終電から始発までのわずかな時間に工事を行うため、工期が長引く、住宅地のすぐそばで高架橋を建設するため、日照権に抵触する恐れがある、といったデメリットがある。
基本的に事業前の鉄道施設をそのまま高架、もしくは地下化する事が前提となり、事業に合わせて鉄道設備に改善を加えるような場合(高架化・地下化に合わせて、電化、複線化・複々線化やホーム延長、待避線新設、既設橋梁架け替えなど設備の改善もセットで行われる場合も多い)には、改善分の費用は鉄道事業者の負担となる。場合によっては線形改良または新駅設置、路線ルート変更、路線延伸を行うこともある。
制度の拡充
地方自治体の財政状況が悪化する中、連続立体交差事業を更に推進し開かずの踏切を早期に解消するため、2006年度から、連続立体交差事業に関する制度を以下の通り拡充した。
- 連続立体交差事業そのものの拡充。
- 連続立体交差事業の立替施行者の拡大。
- 連続立体交差事業は本来、地方自治体が事業主体となっているが、鉄道施設に係る事業であるため、実際の施行は鉄道事業者が行っている。これを立替施行者というが、この立替施行者を特定目的会社や第三セクター、鉄道建設・運輸施設整備支援機構にまで拡大する。
- 連続立体交差事業の無利子貸付制度の創設。
- 踏切道改良促進法を改正し、連続立体交差事業についてその認定を受けた者に対し、国が無利子で貸付を行えるようにする。
年表
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- 1969年(昭和44年) 運輸省と建設省の間において「都市における道路と鉄道との連続立体交差化に関する協定」を締結。
- 2000年(平成12年) 連続立体交差事業の採択基準が緩和される(踏切道等総合対策事業の創設)。
- 2001年(平成13年) 連続立体交差事業の推進に向けた鉄道事業者による立替制度と道路開発資金による貸付制度が始まる。
- 2002年(平成14年)
- ボトルネック踏切の解消と市街地分断の解消の推進に向けた鉄道事業者の立替制度および道路開発資金の貸付制度が始まる。
- 連続立体交差関連公共施設整備事業が始まる。
- 2005年(平成17年) 連続立体交差事業の施行者に、県庁所在都市ならびにそれに準ずる都市(人口が20万人以上の都市と東京都の特別区)が追加される。
- 2006年(平成18年) 連続立体交差化工事に係る無利子貸付制度が創設される。(踏切道改良促進法の改正にともなうもの)
出典:「街路交通事業事務必携」 監修:国土交通省都市・地域整備局街路交通施設課。
事業実施箇所
東北・関東地方
- 東日本旅客鉄道
- 京浜急行電鉄
- 小田急電鉄
- 京成電鉄
- 新京成電鉄
- 京王電鉄
- 東武鉄道
- 西武鉄道
- 西武池袋線 桜台駅 - 大泉学園駅間の約7.7 km[20]。うち桜台駅 - 石神井公園駅間と石神井公園駅 - 大泉学園駅間の下り線は完成済み。石神井公園駅 - 大泉学園駅間の上り線は2015年1月25日に高架化予定[21]。2016年度に事業完了予定[22]。
- 西武新宿線 中井駅 - 野方駅間の約2.6 km。2020年度完成予定[23]。
- 西武新宿線・西武国分寺線・西武西武園線 東村山駅周辺の約4.5 km。2024年度完成予定[24][25]。
- 西武拝島線 萩山駅 - 小川駅間の府中街道付近。2012年10月に高架化が完成。側道整備と府中街道の拡幅工事を残すのみとなった。2014年度に事業完了予定[26]。
- 相模鉄道
中部・近畿地方
- 東海旅客鉄道
- 西日本旅客鉄道
- えちぜん鉄道
- 名古屋鉄道
- 阪急電鉄
- 阪神電気鉄道
- 近畿日本鉄道
- 南海電気鉄道
- 南海本線・高師浜線
- 南海本線 石津川駅 - 羽衣駅間の約2.7 km。2027年度完成予定[54]。完成時には、諏訪ノ森駅と浜寺公園駅を高架化、7ヶ所の踏切を撤去する[55]。なお、両駅舎とも登録有形文化財に指定されていることなどから、新駅舎前へ移築し市民憩いの場としての活用することが検討されている[56]。
- 南海本線 羽衣駅 - 高石駅付近の約3.1 kmおよび高師浜線羽衣駅 - 伽羅橋駅間の約1.0 km。2020年度完成予定。完成時には、羽衣駅と高石駅を高架化、13ヶ所の踏切を撤去する[57][58]。
- 南海本線 松ノ浜駅 - 泉大津駅付近の約2.4 km。2012年8月に高架化が完成。両駅の駅舎工事と側道整備を残すのみとなった。2015年度に事業完了予定[59][60]。
- 南海本線・高師浜線
- 京阪電気鉄道
- 山陽電気鉄道