相鉄いずみ野線
いずみ野線(いずみのせん)は、神奈川県横浜市旭区の二俣川駅と神奈川県藤沢市の湘南台駅を結ぶ、相模鉄道の鉄道路線である。
なお、この路線は平塚市までの延伸免許が取得されているが、延伸開業の目処は立っていない(詳細は後述)。
目次
概要[編集]
もともとはこの路線は神奈川東部方面線計画の一部分を構成する区間であり、このうち横浜市西部の区間が1970年代に整備されたのが始まりである。それと同時に沿線に大規模なニュータウンを造成することで建設資金の回収を期待した。
同じような成り立ちを持つ路線には東京急行電鉄の田園都市線や古くは阪急電鉄の宝塚線といったものがあり、本路線沿線も典型的な私鉄による街づくりの一例が垣間見られるものとなっている。また、当時相模鉄道が東京急行電鉄に敵対的買収を仕掛けられたことから、特に田園都市線に対しては対抗意識を持っていたという逸話がある。要出典
2013年以降の開発方針として、いずみ野線沿線地域(二俣川 - ゆめが丘)は豊かな自然環境や未利用地を活かして新しい街の開発を行うモデル地域に指定されている[1]。
「職住分離」の一端を担うニュータウンアクセス交通に見られるように朝夕のラッシュ時とそれ以外の時間における利用客数の変動が激しいという特徴がある。また建設費償還のため加算運賃が設定されており相鉄本線と比べてやや高いものになっている。詳細は「相模鉄道#運賃」を参照のこと。
路線データ[編集]
沿線風景[編集]
いずみ野線は横浜市西部の丘陵地帯を通過する。とはいっても地形に沿う形ではなく、掘割・トンネルや高架橋を多用して極力勾配を緩和している。また、踏切は一つもなく、軌道は50kg以上の重軌条でロングレールとして敷設されており、現在の認可最高速度は100km/hだが120km/h運転も可能な施設である。
二俣川 - いずみ野[編集]
二俣川駅を発車した列車は徐々に高度を上げながら相鉄本線を跨ぐとすぐに分かれていく。トンネルを抜け、東海道新幹線の下をくぐると南万騎が原駅となる、なお新幹線に駅はない。南万騎が原を出るとすぐにトンネルに入る。このトンネル区間は当初掘割区間として開通したが、後に埋め戻されたという経緯がある。トンネルを抜けると高架橋になりすぐに緑園都市駅となる。いずみ野線の駅名にはいかにもニュータウンを思わせる駅名が多く、特に当駅周辺は開発が進んだ地区になっている。緑園都市を出ると再びトンネルに入る。高架橋で阿久和川を越え掘割区間に入ると弥生台駅である。掘割だが法面の傾斜は緩く「ソメイヨシノ」が植えられており、春には桜のトンネルの様相を呈す。弥生台を出るとすぐにトンネルに入り掘割の中のいずみ野駅となる。ここまでが第1期開業区間である。
いずみ野 - 湘南台[編集]
いずみ野を出ると今までと打って変わって高架橋の連続区間になる。和泉川を渡った列車はこの川に沿うように谷沿いを走る。辺りは畑や雑木林が広がっており、天気が良いと右手に富士山が見えることもある。長後街道を渡るとすぐに高架駅のいずみ中央駅に到着する。いずみ中央を出た列車は和泉川と分かれ再び丘陵地帯に入って行く。アーチ橋の一種、ニールセン・ローゼ橋で環状4号を跨ぐとゆめが丘駅である。近くに横浜市営地下鉄ブルーラインの下飯田駅がある。ゆめが丘を出た列車はこのブルーラインと並走するようになり、境川を渡った直後に谷の斜面に突入する。そのままトンネルを走行し続けて、地下駅の湘南台駅となる。
運行形態[編集]
列車種別と運行本数[編集]
いずみ野線を走る列車種別は従来は「各停」だけであったが、1999年に速達列車として「快速」が新設され(いずみ野線内は各駅に停車)、さらに2014年「特急」がいずみ野線内で初めて速達運転する種別として新設された[2]。
ニュータウンを抱えるいずみ野線は横浜中心部や都心部への指向性が強いので、ダイヤ構成も本線との繋がりが強く、多くの列車が二俣川駅から本線に乗り入れて横浜駅まで向かうものになっている。なお、本線の大和・海老名方面への直通運転は二俣川駅の配線の関係で留置線での折り返しが必要なために、普段は回送列車を除き行われていない。
使用車両は10両編成か8両編成かということで大別され、各形式による限定運用は無い。基本的に特急は8両編成、快速・各停は10両編成が多く一部が8両編成で運行される。
二俣川駅からいずみ野線へ向かう列車(下り列車)のうち行き先表示が幕である車両のうち、側面に行先表示を出せない(7000系電車)では、その種別表示の下に"いずみ野線"と表記される。開業から2014年までにおいては、各駅停車表記は通常(当時)の「白地黒文字」ではなく「青地白文字」で各停と表示されていた。湘南台開業前は「各停」の下に「いずみ野」・「いずみ中央」という文字が付け加えられていた。なお上り列車は当初から本線各停と共通の表記である。
