イスラエルの首相
イスラエルの首相(イスラエルのしゅしょう、テンプレート:Lang-he)は、イスラエルにおける行政府の首長である。1996年から2001年までは首相直接選挙法の採択により首相公選制が採用されていたが、機能不全に陥ったため、通常の議院内閣制に戻された。
首相の選出方法
首相公選制導入前および廃止後
1996年まで、および2001年以降のイスラエルでは、議院内閣制に基づき、クネセト(イスラエルの議会)の議員の中から首相が選出される。ただし、クネセトによる首相指名は行われず、儀礼的な国家元首である大統領が、クネセトで第一党となった政党の党首又は連立政党のリーダーを首相候補に指名し、組閣を委任するという形式を採用している。組閣委任を受けた首相候補は内閣の閣僚名簿をクネセトに提出し、これがクネセトで承認された後、大統領が正式な首相任命を行う。
首相公選制採用期
1996年から2001年までのイスラエルでは、首相の選出は有権者による直接選挙によって行われていた。首相直接選挙は、1996年・1999年・2001年の計3回実施された。首相選挙の被選挙権は、30歳以上で、なおかつ原則として首相選挙と同時に実施されるクネセトの総選挙(厳正拘束名簿式に基づく比例代表制)において、いずれかの政党の比例名簿第1位の候補者となっている者が対象となり、有効投票の過半数の票を獲得した者が当選者となる。公選で選ばれた首相も従来の首相と同様、クネセトの過半数の議決により不信任が可能であるが、この場合はクネセトも解散され、クネセトの総選挙と首相選挙が同時に実施される。これに対し、不信任以外の理由によって任期途中で首相が欠けた場合(クネセトの3分の2を超える議決によって首相が罷免された場合を含む)には、首相選挙が単独で実施される。単独選挙の場合の被選挙権は、クネセトの現職議員に限られる。単独選挙となる場合であっても、大統領の承認があればクネセトを解散することができ、その場合は同時選挙となる。
首相公選制の導入および廃止の経緯
イスラエルの選挙制度(厳正拘束名簿式に基づく完全比例代表制)は、総選挙での各政党の得票率がほぼそのままクネセトの議席配分に反映されるため、少数政党でも議席を得やすく、小党乱立による分極的多党制に陥る可能性が高い。そのため、多数の政党からなる連立政権を組まなければクネセトの過半数を確保できず、キャスティング・ボートを握った弱小政党が過大な政治的影響力を行使するなど、政局が流動的かつ不安定な状態が続いていた。
このような状況を打開するため、首相のリーダーシップの強化と、首相選挙を戦う能力の無い弱小政党の自然淘汰を図ることを目的に、国民の直接選挙で首相を選ぶ首相公選制の導入が行われた。しかし、制度導入時には首相選挙とクネセト総選挙を同時に行えば双方の選挙結果が連動すると期待されていたのに対し、実際には多くの有権者が、双方の選挙でそれぞれ別の政党に投票して票を分散させることによって、自らの利益を最大化させる投票行動(首相選挙では当選確率の高い大政党の候補者に投票し、弱小政党でも得票率に応じて議席を獲得できるクネセト総選挙では他の支持政党に投票するなど)をとった。
このため、以前にも増して小党乱立に拍車がかかり、首相はクネセトの過半数確保のためにより多くの少数政党と連立を組む必要に迫られるなど、当初の期待とは正反対の状況に陥り、公選首相のリーダーシップは従来の首相よりもさらに弱いものとなった。その結果、リクード・労働党などの主要政党が首相公選制の廃止で一致し、2001年2月に行われた最後の首相選挙で当選者となったアリエル・シャロンが就任する直前の、2001年3月に首相公選制は廃止された。
歴代首相の一覧
参考資料
関連項目
外部リンク
- מדינת ישראל - イスラエル首相府公式サイト(ヘブライ語・英語)