オランダ
オランダ(英語:Holland、和蘭、和蘭陀)、オランダ王国(英語:Kingdom of the Netherlands)は、ヨーロッパの北西に位置するオランダ本土とカリブ・オランダから成る王国。オランダ本土は、北海に面したライン川・マース川のデルタ地帯にあり、首都・アムステルダムやロッテルダムは、中部ヨーロッパを後背地とする貿易港で、国際的な商業活動の中心地として栄えてきた。国土の約4分の1の標高が海面より低く、土地を堤防や砂丘で囲い、灌漑によって拓いた農牧地で園芸作物の栽培や酪農が行われている。2016年現在、総面積約3.7万km2に、総人口約1,698万人が暮らしている。
工業では、石油精製・化学工業、製鉄・金属製品、電気機械などの生産が主。北部の低地や北海で天然ガスを生産しており、エネルギー自給率は100%近い。かつての植民地大国としての歴史に由来して、菓子などの食料品の加工や宝石の加工も盛ん。2000年代にかけて農業から工業への転換が進み、2015年現在の第1次産業人口は2.1%、第2次産業人口は15.2%。同年の失業率は7.0%とやや高水準。
政治体制は立憲君主制で、国家元首はウィレム・アレキサンダー国王。政党は小党分立の傾向が強く、常に連立内閣の形をとっている。NATO、EUの加盟国。
公用語はオランダ語。民族は約85%がヨーロッパ系(8割がオランダ人)で、約15%をインドネシア、トルコ、スリナム、モロッコなどからの移民が占める(2010年時点)。宗教ではキリスト教が約50%、無宗教者が約42%(2006年時点)。
目次
地勢[編集]
オランダ王国は、ヨーロッパのオランダ本土と、カリブ・オランダと呼ばれるカリブ海にある3つの自治領(アルバ・キュラソー・シント・マールテン)と3つの特別自治体(サバ島・シント・ユースタティウス・ボネール島)で構成されている[1][2]。
オランダ本土はヨーロッパの北西部に位置し、東はドイツ、南はベルギー、北・西は北海に面する、交通の要衝地にある[2]。
「ネーデルラント」は「低い土地」の意味で[1]、国土はライン川・マース川のデルタ地帯と干拓地(ポルダー)でできており[2]、国土の約4分の1ないし5分の2は標高が海面より低く[2][1][3]、堤防や砂丘で囲まれた干拓地である[1][3]。
灌漑によって低湿地を干拓して農牧地として利用しており、排水路や運河が発達している。伝統的には風車が排水に用いられてきた。[1][3]
国土の大部分が農地として集約的に利用されており、集落は堤防の上や海水面よりも高い位置に位置していて、人口密度も高い[3]。
- 2013年の土地利用状況は、耕地107万ha(31.9%)、牧場・牧草地77万ha(23.0%)、森林37万ha(11.1%)[4]。
ロッテルダムとアムステルダムは、広い中部ヨーロッパ諸国を後背地に持つ貿易港で、国際的な商業活動の中心として栄えてきた[3]。
総面積[編集]
気候[編集]
北大西洋のメキシコ湾流の影響で、緯度の割に温和で、全土が温帯気候 Cfb(西岸海洋性気候)にある[2][7][1]。
海上から吹き付ける風と曇った天気が多いのが特徴で、年間降水量は700~800mm[2]。夏期は平均気温が16-18℃と冷涼で、冬期は3℃前後[2]。冷夏・暖冬[7]。
主な都市[編集]
都市名 | 人口 2011年, 万人 |
備考 |
---|---|---|
アムステルダム | 〈106.8〉 |
77.9首都[8][1][7] |
ロッテルダム | 〈100.3〉 | 61.0|
デン・ハーグ | 49.5 | 王宮・国会ないし政府の所在地[9][10] |
ユトレヒト | 31.1 | |
アイントホーフェン | 21.6 | |
ティルブルフ | 20.6 | |
アルメール | 19.0 | |
ザーンスタッド | 19.0 | |
フローニンゲン | 18.9 | |
ブレダ | 17.4 | |
ナイメーヘン | 16.4 |
資料:二宮書店 2017 338。〈〉内は都市周辺の地域を含めた人口[11]。
人口[編集]
