色気
色気(いろけ)とは、異性(同性愛者にとっては同性)をひきつける性的な魅力があることを指す俗語である。英語では「セクシー」(Sexy)や「セックスアピール」(Sex Appeal)などが該当し、いずれも現代の日本ではカタカナ言葉として通用する。
概要
色気の「色」とは、主に色彩(英語:Color)を指す言葉であるが、一方で性的な魅力を意味する俗語や慣用句として様々に使用されている。古くは容姿や髪の色艶が良いことなども意味し、転じて異性を指したり性的な意味合いを含む言葉として使用されるようになった。[1][2]
現代における俗語としての「色」は一般的に恋愛や性欲に関連する言葉の接頭語として使用されることが多く、「色気」は性的な魅力を指して使用することが多い。
性的な魅力
色気は、相手にとって性的な魅力がある人間のことを指す。ただし、性的な魅力が何であるかは人間によって様々であり、具体的な物事(容姿やファッションなど)から抽象的な物事(仕草や言葉遣いなど)まで多種多様である。一般的には、「女性的魅力」や「男性的魅力」などといった性的な要素が好意的に受け止められる場合や、それによって恋愛感情や性欲に関連した行為を喚起させるような雰囲気や様子を指して「色気」と表現することが多い。[3]
なお、性的な魅力とは生物学的な要素だけではなく、文化や風習による要素まで広義に内包しており、厳密に定義するのは困難である。例えば、歌舞伎における女形は男性でありながら女性を表現する役者であり、容姿やファッションといった外見のみならず、仕草・立ち振る舞い・言葉遣い・考え方といった抽象的な表現まで、「女性の色気」を広く解釈して初めて演じることができるとされる。また、同性からも魅力を感じるような場合や、相手の性格そのものに惹き付けられる要素があるような場合は、性別や年齢に関係なく使用されることがある。[4]
その他
愛嬌(あいきょう)や趣(おもむき)、風情(ふぜい)などといった、好ましい印象や調和している様子を指すことがある。例えば「場に色気(色)を添える」などの用法は、男性しかいない席に女性が加わることで場が明るく華やぐことを意味している。このような場合は前後の文脈から推測するしかないが、かなり曖昧で感覚的な用法であると思ってよい。[5]
類義語
- お色気(おいろけ) = 接頭語の「お」を付け、「色気」よりもソフトな意味合いで使用される。
- 色香(いろか) = 色が香る、色気が漂うような雰囲気や様子を指す。
- 色事(いろごと) = 恋愛や性行為に関連する物事の全般を指す。
- 色恋沙汰(いろこいざた) = 恋愛全般を指すが、主に恋愛が原因となる悩みやトラブルを指す。
- 色っぽい(いろっぽい) = 色気があることを指す。慣用句として「艶っぽい」とも書き、同じく「いろっぽい」と読む。
- 悩殺(のうさつ) = 具体的な性行為がなくとも、色気などによって相手を虜にしてしまうことを指す。
使用例
- 性的な魅力があることを「色気がある」、性的な魅力がないことを「色気がない」などといった用法で使う。恋愛において「男としての色気がない」や、不倫において「人妻独特の色気がある」など。
- 思春期や結婚適齢期を迎えて、異性や恋人などの人目を気にしだすような行為を「色気付く(いろけづく)」という。例えば「あの子も色気付く年頃だ」などと使う。
- 性別や年齢に関係なく異性に人気があるような場合、「結構なお歳(高齢)なのに色気がある」などと使う。
- 粋な役者や人気のあるタレントなどに、「演技に色気がある」などと使う。
- 色気を前面に出したテレビ番組で「お色気番組」や、スポーツ新聞などで風俗店を扱ったような記事で「お色気記事」などと使う。
- 「色気より食い気」という用法は、性欲より食欲を重視する際に使うことわざである。合コンなどで恋愛よりも食事を重視するような際に言葉通り使うこともあれば、実利優先の比喩(転義法)として結婚よりも仕事を選ぶような際に揶揄して使う場合もある。
- 「色気を出す」という用法は、性的な魅力を相手に見せるような場合だけではなく、広範囲の分野に興味を持ったり手を出そうとすることを意味する場合にも使われる。その場合は「あのタレントは芸能界だけでは飽き足らず、政界にまで色気を出している(進出しようとしている)」などと使う。
脚注
- ↑ 「色」という言葉、または「いろ」という発音が性的な意味合いを持つようになった語源には諸説がある。「和訓栞」(発行:1887年・著者:谷川士清)による「漢語で女のことを色という」説、「日本語原考」(発行:1920年代・与謝野鉄幹)による「男女の放縦な情交を指す『淫(いん)』の語尾を略し、ラ行音を添えた」説など。なお、国文学者:折口信夫による「古代の貴族階級における家庭内にて女の順序を意味したイロネなどに関連する」説では、「いろ兄」や「いろ姉」と書くイロネは何れも母親を同じにする兄弟姉妹を意味しており、「色」という言葉や「いろ」という発音が血縁関係や性に関連する物事から発生したと捉えた。
- ↑ 辞書「全訳 古語辞典 携帯版」(発行:2005年・出版:ベネッセコーポレーション)初刷、「色なり」の項目より。随筆「枕草子」(発行:平安中期頃・著者:清少納言)にて「髪、色に、こまごまとうるはしう…(髪は、艶やかで、細やかに整い…)」などの使用例。
- ↑ 辞書「女性語辞典」(発行:1967年・出版:東京堂出版)にて「色節(いろふし)」の項目より。主に遊郭で使用したとされ、延宝9年(1681年)の書とされる「朱雀諸分鑑」にて「口には色節をやりて…(言葉には色気を含ませて…)」などの使用例。
- ↑ 文春新書「菊五郎の色気」(発行:2007年・著者:長谷部浩)より。「女方から男伊達まで、こぼれんばかりの色気で江戸の粋を立ちのぼらせる歌舞伎役者、尾上菊五郎」などとある。
- ↑ 辞書「全訳 古語辞典 携帯版」(発行:2005年・出版:ベネッセコーポレーション)初刷、「色」の項目より。和歌集「古今和歌集」(発行:905年・撰者は紀貫之、紀友則、壬生忠岑、凡河内躬恒)にて「今の世の中色につき、人の心花になりにけるより…(今は世間が華美に流れ、人の心が派手になってしまい…)」、随筆「徒然草」(発行:1330年頃・著者:吉田兼好)にて「色もなく覚え侍りしを…(風情のないことだと思ったが…)」などの使用例。また、「色好み(いろごのみ)」は風流を解する人、「色好む(いろこのむ)」は恋愛に長けた人という意味があった。
関連項目
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