性教育

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性教育
性教育

性教育(せいきょういく、英語:Sex education)は、性器生殖性交人間の他の性行動についての教育全般を意味する言葉。性教育は、学校だけで行われるものではなく、両親教師看護師など子どもの世話をする人々が直接的に行ったり、公衆衛生の宣伝活動の一環として行ったりする。日本学校では、保健科や家庭科の時間を中心に行われ、体や心の変化(第一次性徴及び第二次性徴妊娠出産、男女の相互理解と男女共同参画社会性別とは違う自分らしさを求めること、性感染症の予防や避妊などの内容が扱われている。

概説[編集]

性教育
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生殖に関する教育は、広義には受胎から胎芽へ、胎芽から胎児へ、そして出産へと移り変わっていく流れを追いながら、新たな命の創造と成長を取り扱う。狭義には性感染症の概念やその予防、避妊法などの内容が、この範疇に含まれる。

学校の教育課程の中に性教育的なものが組み込まれてはいるものの、それを教えることに関して、未だ激しい議論が行われている国もある。性教育はどの段階で開始されるべきなのか、どこまで深く踏み込んで良いのだろうか、セクシャリティや性行動に関する内容(安全な性交の実践、自慰行為、性の倫理感など)も扱うべきなのか、など、様々な論争が巻き起こっている。

アメリカでも、性教育に関する議論が盛んである。特に、子どもの性的行動を取り扱っていくことを善しとするか害と見るかに関して、激しく意見が割れている。より具体的に言えば、コンドーム経口避妊薬などの産児制限避妊具婚外妊娠に与える影響力、若年での妊娠、性感染症の伝染などの扱うことの是非である。アメリカの性教育をめぐる論争の火種となっているものの1つとしては、保守系の人々が推奨する純潔教育(禁欲的性教育)への支持が高まっていることを挙げることができる。性教育に対して、より保守的な態度を示す国(アメリカや英国も含め)では、性感染症の蔓延や若年妊娠が高い率で生じている。

1980年代以降、後天性免疫不全症候群(エイズ)の存在が取り上げられるようになり、性教育もその存在を無視することはできなくなった。後天性免疫不全症候群が流行しているとまで言える状態にまで達してしまったアフリカ各国においては、研究者たちの殆どが、性教育をきわめて重要な公共衛生計画と捉えている。米国家族計画連盟など、国際的な組織の中には、幅広い性教育を実践していくことは、人口爆発の危機を乗り越える/女性の権利を向上させるといった地球規模的な成果を達成することに繋がる、と考えている人々もいる。

日本において、性教育とはお互いの性を人権として認め合い尊重しあう人間関係の教育である。ただし、一部には曲解する人も存在し、処置教育・生理教育・生殖行為に偏る傾向が強く、「健全育成指導」というような狭い見識による認識を持つ人が少なくないまた、「寝た子を起こすな」と言われ、性知識を知らない子供にはあまり詳しい事を教えるべきではないとされてきた。中学・高校では在学妊娠などの風紀上のトラブルの責任を回避したいという理由でも、「禁欲教育」と呼べるようなセックスを害悪視する教育もかつてされていた。極端な例を挙げると自慰すら厳しく禁じていた学校もあった。こういった子供に性知識を与えることをタブーとした風潮が昭和末期まで根強く、後述の参考書籍の回収騒動など、思春期の少年少女に必要な性知識とポルノグラフィとの明確な線引きが確立されていないため、子供の性をタブー視する風潮は現在でも完全には消えていない。

こういった状態は1991年まで続いており、性教育は修学旅行林間学校などが近づいたある日、保健の時間で突然女子だけが教室に残され教わるといった形がとられていた。しかし、近年はこういった事が実際には実態に即していないという意見が強まり、この状況を改善しようとする動きが盛んとなった。1992年小学校の保健の教科書に精通が載るようになり、これにより男女が名目上は平等に性教育を受けられるようになった。

