トルコ・日本人女子大生死傷事件
トルコ・日本人女子大生死傷事件とは、2013年9月、トルコ共和国カッパドキアにて新潟大学教育学部4年、栗原舞さん(22)が刺殺され、同大・寺松星絵さん(22)が刺されて重傷となった事件である。
2020年東京オリンピック開催が決定された翌日、開催地候補のライバルであったトルコから祝福を受けるなかで起きた事件であった。
目次
事件概要
トルコ中部の世界遺産(複合遺産)カッパドキアのゼミ渓谷付近で2013年9月9日、日本人女性観光客2人が何者かに刺され、1人が死亡、1人が意識不明の重体となった。
死亡したのは新潟大学教育学部4年、栗原舞さん(宮城県出身)。同大4年の寺松星絵さん(富山県出身)も首に深い傷があるなど多数の刺し傷があり、集中治療室で治療を受ける。
2人は奇岩で知られるギョレメ国立公園のゼミ渓谷を散策中に襲われた。同日昼すぎに、栗原さんらが倒れているのを他の観光客が発見し、救急車で病院に運ばれた。
現場があるネブシェヒル県のジェイラン知事は同日、事件を受け「非常に悲しい思いだ」と述べ、犯人逮捕に全力を挙げる考えを示した。
2人は9月6日にトルコに向けて日本を出発し、19日に帰国する予定だった。新潟大学によると、2人とも金融機関に就職が決まっていた。
「のどかな田舎町で、強盗事件など通常あり得ない」
日本人女子学生2人が事件に巻き込まれたトルコは日本からも毎年多くの観光客が訪れている。
在日本トルコ大使館によると、トルコを訪れた日本人の観光客は2011年が約18万8300人、2012年が約20万3600人と年々増加傾向。その多くが立ち寄るのが事件の舞台となったカッパドキア。約100平方キロメートルにわたり、キノコ型や煙突型の奇岩が林立する景勝地で、世界遺産(複合遺産)にも登録されている。治安も比較的よいとされ、カッパドキアへの個人旅行を手配する「ストリーム」の担当者は「のどかな田舎町で、強盗事件などは通常あり得ない」と話す。ただ、現場となったゼミ渓谷は、通常の観光コースには入らないという。
トルコは親日的な国として知られており、2020年夏季五輪の開催都市にはトルコのイスタンブールも立候補していたが、開催地が東京に決まった瞬間、ツイッターにはトルコの人々から、トルコ語で「おめでとう東京」を意味する「Tebrikler Tokyo」との書き込みが相次いだ。
トルコで死傷の女子大生、ともに就職決まり海外に関心。夏休みの旅行で何が…
世界遺産として知られるトルコ中部の観光地、カッパドキアで9日、2人の女子大生が何者かにナイフで刺された。
亡くなった栗原舞さん(22)と、重体の女子大生(22)はすでに就職も決まり、友人同士で夏休みの旅行を楽しんでいる最中に事件に巻き込まれたとみられる。2人が通っていた新潟大(新潟市)は対応に追われた。
「外務省に確認したところ本学の学生と判明した。残念な結果で、ご本人、ご家族、関係者にはご心痛のこととお察し申します」。
10日午前、同大で会見した生田孝至副学長(69)は冒頭でこう話し、沈痛な表情を浮かべた。
事件に巻き込まれた2人は同大教育学部学習社会ネットワーク課程の4年生で、2人とも金融機関に就職が決まっていた。栗原さんは学生主体で行う日中事業で団長を務めるなど中心メンバーとして活躍。卒論のテーマは「グローバル社会における大学生の意識」で、すでに日中韓の学生への調査を進めていたという。
栗原さんの指導にあたった相庭和彦人文社会・教育科学系教授(53)は「日中の交流事業には1年のときからかかわり、3年で団長になった。仲間も多く、非常に残念」と述べ、涙を浮かべた。
一方、重体の女子大生を指導していた大浦容子同教授(63)によると、女子大生は中国に留学経験があるほか、これまでに何回も自分で日程を組み、海外旅行を行うなどしていたという。大浦教授は「とても落ち着いた学生で、トルコでの経験やふれあった人々について話をしてくれただろうと思うと残念。保護者に連絡したが、まだ話を聞ける状態ではない」と話した。
