医学
医学(いがく)は、生体の構造や生理機能についての探求や、疾病の性状、原因について調査し、その診断、治療、検査、予防等についての研究診療を行う学問である。
欧米では、医学を応用科学に含めるのが一般的だが、日本では日本十進分類法に見られるように自然科学に含めるのが一般的である。他の自然科学と同様に絶対的な正解のない(反証可能性を有する)学問であるが、フロイトの精神分析のように反証可能性のない分野もある。
目次
歴史[編集]
日本では、西洋的な実証主義に基づく医学を「西洋医学」、伝統中国医学の知識に基づく医学を「東洋医学」とも呼ぶ。医学と医療の年表も参照。
西洋医学[編集]
西洋において「医」の起源は古代ギリシアのヒポクラテスとされている。その後古代ローマのガレノスがアリストテレスの哲学(学問の集大成)を踏まえ、それまでの医療知識をまとめ、学問としての医学が確立されたと言われている。ガレノスはその後、数百年ものあいだ権威とされた。
中世では、外科はキリスト教徒の職業とはみなされていなかった。病気は神の恵みであり、医療は神への冒涜とされた。当時は理容師(英Barber surgeon:理容外科医とも言われた。)によって外科手術が行われていて、これは学術的な医学が発達するまで広く行われていた。 ルネッサンス期に人体に対し実証的な研究がはじまり、それまでの医学上の人体知識は否定されていった。
日本では安土桃山時代に本格的な西洋医学が伝えられ始めたといわれていが幕末に蘭学とともに西洋医学書の翻訳などが行なわれ、明治維新後に漢方医学を廃し西洋医学を医学とした。
近年では、より厳密な実証を求めるエビデンスに基づく医療が提唱され、次第に医学界に浸透しつつある。
東洋医学[編集]
東洋で「医」の象徴とされているのは一般に薬師如来が知られているように、元々漢方等の薬を扱っていた者によって医は行われていった。古代中国では「医」は主に道士や法師等によって伝統中国医学として発展していった。
日本でも古代より「医」は巫女、陰陽師、僧侶によって中国から伝えられた呪術、医療が行われていた。室町時代以降は中国大陸との交易も盛んとなり、漢方が積極的に伝わっていった。江戸時代以降は、日本は独自の漢方医学を発展させ、薬学である本草学を中心に診療が行われていった。華岡青洲によって記録上世界最初となる麻酔による乳癌手術が行われたりした。また、幕末には国学の影響を受けて漢方伝来以前の医学(「和方」)を探求する動きも現われた。
現在は中華人民共和国に中医学、朝鮮民主主義人民共和国では東医学、大韓民国では韓医学として実践されている。
分野[編集]
研究や教育のための知識体系としての医学は、伝統的に次のように分類されている。大学医学部の組織においても、研究・教育のための人員の配置がこの分類に沿って行われる場合が多い。最近は、名称が多様化しているが、実質は、下記の分類とさほど変わりがない場合が多い。
基礎医学[編集]
人体の構造・機能、疾患とその原因など医学研究の根拠となる知見を得るための学問分野である。これらの科目は医学部、薬学部等医療系学部以外に一部の大学では生物学科でも開講している。
社会医学[編集]
社会医学とは社会的な環境と健康について研究する医学領域。
臨床医学[編集]
診断や治療などに直接関連する応用的な研究分野である。
- 臓器別分類
- 解剖学的分類
- ライフステージによる分類
- 手法による分類
- 疾病による分類
関連分野[編集]
医学に関連する分野には以下のようなものがある。
歯科学-薬学-看護学-心理学-健康心理学-臨床心理学-生体機能代行装置学-作業療法学-理学療法学-性科学-抗老化医学-熱帯医学-医用生体工学-医療機器-医学教育-医学史(医史学)-生命倫理学-医療人類学-病跡学-医療社会学-医療経済学-宇宙医学
- 代替医学・伝統医学
- しばしば実証性に乏しいが - 西洋医学と異なる独自の理論・治療体系をもつ医学分野。国によっては医療制度に組み込まれ - 大学などで研究・教育が行われている。
論議[編集]
20世紀になり、医者は患者の健康を劇的に改善する技術の向上に力を注いだ。これは、しかしながら、心のない、機械的な治療として非難されるようになった。1970年代になると、専門的な知識を集め、1980年代にはまとまった議論となりはじめた。
