螺鈿紫檀五絃琵琶
螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ,Five stringed Bowa Lute)は 螺鈿装飾が付された紫檀製の唐式五弦琵琶である。螺鈿・玳瑁貼りなどの技法を駆使して華麗な文様をあらわす。希少性と装飾の華麗さにより、正倉院を代表する宝物となっている。
概要[編集]
聖武天皇の遺品であり、国家珍宝帳に記載される品である。頭部がまっすぐの五弦琵琶は、インドが発祥の地である。側面は紫檀に夜光貝の切片を貼るなど第一級の美術工芸品である。4弦の琵琶はペルシャ発祥であるが、5弦の琵琶はインドが発祥の地である。中国には北魏の時代に伝来し、唐代で盛んに用いられた。五絃琵琶は正倉院にしかない。
類例[編集]
五絃琵琶は中国にも伝来せず、正倉院の品は世界に唯一つの遺例となっている。
構成[編集]
表面は高度な螺鈿技法による華麗な宝相華の花文様となっている。腹板(表)は沢栗製である。螺鈿・撥を受ける捍撥には玳瑁を用い、瑪瑙で飾った十三個の花文を散らす。撥受けには駱駝に乗り琵琶を演奏するペルシア人の姿が螺鈿で表わされる。熱帯樹や飛雲、飛鳥をあしらう。槽や側面の磯、鹿頚、海老尾は紫檀製である。槽(裏面)は螺鈿で宝相華・飛鳥・雲の文様を表す。花葉の心には朱・緑・金泥で彩りをつけ、琥珀をはめる。胴下側面の落帯は金箔地に彩画の花鳥を描く。
展示歴[編集]
- 1956年 – 第10回
- 1959年 - 正倉院宝物展(東京国立博物館)
- 1964年 - 第17回
- 1977年 - 第30回
- 1981年 - 特別展『正倉院宝物』(東京国立博物館)
- 1991年 - 第43回
- 2010年 - 第62回
- 2015年 - 美の国日本(九州国立博物館)
- 2019年 正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美―(東京国立博物館)
管理[編集]
倉番 : 北倉 29 用途 : 楽器・楽具 技法 : 木竹工 寸法 : 全長108.1 最大幅30.9 材質・技法 : 槽から海老尾・転手は紫檀、腹板はヤチダモまたはシオジ、捍撥は玳瑁地に螺鈿で文様、槽には螺鈿・玳瑁(伏彩色)で宝相華文の装飾。
模造[編集]
東京国立博物館には明治時代の19世紀に製作された精巧な模造品がある[1]。明治32年に修理に伴って制作されたと考えられる模造品である。その後、大正時代、平成23年~30年にも復元模造が製作された[2]。本体は坂本曲齋(三代)、象嵌は新田紀雲、加飾は北村昭斎・松浦直子とされる。