特急[編集]
英語表記は「Limited Express」。2014年4月27日に新設された種別で[2]、本線の横浜駅 - 二俣川駅間をノンストップ、いずみ野線内はいずみ野駅のみ停車することで速達性を確保。全列車が本線と直通運転を行う。横浜駅 - 湘南台駅の所要時間は約24分である。日中に上下各毎時2本運転で、すべて8両編成で運転されている(土休日は10両編成)。
ただし改正前の快速と比べて本数が減少し、いずみ野・湘南台以外の各駅からは日中の横浜直通速達列車が消滅した[3]。さらに、いずみ野駅での緩急接続がない、いずみ野駅よりも日平均乗降人数の多いいずみ中央・弥生台・緑園都市の各駅に停車しないなど、路線利用実態や既存利用客に対する利便性が考慮されているとはいい難いダイヤとなっている。
快速[編集]
英語表記は「Rapid」。1999年2月27日に同年3月10日のいずみ中央駅 - 湘南台駅間開業に先立って新設され[4]、本線の横浜駅 - 二俣川駅で一部の駅を通過することにより速達性を確保し、いずみ野線内は各駅に停車する種別である。いずみ野線に乗り入れる快速は全列車が本線と直通運転を行い、横浜駅 - 二俣川駅 - 湘南台駅の区間で運転されている。横浜駅 - 湘南台駅の所要時間は約30分である。
2014年4月27日改正現在、いずみ野線に入る快速は夕ラッシュ時と土休日朝のみの運転となっており、二俣川駅と星川駅で各駅停車に接続する。
設定当初は朝ラッシュ時と日中のみで、日中はすべての「各停」を置き換えて12分おきに運転されていたが、やがて10分おきに増発となった。2006年のダイヤ改正では1日の本数はほぼ据え置くものの、運転を20分おきにとしたために運転時間が大幅に拡大され、早朝深夜をのぞくほぼ終日(土曜休日は夕方過ぎまで)の運転となっている。また2012年のダイヤ改正で西谷駅の待避線使用が不可になったため平日朝の運行が休止された。
各停(各駅停車)[編集]
英語表記は「Local」。各停は各駅停車の略称でその名の通り各駅に停車する。種別幕や路線図などでは「各停」と表記されることが多いが、駅や車内の案内放送などでは「各駅停車」と放送することが多い。多くの列車が本線と直通運転を行うが、早朝・深夜・および日中特急運転時間帯の一部に線内のみの列車がある。
早朝深夜と平日朝ラッシュ時を除き、二俣川駅で本線の「急行」に接続することで横浜方面への速達性を確保している。全区間「各停」に乗った際の日中の横浜駅 - 湘南台駅の所要時間は約40分(接続待ちを含む)である。二俣川駅 - 湘南台駅は同約17分である。
開業当初は日中は20分おきでそのうち半数のみが本線に乗り入れて横浜駅まで達していた。その後何度か増発がなされたものの、1999年2月に「快速」が設定されると日中の全ての列車が同種別に置き換わり、同時間帯の本種別は消滅した。しかし2006年5月ダイヤ改正では日中の「快速」が減便されたため、その補完として再び設定されて現在に至る。2013年現在は朝ラッシュ時には約5分間隔、日中は1時間に6本運転されている。うち2本が二俣川駅 - 湘南台駅の運行、残り4本が横浜駅 - 湘南台駅の運行である。
なお、二俣川駅からいずみ野線へ向かう列車(下り列車)のうち行き先表示が幕である車両は「各停」幕が本線海老名方面へ向かう各停との乗り間違いを防ぐ目的で「青地白文字」で各停と表示されている。これは相鉄の一部の古い車両(7000系電車)では車体側面に「行き先の駅名」の表示が出来ないための配慮である。湘南台開業前は「各停」の下に「いずみ野」・「いずみ中央」という文字が付け加えられていた。なお上り列車はすべて白地黒文字で本線各停と共通である。
歴史[編集]
- 1976年(昭和51年)4月8日 二俣川 - いずみ野間開業。
- 1990年(平成2年)4月4日 いずみ野 - いずみ中央間開業。
- 1999年(平成11年)
- 2014年(平成26年)4月27日 特急の運転を開始。
女性専用車[編集]
平日ダイヤの下記の時間帯において女性専用車が実施される。設定車両は横浜寄りから数えて4両目となる。
- 朝ラッシュ時間帯の7時30分から9時30分までに横浜駅に到着する上り全列車
- 横浜駅を18時以降に発車する下り全列車
平日日中および土休日ダイヤでは、女性専用車の設定は行われない。
いずみ野線の女性専用車は、本線とともに2005年5月9日に初めて導入された。導入当初、夜間の設定は「横浜駅を22時以降に発車する下り全列車」となっていたが、同年12月5日からは18時開始に設定時間帯が拡大された[5]。
駅一覧[編集]