近年では、児童を対象とした性犯罪や親族らによる児童性的虐待が問題となっており、これらに被害児童の性に対する無知につけこんだ物が多い事から、思春期前のより早期からの性教育によって、子供に自身が性的搾取から保護されるべき権利主体である事を認識させようとする動きが見られるが、これもやはり分別の付かない幼い子供が性知識を持つ事に難色を示す意見がある。性教育を行うこと自体を猥褻な行為、セクシャルハラスメント扱いし、児童を欠席させボイコットさせるという、モンスターペアレントの無理解な行動も起きている。

性教育の現状[編集]

性教育

教育の効果をどのように測定するかという問題がある。現状は教育の実施を文部科学省、効果の測定は厚生労働省が担っていると言っても過言ではない面がある。

アメリカでは、abstinence-only sex education(禁欲のみを唱えた性教育)、comprehensive sex education(包括的性教育)他の複数のカリキュラムがある。この二つについてはどちらが良いか、について論争がある。

性教育の効果[編集]

日本では性教育の実施によって、未成年者による予定外の妊娠が減少したことを示す公的データはない。むしろ公的機関のデータは、未成年者による人工妊娠中絶が急増していることを示している。

平成5年度の人工妊娠中絶件数の総数は38万6807件、平成14年度は32万9326件であり、全体としては中絶件数は減少傾向にある。両年度の比較に於いて、20歳以上の全ての年代について中絶件数は減少している。

しかしながら、20歳未満については平成5年度は2万9776件であったものが平成13年度では4万6511件に増加した。ただし、その後は減少し平成23年度では2万0903件となっている。

アメリカ心理学会の研究では、comprehensive(包括的)なカリキュラムの有効性が示されているとした。comprehensiveなそれの有効性は査読誌の記事の複数によって明白であるとする一方、abstinence-onlyな手法は深刻な危険があるとの指摘がなされている。

各地域の性教育[編集]

北欧[編集]

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デンマークでは、性教育をカリキュラムの特定の部分に限定せず、必要な際には授業のあらゆる過程で議論される。スウェーデンでも同様であり、かつ性教育は1956年以降必修である。フィンランドでは15歳時に学校でコンドームなどの入った小包を渡される。これらの国はこのような教育の一方で性の早熟化には至っていない。(いずれもTIME[1]

日本[編集]

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体育・保健体育の授業で小学校4年生で「体の発育・発達」、同5年生で「心の発達及び不安、悩みへの対処」、中学校1年生で「身の機能の発達と心の健康」として性教育を受ける。初めて学ぶ小学校4年生では、思春期初来の平均年齢の関係上、男子は思春期前に学ぶ者が多いが、女子は思春期初来後に学ぶ者が多くなる。

また、双方同意の性行為を扱っている場合でも避妊を行わないのが当然であり、妊娠や性感染症への感染のリスクなどは語られず、性行為を美化している。

若年での妊娠や堕胎が女子の体に与えるリスクは成人女性へのものより大きく、また、ゆがんだ性知識を女子に植え込む危険がある点を踏まえると、これらの規制も必要であるといえる(なお、茨城県では、条例によって少女コミック有害図書とした。少女コミックの項には、具体的な作品名も明記されている)。

小学校では体や心の変化を中心に取り上げ、自分と他の人では発育・発達が異なり、いじめなどの対人トラブルを起こしやすいことから、発育・発達の個人差を肯定的に受け止めること特に取り上げる。また、発育・発達を促すための食事運動・休養・睡眠なども取り上げる。中学校では体や心の変化に加えて生殖も取り上げられるが、受精・妊娠までをは取り上げても妊娠の経過は取り上げられない。

一方で初経の授業はあっても、ブラジャーについては学ぶ機会は殆どなく、思春期のバスト形成期にノーブラだったり、大人用のブラジャーをつけたりとした問題が起きている。

性教育関連の事件[編集]

