装身具
装身具(そうしんぐ)とは、指輪やネックレス、ペンダント、イヤリングなど、衣類と合わせて身を飾るための工芸品である。
歴史[編集]
装身具の始まりは、装身目的ではなく呪術的なものであった。外敵から身を守る目的で、魔力があるとされる物を常時身につけたのが始まり。支配者階級が出現すると自分の権勢、身分の高さを他者に示す目的で身につけた。宗教が発展すると神とのつながりを目的として十字架など宗教的なシンボルを身につけるようになる。さらに社会が裕福になると一般階級の人間も身につけるようになり、やがては本来の目的ではなく純粋に美しさを目的とした物に変化した。
装身具を用いて着飾ることは一部の民族・文化から広まったのではなく、世界中で見られる現象であり、それらは埋葬されている物や壁画、伝統的装飾品などからも伺うことができる。元々は花や木の実、貝殻、動物の歯、牙、角などを加工、組み合わせて作っていたものだが、現代ではクリスタルガラスやプラスチックなど様々な素材のものがある。
日本では縄文時代から耳飾や腕輪などの装身具が見られ、古墳時代には鍍金の施された鮮やかな金銅製装身具が作られた。
現代では金、銀、プラチナなどの貴金属製のものが多く、近年ではまた男性が着用するのも一般的になった。広義では神社のお守りや登山者が付ける熊除けの鈴、王冠・錫杖・ベルト、さらには社員の名札や腕章も装身具に含まれる。
語法[編集]
宝石・貴金属を用いて作られた装身具を宝飾品(ジュエリー)と呼ぶ。なお、欧米では素材に関わらず装身具は全てジュエリー(米jewelry、英jewellery)と呼ばれ、宝石・貴金属を用いて作られた装身具はファイン・ジュエリー (Fine Jewelry)、それ以外の貴石などの素材を使ったものや安価なものはコスチューム・ジュエリー (Costume Jewelry) と区別されることもある。
素材[編集]
装身具の素材には、日常の環境による変化を比較的受けにくいものであって、人体に害を及ぼさないと考えられる物であればどのような物でも使用されてきた。鉱物、金属、焼付け用セラミック(七宝やエナメル)、クリスタルガラス等ガラス、合成樹脂、天然樹脂、木材、化石、海産物(貝殻や珊瑚)、動植物の体組織等である。
種類[編集]
- アームバンド - ワイシャツの袖に着ける装身具。
- アンクレット - 足首に着用する装身具。起源は奴隷の足輪で、“恋人(または夫)の所有物”である事を暗喩するものであった。
- イヤリング - ピアスが耳に穴を空けるものに対し、イヤリングは耳たぶなどをはさんで着用する装身具。スクリュー式やクリップ式がある。
- 腕時計 - 腕に付ける装身具。
- かつら - 頭髪に付ける髪状の装身具。
- ヘアーエクステンション - カツラ状の装身具。
- カフリンクス - ワイシャツなどのボタン穴に付ける。
- 簪(かんざし)- 主に女性の頭髪に挿して用いる装身具。
- カラーステイ - ワイシャツの襟に入れる装身具。
- カラーピン - ワイシャツの襟に塡める装身具。
- キーホルダー - 鍵を纏めるのに使う装身具。
- チェーン - 本来は財布の盗難防止などに使用されていたが、今日では首に巻いたりする。また、材質もシルバーなどが増えてきている。
- 菊綴 - 袴に付ける装身具。
- 首輪 - 首に付ける装身具。
- 組み紐 -紐状の装身具。
- 真田紐 -組み紐の安価版。
- グローブホルダー - 手袋に付ける金具
- 下緒 -日本刀の鞘に付ける装身具。
- スタッドボタン - ワイシャツの胸ボタンに浸ける装身具。
- スニーカーアクセサリー - 靴紐に付ける装身具。
- シューズマーカー - 靴を脱いだときに付ける印の装身具。
- ティアラ - 頭部を飾る装身具。冠の一種だが、クラウン(王冠)より下位。
- ネクタイ - ワイシャツの首元に巻く装身具。
- ネクタイピン - ネクタイがずれないようにする為に付ける装身具。
- ネックレス - 首飾り。真珠ネックレスの場合は長さによって呼び名が変わる。環状になっていない、首の後ろで交差するように巻き、前で軽く結ぶ物をラリエットという。また装飾「ペンダントトップ」(―ヘッド)を追加出来る物をペンダントと呼ぶ。
