名古屋臨海高速鉄道

提供: Yourpedia
移動: 案内検索

名古屋臨海高速鉄道株式会社(なごやりんかいこうそくてつどう)は、愛知県名古屋市港区十一屋一丁目46番に本社を置き、同市で鉄道路線(西名古屋港線、通称あおなみ線)を経営する第三セクター鉄道事業者である。名古屋市の外郭団体(住宅都市局所管)[1]

名古屋市港区南部の旅客鉄道空白地帯を解消するため、西臨港貨物線(西名古屋港線)を旅客線化して「あおなみ線」と愛称を付け、第一種鉄道事業者として営業している。鉄道事業では社名に代わり「あおなみ線」の名で旅客案内を統一している。また、同時に貨物線として第二種鉄道事業を行う日本貨物鉄道(JR貨物)に施設を貸与している。2011年に事実上経営破綻しているが、県と市によって、440億円の公的資金を投入して事業再建計画中である(「開業後の動向」節も参照)。

出資団体・企業[編集]

3団体と16企業が出資している。筆頭株主は名古屋市で、半数を超える76.9%の株式を保有している。他に愛知県の保有率が12.6%で、市・県だけで約90%を占めており、公的資本の比率がきわめて高い。県に続いて東海旅客鉄道(JR東海)が3.25%で、民間筆頭となっている。後述の事業再生ADRによる減資等により出資比率が2010年度末に変動したので、市の出資比率が上昇し、JR東海の出資比率が10%から3.25%まで下がった。

市については交通局所管ではなく住宅都市局所管である一方、交通局分掌の市営地下鉄との共通施策も多く、当初あおなみ線が市営地下鉄路線であると間違えられるほどであった。いずれにせよ市とは資本・経営面できわめて密接な関係にある。

一方、経営再建にあたり2010年、代表取締役にJR東海出身者を迎えている[2]。JR東海は、出資比率こそ低いものの名古屋 - 名古屋貨物ターミナル間の鉄道資産を譲渡したり、あおなみ線開業後は電車の検査を神領車両区名古屋工場で受託したり社員を出向させるなどの協力を行っているほか、同社の博物館「リニア・鉄道館」をあおなみ線金城ふ頭駅前に開業させており、事実上の集客支援を行っている。

歴史[編集]

路線[編集]

車両[編集]

運賃[編集]

大人普通旅客運賃(小児半額・10円未満切り上げ)。2004年10月6日現在。名古屋 - 野跡間の沿線住民の通勤・通学客の利用が見込める区間の運賃は名古屋市営地下鉄と同額に設定されている。名古屋市営地下鉄と同様に入場券回数乗車券は発売されていないが、往復乗車券が発売されている。

キロ程 運賃(円)
初乗り3km 200
4 - 7 230
8 - 11 260
12 - 13 290
14 - 15 320
16km 350

320円区間はささしまライブ - 金城ふ頭間のみ、350円区間は名古屋 - 金城ふ頭間のみの適用。

定期乗車券[編集]

  • 当線内で完結する定期券は全駅で購入できる。ただし、「巡回駅」と名付けている係員が常時駐在していない駅で係員が不在だった場合には、改札口備え付けのインターホンで近くの管理駅から係員を呼び出さなければならない。係員は管理駅から自社の営業列車に乗車して来るため、当該列車の発車直後だった場合には20分弱ほど待たされることになる。
  • 名古屋市営地下鉄、名古屋市営バス名古屋鉄道、JR東海との連絡定期券は、当線の駅では発売していない。地下鉄・市バスとの連絡定期券は開業当初は名古屋市営地下鉄の名古屋駅・栄駅金山駅にある名古屋市交通局のサービスセンター3か所のみで発売されていたが、manaca導入後は名古屋市交通局のすべてのサービスセンター並びに一部の駅(上小田井駅・上飯田駅)をのぞく地下鉄各駅の駅長室でも発売されるようになった。名古屋鉄道との連絡定期券は名鉄各駅のみ、JR東海との連絡定期券はJR東海の各駅のみでの発売である。なお、JR東海との連絡定期券はTOICAのみによる発売である。
  • 名古屋市営地下鉄・市営バスとの連絡定期券は割引が適用される。
    • 名古屋臨海高速鉄道と名古屋市営地下鉄との連絡定期券の場合、双方の金額をそれぞれ2割引した金額の合計。
    • 名古屋臨海高速鉄道と名古屋市営バスとの連絡定期券の場合、名古屋市交通局が設定している地下鉄とバスの連絡定期券(割引適用)と原則同額。