同大は、外務省や家族と連絡をとりあい、今後は現地に向かうなどの対応を検討しているという。
「とにかく信じられない…」トルコで死亡の栗原さんの父、険しい表情
「信じられない…」。
トルコ中部カッパドキアで散策中に刺され、死亡した栗原舞さんの実家の家族は険しい表情で話し、事件の対応に追われた。
実家のある宮城県名取市の閑静な住宅街。栗原さんの父、満宏さんは10日午前9時40分ごろ、半袖のワイシャツとズボン姿の軽装で自宅から顔を見せ、集まった報道陣に対し、「今はとにかく信じられない、という気持ち。(犯人は)何とか捕まってほしい。妻も疲れているので…」と言葉少なに語り、家族とみられる女性と乗用車に乗り込んで外出した。
満宏さんは早朝にも、自宅前で報道陣の取材に応じ、事件については「娘さんがトルコで事件に巻き込まれた可能性がある」という日本の大使館からの電話で知ったという。
近くに住む女性(73)は栗原さんについて、「すれ違うとあいさつをしてくれたり、町内の道路掃除や草むしりを手伝ってくれたりして、いい子だった。孫と同じくらいの歳なのでかわいいと思っていたが、まさか事件に巻き込まれるなんて…」と表情を曇らせた。
「目キラキラさせて旅行話を」刺殺の栗原舞さん
トルコ中部で新潟大4年栗原舞さん(22)が刺殺され、同大4年寺松星絵さん(22)も刺されて一時重体となった事件。栗原さんと寺松さんは、ともに新潟大教育学部の学習社会ネットワーク課程に在籍し、日中の学生の文化比較などを研究していた。
就職活動では、既に2人とも内定を得ており、今回の旅行は「学生生活の総仕上げ」だった。
同大によると、栗原さんは英語が堪能で、大学の日中交流事業でも中心的な存在だった。指導教員の相庭和彦教授は「自分の足でアジアを回って国際認識を高めてきた」と涙を拭った。
寺松さんも昨年、北京の大学に語学留学し、指導する大浦容子教授は「海外の危険性を承知し、備えもしていたと思う」と信じられない様子だった。
栗原さんを知る同大4年の女子学生(21)は「目をキラキラさせて中国や海外旅行の話をしてくれた。そうやって訪れた国で亡くなるなんて信じられない」と肩を落とした。
トルコ女子学生殺傷「優しい舞ちゃんが、なぜ」
また来年のお正月にみんなで集まろうね――。
トルコ・カッパドキアで、刺殺された宮城県名取市出身の新潟大4年、栗原舞さんが先月、同窓会で故郷の友人たちと交わした約束は果たされなかった。
「あんなに優しかった舞ちゃんがなぜ」。異国の地で起きた惨事に、友人や家族は10日、悲しみに沈んだ。
「私は短気を起こすことがよくあったけど、いつも『大丈夫だよ』『気にしないでね』と慰めてくれたのが舞ちゃんだった。あんなに優しい舞ちゃんにもう会えないなんて…」。
小中学校の9年間、栗原さんと同じ学校に通った友人のアルバイト内田瑶子さん(22)は、声を震わせた。
栗原さんには8月20日の同窓会で会ったばかりだった。仙台市の居酒屋に約20人が集い、卒業アルバムで当時を振り返ったり、近況を報告したりして楽しい一時を過ごした。幹事として会を企画し、参加を呼びかけた栗原さんが笑顔で言った言葉が、同級生たちにとって最期になった。「またお正月に集まろう」
「今朝、ニュースを見た母から舞ちゃんが亡くなったと聞いた。ショックだし、悲しい」と沈痛な表情で内田さんは語る。
内田さんの手元にある小学校の卒業文集には、あどけない栗原さんの笑顔が残る。かわいらしい文字で「将来の夢は保育士」とあった。作文には蔵王町での体験学習の思い出が書かれていた。「山頂では大群の赤とんぼがきれいで、手を伸ばせばつかめそうな所に雲があってとても感動しました。ここでの思い出は、だれにもあげたくない宝物です」。
中学校時代の栗原さんはバドミントン部に所属、運動にも勉強にも真剣に打ち込む生徒だったという。新潟大教育学部に進学後は、交流事業などを通じて度々海外を訪問。金融機関に就職が内定しており、指導教員の大浦容子・同大教授(63)は「仕事の中で国際交流に力を発揮しただろうし、それが望みだったと思う」と涙声で話した。
