洗脳
洗脳(せんのう)は、ある人の思想や主義を、根本的に変えさせること。共産主義国や日本赤軍などの左翼集団やカルト宗教、マルチ商法が得意とする。
概要
一般に「洗脳」というと、特定の主義・思想を持つように仕向ける事、またはその方法を指す。
洗脳はマインドコントロールとは違い、主に物理的暴力(拷問のほか、薬物の利用や電極を埋め込む手術を含む)あるいは精神的圧迫(罪の意識の植え付け)などの強い外圧があるとされる。
これらを基に通常、児童からの教育段階で偏った情報を与えて、特定の(一部の者に都合の良い)思想や価値観を持たせてしまう場合はマインドコントロールに、既に成長して主義・思想を持つ人間に働き掛けて、特定の主義・思想に(本人の意思に関わり無く強制的に)変更してしまう場合は洗脳に分類される。特に後者では、薬物の使用や過酷な環境下において、人間の精神が極めて受動的になることを利用して行われる。
洗脳は何らかの論理体系を与えて特定の方向付けや条件付けを行い、ある思考様式を持たせると云う、いわゆる「マインドコントロール」と混同されがちだが、洗脳の場合には、より実質的な意味で価値観や記憶すら改竄(かいざん)する事を指し、文字通り「別人にしてしまう」といえる。また記憶の改竄により、洗脳の際に不当な扱いを受けたという記憶すら失っている場合には、主観的に「洗脳を受けた」という事を認識する事も不可能である。
場合によっては、記憶にある事実関係を誤認識させたり、特定の方向性を持たせる等の点で、マインドコントロールに類似した点もあるが、いずれにしても「元々のその人」または「本来は違ったであったであろう人格」を破壊した上で、違う人物を作り上げてしまうため、人道上においては殺人行為と同質であると見る事ができる。
洗脳とマインドコントロールは一般的にネガティブなものだと思われがちだが、累犯者の犯罪衝動抑止や、精神的な依存の問題の解決に役立つという考えもあり、個々人のためといった面と、社会福祉や理論的な可能性のうえで、いくつかの問題が提起されている。
情報で思想を染めあげることから、染脳という言葉が適切だとする論者もいる。洗脳とは、もともとは悪い意味ではなかった(古い観念を洗い流すという意味)という説もある。
語源
朝鮮戦争時の捕虜米兵に対して共産主義を信じることをせまった行為を中国共産党が洗脳と呼んでいたのを訳してbrainwashingと名付けられた。当時米兵が次々と共産主義者であることを宣言し、関係者に衝撃を与えた。
中国共産党及び軍の洗脳は、
- 外部隔離
- 尋問
- 処罰・暴力
- 巧妙な賞罰
- 徹底教化
- 罪の意識を植え付ける行為
- 自己批判
などの手段で行い、薬物使用の例もあるとしている。
著名な心理学者であるロバート・ジェイ・リフトン(ニューヨーク市立大学教授)は共産主義者が今までで最も効果的な手段を持ったと断言し、国際的な衝撃を与え、欧米のマスコミでセンセーショナルに取り上げられ広まった。ただし、リフトン自身はが最終的にはその効果を否定している。また、同時に社会心理学での研究テーマとなった。W.J.マクガイアは接種理論による予防を唱えた。また、映画や小説の世界でも取り上げられジョン・フランケンハイマー監督は『影なき狙撃者』(1962年・米)で朝鮮戦争にて共産主義者に洗脳された米兵が殺人を犯す映画を公開するなど、広く衝撃を与えた。
現在は共産主義の言葉からフィクション・誤解も含めて広く定着している。
参考書籍
- 『明鏡国語辞典』大修館書店