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イカ(烏賊)は、軟体動物門 頭足綱 十腕形上目に分類される動物の総称。
形態
神経系や筋肉がよく発達していて、たいていの種類は夜に行動する。皮膚には色素細胞がたくさん並んでおり、精神状態や周囲の環境によって体色を自在に変化させる。漏斗からの噴水と外套膜の収縮、鰭を使って前後に自在に泳ぐ。
10本の腕は筋肉質でしなやかに伸縮し、腕の内側にはキチン質の吸盤が並んでいる。吸盤にスパイクのような鋭いトゲが並ぶ種類もおり、これは獲物を逃さないための適応と考えられる。実際の腕は8本で、残りの腕2本は吸盤が先端に集中する「触腕(しょくわん)」とよばれる構造である。この触腕を伸縮させて魚類や甲殻類を捕食するが、釣りの時に触腕を欠いて逃げることや、テカギイカの仲間では成長に伴い触腕を欠くことから、必ずしも必要というわけではないようである。コウイカ目では触腕は第3腕と第4腕との間にある「ポケット」に収めることが出来、普段は8本脚に見える。ツツイカ目では長さを縮めることは出来るが完全に収めることが出来ない。なお、この部分を食用にする際には10本の腕全てを下足(げそ)と呼ぶ。
体の大きさに対しての眼球の割合が大きいことから、行動の多くは視覚による情報に頼っていると思われる。嗅覚や味覚に関する研究はほとんどない。
尚、イカの血は銅タンパク質であるヘモシアニンを含むために青色である(哺乳類血液中に含まれる鉄タンパク質のヘモグロビンは赤色)。
調理に際して、両目の間にある神経系の基部を刺して〆ると、ただちに体色が白濁する。
イカは本来の心臓の他に、2つの鰓(えら)心臓を持っている。鰓心臓は鰓(えら)に血液を急送する働きを担っている。
生態
全世界の浅い海から深海まで、あらゆる海に分布する。体長は2cm程度から20mに達するものまで、種類によって差がある。
天敵はカツオやマグロなどの大型魚類、カモメやアホウドリなどの鳥類、アザラシ、イルカ、クジラなどの海生哺乳類である。敵から逃げるときは頭と胴の間から海水を吸い込み「ろうと」から一気に吹きだすことで高速移動する。さらに体内の「墨汁のう」からスミを吐き出して敵の目をくらませる。タコのスミは外敵の視界をさえぎることを目的とし、一気に広がるのに対し、イカのスミは一旦紡錘形にまとまってから大きく広がる。紡錘形にまとまるのは自分の体と似た形のものを出し、敵がそちらに気を取られているうちに逃げるためと考えられている。粘性の違いから、イカスミは食用になるがタコのスミは食用とはならない。
科学との関わり
- 液晶 - 初期はイカの内臓の一部から作られていた。現在日本で用いられているものはほとんど化学的に合成されたものである。
- 神経細胞 - 巨大軸策と呼ばれる普通の生物に比べて極端に太く扱いやすい神経があり、これを利用して神経細胞や神経線維の仕組みや薬理作用の解明が進んだ。なおこの実験で用いられたのはヤリイカであった。ヤリイカはコンラッド・ローレンツに「人工飼育が不可能な唯一の動物」とさえ呼ばれるほど飼育が難しい生物であったが、松本元がその飼育に成功した。ローレンツは実際に水槽で生きたヤリイカを見るまで、そのことが信じられなかったという。
- 平衡石 - 平衡石という平衡感覚をつかさどる組織を持つ。平衡石には特定の周期で樹木の年輪と同じ様な環状の模様が形成される。
- インク - イカスミがインクとして使用されていた。セピアという言葉の語源で、いわゆるセピア色のインク。(参照:色名一覧 (せ))
食材
食用になる種類が多く、甲から下足まで捨てるところが無いくらいほぼ全身が使われる。刺身、焼き、揚げ、煮物、塩辛、干物など実に多彩である。酒の肴としても好まれる。イカの丸焼きは、お祭りの屋台の定番となっているほか、イカソーメン・イカめしなどが収穫量の多い地域の特産品となっている。
栄養的には、ビタミンE、タウリンが多いほか、亜鉛・DHA・EPAも豊富である。
イカは消化しにくく、胃もたれの原因と思われがちだが、消化率は魚類と大差ない。
信州では、古くから保存食として用いられていた塩いか又は塩丸いか(茹でたイカの腹に、ゲソと共に粗塩を詰めたもの)が、現在でも食べられている。
