フレデリック・ウェスト
フレデリック・ウォルター・スティーヴン・ウェスト(Frederick Walter Stephen West 1941年9月29日 - 1995年1月1日)はイギリスのシリアルキラー(連続殺人者)である。妻のローズとともに若い女性を惨殺し遺体を自宅の庭などに埋めた。逮捕後、自宅は「恐怖の館」と呼ばれ世界中に報道され注目された。彼は12件を認めたが何人の女性が彼によって殺されたのか、その正確な総数はもはや知りようがない。
経歴[編集]
- 彼の経歴はその特異性より情報が相当錯綜している。
ウェストはヘレフォードシャー州のマッチ・マークル村に生まれた。ウェストの父親は、娘の処女を奪うのは父親の特権であると公言しており、ウェストの妹と父娘相姦をしていた。ウェストは父親を死ぬまで尊敬していた。ウェストは母親に体罰を加えられていた。ウェストは母親に「村のみんながやっている」と言われ、母親と母子相姦をした。ウェストの父親は彼に獣姦の教育を行った。
彼はやがて嘘でもおべっかでもひたすらしゃべることにより多くの女との性行為に耽った。母親は激しく嫉妬し、しばしば彼をひっぱたいた。やがて彼は兄妹相姦を行い13歳の実妹を妊娠させた。彼は裁判にかけられたが、「みんなもやっていることだろ?」ときょとんとしていた。彼は妹への近親姦の裁判において勝訴して無罪になり、妹は堕胎した。
ウェストはパキスタン人のヒモとの間で妊娠していたスコットランド出身の売春婦リーナ・コステロ(1944年-1971年)と出会った。彼はもてていたし、家族と性行為をしていた。しかし倒錯的な性行為は初めてだったため、あっという間に彼は彼女にはまり込んだ。
それで一応結婚し、義理の娘(1963年-1971年)が生まれ、1964年には実の娘も生まれた。この妻の友人(2人の子供の乳母として同居していたがウェストの子を身ごもっていた。)を殺害したのが連続殺人の始まりだった。
1968年末に彼はローズマリー・レッツ(1953年生まれ)と会った。ローズの父親は統合失調症で攻撃的行動に陥りやすく、ローズの母親は不安と鬱病のためローズを身ごもっていた前後に電気けいれん療法(ECT)を行われていた。
ローズの父親はローズと性行為を行なっていた。ローズも世話を任されていた年下の弟妹と性行為をしていた。ローズをウェストに会わせないようにローズの両親が裁判所命令を取りつけようとしているのを知り、ウェストはローズを妊娠させ1970年10月17日に女児が産まれた。1971年7月ウェストは義理の娘を殺害。1972年1月にはローズと結婚。さらにウェストは8歳になった実の娘と性行為を行なった。その際、義理の母ローズも協力。15歳のときには娘は父の子を妊娠したが、子宮外妊娠だったので子供が産み落とされることはなかった。彼女は16歳の時に家から逃亡した。
この頃から彼は女性を誘拐して強姦殺人を繰り返すようになった。手足の指を切り落とす、手首を切り落とす、膝を叩き切る、膝蓋骨を抜く、肋骨と胸骨を取り除く、首と胴体を切り離すなどの行為を行った。彼は遺体を徹底的に解体するのを好んだ。なぜなら、彼女達から人間性を剥奪することは相手に対する究極の支配権を得るからである。
ローズは売春行為で稼ぎながら実の父親と性交をし続け、ウェストはそれを壁の穴から覗いて興奮していた。1983年、ローズは8番目の子を生み、直後に不妊手術を受けた。ウェストとの間に5人、混血児を3人出産。
ウェストはローズとの間にもうけた娘達も強姦した。拒む娘を「レズビアンだからだ」と非難する。神経が狂いボーとしてしまうと「薬物中毒だ」と決めつけた。やがて1987年6月に娘の一人(ウェストとローズの第一子1970年生れ)も殺害。
だが、1992年8月、娘の友人の12歳の少女が巡査に話し、同月フレデリック・ウェストは娘たちに対する強姦3件、獣姦1件の容疑で逮捕される。同時に5人の子供たちに対する緊急保護命令が出る。ローズマリーも「残虐行為」及び「児童に対する不法性交の奨励」で逮捕された。1993年6月、ウェスト夫妻は法廷に立たされるが、証人である彼らの子供が証言を拒んだため、二人は無罪になった。
しかし1994年2月、殺害した娘の件でグロスター署の捜査チームが正式な捜査令状を持ち、ウェストを訪れ、翌日ウェストは娘の殺害を自供。「殺意はなかった、事故だ」と主張。だが、足が「3本」出てきたため、ウェストは3月上旬にかけ、12件の殺害を自供。被害者には著名な作家キングズリー・エイミス卿の姪も含まれる。
1995年元日、ウェストはローズに「新年おめでとう。ありったけの愛をこめて」と書き残し、裁判にかけられる前に独房で縊死を果たした。これにより全ての真実は封印される事になった。同年11月、ローズマリー・ウェストは10件の終身刑を受け、控訴は棄却され刑は確定。弟も姪ともうひとりの少女強姦罪によって逮捕され縊死した。
自宅の「恐怖の館」は、周辺住民の希望もあって取り壊されている。
被害者[編集]
前述したように、ウェストの虚言癖やローズの黙秘もあり、正確な犠牲者の数は分かっていない。 ただし、快楽殺人者は大抵殺害のペースを速めていくこと、最後の殺害は前の殺人と8年の開きがあることから、正確な犠牲者の数は判明している分よりも多いと推測できる。
- アンナ・マクフォール (Anna McFall)
- シャーメイン・ウェスト (Charmaine West)
- リーナ・ウェスト (Rena West / Catherine Bernadette Costello West)
- リンダ・ゴフ (Lynda Gough)
- キャロル・アン・クーパー (Carol Ann Cooper)
- ルーシー・パーティントン (Lucy Partington)
- テレーズ・シーゲンターラー (Therese Siegenthaler)
- シャーリー・ハバード (Shirley Hubbard)
- ワニータ・モット (Juanita Mott)
- シャーリー・ロビンソン (Shirley Robinson)
- アリソン・チェンバーズ (Alison Chambers)
- ヘザー・アン・ウェスト (Heather Ann West)
他にも1968年にメアリー・バストホーム(Mary Bastholm)という15歳の少女が行方不明になっており、消息を絶つ直前にウェストと一緒にいるところを目撃されていることから、彼女もウェストの手にかかったと見られている。ただしメアリーの殺害についてはウェストは否認しており、死体も発見されていない。
参考文献[編集]
- 「恐怖の館―殺人鬼フレデリック・ウェストの生涯」(ジェフリー ワンセル,訳 飯島宏)ISBN 410537401X