日本の国立公園
日本の国立公園では、日本における国立公園について記述する。
日本における狭義の国立公園は、自然公園法に基づき、日本を代表する自然の風景地を保護し利用の促進を図る目的で、環境大臣が指定する自然公園のひとつである。国定公園が都道府県に管理を委託されるのに対し、国立公園は国(環境省)自らが管理する。日本の国立公園の面積の約60%が国有地である[1]。
目次
歴史[編集]
日本では1931年に自然公園法の前身である国立公園法が施行され、1934年3月16日に瀬戸内海国立公園、雲仙国立公園、霧島国立公園の3か所が最初の指定を受けた。また戦前の台湾と朝鮮でも国立公園指定の動きがあり、実際、1937年12月27日に台湾の大屯山、新高阿里山、次高タロコの3箇所が日本の国立公園に設定された経緯がある。
2014年3月5日までに34箇所の国立公園が指定されてきたが、前記の台湾の3箇所の国立公園が日本の統治権放棄により消滅したために、現在は31箇所の国立公園が存在している。
最近の動向[編集]
2007年8月1日、西表国立公園の区域を拡大し沖縄県石垣島の一部を編入し、同国立公園の名称を西表石垣国立公園に変更した。これは、1964年の富士箱根伊豆国立公園以来43年ぶりの大規模な拡張である。この拡張により、新空港問題などで有名となった白保地区等が海中公園地区に指定され、同国立公園の海中公園の面積は日本の国立公園中で最大となった。
また、同年8月30日に日光国立公園から尾瀬地域を分離し、周囲を新たに編入する形で尾瀬国立公園が新設された。これは釧路湿原国立公園以来20年ぶりの国立公園の新設である。
2010年11月に環境省が霧島屋久国立公園を霧島地域と屋久島地域に分割して別々の国立公園とする方針を決め[2]、2011年12月22日には同省の中央環境審議会自然環境部会が答申した[3]。霧島地域は現在の霧島山・錦江湾地域に加えて姶良カルデラ地域を加え「霧島錦江湾国立公園」と名称を変更し、独立する屋久島地域は屋久島国立公園となる。2012年3月16日、正式に両国立公園が指定されて官報への公示が行われ、両国立公園が発足した。
2011年5月には環境省は東日本大震災の復興の支援と震災の様子を後世に伝えることを目的に、陸中海岸国立公園と南三陸金華山国定公園に1つの青森県立自然公園[4]、3つの宮城県立自然公園[5]を加えて(仮称)三陸復興国立公園に再編する構想を明らかにし[6]、2013年5月24日に、ひとまず、青森県の種差海岸階上岳県立自然公園を編入して三陸復興国立公園に改称した。2014年中に南三陸金華山国定公園の編入を行うことが検討されている。
2014年3月5日には沖縄県の慶良間諸島周辺が沖縄海岸国定公園から削除されるとともに新たに区域を指定され、新設の慶良間諸島国立公園となった。国立公園の新規指定は屋久島国立公園以来であるが、屋久島国立公園やその前に指定された尾瀬国立公園はその多くの地域が既に既存国立公園に指定されており、事実上の分離指定である。完全な新設国立公園の誕生は1987年の釧路湿原国立公園以来27年ぶりとなる。
国立公園の区分[編集]
日本の国立公園・国定公園の保護区分は、大きく分けて次の4つがある。
- 普通地域
- 制限は最小限だが、基準を超える工作物の建築、広告の表示、土石の採取、地形の変更などには届出が必要。
- 特別地域
- 風致の維持に重要な地域が指定され、その重要度により第一種から第三種までの区分がある。
普通地域で届出が必要な行為に加え、指定動植物の採取や損傷、建物の色の塗り替え、自動車や船の乗り入れなどに「許可」が必要になる。また、本来の生息地でない動物を放すこと、本来の生育地でない植物を植栽したり、その種子をまくことにも「許可」が必要になる。
- 風致の維持に重要な地域が指定され、その重要度により第一種から第三種までの区分がある。
- 特別保護地区
- 特別地域内でも特に重要な地区。特別地域で許可が必要な行為に加え、全ての動植物の捕獲・採取(落葉や枯れ枝も含む)・損傷をすること、植物を植栽し、またはその種子をまくこと、動物を放つこと(家畜の放牧を含む)、たき火をすることなどに許可が必要となる。ただし学術目的や地域住民の生活に必要な行為・各自治体等でなければ許可されることはほとんどなく、実質的に「禁止」と考えてよい。また、これらの地域では盗掘を防ぐため、植生などのマップの公開を禁止される場合や立ち入りが一部禁止される場合もある。
