キャッチコピー
キャッチコピー、キャッチフレーズとは、主に商品や映画、作品等の広告など、何らかの告知や宣伝に用いられる文章、煽り文句である。
1文、1行程度のものから、数行に亘る物まで数多くのキャッチコピーがある。商品広告や宣伝においては、キャッチフレーズが商品の印象を決め、その出来不出来が商品自体の売れ行きすらをも左右する要因として重要視される。
キャッチコピーは和製英語で、正しくは "advertising slogan" もしくは "tagline(タグライン)" 。日本語では惹句とも呼ばれる。
職業としてキャッチコピーを創作する者をコピーライターという。
目次
歴史[編集]
江戸時代には既に「引札」と呼ばれるチラシがあったが、そこに独創的な戯文を書いて耳目を集めることを始めたのは平賀源内であると言われる。後に多くの戯作者や狂歌師によって同様の宣伝文句が書かれるようになった。
江戸時代から3世代後の高度経済成長が果たされ消費社会が成熟すると、やがて広告は値段や性能などの製品の具体的長所を語ることだけでなく、もっと漠然としたイメージや時代の空気を表現することで消費者の共感を得ることを目指すようになった。開高健をはじめとし、糸井重里や川崎徹、仲畑貴志といった新しい世代が活躍し、コピーライターは人気の職業になった。
色々なキャッチコピー[編集]
コーポレートスローガン[編集]
個々の商品ではなく、企業のイメージや経営方針を表したものを、特に「コーポレートスローガン」と呼ぶ。 なお、企業によっては「タグライン」「コーポレートステートメント」「ブランドプロミス」と表現する場合がある。
知的財産としてのキャッチコピー[編集]
著作物としてのキャッチコピー[編集]
一般に、キャッチコピーは短いものである。当該キャッチコピーが充分に短く普通に使われる言葉をたまたま商品広告などに使ったというケースでは創作性に欠けるものとして著作物に該当しないとされる[1]。しかし、ある程度の長さを持つ場合には著作物性を帯びる場合があることは否定できない。短くとも著作物性を認め、ただし、著作権を主張できる幅が狭まるとする見解もある[2]。裁判例では五・七・五調の交通安全標語が著作物であるとされた例もあり[3]、キャッチコピー、キャッチフレーズ、スローガンと称するものが全て著作物に該当しないということではなく、ケースバイケースで著作物性があるか判断されることに注意しなければならない。
商標としてのキャッチコピー[編集]
キャッチコピーは、商標法や不正競争防止法により、商標としても保護されることがある。ただし、キャッチコピーが商標として保護されるには、商標法上の登録要件を満たすことが必要である。つまり、自他商品識別力を有するキャッチコピーでないと商標登録はできない[4]。
この点において、商号や商標を含むことにより、あるいは長年にわたって広告宣伝に使用された結果、キャッチコピー自体から商品やサービスの出所を需要者が認識できる状態に至っているものを除き、多くのキャッチコピーは商標としての機能を発揮しないといってよい。日本の特許庁における商標審査実務でも、キャッチコピーの商標登録は原則として認めていない[5]。たとえば、ある学習塾が「習う楽しさ教える喜び」という文字を商標として商標登録出願したが、特許庁は登録を拒絶する審決を行った(不服2000-291号)。その後の審決取消訴訟において東京高等裁判所は、「取引者・需要者は、これを、各種学校等の教育に関する役務の理想、方針等を表示する宣伝文句ないしキャッチフレーズであると認識、理解するにとどまり、自他役務の識別標識とは認識しない」と判示して、特許庁の審決を肯定している(東京高等裁判所判決平成13年6月23日)。
スポーツ選手へのキャッチフレーズ[編集]
マスコミがスポーツ選手へキャッチコピーをつけることもある(ライトニング・ボルトなど)。
脚注[編集]
- ↑ ある商品と、あるキャッチコピーを組み合わせることがいかに独創的であったとしても、その組み合わせ自体はアイデアであり著作権法の保護の対象外である。
- ↑ 例えば半田正夫『著作権法概説(第12版)』 法学書院 2005年 83頁
- ↑ 東京地方裁判所判決平成13年5月30日(交通標語事件)
- ↑ 「小売等役務商標制度に関するよくあるQ&A」のQ22(PDF) - 特許庁作成
- ↑ 特許庁『商標審査基準 改訂第8版』、商標法3条1項6号の解説部分