- SOSカプセル - 緊急用に名前や住所、病気等を記すもの。キーホルダーやネックレスとして使うことが多い。
- グラスホルダー - 眼鏡を首から提げる為のものでネックレスを兼ねている。老眼鏡やサングラスに付ける(近視の人は常に着用しているので必要ない)。
- ドッグタグ - 認識票として用いる装身具。ネックレスとして使うことが多い。SOSカプセルと用途は似ている。
- トルク - ネックレスの一種だが、指輪やピアスにも用いる。
- 数珠 -僧侶が首に掛ける装身具。
- 勾玉 - 弥生時代に用いられていた首に掛ける装身具。
- ループタイ - ネックレスの一つ、かつてはネクタイの代用品として使われた。
- ロケット - 写真を収める装身具。
- ロザリオ -数珠と十字架が一体化した西洋の装身具。
- バッグハンガー - 鞄につける装身具。
- バッジ - 服の襟、胸、鞄などに浸ける装身具。
- ピンズ - バッジに酷似した装身具。
- ハットピン (帽子止め) 帽子の紛失防止に浸けた装身具。
- ピアス - 耳にあけた小さな穴に通して着用する耳かざり。「ピアスド・イヤリング」の略。
- ブレスレット - 腕輪。手首に着用する装身具。
- ブローチ - 服の胸の部分などにつける装身具。
- ベルト -ズボンに付ける装身具。
- ポケットチーフ -背広の胸ポケットに挿す装身具。
- ボタン - 服に付ける装身具。貝や金属製がある。
- マネークリップ -紙幣を束ねるために用いる。
- 眼鏡 - 顔に掛ける装身具。
- ラペルピン - ジャケットの襟に付ける装身具。
- リストバンド - 手首に着ける装身具。
- リベット - ジーンズや鞄等に用いられる装身具。
- リング - 指輪。ここ数年ではシルバーリングが商品の中心。また、シルバーリングを家庭で作成できるキットも良く売れている。
- ワッペン -服や帽子に縫いつける装身具。
貴金属装身具の製法、および製品の区別[編集]
金属工芸の3大技法は「彫金・鍛造・鋳造」といわれ、貴金属装身具制作においてもこの全てがおこなわれる。装身具分野ではこれらを「彫金・鍛金・鋳金」と称する。一般的にはこれら貴金属装身具の制作技法を総称して「彫金」と呼ぶ。また、キャスト製品を区別するために「彫金・鍛金」の二技法のみを指して「彫金」と言うこともある。厳密にはこの三つの中の一技法のみ、鏨(たがね)などを使用して金属を直接に切削したり文様や文字を彫りこむことが本来の「彫金」の意味である。
金属製装身具には量産品と、いわゆる彫金による製品があるが、現在見られるほとんどの製品は量産製品であり、これは紀元前より存在する蝋型鋳造をルーツとするロストワックス鋳造法(ロストワックスキャスティング、インヴェストメントキャスティング)と呼ばれる方法で金属を加工されているものが主流である。金属工芸全体で見れば大変に歴史の古いロストワックス法であるが、貴金属装身具の分野においては200年に満たない新しい技法である。 これは作られるものが小さいために、重力による溶解金属の流し込み(鋳込み)ができなかったことが一つの理由である。流し込む金属の量が少ないと、溶解した金属の強い表面張力の影響で金属が鋳型に流れない。この問題を解決したのがガス圧鋳造および遠心鋳造である。ロストワックス精密鋳造法は、遠心鋳造方式が発明された20世紀初頭より、特に「原型の正確な転写」と「大量生産」を目的として発展した。技法的には、金属へ複雑な形態を付与できることが他の技法と最も異なる点であり、発明そのものの目的は「複雑な形態の原型をそのまま金属へ転写すること」であった。このため精密鋳造とも呼ばれる。
彫金・鍛金・鋳金の三技法以外には、機械プレスによる製品がある。また近年では趣味性の高い物として銀粘土が盛んである。その他、現在ではあまり多く作られない伝統的技法として粒金技法(グラニュレーション)などがある。
鍍金(メッキ)も重要な技法である。鍍金には安物、誤魔化しというような悪いイメージが付きまとうために「コーティング」と呼び方を変える事が多くなっている。銀やホワイトゴールド製のジュエリーによく施されるロジウムコーティングとは、ロジウムメッキとまったくの同義である。メッキも「彫金・鍛金・鋳金」と並ぶ伝統的な金属工芸技法のひとつであったものが、現在では軽視される傾向である。