総人口[編集]
- 1990年頃 1,476万人[5]
- 1990年 1,489[12]
- 2000年 1,586[12]
- 2010年 1,662[12]
- 2011年 1,670[1]
- 2012年 1,671[12]
- 2013年 1,676[13][7]
- 2016年 1,698[2]
人口密度[編集]
都市人口率[編集]
- 2014年 89.9%[4]
動態統計[編集]
人口増加率[編集]
- 0.4%(2000年-2013年平均)[6]
出生率[編集]
死亡率[編集]
乳児死亡率[編集]
合計特殊出生率[編集]
- 2014年 1.7‰[4]
平均寿命[編集]
- 2014年 81.3歳(男79.5 女83.2)[4]
年齢別人口[編集]
年度 | 0-14歳 | 15-64歳 | 65歳以上 | 出典 |
---|---|---|---|---|
2011年 | 17.5% | 67.0% | 15.6% | [16] |
2016年 | 16.6% | 65.1% | 18.4% | [4] |
労働人口[編集]
産業別人口[編集]
年度 | 1次 | 2次 | 3次 | 出典 |
---|---|---|---|---|
1990年頃 | 4.2% | 18.0% | - | [5] |
2013年 | 1.9% | 15.1% | 83.0% | [17] |
2015年 | 2.1% | 15.2% | 74.9% | [4] |
就業・失業[編集]
SNA[編集]
GNI[編集]
GDP[編集]
1人あたり[編集]
経済成長率[編集]
(実質GDP、年率)
- 2009年 △3.7%(金融危機と世界経済減速の影響受ける)[4][23]
- 2010年 1.5%[23]
- 2011年 0.9%[23]
- 2012年 △1.2%[23]
- 2013年 △0.8%[23]
- 2014年 1.0%[4]
- 2015年 1.9%[4]
物価指数[編集]
(CPI、年率)
産業[編集]
主な産業[編集]
農業国から工業国に転換[2]。
農業・畜産[編集]
- 小麦、ジャガイモなどの農業[1]。温室あるいは砂丘で栽培される花卉(チューリップ・クロッカス・バラ)などの園芸作物[2][1][8]、亜麻[8]。酪農[2][1][8]。
- 2012年の穀物生産量1,731千t[25]。
工業[編集]
- 近代工業は、石油精製・化学工業[2][7][1][8]、製鉄・金属製品[8]、電気機械[2][7][8]を主としている。
- かつての植民地大国時代の歴史に由来して[3]、菓子などの食料品の加工や[2][7][3]、宝石の加工が1993年当時も重要な産業となっていた[3]。
エネルギー[編集]
- 北部の低地と北海での天然ガス生産がある[2][7][3]。2015年の埋蔵量は6,739億m3[2]。
- エネルギー自給率は100%近い[2][3]。
- 2011年の1次エネルギー自給率は83%[25]。
観光業[編集]
- 2014年の観光客数は1,393万人、観光収入147億ドル[4]。
産業活動別国内総生産[編集]
産業 | 国内総生産 億ドル |
---|---|
農林水産業 | 117 |
鉱工業 | 1,340 |
建設業 | 341 |
卸売・小売業 | 1,093 |
運輸・通信業 | 509 |
サービス業 | 3,514 |
産業計 | 6,913 |
GDP(再掲) | 7,701 |
出典:矢野 2014 147
貿易額[編集]
輸出額[編集]
輸入額[編集]
相手先別[編集]
輸出先[編集]
相手国 | 輸出額 億ドル |
構成割合 % |
---|---|---|
ドイツ | 1,695 | 26.5 |
ベルギー | 875 | 13.7 |
フランス | 562 | 8.8 |
イギリス | 512 | 8.0 |
イタリア | 290 | 4.5 |
出典:矢野 2014 330
輸入元[編集]
相手国 | 輸出額 億ドル |
構成割合 % |
---|---|---|