最も辛らつな批判を行ったのは、イヴァン・イリイチ『脱病院化社会』(Medical Nemesis、1976年)であろう。イリイチの意見では、現代医療は病気を取り除く際に健康を取り戻すことをせず、結果的に健康を損なっている。人間は、この見方では一生患者なのである。他の急進的な哲学者も同様の意見を述べているが、ここまで強く主張することはない。
これらの現代医学への批判は、医学を教える大学・学校の教育課程に影響を及ぼしている。現在は教育時に医療倫理が重視され、生物心理社会的介入モデルや同様の概念などの全体論的医学の重要性を教えるようになっている。
現代医学が、多くの批判に応え切れていない現実から、代替医療に向かう多くの人がいる。これらは科学的にはまだ根拠に乏しいが、症状の改善が見られるという報告もある。
現状[編集]
日本では[編集]
大学医学部または医科大学校医学科を卒業すれば医師国家試験の受験資格が与えられる。東洋医学の単独の医師国家試験免許はない。日本では、医師免許があれば、西洋医学、東洋医学に分け隔てなく、医療行為を施すことが可能である。
中国では[編集]
西洋医学を中心する医学部と別に、中医学を専門に勉強する中医学部に分かれる。 西洋医学部を卒業すると医師免許受験資格を与えられ、中医学部を卒業すると中医師免許受験資格を与えられる。 日本との違いは、医師免許自体は、中医学系と、西洋医学系の二本立てであることである。
数年前から外国人の中医師免許相当の国際中医師免許も受験できるようになっている。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- メルクマニュアル(医学事典)
- 2006年度医学ニュース一覧(医学処)
- ↑ Bitsori M, Galanakis E. "Doctors versus artists: Gustav Klimt's Medicine." BMJ. 2002 Dec 21;325(7378):1506-8. PMID 12493684
als:Medizin ar:طب ast:Medicina bg:Медицина bm:Dɔkɔtɔrɔya bn:ঔষধ br:Medisinerezh bs:Medicina ca:Medicina cs:Lékařství csb:Medicëna cv:Медицина da:Lægevidenskab de:Medizin el:Ιατρικήeo:Medicino es:Medicina et:Meditsiin eu:Medikuntza fa:پزشکی fi:Lääketiede fiu-vro:Arstitiidüs fr:Médecine fur:Midisine fy:Genêskunde ga:Míochaine gl:Medicina he:רפואה hr:Medicina hu:Orvostudomány ia:Medicina id:Kedokteran io:Medicino is:Lyf it:Medicina iu:ᑖᒃᑎ/taakti ko:의학 ky:Медицина la:Medicina lad:Medisina lb:Medezin li:Genaeskónde lt:Medicina lv:Medicīna mk:Медицина mt:Mediċina nap:Mericina nds:Medizin ne:चिकित्साशास्त्र nl:Geneeskunde nn:Medisin no:Medisin oc:Medecina os:Медицинæ pl:Medycyna pt:Medicina qu:Hampi yachay ro:Medicină ru:Медицина sa:आयुर्विज्ञान scn:Midicina sh:Medicina simple:Medicine sk:Medicína sl:Medicina sq:Mjekësia sr:Медицина su:Tatamba sv:Medicinsk vetenskap tg:Пизишкӣ th:แพทยศาสตร์ tl:Medisina tr:Tıp uk:Медицина ur:طب vec:Medexina vi:Y học wa:Medcene zh:医学 zh-min-nan:I-ha̍k