東武宇都宮線
宇都宮線(うつのみやせん)は、栃木県栃木市の新栃木駅と同県宇都宮市の東武宇都宮駅を結ぶ東武鉄道の鉄道路線である。
目次
概要[編集]
栃木県の県庁所在地である宇都宮市中心部と同市南部、壬生町および栃木市とを結ぶ地域生活・通勤路線である。ラインカラーは駅標にオレンジと赤紫(■■)を用いている。
東武日光線・伊勢崎線・東京メトロ半蔵門線または日比谷線経由で東京都心に接続しているものの、東日本旅客鉄道(JR東日本)の宇都宮線(東北本線)・湘南新宿ラインと比べ本数が少なく所要時間が長い。しかしながら並行区間の旅客運賃はJRと比べて東武が廉価となっており[1]、かつては快速や準急、普通列車も浅草直通で運行されており、2006年以降は浅草直通列車は特急「しもつけ」の1日1往復のみとなり浅草方面との直通運転はほぼ解消されているものの、宇都宮線普通列車と日光線特急スペーシア・快速・区間快速は栃木駅で相互接続するダイヤ体系となっており、栃木駅を跨いでの東京都東部・埼玉県 - 東武宇都宮間利用客の利便性が図られている。
直接的な各区間利用者数を示すデータではないが、沿線自治体間の通勤・通学者数は以下のようになっており、東武宇都宮駅から江曽島駅、西川田駅、壬生駅付近までの区間利用が多い。
- 宇都宮市→栃木市:1,237人(通勤者1,002人、通学者235人)
- 栃木市→宇都宮市:2,311人(通勤者2,003人、通学者308人)
- 壬生町→栃木市:1,625人(通勤者1,308人、通学者317人)
- 栃木市→壬生町:1,139人(通勤者1,047人、通学者92人)
- 壬生町→宇都宮市:4,455人(通勤者3,877人、通学者578人)
- 宇都宮市→壬生町:2,018人(通勤者1,849人、通学者169人)
※ 以上のデータは総務省統計局が公表する平成17年国勢調査(2005年実施)のうち「常住地による従業・通学市区町村,男女別15歳以上就業者数及び15歳以上通学者数(15歳未満通学者を含む通学者 - 特掲)」による。
各自治体間の通勤・通学者の総数は、宇都宮 - 壬生間が6,473人、宇都宮 - 栃木間が3,548人、栃木 - 壬生間が2,764人である。壬生町は宇都宮都市圏に属し、宇都宮市の商圏となっているほか、吸収率は壬生町全体の30%以上となっており、当線は宇都宮都市圏南部の交通網のひとつを成す。
また、当線は栃木県内を走行する東武鉄道各線の中でも比較的利用客が多い路線で、朝ラッシュ時には東武宇都宮駅の改札の位置関係上、下り東武宇都宮方面の先頭車両が激しく混雑しやすい。また、全線が単線であるものの全駅が行き違い設備を備え、また複線化用地が全線にわたって確保されている。複線化用地は一部畑になっており、栽培も行われている。
壬生 - 国谷間ではゴルフ場(東武系列の星の宮カントリークラブ)の中を線路が通るが、ゴルフ場開業よりも当線の開通の方が先である。
路線データ[編集]
- 路線距離:24.3km
- 軌間:1067mm
- 駅数:11駅(起終点駅含む)
- 複線区間:なし(全線単線)
- 電化区間:全線(直流1500V)
- 閉塞方式:自動閉塞式
- 最高速度:90km/h
- 最長編成:4両編成
PASMO導入について[編集]
2007年3月18日からICカード「PASMO」が導入されている。東武宇都宮駅には自動改札機が、南宇都宮駅から野州平川駅の区間については簡易ICカード改札機が設置されている。
運行形態[編集]
普通列車は、ワンマン運転の4両編成が日光線栃木駅 - 東武宇都宮駅間で昼間毎時2 - 3往復、ラッシュ時毎時特急含め3 - 4往復(13 - 30分間隔)で運行されている。ほとんどの列車が栃木駅で同駅に停車する特急スペーシア「けごん」「きぬ」や日光線快速、区間快速、区間急行、普通列車と相互接続し、宇都宮線沿線と日光線・伊勢崎線方面とを結んでいる。なお、朝夕ラッシュ時と早朝深夜の一部列車は栃木駅まで直通せず、新栃木駅で折り返す。また、朝の1本のみ日光線南栗橋駅から当線に乗り入れて東武宇都宮駅までを結ぶ列車が設定されており、この列車は新栃木駅→東武宇都宮駅間でワンマン運転を行う。
特急は、「しもつけ」が朝の東武宇都宮発浅草行1本と夕方の浅草発東武宇都宮行1本で毎日運行されている。ホーム有効長の関係から、350系4両編成で運転される。
各駅のホームにはホーム監視モニターが設置され、ドア開閉は運転士が行っている。車内では自線の他日光線・鬼怒川線の主要列車が記載された時刻表が掲出されている[2]。
以前は伊勢崎線浅草 - 東武宇都宮間に直通準急(あるいは無料急行、無料快速、無料準快速など、所要時間は約2時間30分 - 3時間)が運行され、戦後は長らくおおむね毎時1本の割合で設定されていたが、その後の運行合理化により減便され2006年3月18日のダイヤ改正で廃止された。
