神世界事件

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神世界事件(しんせかいじけん)とは、2000年代日本で起こった霊感商法詐欺を中心とした一連の疑惑および事件

概要[編集]

2000年に設立された有限会社「神世界」および同社と提携する企業群が、体調不良や悩みを取り除く霊的治療をうたってヒーリングサロンを全国で展開し、相談に訪れた人から「相談料」「礼金」もしくはサロンで販売されているお守り(神世界では「ライセンス」と呼称)等各種物品の購入などの名目で多額の現金を集めていた。また、そうやって勧誘した顧客に対して友人の勧誘を行う事やスタッフとして働くことを勧めて被害者間に共犯意識を持たせることで被害を拡大させた。

また神世界および母体組織において、本来はこれら活動を諌め取り締まるべき日本国警察国立大学の現職員や退職者が積極的に組織の活動に関わり、一連の事件に加担した事案が確認され、これもあいまって日本国内において大きな不祥事となった。

年譜[編集]

2000年 有限会社「神世界」登記。

2003年女性セブン』7/31発売号に、以前覚せい剤取締法で逮捕された俳優Tが麻薬パーティーを開いた場所として知られる、Tの母親女優Mの旧宅を買い上げてサロン営業を行っている記事が掲載される。

2005年頃よりインターネット匿名掲示板群(2ちゃんねるYahoo!掲示板など)を中心として告発が相次ぐようになる。その中で取扱いアイテムなどの関連性(下記)により神慈秀明会旧体制を告発していたサイトがこれを取り上げ、手口などの情報をまとめて発信するようになる。これらの活動が後に被害者救済団体および弁護団構築活動の基礎となった。

2007年12月20日神奈川県警警備課長を務めていたY警視が、勤務中に神世界に関する副業を行った上、部下を勧誘するなどして約400万円の報酬を得るなど、複数の地方公務員法違反を行ったとして関連施設に対し強制捜査が行われた。

2008年初頭に前述の警視Yが懲戒免職処分を受けた事が全国ニュースとなり、前述の霊感商法もあいまって問題視されるようになる。また、同年においては北海道大学のK准教授が同組織に関わったとして諭旨解雇処分を受け、これもまた前述のY元警視の一件と合わせてニュースとなる。

2009年3月、被害者らによって神世界に対する損害賠償請求が行われた被害対策弁護団は紀藤正樹を団長としてリンク総合法律事務所が担当。同事務所所属の弁護士である荻上守生が連絡役を務める。。

2011年、霊感商法について詐欺罪で関係者らが逮捕された。また会計責任者であった元警視Yも職務中に得た捜査手順等の知識を使い神世界グループのトップSの逃亡を助けたとして犯人隠避罪で逮捕された。

神世界[編集]

神世界(しんせかい)は山梨県甲斐市に本部を置く有限会社。提携先と称して同様に設立された、複数の有限会社を通して、ヒーリングサロンを運営していた。これら会社群を新世界グループと称する。

本来は同地に在する有志の宗教組織(宗教法人の認可はとられていない)である千手観音教会(現・観音会)の事業部が独立した形で有限会社の法人格を得た形となっていた。なお千手観音教会の後継組織である観音会は「新世界とは、あくまで提携をしていただけ」「観音会と神世界とはあくまでも別組織である」としており、その業務内容に関しては一貫して神世界側の暴走とし、一切の関与を否定している。その一方で本事件の被害者や告発者たちは、この発言に関しては罪状を逃れるための詭弁である、としている。

新世界の「提携先」とされる、千手観音教会そのものは1986年頃に起きた世界救世教の分裂による混乱を受けて同教の信者であった神世界代表Sの父親(元山梨県警OB )が1987年に同教団から独立する形で成立した集団である。その活動内容は同教団およびその分派とされる、いわゆる「救世教系・真光系」と呼ばれる手かざし系新宗教団体と根源を同じくしている。そのため、本件で被害者が売りつけられた各種アイテム類は、これら教団が使用しているものと類似した(ないしは意図的な改変が加えられた)ものとなっている。

疑惑発生および告発当初、神世界は「自組織はあくまでも会社組織であり宗教団体ではなく」ゆえに「霊感商法ではない」と主張していた。しかし告発の後、代表など中心人物が逮捕されると、それまでの主張を翻して宗教団体であることを認めた上で「宗教活動として同意の上での契約」であるために「霊感商法ではない」とアナウンスするようになる。

手口[編集]

高級住宅地や高級マンションなどに、いわゆる「自宅ショップ」を思わせる外観でサロンをオープンし、手作り感のあるチラシを撒き「素人の手作り」的な携帯電話向けウェブサイトを発信(現在は削除)することで「高級ではあるが身近な感覚」を演出して客を呼んだ。「(ヒーリングを受けている間に)子どもを預かります」などのチラシや「お茶会」などの気楽に訪問できるイメージを用いて地域主婦層の取り込みを狙い、勧誘に際しては一般宗教にあるような信者(スタッフ)による勧誘ではなく、地域の口コミを効果的に利用した。

後は通常の霊感商法と同じく、客とスタッフによる雑談の中からホット・リーディングコールド・リーディングを駆使する事によって顧客に対してマインド・コントロールを行い客の信用を得て施術を継続的に受けさせ、完全に信用させた頃合を見計らい宗教的な儀式やアイテムを売りつけた。この時に客が宗教に対する懐疑を抱いた場合には上述したY警視およびK准教授など社会的信用を持つ職業に就いているメンバーの存在を利用し、また宗教法人の認可をあえて受けていないことを逆用して「警察官や大学准教授も認め推奨している企業」のため「宗教団体ではないことを強調」し「安心である」と説いた。また顧客による知人の勧誘に際しても同様の言葉を顧客に言わせて勧誘させていた。

背景[編集]

本事件と前後していわゆる「スピリチュアルブーム」が起きていた。テレビ放送在京キー局ではこれを題材とした番組が多く制作され、こうした一連の出来事に対して民衆の警戒感を削いでいた。

本事件は統一教会からオウム真理教に至るまでの宗教トラブルによって、宗教組織そのものに対する不信感が高い中で起きた霊感商法詐欺である。その中で本件は前述のように「自ら宗教であることを否定する」ないしは「宗教そのものを否定する」事によって安心感を生成している。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]