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近年全国規模で性教育が行われているが、一部では“児童同士で性器を触ることを強制するなどの過剰な性教育に子供が精神的苦痛を訴える”と主張されるケースが増えており、性的虐待ではないかとの意見も出ている。また、男子高校生にマスターベーションの頻度ややり方、射精量などを回答させ、その回答を女子高校生の前で公表する性教育も行われており、特に男子の性的プライバシーが実践の場で軽視される傾向も指摘されている。

その一方で、日本は先進国でも有数の性教育が遅れた国であるとの指摘もある。子供に限らず、無防備なセックスは、望まれない子を生み出し、親や子の人生を大きく左右する。例えば、男性用や女性用のコンドームをつけなくても膣外射精をすれば妊娠しないと誤解している人は多い。 さらに、性教育云々以前に大人がまともな性知識を持っていない現状も問題視する声すらあるのも事実である。教師自体が性的加害者になる事例も多く男女ともに被害を訴えるケースは少なくない。

このような問題のある状況を打開するための性教育すら、反発が強く、十分に出来ていない。結局、深く教えるようになったのは「心」の方面ばかりで、「体」についてはあまり進歩が無い。

『ラブ&ボディBOOK』回収[編集]

母子衛生研究会2002年5月頃より中学校に配布していた「ラブ&ボディBOOK」が、山谷えり子衆議院議員等の抗議により回収された。「中学生の性行為を助長している」「避妊具のリスクを教えてない」「性行為をすることに対する責任(子供をつくる行為に対する責任)が本から感じられない」というのが、その専らの理由であった。田嶋陽子議員ら性教育を推進する人達からは回収に反対する声が挙がった。

養護学校での性教育が不適切とされた事件[編集]

七生養護学校事件 も参照

2003年7月に東京都議会民主党土屋敬之議員が、“一部の養護学校や普通学級で不適切な性教育が行なわれている”と発言。自民党の田代博嗣・古賀俊昭両議員も同調、都は東京都立七生養護学校(現・東京都立七生特別支援学校)で行なわれていた性教育を中止させ、校長他116人の教職員を処分した。七生養護学校では人形や替え歌などを用いて性教育が行なわれており、産経新聞などはこの教育方法を「まるでアダルトショップ」「猥褻だ」と激しく批判した。

しかし、これは障害者への特別な知識のない健常者から見た感覚であり、実際に学校に通わせている保護者や市民らが「適切な教育である」という理由で、処罰された教師の処分撤回運動が続いている。これを受けて東京弁護士会は、処分を決めた東京都教育委員会に対して警告書を提出した。

この処分について時の教育長横山洋吉は「都立七生養護学校では、虚偽の学級編制あるいは勤務時間の不正な調整、それから勤務時間内の校内飲酒などの服務規律違反、その他、学習指導要領を踏まえない性教育など、不適切な学校運営の実態が明らかになったことから、教職員とともに、管理監督責任を果たさなかった校長への処分等を行ったものでございます」と都議会で説明している。

性教育の事例として京都市では保健指導の中で独自に性教育を開発している。最近では、生命誕生については用語を知る程度におさえ、自分が父母になったときにどんな子育てをしていきたいかを低学年から考える指導が適切であるという考えもある。

一部の保守層や保守系メディア・宗教団体の中には、「過度な性教育は子供たちに大きな影響を及ぼしかねない」との批判が根強くある。そのため前述の「ラブ&ボディBOOK」問題のように反応の分かれることも多く、この事件でもメディアによって取り扱いが大きく異なっている。

なお、七生養護学校の事件は処分不当として提訴され、2008年2月、東京地方裁判所は教育委員会の裁量権乱用を認め、処分取り消しを命じる判決を言い渡した。また、2009年3月12日、東京地裁(矢尾渉裁判長)は、3議員および東京都教育委員会に対して210万円の損害賠償の支払いを命じた。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]