ダンプカー
ダンプカー(dump car)とは、荷台を傾けて積荷を一度に下ろすための機械装置を備えたトラックのことである。 ダンプトラック (dump truck) 、またはダンプともいい、主に土砂や産業廃棄物などを運搬するために用いられる。ダンプ (dump) とは、「(荷物などを)どさっと下ろす」という意味の英語であり、土砂を排出する様子がこれに合致することからこの名がついている。なお、英語の dump car は主に鉄道車両を意味し、自動車は dump truck と呼ぶことが多い。
鉄道の貨車でダンプカーのように荷台を傾けることができ、土砂を輸送することを主目的にした車両は土運車と呼ばれる。
目次
機構[編集]
荷台を油圧シリンダの伸長する動作で傾け、重力により土砂を排出する構造になっている。様々な分類方法がある。以下に各種の分類方法を示す。なお、荷物を積む箱状の部分を「ベッセル」という。
形態による分類[編集]
一般公道を走行可能な「普通ダンプトラック」と、鉱山やダム建設などの大規模工事現場など向けの「重ダンプトラック」に分かれる。
普通ダンプトラック[編集]
一般公道を走行することを前提として、トラックのシャシに荷台を架装し、平坦地での走行性能を保つ形態に設計されている。
日本では普通ダンプトラックは最大積載量11トンまでと定められている。街中で一般的に見かけるダンプトラックの最大積載量は、小型のものが概ね2 - 4トン、中型のものが概ね5 - 8トン、大型のものが10トン程度である。また、更に小さな、軽自動車の規格に合致する最大積載量350kg以下の車両もある。普通ダンプトラックの場合、荷台容積が最大積載量÷1.6を超える場合は土砂の運搬ができない(この場合土砂禁ダンプとなり、自動車検査証には「積載物品:土砂以外」と記載される)。土砂運搬ダンプに固定された「差し枠」を取り付けることは違法行為である。なお、1999年の規制緩和により土砂運搬型で牽引タイプのダンプトレーラー(最大26t積)が法律上認められる事となったが、諸事情によりあまり普及はしていない。
重ダンプトラック[編集]
オフロードダンプトラックを参照。
荷台の構造による分類[編集]
荷台を後方に傾ける方式のものが一般的である。これをリヤダンプという。このほかに、荷台を左右側面に傾ける方式のサイドダンプや、ピンの組み換え等で後方にも左右にも傾けることのできる三転ダンプ、高所へ積荷を下ろせるリフトダンプもある。
また、アオリ(ゲート)の形状により、一般的な下開き形のほか、開口面積の大きい上開き形、アオリがなく、後部に傾斜がつけられたスクープエンド形がある。
普通ダンプトラックではリンク機構併用の油圧シリンダーで荷台を上下させるのが一般的であるが、重ダンプトラックの場合はリンク機構がなく、シリンダーで直接荷台を操作する。動力はPTO経由で供給される(軽トラックベースのダンプは電動油圧式が多い)。
荷役以外では、空荷で駐車する場合、荷台に雨水や雪が溜まらないよう、持ち上げたままエンジンを切ることもできる。
舵取り機構による分類[編集]
一般的な自動車と同様に、前輪で舵をとるものをリジッドフレーム式といい、フレーム(車体)自体が屈曲して舵をとるものをアーティキュレート(関節)式という。アーティキュレート式は、サスペンションにスプリングを持っておらず、関節部がねじれ方向の動き(ローリング)に対応することで、不整地でもタイヤが浮くことが無く、高い走破性を確保している。
製造[編集]
普通ダンプトラックは、自動車メーカーがキャブ(運転席)やエンジンなどのいわゆるシャシ部分を製造し、架装業者が車体(荷台)と荷台装置部分を製造する。重ダンプトラックは、それぞれのメーカーで一貫して製造される。
主なダンプカー製造業者[編集]
- 架装業者
- 重ダンプトラック製造業者
車両番号[編集]
日本では、土砂等を運搬する大型自動車による交通事故の防止等に関する特別措置法(通称:ダンプ規制法)により、大型自動車に分類される普通ダンプトラック(公道を走行するもの)については、荷台に所定の表示番号を表示することが義務付けられている。
この番号には、管轄する運輸支局、経営する事業の種類(丸囲みの漢字1文字)、および車両固有の番号の情報が含まれている。事業の種類は運送業の「営」、建設業の「建」、砂利販売の「販」など7種類に分類される。
なお、ダンプトラックの車両番号は、車両の登録番号(ナンバープレートに表示されている番号)とは別である。もちろん、公道を走行するにはナンバープレートの取得と表示も必須である。
ダンプカー表示番号の詳細[編集]
表示番号は、土砂等を運搬する大型自動車による交通事故の防止等に関する特別措置法施行細則(以下、法という)第6条の定めるところによりダンプカー荷台の両面・後面に表示しなければならない。また法の別表第1によると、文字の高さ20cm、文字と数字の幅15cm、記号の幅20cm、文字と記号の太さ1.5cm、数字の太さ3cmとされている。表示方法は、「ペンキ等により左横書きとし、文字、記号及び数字は黒とし、地を白色とすること」とされているが、黒地に白色の表示なども見られる。
表示方法は、「地名 分類(漢字一字) 番号」とされている。
地名については法の別表第2の定めるところにより、「○○運輸支局」や「○○自動車検査登録事務所」などの「○○」の部分を表示する。ご当地ナンバーの地名表示は適用されない。基本的にはナンバープレートの地名表示と同じだが、一部異なる地域がある。それらを以下に挙げる。また、表示番号の地名は2文字のため、「いわき」「春日部」「習志野」など3文字表記の場合、頭2文字が表示されて「いわ」「春日」「習志」となる。
- とちぎナンバー - 「佐野自動車検査登録事務所」のため「とち」ではなく「佐野」。
- 三河ナンバー - 「西三河自動車検査登録事務所」のため「三河」ではなく「西三」。
- 尾張小牧ナンバー - 「小牧自動車検査登録事務所」のため「尾張」ではなく「小牧」。
分類に使用される漢字一文字については、正しくは「経営する事業の種類を表示する文字及び記号」という。法の別表第3の定める7種類があり、経営する事業の種類によって決まっている。またこの漢字は○囲みである。
番号については、5桁以下のアラビア数字とされている。
表示されている文字の書体については様々で、通常はゴシック体だが明朝体のものもあり、同じ書体でも微妙な違いがみられるものもある。中には手書きのように見えるものもある。
また、表示方法についてはいくつかの例外がある。
- 前述したように白地に黒ではない表示がある。
- 数字が漢数字であったり、デジタル数字であったりするものがある。
- 分類の漢字一字の○囲みがない、あるいは○囲みの代わりに漢字の前に「丸」と書いてあったり、○ではなく◎や□で囲んであったりするものがある。
- 表示番号すべてを消していたり、○の中に文字がなかったりするものがある。
- 地名表示に略字を使っているものがある。
- 5桁の数字が分類用の漢字から放射状にそれぞれ斜めに書いてあるというものがある。
- 横書きでなく縦書きであったり、地名と漢字がローマ字表記であったりするものがある。
対象が「土砂等を運搬する大型自動車」のため、土砂等を運搬しないダンプカー(産業廃棄物などを積載)では表示せず、代わりに「土砂等積載禁止」などと表記される。また、大型車以外のダンプカーにも表示はされない。
関連項目[編集]
- 建設機械
- 電波法(アマチュア無線#法を守らない運用の問題)
- オフロードダンプトラック(重ダンプトラックに関する記事)