広島土砂災害

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先人の警告は生かされなかった
先人の警告は生かされなかった

広島土砂災害は、2014年8月20日広島県広島市で発生した豪雨による大規模な土砂災害。広島市北部の安佐北区安佐南区の住宅街を中心に多くの土砂災害が発生した。

名称[編集]

2014年8月には豪雨による大きな被害が広島の他に高知福岡京都秋田など広範囲にわたり発生したことから、気象庁はこの豪雨に特定の地名を付さずに「平成26年8月豪雨」と命名した。この命名については、広島市で特に甚大な被害があったことが反映されていないことに批判的な意見もある。広島市における土砂災害を明示する名称として、報道機関では共同通信・朝日新聞・毎日新聞・産経新聞等が「広島土砂災害」の名称を用いているほか、「広島市北部の土砂災害」(読売新聞)、「(広島)8.20豪雨」(地元紙・中国新聞)などの名称が使われている。

概要[編集]

20日3時20分から40分にかけて、局地的な大雨により、安佐北区可部、安佐南区八木、山本、緑井などの地区で同時多発的に大規模な土石流が発生。複数の通報がよせられた。4時20分頃には可部3丁目付近で根谷川の氾濫が起きた。

安佐南区山本地区では、3時20分にがけ崩れの通報があったが、避難勧告の発令は4時30分になり、1999年に発生した6.29豪雨災害の教訓が生かされなかった指摘がある。

2014年8月22日12時29分付けの日本経済新聞の報道によれば、広島市災害対策本部のまとめで、少なくとも170カ所での土砂崩れおよび290カ所での道路や橋梁に被害が広島市内で確認されたとしている。また国土地理院が航空写真を解析した結果、安佐南区から安佐北区に渡る区域だけで、およそ50箇所で土砂流出が発生しているものとみられている。

原因[編集]

気象[編集]

降雨記録(mm)
観測地点所在地
(観測地点名)
累積降水量 1時間あたり
最大降水量
最大降水量
観測時刻
広島市安佐北区
(上原)
287.0 115.0 8月20日
4時00分
広島市安佐北区
(三入東)
284.0 121.0
広島市安佐北区
(安佐北区区役所)
264.0 102.0
広島市安佐北区
(三入)
256.5 101.0
広島市安佐北区
(大林(国))
237.0 96.0
広島市安佐南区
(高瀬(国))
215.0 87.0 8月20日
3時00分
安芸高田市
(美土里)
89.0 47.5 8月20日
2時18分
広島市中区
(広島)
78.5 46. 8月19日
22時14分

前日19日夜半から降り始めた雨は、市内各所に冠水(本通り、吉島、中広など)と停電(広島駅、本通りなど)をもたらした。爆雷のように響き続ける雷鳴とともに広島市内に降り続いた雨は、翌20日に入った頃に一時的な小康状態に入ったものの、未明には広島市北部を中心に再び猛烈な雨を降らせた。

表を見て分かるように、広島県の中心地である平和公園などでは、冠水はしたものの台風と同じかそれ以下のレベルの雨量であり、そこから10キロ弱の地点で災害が起きていることからも、かなり局地的で、2~3時間という短期間に、集中的な降水があったことが伺える。

安佐北区上原に設置した県の雨量計は、3時までの1時間に92ミリ、4時までの1時間には115ミリの猛烈な雨を観測した。安佐北区三入に設置したアメダスは、19日11時から20日6時までの総雨量が243.0ミリをしるし、1976年の統計以来、観測史上1位の降雨量を記録した。

原因として、秋雨前線に南からの暖かく湿った空気の流入により、連続的な積乱雲を発生させるバックビルディング現象の発生が指摘されている。

地質[編集]

広島県は、水分を含みにくい「まさ土」の地盤が約48%の面積で広がり。また、8月中に降り続いた雨により水分が土壌に蓄積されていた。災害後の調査で、まさ土の地盤だけではなく、堆積岩など比較的固い地盤の流出も確認された。広島市の調べで、被害が特に大きかった、安佐南区八木地区および緑井地区、安佐北区可部東および三入南の4地区で50万m³、搬出するのに100億円以上の費用が掛かることが明らかになった。

複数の専門家が、特に甚大な被害が出た安佐南区八木3丁目を分析した結果、土石流の早さが複数の地点で時速40kmを超え、瞬間最高速度が時速144kmだった可能性があることが明らかになった。

広島県は、土砂災害危険箇所が日本全国で最多の3万箇所以上指定されている。その内、土砂災害警戒区域に指定したのは3分の1にとどまり、今回被災した箇所の一部も警戒区域に指定されていなかった。

