パウンド・フォー・パウンド
パウンド・フォー・パウンド (Pound for pound) は、ボクシングや総合格闘技、キックボクシングなどの格闘技の世界で、体重差がなかった場合に最強と目されるチャンピオンに与えられる称号、もしくはそのような選手を考える思考法のこと。PFP、またはP4Pと略される。
一般的な定義[編集]
多くの格闘技は体重別階級が設定されており、自分の体重とほぼ同じ対戦相手と試合をし、優劣を競う。特にボクシングの階級は全部で17階級もあり、最軽量級は105ポンド以下のミニマム級で、最重量級は200ポンド以上のヘビー級となっている。基本的にスピードは軽いほうが有利だが、技の威力は重いほうが格段に強く、体重の軽重によって必要とされる技術は異なっており、本来は比較ができないが技量が同程度であれば、体重が重い方が勝つ可能性が極めて高い。つまり最重量級のヘビー級またはスーパーヘビー級のチャンピオンが全階級の中で最強ということになる。
しかし、もし体重差がなく、全階級の格闘家が同じ体重で戦った場合誰が一番強いのか。つまり、パウンド・フォー・パウンドとは、体重差がない状態で全階級を通じて、どの格闘家が一番優れているのかを決めるときに用いられる言葉である。最重量級のヘビー級であるモハメド・アリやマイク・タイソン、エメリヤーエンコ・ヒョードルなどはパウンド・フォー・パウンド最強の有力候補として頻繁に名前が挙がっている。
元々、この言葉はボクシングの中量級の往年の名王者シュガー・レイ・ロビンソンの強さを称える愛称として生み出された。1980年代は中量級四天王と呼ばれたシュガー・レイ・レナード、ロベルト・デュラン、トーマス・ハーンズ、マービン・ハグラー、1980年代中盤から1990年頃まではマイク・タイソン、1990年代中盤から2004年頃まではロイ・ジョーンズ・ジュニアがパウンド・フォー・パウンド最強と言われていたが、ロイ・ジョーンズ・ジュニアが衰えた後はフロイド・メイウェザー・ジュニアが、フロイド・メイウェザー・ジュニア引退後の現在はマニー・パッキャオ、ファン・マヌエル・マルケスらがパウンド・フォー・パウンド最強の呼び声が高い。歴代最強のパウンド・フォー・パウンドを考えると、1930年代にフェザー級、ライト級、ウェルター級の3階級の世界王座を同時に保持していたヘンリー・アームストロングなど往年の選手たちも多く候補に挙がる。
総合格闘技では、現役選手では「60億分の1の男」と言われるエメリヤーエンコ・ヒョードルや、UFCミドル級で無敵を誇るアンデウソン・シウバ、同ウェルター級絶対王者のジョルジュ・サンピエール、同ウェルター級、ライト級元王者のBJペンなどの名前が挙がることが多い。
より厳密な考え方[編集]
格闘技は階級によって競技の性格そのものが変わる。例えば、軽量級選手はおしなべてスピード、手数、スタミナなどに優れており、重量級選手はパワーに優れている。軽量級において有効な戦術が重量級においては効率が悪いこともあれば、その逆もある。そうした点を無視して単純に体重同一時の強さを比べようとしても結局は論者の好みに左右されることが多い。
そこでより厳密な論法として次のような考え方がある。ある選手のパウンド・フォー・パウンドにおける位置付けを考える際、その選手の主戦階級における相対的な優位性を考え、それを数値化する。このような数値を各階級のトップ選手について弾き出し、それらを比較して全階級を通じたランキングを作成するというものである。
例えばロイ・ジョーンズ・ジュニアとフロイド・メイウェザー・ジュニアとの間に目で見て分かるスピードの差はほとんど存在しない。しかしスーパーフェザー級〜スーパーウェルター級で活躍するフロイド・メイウェザー・ジュニアと、ミドル級〜ヘビー級にわたって活躍してきたロイ・ジョーンズ・ジュニアでは、同じ階級の他の選手と比べた際に相対的なスピードの優位性という点でロイ・ジョーンズ・ジュニアに軍配が上がる。これがパウンド・フォー・パウンドの能力評価方法である。多くの人々がマイク・タイソンをPFP最強だと考えたのは、ヘビー級というパワー重視の階級においてマイク・タイソンが持つスピードの優位性と高度なコンビネーション技術、ピーカブースタイルによるディフェンス技術によるところが大きい。
外部リンク[編集]
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