ドイツ | 809 | 13.8 |
中国 | 702 | 12.0 |
ベルギー | 490 | 8.4 |
イギリス | 390 | 6.7 |
ロシア | 375 | 6.4 |
出典:矢野 2014 330
貿易依存度[編集]
- 2015年 輸出63.8%、輸入56.8%[4]
通貨[編集]
為替レート[編集]
外貨準備高[編集]
外交[編集]
政治[編集]
政治体制[編集]
国家元首[編集]
政権[編集]
政党は小党分立の傾向が強く、常に連立内閣の形をとっている[2]。
議会[編集]
二院制[7]。
財政[編集]
軍事[編集]
社会[編集]
- 2011年の発電量1,130(億kWh)[25]。
- 2013年の発電量1,009(億kWh、水力0.1%、火力90.9%、原子力2.9%、風力5.6%、太陽光0.5%)[4]。
- 1990年頃 1人あたりエネルギー消費量 5,632kg[5]。
- 2013年のエネルギー供給(石油換算)7,739万t[4]。
- 生活水準は高く、社会保障も完備[2]。
- 識字率99%[5]。
- 1990年頃 テレビ保有台数 478(台/千人)[5]。
- 1990年頃 乗用車保有台数 345(台/千人)[5]。
- 2014年の自動車保有台数 924万台(うち乗用車819万台、488台/千人)[26]。
歴史[編集]
言語[編集]
公用語はオランダ語[4][1][5][7]。フリジア語、英語、ドイツ語、フランス語[4]。
国際的な商業活動の中心として栄えてきたため、オランダ人は一般に外国語に堪能[3]。
国名[編集]
1648年に北部7州が独立し、「ネーデルラント連邦共和国」として国際的にも承認されたが、政治体制の中心となったホラント州から「オランダ」の通称が生まれた[1]。
宗教[編集]
- 1993年頃、カトリック40%、その他プロテスタント諸派[5]。
- 2006年時点で、カトリック30%、プロテスタント20%、イスラム教5.8%、無宗教42%[4]。
- 2013年頃、カトリックが3割弱、プロテスタントが2割弱。他にイスラム教、ヒンドゥ教、仏教[1]。
- 2014年頃、キリスト教、イスラム教[7]。
民族[編集]
2001年時点で、オランダ人が8割[1]。他に、ヨーロッパ各地や、アジア・アフリカからの移民[1]。
2010年時点で、ヨーロッパ系85.1%(オランダ人79.7%)、移民14.9%(インドネシア系2.3%、トルコ系2.3%、スリナム系2.1%、モロッコ系2.1%、アンティルとアルバ系0.8%)[4]
国旗[編集]
祝祭日[編集]
月日※ | 祝祭日 |
---|---|
1月1日 | 新年 |
4月10日 | 聖金曜日 |
4月12-13日 | 復活祭 |
4月27日 | 国王誕生日 |
5月5日 | 解放記念日 |
5月21日 | キリスト昇天祭 |
5月31日-6月1日 | 聖霊降臨祭 |
12月25-26日 | クリスマス |
資料:ジェトロ > ヨーロッパ > オランダ > 祝祭日 ※2020年の場合。
日本との関係[編集]
特徴[編集]
世界順位 | データ | 統計年度 | 出典 | |
---|---|---|---|---|
特許の国際出願件数が多い国 | 第9位 | 4,198件 | 2013年推計値 | [27] |
馬鈴薯の生産量 | 第10位 | 710万t | 2014年 | [4] |
亜麻の生産量 | 第7位 | 1.1万t | 2014年 | [4] |
チーズの生産量 | 第5位 | 79万t | 2013年 | [4] |
インジウムの生産量 | 第10位 | 5t | 2012年 | [4] |
ナフサの生産量 | 第9位 | 765万t | 2013年 | [4] |
外部リンク[編集]
付録[編集]
脚注[編集]
- ↑ 1.00 1.01 1.02 1.03 1.04 1.05 1.06 1.07 1.08 1.09 1.10 1.11 1.12 1.13 1.14 1.15 1.16 1.17 1.18 1.19 ハンドブック 2013 144