犯人逮捕
トルコ女子大生死傷。拘束の男宅に日本のお金や焼けたパスポート
トルコで栗原 舞さん(22)ら、女子大学生2人が死傷した事件で、地元の警察当局は、先に逮捕された男とは別の男を新たに拘束した。男は、容疑を認める供述をしているという。
日本人女子大学生2人が死傷した、カッパドキアのゼミ渓谷に、大勢の警察関係者や報道陣の間を抜けながら、1台の警察車両が現れた。警察官に両脇を押さえられ、車から降りてきた、横じま模様の服を着た男は、新たに拘束された、事件現場近くの村に住む、20代の男。
栗原さんらが襲撃された現場で、男を立ち会わせての実況見分が行われた。
地元メディアによると、捜査当局は11日昼すぎ、高速道路を走っていた赤い車を不審に思い、車を止めた。乗っていた男の顔に傷があったことや、異常な行動を示したことが発端で拘束された。
男は犯行を認め、「事件当日、現場近くで自分の運転する車が、被害女性たちに軽く接触して口論になり、カッとなって、ナイフで女性たちを刺した」などと供述しているという。
男の自宅からは、日本のお金や、焼けたパスポートなどが見つかった。
この事件をめぐっては、11日、別の男が、容疑者として逮捕されたが、男は犯行を否認していた。新たに拘束された男を、実際に見た警察関係者によると、男の顔は、先に逮捕された男と、とても似ていたという。
また、新たに拘束された男が乗っていた車と、事件当日に防犯カメラに映っていた車も一致した。
容疑者の男は、カッパドキアの北側を流れる川の上流3kmほどのところに、凶器の刃物を捨てたと供述しているということで、警察が捜索を行っている。
一方、事件現場には、家族らが訪れた。白い花束を持って、警察官に先導されながら、地元の知事と一緒に、殺害現場へ近づいていった。捜査当局は、凶器の捜索を続けるとともに、裁判所で男の取り調べを続ける方針。
暴行目的、抵抗されて殺害か
逮捕された地元出身の男(26)は暴行目的で2人に近づき、抵抗されたために殺傷に及んだ可能性が高いことが分かった。
地元警察は、男が散策中の2人に暴行目的で近づいたところ抵抗され、犯行を隠すために殺害に及んだとみて、調べを進めている。
犯行時に男が薬物を使用していた可能性もあるという。男の友人の一人は「薬物は使用していないと思うが、たまに大麻のようなものは吸っていたようだ」と話している。
病院関係者は、被害にあった女子大生には、顔や首などを中心に数十カ所にわたる刃物の傷があったと証言した。
トルコ邦人殺傷、犯行認める/拘束男のDNA鑑定へ
トルコ中部の観光地カッパドキアで新潟大4年の女子学生2人が刺されて死傷した事件で、トルコの捜査当局に拘束された容疑者の男が10日、調べに対し「私がやりました」と犯行を認めた。カッパドキアの地元紙記者が捜査幹部の情報として明らかにした。
トルコのドアン通信などによると、拘束されたのは26歳の電気作業員。捜査当局は被害現場の遺留物と男のDNAが一致するかを鑑定するため、首都アンカラの研究施設にDNAを送った。また、凶器に関する捜査や動機の解明も急ぐ。容疑者は27歳との報道もある。
日本人女子大生殺傷、被告に終身刑(2013年12月)
トルコ中部の観光名所カッパドキアで2013年9月、日本人女子大生2人が暴漢に襲われ、1人が亡くなった事件で、地元の裁判所は10日、殺人の罪などに問われたファティ・ウヤル被告に終身刑を言い渡した。
判決ではウヤル被告の犯行は明らかとして、殺人罪について終身刑、強盗や傷害などの罪については93年9カ月の禁錮刑を言い渡した。ウヤル被告は逮捕時は犯行を認めていたが、裁判では犯行を否認して無実を訴えていたという。
この事件では、ウヤル被告に襲われた女子大生1人が死亡、もう1人が重傷を負った。被告の自宅からは女子大生から奪った金品などが見つかっていた。