ロストワックス精密鋳造法が台頭する以前には、現在において「ハンドメイド」と区別される製法、すなわち彫金・鍛造が世界中で主流であった。 中でもインディアンジュエリーや東南アジアのジュエリーの人気が根強い。これらの制作技術はヨーロッパの宝飾技術が大航海時代以降に各地へと伝わったことにより発展したとされる。日本においての錺(かざり)は、廃刀令後に職を失った刀剣師達がルーツの一つとも言われる。一説には刀剣の鍛造、装飾技法やその他の伝統的な金属工芸技法にヨーロッパの宝飾技術、デザインを取り入れたものが現在にも伝わる錺職と云われているが、実際には伝統的な金属工芸の全てに関わりがあると考えられる。
またロストワックスキャスト製品にもハンドメイドが存在する。キャスト製品は「ハンドメイド」でないという見方があるが、実際にはキャスト製品であれば全て「ハンドメイド」でないと見なすことは出来ない。個人制作家や小規模工房においては、ロストワックス法にしかできない造形を生かした一点作品もよく作られており、また本体の鋳造後に金属を直接切削する彫金を併用して制作される場合なども多い。これらは量産品とは別のものとして扱われるべきであろう。
装身具製作の世界において「ハンドメイド」という言葉が何を指すのかには、決まりきった傾向や定義などは存在せず、混乱が見られる。彫金・鍛金・鋳金等は、このすべてが貴金属装身具製作においてなくてはならないものであり、人類の歴史の中では極めて普遍的・伝統的な工芸技法である。その意味ではその全てが重要といえよう。近年では3次元CADと光造形システムにロストワックス法が併用された技術の発達も進んでいる。
主なジュエリー・ブランド[編集]
- アクアジュエリー (Aquajewelry)
- イリアス・ララウニス (ilias LALAoUNIS)
- ヴァン・クリーフ・アンド・アーペル (Van Cleef & Arpels)
- ウィリアムウォレス (William Walles)
- ヴェルヴェットラウンジ (Velvet Lounge)
- Verudura
- ガラード (Garrard)
- カルティエ (Cartier)
- クリストフル (Christofle)
- クロムハーツ (Chrome Hearts)
- コルロフ (Korloff)
- Seaman Schepps
- シーム (seem)
- ジャガールクルト (Jaeger Le Coultre)
- Jar
- ジュエリー∞ブレイド (Jewelry ∞ Blade)[1]
- ジョージ・ジェンセン (GEORG JENSEN)
- ショパール (Chopard)
- ショーメ (Chaumet)
- スターリンギア (STARLINGEAR):リック マーベリック
- ゾロタス (ZOLOTAS)
- David Webb
- ティファニー (Tiffany & Co.)
- TEZUCA
- Nardin
- バカラ (baccarat)
- ハリー・ウィンストン (Harry Winston)
- Faberge
- フォリフォリ (FOLLI FOLLIE)
- Fouquet
- ブシュロン (Boucheron)
- ブルガリ (Bvlgari)
- Fred Leighton
- ヘビーチェインズ (HEAVYCHAINS)
- HOYACRYSTAL
- マッピン・アンド・ウェッブ (Mappin&Webb)
- Marina B
- ミキモト
- ミコノス工房 (Mykonos工房)
- メレリオ (Mellerio)
- モーブッサン (Mauboussin)
- ラリック (Lalique)
- リブラ (Libra)
- レザンジュ ハワイアンジュエリー (LesAnges Hawaiian Jewelry)[2]
- レナード・カムホート (Leonard Kamhout)
- レポシ (REPOSSI)[3]
関連項目[編集]
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