- ↑ 2.00 2.01 2.02 2.03 2.04 2.05 2.06 2.07 2.08 2.09 2.10 2.11 2.12 2.13 2.14 2.15 2.16 2.17 2.18 2.19 2.20 2.21 2.22 二宮書店 2017 337
- ↑ 3.00 3.01 3.02 3.03 3.04 3.05 3.06 3.07 3.08 3.09 3.10 3.11 3.12 竹内 1993 86
- ↑ 4.00 4.01 4.02 4.03 4.04 4.05 4.06 4.07 4.08 4.09 4.10 4.11 4.12 4.13 4.14 4.15 4.16 4.17 4.18 4.19 4.20 4.21 4.22 4.23 4.24 4.25 4.26 4.27 4.28 4.29 4.30 4.31 4.32 4.33 4.34 4.35 4.36 4.37 4.38 二宮書店 2017 338
- ↑ 5.00 5.01 5.02 5.03 5.04 5.05 5.06 5.07 5.08 5.09 5.10 5.11 5.12 5.13 5.14 5.15 5.16 竹内 1993 87
- ↑ 6.0 6.1 6.2 矢野恒太記念会 2014 15
- ↑ 7.00 7.01 7.02 7.03 7.04 7.05 7.06 7.07 7.08 7.09 7.10 7.11 7.12 7.13 7.14 7.15 7.16 7.17 7.18 7.19 7.20 リブロ 2014 28
- ↑ 8.0 8.1 8.2 8.3 8.4 8.5 8.6 竹内 1993 86,87
- ↑ 二宮書店 (2017 337)およびハンドブック (2013 144)は、王宮と国会の所在地、としている。
- ↑ 竹内 1993 86は、政府・王宮の所在地、としている。
- ↑ 二宮書店 2017 161
- ↑ 12.0 12.1 12.2 12.3 矢野恒太記念会 2014 56
- ↑ 矢野恒太記念会 2014 15,56
- ↑ 矢野恒太記念会 2014 30
- ↑ 15.0 15.1 矢野恒太記念会 2014 64
- ↑ 矢野恒太記念会 2014 72。2011年1月1日時点。
- ↑ 17.0 17.1 17.2 矢野恒太記念会 2014 16
- ↑ 18.0 18.1 矢野恒太記念会 2014 126
- ↑ 矢野恒太記念会 2014 31,126
- ↑ 20.0 20.1 20.2 20.3 20.4 20.5 矢野恒太記念会 2014 120-121
- ↑ 矢野恒太記念会 2014 121
- ↑ 22.0 22.1 22.2 矢野恒太記念会 2014 31
- ↑ 23.0 23.1 23.2 23.3 23.4 矢野恒太記念会 2014 132
- ↑ 24.0 24.1 24.2 矢野恒太記念会 2014 389
- ↑ 25.0 25.1 25.2 矢野恒太記念会 2014 17
- ↑ 二宮書店 2017 338により試算
- ↑ リブロ 2014 72
参考文献[編集]
- ジェトロ (2020) ジェトロ(日本貿易振興機構) > ヨーロッパ > オランダ 2020年5月10日閲覧
- 二宮書店 (2017) 二宮書店編集部『データブック オブ・ザ・ワールド 2017年版』二宮書店、ISBN 978-4817604118
- リブロ (2014) リブロ『世界の国情報2014』リブロ、ISBN 978-4903611587
- 矢野恒太記念会 (2014) 矢野恒太記念会『世界国勢図絵2014/15年版』矢野恒太記念会、ISBN 978-4875494485
- ハンドブック (2013) 「世界各国ハンドブック」編集委員会『ニュースがわかる 世界各国ハンドブック』山川出版社、ISBN 978-4634640641
- 竹内 (1993) 竹内啓一『新版データブック世界各国地理』岩波書店、ISBN 4005002188