トヨタ・メガクルーザー
メガクルーザーは、トヨタ自動車が生産していた自動車である。陸上自衛隊向けの高機動車の民生バージョンとして、1996年1月に登場した多目的車。航空自衛隊と海上自衛隊は高機動車ではなく、この車種を採用している。
概要[編集]
登場時にはその大きさや外観から「和製ハマー(H1)」とも呼ばれた[1]。エアコン、オーディオ取り付け2DINスペース(センターコンソールにあり、運転席側を向いている。助手席側からは操作できない。)などある程度の快適装備は装備しているが、高価格にもかかわらずタコメーターすらないメーターパネルやATしか用意されないなど、開発の主眼が災害時の救援や人命救助などの任務を迅速に遂行する点に置かれており、いわゆるSUV的な一般家庭向けの自動車ではない。最終組み立ては岐阜県各務原市の岐阜車体工業で行なわれた。
リアに油圧作動の逆相(小回り)4WSを装備しており、最小回転半径(外側前輪の軌跡)は5〜6mであるがリア・オーバーハングを振り出すため、狭いところでの転回には注意が必要となる。センタリングスプリングによるフェイルセーフ機構を持ち、油圧系統の異常時やエンジン停止時には中立を保つ。
定員は6人となっている。RAV4(SXA10系)のものを流用した着脱式のサンルーフも選べるが、これは「作業用ハッチ」の意味合いが強い。このサンルーフに合わせるため、前部ルーフは不自然に膨らんでいる。
フレーム下やサスペンション・アームの処理が非常に良く、ハブリダクションドライブを採用しているため、最低地上高の420mmは実用数値である。ハブリダクションによってホイール内にブレーキを装着できないためインボード式ディスクブレーキを採用している。止まる直前に強くブレーキをかけているとハブリダクションのバックラッシュとサスペンションのたわみで船のようなピッチングが起こる。トルク感応型LSD(トルセンデフ)のほかにマニュアル・デファレンシャルロックを持ち、さらにタイヤ空気圧調節機能まで備えるため、「このクルマでスタックするようなら、後はクローラ(履帯)付きの車両を使う以外に走行手段はない」とまで言われる。
高機動車と異なりランフラットタイヤではないため、スペアタイヤを装備する。ただし人間の体力で上下させるには無理があるため、タイヤを動かす際には標準装備の電動ウインチを使用する。地上高の高さもあいまってスペアタイヤキャリアの位置が非常に高いため、背面キャリアでありながら、トラックのフレーム下キャリアと同様なタイヤ引き上げ用チェーンブロックが装備されている。ボンネットは一般的な積層FRPで、高機動車の真空成型品に比べ、ややグレードが落ちる。サスペンションは高機動車と同様、四輪独立懸架(ダブルウィッシュボーン)式となっている。
発売当初は興味本位の一般ユーザーの購入や企業の広告塔として利用された例も見られたが、時期が経ち落ち着いてくると、メインユーザーはJAFや消防、地方公共団体などとなっている。
価格は962万円(エンジンが変更された1999年以降は980万円)で、諸費用を含めると1010万円となり、日本の自動車メーカーの市販車乗用車ではホンダ・NSXとほぼ同等の最高価格帯クラスに位置していた。車体色は標準では白と紺の2色が用意されており、室内はビニールのセミトリムとされ、色はグレーであった。2001年8月で生産は終了となった。一時期、ホイールベースを変更して、ダイナやコースターにもこの高機動シャーシが使われていた。
関連項目[編集]
- トヨタ自動車
- トヨタのエンジン型式一覧
- トヨタ・ダイナ
- ハマー (自動車)
- 高機動車
- 災害派遣
- トヨタ・FJクルーザー
- フルサイズ
- さなげアドベンチャーフィールド
- トヨタ・ランドクルーザーシグナス - ランドクルーザーの上級グレード。メガクルーザーの実質的な後継車種、メガクルーザーとは異なり前方のみトヨタエンブレムが装着されている。消防車や災害派遣車としての需要も高い。
脚注[編集]
- ↑ From TAM Archives GM・ハマーH1 & トヨタ メガクルーザートヨタ博物館だより(No.77 2008年12月号)