無戸籍者
無戸籍者(むこせきしゃ)とは戸籍を有しない人間である。現在においては、戸籍制度が実質的に機能している国は日本のみであるので、本項では主に日本における事情を述べる。
戸籍法第49条及び第52条では、生まれた人間については必ず出生届を出して戸籍を作成することになっ[1]ているが、何らかの事情によって親が戸籍をその手続きを怠った場合に無戸籍者が発生する。無戸籍者が保護された場合には、自治体の首長の判断で当該者の戸籍を作ることも可能である。そのため、両親も身元も不明の捨て子であっても通常は無戸籍者にはならない。
無戸籍と無国籍は同じではない。例え無戸籍であっても、出生時に日本国籍の取得条件を満たしている者は自動的に日本国籍を有する。しかし、公職選挙法附則第2項及び地方自治法第20条に拠って、「戸籍法の適用を受けない者の選挙権及び被選挙権は当分の間停止されている」と規定されているために、無戸籍者は日本国籍を有していても参政権を行使できない。
無戸籍者になる理由[編集]
- 離婚後300日以内においては、遺伝上の父の子として登録できず、そのまま出生届を出すと前夫の子と推定されてしまうため、遺伝上の父親の子として認定されるためには、前夫の協力が必要となるが、心情的に協力を求めたくない場合や、そもそも協力を得る事すら困難な場合において、母親が出生届を提出していない場合。
- 親が無戸籍者であり出生届に親の本籍が記載できない場合
- 親が制度を理解していないため届け出ない場合
- 親の事情によって出生証明書が無い場合
- これは戸籍を作成できない要件ではないが、実際に役所に行くと書類不備だと言われたりして親がそのまま届け出ない状態を放置したりすることがある。戸籍の作成は無償であるが、実際に無戸籍の子供が保護された時に親が「金が無くて戸籍を作れなかった」と証言した実例がある。
- 病院などに頼らず自宅出産したために出生証明書が無い
- 医療費踏み倒しなどで病院から逃げ出したために出生証明書が無い
- 代理出産によって外国で発行された出生証明書を受付拒否した事例がある
- 親の信条や宗教観による場合
無戸籍の解消[編集]
出生届が出ていない結果無戸籍となっている場合は、父母または出生届を出すべき者が出生届を出すことにより、無戸籍を解消できる。出生届は、14日間の届出期間を経過していても有効である[2]。しかし、出生届を出すべき者がいない場合はこの方法では無戸籍を解消できない。
無戸籍者本人は、家庭裁判所の許可を得て就籍(しゅうせき)することにより、戸籍を得て無戸籍を解消することができる。[3][4][5]
身元不明者の場合[編集]
戸籍が作成されている(と推測される)にも関わらず、特殊な事情により本来の戸籍が不明である人物に対しては、家庭裁判所が二重戸籍となる可能性を容認した上で就籍を許可する場合がある。具体例については就籍許可申立事件を参照のこと。
中華人民共和国での事例[編集]
中華人民共和国では一人っ子政策のため二人目の子供を作ると罰金を取られるため戸籍を作れない子供がたくさんいる(罰金さえ払えば何人作っても良く、裕福層では兄弟が多いことは珍しくない)。中国で無いを意味する黒を当てて黒孩子(ヘイハイズ)、黒人や黒子などと呼ばれている。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
脚注[編集]
- ↑ () 法務省 出生届 [ arch. ] 2014-10-1
- ↑ 戸籍法第46条 届出期間が経過した後の届出であつても、市町村長は、これを受理しなければならない。
- ↑ 戸籍法第110条 本籍を有しない者は、家庭裁判所の許可を得て、許可の日から十日以内に就籍の届出をしなければならない。
- ↑ 手続き・届出110 就籍届
- ↑ 就籍許可手続に関する諸問題宇野栄一郎、駒澤大学法学部研究紀要25、p114-p122、1967年3月15日