被害[編集]

広島県災害対策本部が8月26日16時現在として発表した資料では、死者63人・行方不明者25人・重傷者7人・軽傷者36人になっている。同資料での広島県内の家屋の被害は、全壊25軒・半壊39軒・一部損壊53軒・床上浸水71軒・床下浸水192軒になっている。

また、広島市災害対策本部が8月26日18時現在として発表した資料では、死者63人・行方不明者25人・重傷7人・軽傷36人としている。同資料での広島市内の家屋の被害は、全壊25軒・半壊39軒・一部損壊53軒・床上浸水68軒・床下浸水177軒になっている。

広島県警察は、8月25日までに死因を特定した57人について、窒息死が36人・脳挫傷が18人であることを明らかにした。

死者の数は1999年に同県で発生した6.29豪雨災害を上回り、21世紀以降の豪雨災害では最悪の数字となった。また1つの自治体(市)で1回に発生した豪雨災害としては1982年に長崎市で発生した長崎大水害に次ぐものとなった。

対応[編集]

行政[編集]

批判[編集]

  • 気象庁が、1時15分に土砂災害警戒情報を発表したのに対し、広島市は、4時15分以降に避難勧告を発表した。これに対し、「空振りでも避難勧告を発表するべきだ」と批判されている。また、3時20分ごろから「土砂災害が発生した」と通報されていた。
  • 広島市は、雨量分析の誤りと避難勧告の遅れを指摘された。
  • 広島県は、災害に見舞われた地域において、土砂災害警戒区域指定のための調査を行うも、一度計画を未完に終わらせたことについて指摘された。

民間[編集]

  • 8月20日
  • 8月21日
    • 中国電力広島ガスは災害救助法が適用された地域とその地域に隣接する各自治体の被災者への支援措置を決定した。
    • 各大手銀行は、罹災証明を受けた被災者に対し、金利などを優遇した特別措置を決定した。
  • 8月22日
    • マツダは広島市への義捐金5000万円を寄付した。
    • カープ球団と選手会は、広島への義捐金1000万円を寄付した。
    • 広島電鉄はバス3台の無償運行を行った。

災害救助犬の派遣[編集]

8月20日に、地元NPO災害救助犬2頭を派遣したほか、安佐南区に23日に8団体32頭、24日の7団体33頭派遣するなど、災害後継続して派遣を続けている。

影響[編集]

一般道路[編集]

  • 8月20日未明から、国道54号の広島市安佐南区八木6丁目交差点から安佐南区八木町区までの区間と安佐北区大林が、国道261号の安佐北区鈴張が通行止めとなるが、21日0時30分までに、各地点ともに復旧し、通行が出来るようになった。

交通機関[編集]

イベント[編集]

  • 20日にエディオンスタジアム広島で予定されていた第94回天皇杯全日本サッカー選手権大会3回戦の広島・水戸戦が中止、代替は8月27日に同会場。
  • 21日、広島市は、児童による長崎市との交流事業中止を決定した。これは8月22日〜24日の2泊3日で長崎市から子供らを招き、平和学習会や市民交流をするというもので、1977年から毎年行っているが、開催自粛は初めてだった。
  • 21日、広島東洋カープは、22日〜24日のマツダスタジアムにおけるカープ対阪神タイガースの3連戦において、楽器類(トランペット、太鼓など)の応援を自粛するように呼びかけ、22日の試合開始前に、半旗を掲揚、両チームの選手はユニフォームに喪章をつけ、犠牲者への哀悼の黙とうを行った。
  • 22日、千葉市消防局は、27日開催予定だった全国消防救助技術大会の中止を決定した。理由は、「現在も緊急援助消防隊を含めた多くの消防職員が災害対応にあたっているため」とのこと。
  • 23日、サンフレッチェ広島は今回の土砂災害からの復旧・復興支援のための「がんばろう広島」広島市内土砂災害義援金の募金活動をエディオンスタジアム広島を含む広島広域公園一体で、当日行われたJ1リーグ「サンフレッチェ対セレッソ大阪戦」前に行った。浄財は384万4292円また試合開始前にサンフレッチェの選手は「がんばろう広島」と描かれた復興支援Tシャツを着用するとともに、犠牲者を悼み黙とうをささげた。

皇室[編集]

  • 天皇および皇后は8月22日から29日まで長野県及び群馬県で静養する予定だったが、土砂崩れの被害拡大に伴って取りやめとなった。

観光[編集]

  • 国土交通省発表によると、観光への被害・影響は確認されていない。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]