音楽
音楽(おんがく)とは、川の流れなどで生じるランダムな音(これを音響学では雑音という)以外の、時間的に規則性がある・周波数に規則性があるなど、ランダムさが低い特性をもち、かつ人間が楽しむことのできる音のことをさす。またこのような特性をもつ音を様々な方法で発したり、聴いたり、想像したり、それに合わせて体を動かしたりして楽しむ行為のことも音楽という。
漢語で「楽(ガク)」は「謔」(ふざける)や「嗷」(大胆にうそぶく)などと発音が似ているため、楽しむという概念に当てられるようになった語で、既に『呂氏春秋』には「音楽」の用例がみられる。
- 音楽の由来するものは遠し、度量に於いて生じ、太一に於いて本づく 呂氏春秋・大楽
さらに音を楽しむところから派生して楽しむの意もできた。また、類似語の楽音は、音楽用語で「規則性のある振動のうち、純音ではないもの」をさし、騒音(噪音)の反対概念である。
美学では人為的な音楽は音による時間の表現である。
目次
音楽の要素 定義[編集]
音には基本周波数(音の高さ)、含まれる周波数(音色、和音など)、大きさ、周期性(リズム)、音源の方向などの要素がある。そのうち、いわゆる西洋音楽の世界では、一般に音楽はリズム、メロディー、ハーモニーの三要素からなると考えられている。実際の楽曲では、それぞれが密接に結びついているので一つだけを明確に取り出せるわけではない。また、音楽であるために三要素が絶対必要という意味ではない。たとえば西洋音楽以外ではハーモニーは存在しないか希薄である事が多いし、逆に一部の要素が西洋音楽の常識ではありえないほど高度な進化を遂げた音楽も存在する。
このように、これら三要素の考え方は決して完全とは言えないが、音楽を理解したり習得しようとする時に実際に用いられ効果をあげている。
- 音楽の定義も参照のこと。
音楽と脳[編集]
音楽を、単なる「音」ではなく、また「言語」でもなく、「音楽」として認識する脳のメカニズムは、まだ詳しく分かっていない。それどころか、ヒトが周囲の雑多な音の中からどうやって声や音を分離して聞き分けているのかなど、聴覚認知の基本的なしくみすら未解明なことが多い。しかし、音楽と脳の関係について、以下のようないくつかの点は分かっている。
- 音楽に関係する脳:側頭葉を電気刺激すると音楽を体験するなどの報告から、一次聴覚野を含む側頭葉が関係していることは確かである。
- 音楽とくにリズムと、身体を動かすことは関連している。
- 幼い頃から練習を始めた音楽家は、非音楽家とくらべて大脳の左右半球を結ぶ連絡路である「脳梁」の前部が大きい(Schlaugら、1995)。楽器の演奏に必要な両手の協調運動や、リズム・和音・情感・楽譜の視覚刺激などといった様々な情報を左右の皮質の各部位で処理し、密接に左右連絡しあうことが関係している可能性がある。
- 絶対音感:聴いた音の音階、基準になる音との比較なしに、努力せずに識別できる能力のことで、9~12歳程度を超えると身に付ける事ができないといわれている。アジア系の人には絶対音感の持ち主が多いと言われているが、これが遺伝的、文化的要因のいずれによるのかははっきりしない。また、絶対音感を持っている人と持っていない人では、音高を判断しているときに血流が増加する脳の部位が異なる。持っていない人では、音高を短期記憶として覚えることに関係する右前頭前野の活性が強いのに対し、持っている人では記憶との照合をする、背外側前頭前野の活性が強かったという。また絶対音感保持者では側頭葉の左右非対称(左>右)が強いという(Zattoreら、2003)。
- 音楽と数学の関係:中世ヨーロッパで一般教養として体系化された「自由七科」では、音楽は数学的な学問の一つとして数えられている。また、子供に音楽の練習をさせると数学の成績が伸びたという報告(Rauscherら、1997)もあり、音楽と数学の関連性を示唆する。
音楽の種類(ジャンル)[編集]
古来音楽は多くの社会で娯楽、宗教、儀式などを通じ生活に密接したものになっており多くの特徴ある形式や様式を生み出してきた。レコードが流通するようになって音楽家はすばやく色々な音楽を学べるようになった。 それによる創造的試みの結果、音楽は加速度的に分化されていった。 結果、広告用の単なるコピーにすぎないジャンル(名)も氾濫するが、音楽的に大きな影響力を保ち続けるジャンルもある。
ジャンルとは文化と歴史の裏づけがある固有の音楽形式である。多くの場合、現代の音楽は様々なジャンルの複雑な合成になっている。音楽のジャンルは現在、聞くことの出来る音楽の分類であると同時に、発生した源の手がかりとなっている。
音楽のジャンル一覧も参照のこと。
音楽家(作曲家と演奏家)[編集]
古来、音楽をつくる人と演奏する人は同じだった。継承された曲を演奏するとしても、作曲家と演奏家を分ける必要は無かった。民謡は本来、作曲者不詳の自然発生的な音楽であった。