manaca利用の場合の乗継割引[編集]

manacaで当線を乗車した場合には、名古屋市営交通との間で以下の乗継割引が適用される。

  • 名古屋市営地下鉄との乗り継ぎの場合は、最初の入場処理時から90分以内に次の入場処理を受けると、大人80円、小児40円の割引。
  • 名古屋市営バスとの乗り継ぎの場合も同様に大人80円、小児40円の割引。

名古屋市発行の敬老パス・福祉特別乗車券[編集]

上記乗車券も名古屋市営地下鉄・バスと同様に当社線全区間で使用できる。

特別乗車券[編集]

2005年3月18日から9月25日までささしまライブ駅前で開催された愛知万博ささしまサテライト会場「デ・ラ・ファンタジア」の利用者向けに、名古屋駅 - ささしまライブ駅間フリー乗車の「名古屋・ささしまライブ1日フリーきっぷ」を発売した。料金は大人300円・子供150円で、乗車券の裏面にはデ・ラ・ファンタジアのパビリオンの一つ「ポケパーク」にちなんで同年7月16日に公開された映画『ポケットモンスター ミュウと波導の勇者ルカリオ』のイラストイメージが描かれていた。なお、これは自動改札機を通すことができず、改札窓口で駅員に見せる仕様になっていたため、名古屋駅とささしまライブ駅でしか販売されていなかった。

開業後の動向[編集]

開業当初の一日利用客数の予想は66,000人であったが、2009年の実績では26,000人程度にとどまっており、予想を大きく下回っている。収入実績は、2006年3月期以降1,708百万円、1,644百万円、1,823百万円、1,876百万円と推移しているのに対し、毎期2,200百万円以上の減価償却費が発生しているため、大幅な営業赤字となっている。支払利息の負担も毎期640百万円以上発生しており、キャッシュ・フローベースでも赤字が継続している。

名古屋市では、総務省のガイドラインに基づき経営が著しく悪化している外郭団体の改革プラン(仮称)を作成することになり、名古屋臨海高速鉄道もこの対象となった。2009年7月より外部の有識者会議を開き、経営改革策の検討を進めていくことになっている。

2010年1月12日の中日新聞の報道によれば、名古屋市は名古屋臨海高速鉄道の経営を抜本的に再建するための支援策を固めた。それによれば、名古屋市は当社への貸付金266億円を株式化し、事実上全額放棄する。愛知県に対しても貸付金39億円の株式化に応じるよう求める。また、当社の日本政策投資銀行からの借入金142億円についても「第3セクター等改革推進債」を名古屋市が発行することによって肩代わりする。また、追加の人件費削減や保有資産の評価額の引き下げも行い、運賃収入で費用を賄える体制を作るとしている。10年後の1日利用客の予想は32,000人としている。沿線にも2011年以降、リニア・鉄道館のオープンやささしまライブ地区への施設開発の進行などにより、乗客は着実に増加している。

2011年7月5日、経営再建に関する複数の報道がなされ[4][5]、翌6日に事業再生ADRを事業再生実務家協会に申請[6][7]し、受理されたことで私的整理による事業再建に着手した。名古屋市などからの金融支援を元に借入金の圧縮を図り、併せて人件費の抑制を行い、経営再建を行うものとしている。

