増幅
増幅(ぞうふく)とは、信号の入力に対して元の信号よりも拡大された出力信号を得る作用をいう。 拡大と言っても、外部からの勢力(エネルギー)の供給なくしてのそれは、普通は増幅とは呼ばない。例えば、水圧機などや、梃子の原理による、力の拡大は確かに大きな力に拡大されるのは確かだが、仕事量は変化しない。従って、「拡大することである」とは条件付である。力学的な例としてはパワーステアリングなどが挙げられる。ハンドルを回転させるのに、勢力の補給がされ、タイヤの同一の回転角を弱い力でも得ることができ、かつ、時間も余分に必要としない。単なるギヤでの倍力装置ではそうはならない。その分、多くを回転させなくてはならない。たまたま、大型バス、大型トラックを観察すると、ハンドルも大きい径のものが搭載されているので、人力をギヤを使って強めていると思う方もいるかも知れない。そのような拡大では操舵装置としては機能しないで、事故を起こしてしまうであろう。物理学とは違い、日常的言葉としては増幅という用語は結構、単に無条件に拡大される事象を指すことも多いようである。ただ、増幅とは、物理学、工学においても、結構、深い意義を考えずに「物理現象を拡大することである」として、拡大しさえすれば増幅ということも珍しくないのが現状である。変圧器での電圧の拡大もその意味では増幅作用とよんでよいことになるし、容認もされているようであるが、最大の理由はその意義についての意識のなさからである。「意志と力」は生物に於いては勢力源としては食物で供給され、心の増幅作用の結果として力があるといえよう。機械のロボット等も増幅器の範疇に入る。道具や機械を増幅作用の観点からそれを有するものとしないものに分類することも出来るであろう。
増幅対象の物理現象としては、電気信号(電圧・電流およびこれらの積としての電力)、光、空気圧・油圧など流体の圧力、機械的な振動や変位、音響・音波などがある。
増幅にはもとの物理現象を直接拡大する方法と、各々の物理現象を別な物理現象に置き換えて増幅し、それをもとの物理現象に戻すことで増幅を行う場合もある。前者はたとえば電気信号の増幅器(増幅回路)による増幅、ラマン増幅器による光増幅、後者は、マイクロフォン/スピーカーと増幅回路を用いた音響増幅や、光-電気/電気-光の変換素子を用いた光増幅などがそうである。
増幅作用を持つ機能単位、すなわち増幅器や増幅回路などにおいては、入力の物理現象のもつエネルギーそのものを拡大するのではなく、増幅器に外部から供給したエネルギーを、入力に応じて制御することにより、拡大された出力として外部に取り出している。例えば電気信号の増幅回路は、トランジスタなどの素子に電源回路からエネルギー(電圧×電流)を供給し、入力信号で素子に流れる電流変化を制御している。
関連項目
電子工学
光エレクトロニクス
相乗効果 - 社会、経済などの分野、あるいは比ゆ