アオザイ
アオザイ,チュノム標記「襖𨱽」)とは、正装として着用するベトナムの民族衣装。アオ(襖)は上衣の一種を意味する中古音で、ザイはベトナム語で「長い」を意味する形容詞。つまり「長上着」となる。「アオザイ」はベトナム北部方言の発音であり、南部方言では「アオヤイ」と発音する。
女性用アオザイの美しさは世界的に認知されており、土産物としても人気が高いが、オーダーメイドが基本のため購入には手間がかかる。
起源[編集]
18世紀に清朝から移入されたチャイナドレス(旗袍)を起源とする。 旗袍は冷涼な気候の満州起源の装束であり、本来は厚地の絹を使うが、ベトナム土着の薄絹(庶民は麻など)のゆったりした長衣の影響を受けて、風土に合った薄い布地で仕立てるようになった。日常着としても用いられた土着の服装と違い、官服として着られていたことから、現在でも正装とされている。現在の女性用アオザイの細身でスリットの深いデザインはフランス領インドシナ時代に改良されたものである。
現在ではアオザイ姿を見掛けるのは女性がほとんどで、アオザイは女性のみの民族衣装と思われていることが多いが、男性用のアオザイもある。しかし現代において男性用アオザイの着用は、結婚式での新郎や伝統芸能の演者等に限られ、男性のアオザイ姿を目にすることは稀である。
構造[編集]
上衣は「チャイナカラー」と呼ばれる前合わせの立襟で、長袖の体に沿った細身の仕立て。丈は足首にかかるほど長いが、腰骨にかかるくらいの深いスリットが側面にあるため歩行の邪魔にはならない。下衣には上衣と逆に直線的な裁断の白い長ズボン(クワン、quần)の組み合わせで仕立てる。
ベトナムの多くの高等学校や一部の大学では、純白のアオザイを女子生徒・女子学生の制服に採用している。また、ベトナム航空では、かつてはピンク、現在は赤のアオザイを女性客室乗務員の制服に採用している。
高温多湿の気候のため、上衣は一重仕立てで木綿製であることが多く、クワンには薄い絹や人絹を用いることも多く、クワンのみならず上衣にも下着が透けるような薄い生地が用いられることが多い。
女性用は、かつては日常着の青色、未婚女性用の白、既婚女性用の紫がほとんどであったが現在はさまざまな色がある。縫製に余分を持たせていないために体の線を強調し、美しく見せる服である。一度仕立てたアオザイは、太ると着られなくなるため、ほっそりした体格を保つ事がベトナム女性の風潮となっている。
一方男性用は、余裕を持たせた縫製で作られており、女性用に比べてゆったりとした感じを受ける。