都市高速道路
都市高速道路(としこうそくどうろ)とは、日本において、首都高速道路、阪神高速道路、名古屋高速道路、福岡高速道路、北九州高速道路、広島高速道路の6つの都市内において自動車のみに通行が限定され、一般道路から出入り口制限された道路のことである。すべての道路についてETCなどによって通行料金が課金されている[1]。
概要[編集]
海外においても都市内に高速道路は存在し、幾何構造や運用において差別化されている例は存在するが、都市高速道路という用語は日本独自のものである[2]。
道路法上は都道府県道または指定市道(政令指定都市内の区間)である。単に都市高速とも呼ばれる。また、地域高規格道路の概念ができてからは、地域高規格道路に自動的に指定されている。
都市高速は道路構造令で定められている第2種の規格で設計されている。都市内においては用地確保の問題から規格が都市間を結ぶ高規格幹線道路の第1種に比べて低い規格である。ただし、これは都市内を通過する高規格幹線道路においても同様である。
また、制限速度も騒音問題の観点からも最高速度が50-60km/hの区間が多い。信号機つき交差点を持つ路線も存在する。
流入部や流出部も他の高速道路は左側合流に統一されているが、都市高速では土地制約から統一されておらず速度が高い追い越し車線に合流する右側合流の場合がある。また、ハーフインターチェンジの場合も多い。
都市高速道路の位置づけ[編集]
高速道路とは高速道路株式会社法に規定される道路のことであり[3]、その中で自動車専用道路と同等の規格及び機能を有する道路として都市高速道路が位置づけられる。また、道路整備特別措置法においてはネクスコ3社や首都高速道路及び阪神高速道路株式会社のように会社が管理している会社管理高速道路とその他の地方道路公社によって運営されている指定都市高速道路と分けられ、共に料金を徴収することのできる道路と位置づけられる。
都市高速道路は、東名高速道路などの高速自動車国道と比べると、規制速度の低さや線形の悪さから旅行速度が低くなる。幾何構造や運用については都市高速道路だけではなく、級区分の差はあるものの都市内高速道路[4][5](道路構造令の第2種に該当する道路)に共通する特徴である。
歴史[編集]
- 1958年(昭和33年)10月17日:北九州高速4号線の春日-大里間が国道3号バイパス北九州道路(自動車専用道路)として開通[6]。
- 1962年(昭和37年)12月20日:日本初の都市高速である首都高速道路の京橋-芝浦間が開通。
- 1964年(昭和39年)6月28日:阪神高速道路が開通。
- 1967年(昭和42年)7月4日:首都高速道路の都心環状線が完成。
- 1979年(昭和54年)7月25日:名古屋高速道路が開通。
- 1980年(昭和55年)10月20日:福岡高速道路および北九州高速道路が開通。
- 1997年(平成9年)10月1日:広島高速道路が開通。
料金政策[編集]
これまで、多くの都市高速道路では基本的に均一料金制(首都高速、阪神高速および名古屋高速では、エリア別の料金設定)を採用し、料金所建設のコストや料金所での渋滞の回避などのために細かな課金がされていなかった[7]。そのため、移動距離によって不公平感のある価格体系とされてきた。
広島高速道路では他の都市高速道路に先駆けて2010年4月26日から対距離料金制を採用した。料金所の設置スペースに余裕があるため、入口で通行券を発券して出口で料金を収受する方式とすることにより、ETCを利用しない車にも対距離料金が適用されている。
首都高速と阪神高速では、路線網の拡大により利用距離のばらつきが大きくなっていたが、2008年にはETCの利用率が80%近くとなったことから、距離別課金への変更が検討された。しかし、ETCをもっていない人や長い距離を移動する利用者には値上げとなるため、経済状況の悪化もあって、導入は見送られてきた[8]。関係自治体との協議の結果、料金圏の廃止、上限料金の設定、各種割引、ETC設置助成キャンペーン等の実施により利用者の負担増を抑えることとして、2012年1月1日から首都高速と阪神高速でも対距離料金制が採用されることになった(ETC非搭載車は原則上限料金に)。
都市高速の影響[編集]
渋滞緩和[編集]
日本の都市内の旅行速度は世界的にみても低く、都市高速を利用することで都市内の混雑を避けることが可能になる。また、移動距離が長いトリップの車両が都市高速を利用することで街路の混雑が緩和されることも多い。
都市景観[編集]
都市高速道路の多くは用地確保の難しさから、ビルとビルとの間や河川の上に建設されている場合が多く、景観の問題が指摘される。そのため、最近ではトンネルによる建設も行われている。
都市高速道路の一覧[編集]
都市高速道路は札幌市と仙台市を除く人口約100万以上の政令指定都市とその周辺都市に殆ど集中している。
脚注[編集]
- ↑ 通行料金一覧表 - 阪神高速5号湾岸線及び阪神高速7号北神戸線の一部の区間では第二神明道路の管理者(NEXCO西)によって料金が徴収されているが、これはいわゆる合併徴収の一類型であり、徴収された料金はNEXCO西と阪神高速会社に分割して納入される。
- ↑ ただし、韓国語には「都市高速化道路」(ko:도시고속화도로)という語があり、これのうちには、釜山第二都市高速道路のような有料道路もある。
- ↑ 高速道路株式会社法第2条第2項
- ↑ 吉井稔雄, 桑原雅夫, 森田綽之 : 都市内高速道路における過飽和ネットワークシミュレーションモデルの開発 ・ 交通工学, No.30, Vol.1, 交通工学研究会, 1995.01
- ↑ 中村英樹,大口敬:日本の交通容量・サービスの質に関する研究展望・第33回土木計画学研究・講演集,vol.33, CD-ROM,2008.11
- ↑ 同区間が都市高速道路に転換されたのは1991年(平成3年)3月31日である。このため、同区間は最古の都市高速道路ではあるが、日本初の都市高速道路ではない。
- ↑ 北九州高速4号線は1991年3月31日に日本道路公団から北九州道路、北九州直方道路の移管を受けた路線であり、移管から1993年3月31日までは4号線のみ対距離制料金が維持されたが、同年4月1日に他路線と合わせた均一料金制に移行し、出口料金所は撤去された。参照:都市高速道路 開通30周年(福岡北九州高速道路公社)PDF
- ↑ ただし、ETC車限定の社会実験として、短距離では高い割引率、長距離では低い割引率とする割引を実施したことはある。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
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