運用車両[編集]
現在の車両[編集]
- 350系
- 特急「しもつけ」用。普通列車のワンマン運転開始後も車掌が乗務する。
- 8000系(南栗橋車両管区新栃木出張所所属)
- ワンマン対応車。8189F・8190F・81105F・81106F・81108F・81115F・81116F・81118Fの4両編成8本が運用される。
過去の車両[編集]
- 3070系
- 内陸部での高温多湿(猛暑)が問題となった時期 いつ?に、伊勢崎線で朝ラッシュ時の増結運用を終えた春日部検修区の8000系や10000系を南栗橋から回送し、非冷房の3070系の運用を置き換えることで、午後のみではあるものの冷房化が図られたことがある。宇都宮線の4運用のうち3運用がこの方法で午後のみ置き換えられ、5050系の転入まで継続された。
- 5050系
- 6050系
- ワンマン運転となるため、8000系ワンマン対応車に置き換えられた。
- 10000系・10030系
- ワンマン運転となるため、8000系ワンマン対応車に置き換えられた。
- 30000系
- ワンマン運転となるため、2007年5月上旬に8000系ワンマン対応車に置き換えられ、南栗橋車両管区春日部支所に戻された。
歴史[編集]
当区間の優等列車の歴史については「しもつけ (列車)」も参照のこと。
- 1928年(昭和3年)12月7日 鉄道免許状下付(下都賀郡大宮村-宇都宮市)[3][4]。
- 1930年(昭和5年)3月 複線化に計画を変更[4]。
- 1931年(昭和6年)
- 1932年(昭和7年)
- 1933年(昭和8年)
- 1944年(昭和19年)
- 1953年(昭和28年) 浅草 - 東武宇都宮間の無料急行・準急(毎時1-2本運行)に加え、愛称無しの有料急行1往復運行開始。現在の特急「しもつけ」とほぼ同じダイヤ設定。当時の日光線準急は浅草 - 東武日光間と浅草 - 東武宇都宮間に運転されていた。
- 1954年(昭和29年)9月24日 花房町駅廃止。
- 1956年(昭和31年) 浅草 - 東武宇都宮間の有料急行に「しもつけ」の愛称が与えられる。
- 1959年(昭和34年)
- 1965年(昭和40年)6月7日 おもちゃのまち駅開業[4]。
- 1970年(昭和45年)
- 1988年(昭和63年)8月9日 浅草 - 東武宇都宮間に快速急行「しもつけ」(6050系を使用)運転開始[4]。
- 1989年(平成元年)11月28日 柳原信号所廃止。
- 1991年(平成3年)7月21日 ダイヤ改正により、快速急行「しもつけ」を急行に格上げ[4]、使用車両を350系に切り替える[4]。
- 2006年(平成18年)3月18日 ダイヤ改正に伴う種別名変更により、急行「しもつけ」を特急に格上げ[4]。
- 2007年(平成19年)
地元での呼称[編集]
東武宇都宮線は、東上線系をのぞく他の東武線と同じく地元沿線では「東武線」あるいは「東武電車」と呼ばれることが多い。当路線に並行して走り、当線より先の明治時代に建設された東北本線(JR宇都宮線)は「省線」や「国鉄」と呼ばれてきたのに対し、昭和初期に建設された東武宇都宮線は沿線に他の「東武鉄道線」が無いため単に「東武線」と呼ばれた。また、東武宇都宮線開業当時の省線「東北本線」が汽車(列車)線だったのに対し、当線は当初から電化開通し、電車が帝都近郊の乗り物であった時代から電車が走っていたことからも、東京近郊と同様に「東武電車」とも呼ばれてきた。JR発足後、東北本線の上野 - 黒磯間に「宇都宮線」という愛称が定められて以降は、現在も単に「宇都宮線」と呼ぶ場合はJR宇都宮線を指すことが多く、東武宇都宮線を指して単に「宇都宮線」と呼ぶことはあまり無い(正確には、JRの宇都宮線は愛称で正式名称は東北本線だが、東武鉄道の宇都宮線は正式名称である)。
現在も「東武線」「東武電車」と呼び続けられている背景として、沿線に他の東武鉄道路線が無く、また沿線各駅の東武鉄道案内板に「東武線」や「東武電車」の文字が大きく書かれていることなども挙げられる。
駅一覧[編集]
- 全駅栃木県に所在。
- 普通列車は全駅に停車する。特急「しもつけ」の停車駅は「しもつけ (列車)」を参照。
- 全駅の業務を東武ステーションサービスに委託(新栃木駅をのぞく)している。
- 凡例
- 単線/複線 … ∥:複線区間、◇:単線区間(列車交換可能)、∨:これより下は単線、∧:終点(列車交換可能)
駅番号 | 駅名 | 駅間営業キロ | 営業キロ | 接続路線 | 単線/複線 | 所在地 |
---|---|---|---|---|---|---|