また、2009年より名古屋市長に就任した河村たかしは、あおなみ線で蒸気機関車 (SL) を走らせ当線の活性化を図る構想を発表した。当時、早ければ2012年度から名古屋 - 中島間で試験運行を行う予定とも表明した。その際、必要となる蒸気機関車は西日本旅客鉄道(JR西日本)からC56 160あるいはC57 1のいずれかを借り受ける予定としていた[8]。なお、運行区間が中島までにとどまる理由は、中島以南の新線区間の高架橋が旅客線専用であることを前提として建設されているため軸重の重い蒸気機関車の入線が困難であるため、と説明されている。

2012年11月19日に、2013年2月16・17日の2日間にわたって実験走行をすることが発表され、一般公募者の中から試乗者を募集することも発表された。また市長から検証の上、通年運行を目指す考えが述べられた[9]。2013年2月11日、JR西日本より借り受けたC56形160号機、12系客車3両、DE10形日本貨物鉄道(JR貨物)による甲種輸送として名古屋貨物ターミナル駅に到着。同2月13日・14日の2日間に試運転を行った後、2月16日・17日に特別ヘッドマークをC56 160に取り付け、実際に乗客を乗せての実験走行が行われた。16日の実施に際しては、名古屋市が設定した観覧場所に3600人の観客が詰めかけている[10]。なお、走行実験を行うにあたっては、鉄道事業法上の手続きとして事業基本計画の動力に従来からの「電気」「内燃」に「蒸気」を追加する必要が生じたことから、2013年1月18日付で名古屋 - 荒子(名古屋貨物ターミナル)間の動力追加申請の承認を国土交通省中部運輸局から得ている[11]

表だったトラブルは起きず運行自体は成功に終わったものの、定期運行化の際に問題となる煤煙、汽笛等による騒音など、多くの課題が山積みとなった。東海旅客鉄道(JR東海)はこの問題に加え「(JR東海はSL運転技術を継承しておらず)協力に必要な物も人材も無い」と発言すると共に、市長が同じく提言したSL博物館に関しても「我が社はリニア・鉄道館で精一杯なので、そちらに専念させて頂きたい」として、市長のSL構想に対して協力する意向が無いことを定例会見で表明している [12]

脚注[編集]

  1. 名古屋市住宅都市局
  2. 名古屋臨海高速鉄道:経営再建中、新社長に初の民間出身者経営、毎日新聞、2010年10月16日 1:56:00
  3. ICカード乗車券の名称とデザインを決定しました - 名古屋鉄道ニュースリリース 2010年4月16日
  4. 名古屋の「あおなみ線」が経営破綻[リンク切れ] - 日テレNEWS24
  5. あおなみ線 金融支援で再建へ[リンク切れ] - NHK名古屋放送局
  6. 最新記事・速報 - 東京商工リサーチ
  7. 名古屋臨海高速鉄道(あおなみ線)の事業再生ADR申請にあたってPDF  - 名古屋臨海高速鉄道Webサイト
  8. あおなみ線でSL運行へ 名古屋市[リンク切れ] - 日テレNEWS24、2012年1月6日
  9. あおなみ線でSLに乗ろう 名古屋市、来年2月実験走行 - 朝日新聞デジタル、2012年11月22日
  10. ビル街に「昭和の雄姿」 名古屋でSL実験走行 CHUNICHI WEB 中日新聞社 2013年2月16日 2013年2月16日閲覧 および2013年2月16日付中日新聞夕刊第1面・第13面。
  11. あおなみ線SL列車運行を中部運輸局が認可 草町義和 レスポンス 2013年1月30日 2013年2月16日閲覧
  12. 名古屋のSL実験走行 観覧場所を設置 CHUNICHI WEB 中日新聞社 2013年2月15日 2013年2月19日閲覧

関連項目[編集]

外部リンク[編集]