反日
反日(はんにち)とは、日本(政府・企業・人・社会・文化・制度・歴史など)の一部または総体に対して反発や反対する感情や主義・主張。一つまたは複数の日本に関わる事象に関して反発または反対することをきっかけに、日本全般に対する反感と発展することもある。
一般に、中国、韓国、北朝鮮の3カ国では、1920年代から1940年代まで領土を侵された事から反日感情が高い(特定アジア参照)。その他に、貿易摩擦に端を発する経済的な理由からの一時的な反日感情は1980年代から1990年代にアメリカやヨーロッパでもみられ、当時「ジャパンバッシング」(日本叩き)と呼ばれた。
対義語は親日。韓国では「昼は反日、夜は親日」と言われる。
反日現象[編集]
日本国外での現象については、日本・日本人・日系人・日本文化・日本製品などを排斥・非難する行為を形容する語として用いられる。これらの現象は、日本の政治家や政府要人の発言特に歴史認識の発言に伴って現れることが多い。また、これらの現象は、日本による支配や、第二次世界大戦などで生まれた日本国、日本人に対して敵対或は反発する感情としばしば結び付けられる。邦人居住者への暴力行為や嫌がらせ、日本製品の不買運動、あるいは領事館や日系商店の破壊などの不法行為、日本人侮辱発言も発生しており、日本政府はこのような活動に対して、邦人の安全確保や賠償と不法行為者の摘発、また組織的な活動が対象国政府からの内政干渉にならないよう抗議し続けている。反日運動を起こす国の政府が反日運動を国内不満のガス抜きとして利用していると考える人もいる。
言葉としての反日[編集]
「反日」もしくは「親日」を判断するには、まずもって「日本」とは何かを定義しなければならないが、万人が認め得る「日本」の定義を示すこと自体が無理な話で、勢い各人が各人の価値観から判断する「日本」を基準にいずれなのかを判断する以外に方法はない。このため、レッテル張り(→ステレオタイプ)以上の役割を果たすことはない。
言葉としての「反日」は政治的、思想的、国益観の違いの対立から日本人が同じ日本人に対して使う場合もある。
誹謗中傷用語としての性格が強い。主に右派のうち、国家主義や民族主義、国粋主義に立つ者達が、次に挙げる人々を非難する文脈で用いることが多い。
- 社会主義、共産主義、無政府主義(アナーキズム)を掲げる人々に対して。
- 日本の国益を害していると考える主張、団体、人物などに対して(用例として井沢 2004参照)。
- 「戦後民主主義教育」(自虐史観)を受けて、日中戦争から太平洋戦争までの大日本帝国のあり方、国家体制や戦争について否定的見解を持つようになった日本人に対して。
- 在日朝鮮人などを中心とする、 日本・日本民族に対し排斥的な思想を有する者。もしくは、これらのうち反社会的な行動・偏った民族主義(反日本民族主義)を持つ者。
使用例としては、「反日分子」「反日主義者」「反日日本人」「反日民族」など。「これら反日日本人の歴史認識はGHQのウォー・ギルト・インフォメーション・プログラムによって植えつけられた、間違ったものである」というのが江藤淳を始めとする右派の主張であり、近年では朝鮮人によって流布された反日本的なプロパガンダがこれに並ぶ。「売国奴」と並列的に用いられるケースもある。
現在、日本国内の政治勢力が反日を自称することは稀であるが、1970年代には日本の新左翼の中で、自己否定論に基づく反日思想が流行し、一部の人々は「反日」を公然と自称するに至った。当時新左翼の間で論じられた様々な反日思想の中でも最も過激な「反日亡国論」では、韓国人の反日感情を煽り、韓国軍のクーデターを誘発させて「親日政権」を打倒、そして「反日軍事政権」が日本に宣戦布告、日本人を殲滅するというビジョンを描いていた。
特に反日思想に基づいて日本の一般大衆を標的とするテロ活動に走った東アジア反日武装戦線の行動はよく知られる。彼らの過激な行動は、左派を含む日本のあらゆる階層の人々の猛烈な非難を呼び、全く支持を得られなかった。しかし、自己否定論の浸透は従来の左派の間でもみられ、1970年代以降は日本の一般国民の戦争の加害責任を問い直す傾向が強まり、彼らが批判派から反日と呼ばれる原因となっている。1986年、赤報隊事件の際、犯行グループが朝日を「反日分子」と呼んだことが、保守派にこの用法が普及したきっかけであるとの説もある。
また、日本人以外であれば、朝鮮総連・韓国民団やその関連組織などで日本人に対する差別的発言や、日本・日本人へのテロを正当化する教育が続けられている事実がある。終戦後在日朝鮮人が引き起こした犯罪や暴動の記憶から、これら団体にもともと批判的な者が多かった高齢層に加え、これまで在日コリアンに対し無関心であった中年・若年層でも、朝鮮総連や韓国民団への批判が年々増している。
西部邁は、このような「反日」規定を言い募る者たちを保守の範疇に入れる事を批判している。
反日教育[編集]
中国・韓国・北朝鮮における歴史教育に対し「第二次世界大戦における日本の侵略性、加害者性を誇張し、これらの国が受けたとする被害を殊更強調する教育」をしているとして反日教育と呼ぶことがある。中国では教科書に日本を敵視する教育を行っているとの声があがることが多い。韓国でも国定教科書を用いて韓国政府に都合の良い内容や、実際の史実と乖離した歴史教育をしているという声があがることがある。
韓国では2005年6月、桂陽中学校の生徒らが日本に爆弾を落としている絵、日本人を猿に見立てた絵、日の丸を焼いたり踏みつぶしている絵などを描き、仁川地下鉄の橘峴駅のプラットホームに展示されたことがあった。
日本国内においては、朝鮮総連が朝鮮学校において、反日本的要素を含んだ民族教育を実施している。その教育の多くが、日本人による被害意識を強制するものであった。
反日デモ[編集]
日本に対する抗議行動、パフォーマンス的なデモンストレーションが暴動に発展したこともある。首相や天皇の人型や、国旗の日章旗や旭日旗を燃やしたり踏み付けたりするなどすることが多い。
韓国の活動家は昭和天皇や今上天皇、あるいは現職や過去の著名な総理大臣の肖像画像を踏みつけたり燃やすなどすることがある。韓国では公用の外国国旗を汚辱したり、訪問中の外国元首を冒涜することは刑法107条および109条で禁止されているが、パフォーマンスとしておこなわれる反日活動については「公用の国旗」ではなく、かつ日本政府首脳が訪韓中でない場合、処罰の対象外である(従って、日本政府首脳の訪韓中のデモ活動や公用の日本国旗の破損が確認された場合は、摘発が行われることもある)。
大学生を中心とした中国国内の反日デモ活動は政府の承認を得た上で行われているが、これらのデモは、共産主義体制の矛盾点から来る批判をかわすために、政府が主導して反日感情を煽ってデモ活動に仕立て上げていることが多く、「反日デモ=反政府デモ」という図式が存在する、という指摘も少なくない。中華人民共和国は言論の自由や表現の自由が必ずしも保障されておらず、政府ならびに中国共産党への抗議活動を禁じている。中国の大学学生会も政府や中国共産党の指導下に置かれており、自主的な政治活動は認められていない。