ユダヤ教では鱗がない海生動物はカシュルートでないためイカを食べることは禁じられている。なおその他の国でもタコと同様不吉な生き物とされ、イカを食べないことは多い。
主な料理法
イカスミ
主に地中海地方の料理で、イカのスミを調理に使う。パスタのソースに使ったイカスミスパゲッティや、パエリアに混ぜるなどして使われる。日本では、「黒作り」(墨入りの塩辛)を除いては沖縄以外では使われていなかった食材だが、イタリア料理・スペイン料理の影響から、和食、洋食に使われるようになった。イカのスミは、タコのそれと比べて高い粘性が料理に適する。
中世のヴェネツィアではペスト(黒死病)に対する薬効があるとされ、好んで食べられた。
セピア色
イカ墨やタコの墨から作られた黒茶色の絵の具のことをセピアといい、その色のことをセピア色という。セピアという語は、ギリシア語で甲イカの意味である。
漁業・水産
漁法としては、イカ釣り舟によるものがあり、集魚灯によりイカをおびきよせる。シーズンは秋頃である。[1]
日本の陸揚げ漁港
- 第1位 - 八戸漁港(青森県)
- 第2位 - 石巻漁港(宮城県)
- 第3位 - 羅臼漁港(北海道)
- 第4位 - 境漁港(鳥取県)
- 第5位 - 函館漁港(北海道)
分類
コウイカ目 Sepiida
英名 Cuttlefish
- コウイカ科 Sepiidae
- ハナイカ属 Metasepia - ミナミハナイカ
- コウイカ属 Sepia - コウイカ
- シリヤケイカ属 Sepiella - シリヤケイカ
- ミミイカダマシ科 Sepiadariidae
- ミミイカダマシ属 Sepiadarium - ミミイカダマシ
- Sepioloidea - タテジマミミイカ
ダンゴイカ目 Sepiolida
英名 bobtail squid
- ヒメイカ科 Idiosepiidae
- ダンゴイカ科 Sepiolidae
- ヒカリダンゴイカ亜科 Heteroteuthinae
- Heteroteuthis - ヒカリダンゴイカ
- Iridioterthis
- Nectoteuthis
- Sepiolina
- Stoloteuthis
- ボウズイカ亜科 Rossiinae
- Austrorossia
- Neorossia
- ボウズイカ属 Rossia - ボウズイカ
- Semirossia
- ダンゴイカ亜科 Sepiolinae
- Euprymna - ミミイカ
- Inioteuthis
- Rondeletiola
- Sepietta
- ダンゴイカ属 Sepiola - ダンゴイカ、ヒメダンゴイカ
※一般的にはコウイカ目(Sepiida)に属する。
トグロコウイカ目 Spirulida
※一般的にはコウイカ目(Sepiida)に属する。
英名 squid
- ヤリイカ下目(閉眼下目) Myopsida
- ヤリイカ科(ジンドウイカ科)Loliginidae
- ヤリイカ属 Loligo - ヤリイカ
- ジンドウイカ属 Loliolus - ジンドウイカ
- フクロジンドウイカ属 Lolliguncula
- ピックフォードイカ属 Pickfordiateuthis
- アオリイカ属 Sepioteuthis - アオリイカ
- Uroteuthis
イカをモチーフにしたキャラクター
その他
- イカの数え方は、泳いでいる間は匹、水揚げされると杯、干すと枚である。
- 地口に「そうはいかの金玉」というフレーズがある。
- コウイカの骨(甲骨)は漢方薬として利用される。
- 漢字「烏賊」の由来は海に飛び込んでイカを食べようとしたカラスを、反対にイカの方が食べてしまったからとも言われる。
関連項目
外部リンク
cs:Krakatice
de:Kalmarees:Teuthida
fr:Calmar
io:Kalmaro
lt:Kalmarai
nl:Pijlinktvis
nrm:Cônet
pl:Kałamarnice
pt:Lula
ru:Кальмар
sk:Kalmary
simple:Squid
tr:kalamar
zh:烏賊