TN-12 | 新栃木駅 | - | 0.0 | 東武鉄道:日光線(一部列車は栃木駅まで直通運転) | ∨ | 栃木市 |
TN-31 | 野州平川駅 | 2.0 | 2.0 | ◇ | ||
TN-32 | 野州大塚駅 | 1.9 | 3.9 | ◇ | ||
TN-33 | 壬生駅 | 3.5 | 7.3 | ◇ | 下都賀郡 壬生町 | |
TN-34 | 国谷駅 | 3.5 | 10.8 | ◇ | ||
TN-35 | おもちゃのまち駅 | 1.8 | 12.6 | ◇ | ||
TN-36 | 安塚駅 | 2.2 | 14.8 | ◇ | ||
TN-37 | 西川田駅 | 3.5 | 18.3 | ◇ | 宇都宮市 | |
TN-38 | 江曽島駅 | 2.0 | 20.3 | ◇ | ||
TN-39 | 南宇都宮駅 | 1.8 | 22.1 | ◇ | ||
TN-40 | 東武宇都宮駅 | 2.2 | 24.3 | ∧ |
過去の接続路線[編集]
- 栃木駅:鍋山人車鉄道 - 1956年11月廃止
- 柳原信号所:柳原線 - 1989年11月28日廃止(貨物線)
- 壬生駅:小倉川砂利線 - 1984年2月1日廃止(貨物線)
- 西川田駅:大谷線 - 1964年6月16日廃止
廃駅・廃止信号所[編集]
- 柳原信号所(野州大塚 - 壬生間)
- 花房町駅(南宇都宮 - 東武宇都宮間)
乗降人員[編集]
- 東武鉄道公式サイトより (Internet Archive)
2008年度 | 2007年度 | 2006年度 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
順位 | 駅名 | 一日平均 乗降人員 |
順位 | 駅名 | 一日平均 乗降人員 |
順位 | 駅名 | 一日平均 乗降人員 |
1 | 東武宇都宮駅 | 10,919人 | 1 | 東武宇都宮駅 | 11,078人 | 1 | 東武宇都宮駅 | 11,287人 |
2 | 新栃木駅 | 3,762人 | 2 | 新栃木駅 | 3,817人 | 2 | 新栃木駅 | 3,895人 |
3 | 西川田駅 | 2,575人 | 3 | 西川田駅 | 2,607人 | 3 | 西川田駅 | 2,668人 |
4 | 江曽島駅 | 2,524人 | 4 | 江曽島駅 | 2,606人 | 4 | 壬生駅 | 2,658人 |
5 | おもちゃのまち駅 | 2,443人 | 5 | 壬生駅 | 2,531人 | 5 | 江曽島駅 | 2,576人 |
6 | 壬生駅 | 2,380人 | 6 | おもちゃのまち駅 | 2,368人 | 6 | おもちゃのまち駅 | 2,386人 |
7 | 南宇都宮駅 | 1,280人 | 7 | 南宇都宮駅 | 1,307人 | 7 | 南宇都宮駅 | 1,362人 |
8 | 安塚駅 | 1,165人 | 8 | 安塚駅 | 1,137人 | 8 | 国谷駅 | 1,183人 |
9 | 国谷駅 | 1,059人 | 9 | 国谷駅 | 1,136人 | 9 | 安塚駅 | 1,148人 |
10 | 野州平川駅 | 965人 | 10 | 野州平川駅 | 965人 | 10 | 野州平川駅 | 953人 |
11 | 野州大塚駅 | 431人 | 11 | 野州大塚駅 | 454人 | 11 | 野州大塚駅 | 482人 |
脚注[編集]
- ↑ JR宇都宮 - 北千住間の運賃1940円に対し東武宇都宮 - 伊勢崎線北千住間が1200円。JR宇都宮 - 大宮間の運賃1320円に対し東武宇都宮 - 野田線大宮間が1060円。(いずれも2014年4月1日現在の切符購入による運賃額)
- ↑ ちなみに群馬地区のワンマン車では運転台後方の壁に伊勢崎線舘林以北・桐生線・小泉線・佐野線の全列車と伊勢崎線館林以南の主要列車が掲載された時刻表が提出される。
- ↑ 「鉄道免許状下付」『官報』1928年12月11日(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ↑ 4.00 4.01 4.02 4.03 4.04 4.05 4.06 4.07 4.08 4.09 4.10 4.11 4.12 4.13 東武宇都宮線開通80周年記念イベントを実施! - 東武鉄道、2011年7月21日、2011年7月21日閲覧。
- ↑ 「地方鉄道運輸開始」『官報』1931年8月18日(国立国会図書館デジタルコレクション)
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- 宇都宮線(路線図・駅情報) - 東武鉄道