三井住友銀行副支店長横領事件

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南橋 浩志
南橋 浩志

三井住友銀行副支店長横領事件とは、三井住友銀行大森支店副支店長・南橋 浩志(54)による、11億円横領事件である。

事件概要[編集]

銀行システムの穴を突き、それと大して違わない方法で実際に多額の現金をかすめ取っていた三井住友銀行の元行員の男が逮捕された。

「事務処理のスペシャリスト」として知られた男が銀行から抜いたカネは実に約11億円。顧客の預金は、数字の操作によって愛人のマンションと子供の教育費に消えていった。

きっかけは、行員の単なるミスだった。

平成19年ごろ、当時、三井住友銀行成城支店のお客さまサービス課長だった男のもとに、行員から相談事が持ちかけられた。

外国為替取引で数字を間違えて入力してしまった。直してほしい」

既に事務処理のスペシャリストとして知られていた男は、特別なコードを使ってシステムを為替の大暴落などに備えた非常用のモードに変え、数字を正常な数値に打ち直した。

そして、気づいた。間違った数値を入力してもシステム上、何も齟齬が生じないことを。いわゆるプログラムの「バグ」だったのだが、これを悪用すれば不正に使えることを思いついたのだった。

捜査関係者によると、男は野放図に使っていた外食代などで借金がかさんでいた。間もなく、自分の資産を増やすためにシステムのバグを悪用し始めた。

システム上、公正な取引となっているためバランスシート上、何の祖語も生じておらず、銀行側は気づかなかった。不正を察知したのは、国税当局だった。当局の指摘を受け、三井住友銀行が調査したところ、男は関与を認め、解雇された。

2016年10月12日警視庁捜査2課は電子計算機使用詐欺で元同行大森支店副支店長、南橋浩志容疑者(54)を逮捕した。

南橋容疑者が考案した手口はこうだ。

まず、架空の会社名義で数十万円程度の銀行口座を開設。そして、米ドルを買う。

この際、システムを為替の大暴落などに備えた「非常用モード」に切り替え、為替レートを過剰に円高なレート、たとえば1ドル10円程度に設定する。そうすれば、同じ金額の円で、10倍の金額の米ドルに換えられるからだ。そして、米ドルを買ったところで通常のレートで日本円に換え直す。こんな単純な作業で一気に預金は10倍になる。預金通帳に「0」を足しているのと変わらない。

銀行関係者は「あとで調査したところ、この手口で現金をだまし取っていたのは南橋容疑者だけだった。よほど手続きに精通していなければ、見付からないシステム上のバグだった」と指摘する。

南橋容疑者が会社から抜き取った11億円は、どこに消えたのか?

捜査関係者は「若い愛人に1億円のマンションを買い与えたり、バッグなどを買ってあげたり。自分の飲食代やFXなどの投資でも穴を相当あけたようだ」と話す。

一方で、「堅実」な使い方もしていた。捜査関係者によると、そもそも3億円の現金は丸々自宅で見つかり、預金口座にも2億円余りが見つかっている。使い切れていなかったのだ。

さらには、家のローンに加えて子供の教育費などにも充当していた。

南橋容疑者は既に離婚しているが、子供はまだ20代。同行関係者は「南橋容疑者は非常に子供思い。教育費を払うとともに、子供にだけは今回の事件の影響が最小限になるよう配慮をしていたようだ」と話す。

とはいえ、親が逮捕されて平気でいられる子供はいない。メガバンクの中堅行員であれば、普通に働くだけで、十分子供の教育費は賄えたはず。「身から出たさび」という言葉は南橋容疑者のためにある。

システムの不備を突いた刑事事件は後を絶たない。2016年6月には、三菱電機社員が同様に会計システムの不備をついて現金を詐取したとして、警視庁捜査2課が逮捕。計4億円以上を詐取したとみられる。

2015年7月には仮想通貨「ビットコイン」の取引システムの不備を悪用して3億円以上を着服したとして、取引所CEOが逮捕された事件もあった。

金融業界を筆頭に、国内では不正融資問題や不良債権問題を受けてコーポレートガバナンスコンプライアンスの強化をうたい、システムの改定などを進めてきた。だが、「新しいシステムには必ず新しい不備がある」と金融関係者は指摘する。

三井住友銀行は南橋容疑者の手口が通用しないシステムに変更。他に被害が発生していないことは確認したというが、金融関係者は「今後も不断の努力を続けなければ、第二の被害が発生する」と警鐘を鳴らしている。

関連項目[編集]