- 海域公園地区
- 海域の地形や生物の景観の優れた場所で、指定動植物の採取、地形変更、汚水の排出などに許可が必要。1970年の自然公園法改正で「海中公園」として誕生し、2010年に「海域公園」と改正された。
日本の国立公園一覧[編集]
現存する国立公園[編集]
- 環境省北海道地方環境事務所管内
- 環境省東北地方環境事務所管内
- 十和田八幡平国立公園(十和田国立公園として1936年2月1日指定)
- 磐梯朝日国立公園(1950年9月5日指定)
- 三陸復興国立公園(陸中海岸国立公園として1955年5月2日指定・2013年5月24日に青森県部分を追加して改称)
- 環境省関東地方環境事務所管内
- 日光国立公園(1934年12月4日指定)
- 富士箱根伊豆国立公園(富士箱根国立公園として1936年2月1日指定)
- 秩父多摩甲斐国立公園(秩父多摩国立公園として1950年12月4日指定)
- 南アルプス国立公園(1964年6月1日指定)
- 小笠原国立公園(1972年10月16日指定)
- 尾瀬国立公園(2007年8月30日指定・日光国立公園から尾瀬地域を分離)
- 環境省中部地方環境事務所管内
- 環境省近畿地方環境事務所管内
- 環境省中国四国地方環境事務所管内
- 環境省九州地方環境事務所管内
- 雲仙天草国立公園(雲仙国立公園として1934年3月16日指定)
- 霧島錦江湾国立公園(霧島国立公園として1934年3月16日指定・その後「霧島屋久国立公園」となり2012年3月16日に屋久島国立公園の分離等を行い名称及び区域変更)
- 阿蘇くじゅう国立公園(阿蘇国立公園として1934年12月4日指定)
- 西海国立公園(1955年3月16日指定)
- 西表石垣国立公園(西表国立公園として1972年5月15日指定・西表政府立公園を移管)
- 屋久島国立公園(2012年3月16日指定・霧島屋久国立公園から屋久島地域を分離)
- 慶良間諸島国立公園(2014年3月5日指定[7]・沖縄海岸国定公園から慶良間諸島地域を分離して国立公園に昇格)
- 近畿‧中国四国‧九州共同
- 瀬戸内海国立公園(1934年3月16日指定)
日本統治時代の台湾にかつて存在した国立公園[編集]
国立公園の利用[編集]
国立公園は自然公園法に基づき、その地域の自然や景観などの保護を目的とするものであって、その地域を観光地とすることを目的としているわけではない。
国立公園は自然公園法に基づき環境省が整備を進め、公園内に公園利用拠点である集団施設地区を指定し、国民休暇村や、環境に配慮したハイキングコースや自然遊歩道、自然観察などを目的としたビジターセンター、エコミュージアムセンター、キャンプ場などが整備されている。公園内の特別保護地区との規制とメリハリをつけ、国立公園の保護と利用の調整が行われている。これらを観光資源とし、公園地区外に宿泊施設などを整備することにより、観光地として整備されている場合が多い。
なお、一部の国立公園の特別保護地区の中には、宮内庁や神宮司庁が管理する区域がある。これらの多くは神域として管理されているものであり、管理者もしくはそれらから委託された者以外の入山などの立ち入り行為自体が禁止され、事実上、環境省の特別保護地区同様の規制が加えられている。また、その周囲のほとんどは環境省によって保護されている。
脚注[編集]
- ↑ 『ようこそ国立公園へ』(環境省)
- ↑ 朝日新聞-「霧島」「屋久島」を分割へ=国立公園、計30に―環境省
- ↑ 朝日新聞-「世界遺産の屋久島「独立」へ 霧島屋久国立公園から
- ↑ 種差海岸階上岳県立自然公園
- ↑ 県立自然公園気仙沼・硯上山万石浦県立自然公園・県立自然公園松島
- ↑ 岩手日報-「三陸復興国立公園」を構想 沿岸6自然公園再編へ
- ↑ 慶良間諸島国立公園が誕生 きょう指定 - 沖縄タイムス(2014年3月5日付、同日閲覧)
外部リンク[編集]
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