西洋音楽が宗教音楽から宮廷音楽と進むにつれ、支配者層の庇護のもと権威付けの意味から格付けが行なわれた。実際面では、楽器の進化と要求される演奏技術の高度化、多数の楽器の使用、音量を増すための多人数化などから分業化の必要があった。
レコードの流通が進みポピュラー音楽では販売枚数という経済的指標が最優先になる。工業生産品となった音楽は製作のための初期投資がかかるため、リスク回避のために作曲家と演奏家の分業化がすみやかに定着した。
日本においては、平安時代に音楽 (雅楽)の専門として芝、東儀、豊の三家が制定され、世襲により現在まで続いている。また鎌倉時代には視覚障害者保護のため「検校」の官位が生まれ、後に当道座が整備されて、それに属する盲人は専門家として平曲 (平家琵琶) 、江戸時代にはそれに加えて三曲 (地歌三味線、箏曲、胡弓) の占有が認められた (鍼灸、按摩も含む)。これが盲人音楽家の地位を保証し、近世邦楽の発展を支えることになる。その他、室町時代から能楽は武家の式楽として、能楽師たちは身分を保障されていた。江戸時代には浄瑠璃など、専門家の権威付けとして、芸道を管轄する役所「嵯峨御所」に届け出、認可されると家元として一派を構えることができた。また演奏家の優劣を評する「番付」がしばしば発行された。一派を立てるには、みずから作曲して独自性を示すことが求められるが、日本の音楽においても演奏家は作曲家を兼ねていた。
作曲家と演奏家の区分けは明確なものではない。音楽家の得意分野、または社会的に認知された業績に準じて付けられた分類といえる。
ミュージシャン一覧も参照。
音楽都市[編集]
大衆化と音楽産業[編集]
優れた音楽を作り演奏するのに、理論的裏づけを持つ高度な訓練や教育は必然ではない。民衆は厳格な伝統的価値観や枠組みにとらわれない新しい響きや歌詞を支持する。そうした需要に対し、レコード録音・販売・放送を行う企業が音楽コンテンツを供給し、これにより、商業ベースに乗った音楽が、地理的な隔絶を乗り越えて全世界に普及することとなった。「先進国」で生まれた音楽・音楽家は、それらの国を規範として発展を目指す多くの国で、広く受容されることが多い。
再生音楽[編集]
音楽は生演奏だけでなく、レコード音楽(CDやビデオ化されたものを含む)を通じて楽しむことができる。音楽を聴く頻度、機会はCDや放送などの音楽記録媒体を通じて行う場合が多くなっている。その結果、レコード音楽への露出の多い作品や分野に人気があつまり、あまり取り上げられないジャンルや演奏家はかえりみられないといった弊害もある。
近年、音楽圧縮技術を取り入れた、インターネットによる音楽配信やシリコンオーディオ再生機器によって利便性を追求する方向の発展が著しい。
録音技術[編集]
エジソンが発明した蝋菅録音機、レコードの普及につれて録音技術は発達し、より優れた録音や便利になった記録媒体・再生機器によりさらなるレコードの普及を加速するという相乗効果を生んできた。
1960年代、録音機器、シンセサイザーの普及がポピュラー音楽の製作手法を根本的に変えた。1990年代はデジタルレコーディングが普及し加工された音楽の技術的な可能性が広がった。
関連項目[編集]
演奏[編集]
演奏の項も参照のこと.
編成[編集]
楽器の編成は演奏する音楽のジャンルによってある程度左右される。
関連項目[編集]
学術的な音楽の研究[編集]
その他[編集]
参考文献[編集]
- Rauscher FH, Shaw GL, Levine LJ et al.: Music training causes long-term enhancement of preschool children's spatial-temporal reasoning. Neurol Res. 2-8, 19, 1997.
- Schlaug G, Jancke L, Huang Y et al.: Increased corpus callosum size in musicians. Neuropsychologia. 1047-1055, 33, 1995.
- Zattore R.: Absolute pitch: a model for understanding the influence of genes and development on neural and cognitive function. Nature Neuroscience. 692-695, 6, 2003
書籍[編集]
- 近藤譲 『“音楽”という謎』春秋社 ISBN 4393934857
- 岩田誠 『脳と音楽』メディカルレビュー社 ISBN 4896003764
- 谷口高士 『音は心の中で音楽になる―音楽心理学への招待』北大路書房 ISBN 476282173X
- リタ アイエロ 編 大串健吾 訳『音楽の認知心理学』誠信書房 ISBN 4414302838
外部リンク[編集]
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