駅番号 | 駅名 | 駅間キロ | 累計キロ | 特急 | 接続路線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
二俣川から | 横浜から | ||||||
SO10 | 二俣川駅 | - | 0.0 | 10.5 | ● | 相模鉄道:本線(横浜方面直通運転) | 横浜市 旭区 |
SO31 | 南万騎が原駅 | 1.6 | 1.6 | 12.1 | | | ||
SO32 | 緑園都市駅 | 1.5 | 3.1 | 13.6 | | | 横浜市 泉区 | |
SO33 | 弥生台駅 | 1.8 | 4.9 | 15.4 | | | ||
SO34 | いずみ野駅 | 1.1 | 6.0 | 16.5 | ● | ||
SO35 | いずみ中央駅 | 2.2 | 8.2 | 18.7 | | | ||
SO36 | ゆめが丘駅 | 1.1 | 9.3 | 19.8 | | | ||
SO37 | 湘南台駅 | 2.0 | 11.3 | 21.8 | ● | 小田急電鉄:江ノ島線 (OE09) 横浜市営地下鉄: ブルーライン (B01) |
藤沢市 |
- 緩急接続可能な駅
- 二俣川駅・いずみ野駅
今後の展望[編集]
平塚方面への延伸計画[編集]
いずみ野線は起工された当初から運輸政策審議会の答申により平塚方面への免許を取得しており、当初の計画では湘南台駅から慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスを経て茅ヶ崎市北部を通過し平塚駅へと向かう予定となっている。しかし、相模線倉見駅に東海道新幹線の新駅(相模新駅)が建設される計画が持ち上がったことから、経路を変更するか分岐線を設け、途中から寒川町に向かって倉見駅(ツインシティ構想地区)まで結ぶ構想が浮上した。また、2004年度には神奈川県や沿線市町、国土交通省、学識経験者、相模鉄道から成る「いずみ野線延伸研究会」が組織され、倉見駅方面への延伸の可能性について、LRT(ライトレール)導入も含めた検討が3箇年にわたり進められてきた[7]。
現在、相模鉄道が東日本旅客鉄道(JR東日本)および東京急行電鉄(東急)との相互乗り入れ計画が進行しており、その乗り入れ経路のうち東急直通線についてはいずみ野線も含まれている運輸政策審議会の神奈川東部方面線とほぼ重なることから、今後の路線整備や延長計画に大きな影響を及ぼすことも考えられるため、協議の進展が注目されている。
2009年には前述の平塚方面への延伸免許が切れることから、10年間の延長(免許更新)が行われている。
2010年6月に、神奈川県、藤沢市、相模鉄道、学校法人慶應義塾の4者で、「いずみ野線延伸の実現に向けた検討会」を設置し、2年間にわたる検討の結果、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス周辺までの区間 (3.3km) について、LRTではなく鉄道(単線)による延伸を目指すという方針が選定されている[8]。
脚注[編集]
- ↑ 再開発に向け市が素案 ゆめが丘駅周辺 都市計画決定など(タウンニュース泉区版 2013年9月12日号)
- ↑ 2.0 2.1 4月27日(日)、相鉄線のダイヤ改正を実施PDF - 相模鉄道、2014年3月10日、同日閲覧
- ↑ この影響で、例えば横浜駅から緑園都市駅まで行く場合、改正前の快速では乗り換えなしで所要時間18分だったものが、改正後は二俣川駅乗り換えで19分(しかも二俣川駅での乗り換えに3分要している)と伸びてしまっており、特急新設による恩恵が得られていない。とはいえ、ダイヤ改正前の快速は毎時3本(土休日は2本)、ダイヤ改正後の特急は毎時4本(特急海老名行きは先発の各停湘南台行き、特急湘南台行きは始発の各停湘南台行きに二俣川で接続)なので、本数でいえば増発されている。
- ↑ 設定日から1999年3月9日までの11日間のみ横浜駅 - いずみ中央駅の運転であった。
- ↑ 相鉄線「女性専用車」の運行時間を午後6時からに拡大PDF - 相模鉄道、2005年12月11日。
- ↑ 相鉄線全駅で「駅ナンバリング」を順次導入しますPDF - 相模鉄道、2014年2月25日。
- ↑ 2007年5月23日神奈川県記者発表。
- ↑ “「いずみ野線延伸の実現に向けた検討会」における検討結果がまとまりました”. 神奈川県 (2012年6月11日). 2013年9月30日閲覧。
参考文献[編集]
- 佐藤信之「鉄道・軌道プロジェクトの事例研究 7 相模鉄道いずみ野線について」
- 鉄道ジャーナル社『鉄道ジャーナル』2002年3月号 No.425 p146-p147