多世界解釈

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多世界解釈(たせかいかいしゃく、many-worlds interpretation)とは、量子力学における解釈のひとつである。 Hugh Everett IIIが、波動関数の収縮のない定式化を試みたことに端を発する解釈である。

概要[編集]

今日の量子力学の主流解釈であるコペンハーゲン解釈では、射影仮説波動関数の収縮)を受け入れている。 コペンハーゲン解釈は、ただ、実験結果と整合させるためだけに射影仮説を適用しており、そのメカニズム等を説明をしていない。 また、射影仮説を適用できる「観測」の定義も曖昧である。 そうした曖昧さを気持ち悪いと思う物理学者は少なくない。

そこで、Hugh Everett IIIは、波動関数の収縮の必要のない定式化を試みた[1]。 全ての相互作用を量子もつれと仮定し、異なる状態ベクトル間では干渉が生じないものとして、波動関数を定式化した。 観測者と観測対象が量子もつれになることで、観測者視点における可観測量が確定するとされる。 しかし、実験結果と整合させるために必須であるとされる[2]射影仮説のない、Hugh Everett IIIの仮説は厳しい批判にあった[3]

これに対して、Bryce Seligman DeWittは、射影仮説に相当する多世界を分離させるメカニズムを導入し、多世界解釈と名付けた[4]。 その後、量子デコヒーレンス理論[5]が組み込まれて、現在の多世界解釈の形となったとされる[6]

多世界解釈は、射影仮説と同等の仮定が含まれているため、「コペンハーゲン解釈を言い換えているだけ」とされる[7]

注釈[編集]

  1. Hugh Everett, Relative State Formulation of Quantum Mechanics, Reviews of Modern Physics vol 29, (1957) pp 454-462.
  2. 清水明「量子測定の原理とその問題点」
  3. 清水明"Modern Theory of Quantum Measurement and its Applications"
  4. Bryce Seligman DeWitt, Quantum Mechanics and Reality Could the solution to the dilemma of indeterminism be a universe in which all possible outcomes of an experiment actually occur?, Physics Today,23(9) pp 30-40 (1970) "“every quantum transition taking place on every star, in every galaxy, in every remote corner of the universe is splitting our local world on earth into myriads of copies of itself.”"also April 1971 letters followup
  5. Heinz-Dieter Zeh,On the Interpretation of Measurement in Quantum Theory, Foundation of Physics, vol. 1, pp. 69-76(1970)
  6. Colin Bruce著/和田純夫訳「量子力学の解釈問題―実験が示唆する『多世界』の実在」P.179
  7. 清水明"Modern Theory of Quantum Measurement and its Applications"」

関連項目[編集]