レオパルド2

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レオパルド2Leopard 2)は、西ドイツが開発した第三世代主力戦車である。製造にはクラウス=マッファイ社を中心に複数の企業が携わっている。ドイツ語での発音はレオパルト(レオパート)・ツヴォー("zwo"。ドイツ軍ではツヴァイ"zwei"とは発音しない。『三』を意味するドライ"drei"との聞き間違いを避けるために、電話などではツヴォー"zwo"が使わることがある。軍隊でも、聞き間違いを避けるためにツヴォーを使っているのであろう。)、英語ではレパード・ツーであり、「レオパル"ド"」(トに濁点)と発音するのは日本式である。

輸出用戦車としての側面

中空装甲スペースドアーマー)から発展した複合装甲を持ち、ラインメタル社の120mm 滑腔砲を装備。開発国のドイツ以外にも西欧各国を含む複数の国が配備運用中である輸出用戦車の側面を持つ事で知られている。主な理由は、ドイツ戦車由来の堅実かつ発展性のある設計であることから使用国独自の発展改修に対応させる余裕があることや、その要望に応じた仕様変更に対応するサポート態勢にある。輸出された車両の多くがドイツ連邦軍又はオランダ陸軍が使用していたレオパルド2A4の中古車両であり、2006年3月にはチリもレオパルド2A4の導入を決定した。レオパルド2A5やレオパルド2A6の輸出も行われているが、ドイツ連邦軍が配備する車両とは細部の仕様が異なる。

スウェーデン陸軍Strv 103(Stridsvagn 103)Cの後継として購入したStrv 122(Stridsvagn 122)は、当初の計画ではA5そのものだった。しかし、購入後スウェーデン軍的な運用思想に合わせて独自改良(A5では見送られた車体前面と砲塔上面に装甲を追加)を行った結果、より重装甲になり重量も62.5tに達した。これはドイツ連邦軍の装備している通常型のA5やA6よりも優れた防御力を有している。現在では同様の装甲防御を施したA5以降のレオパルド2をギリシャ陸軍スペイン陸軍デンマーク陸軍(車体前面のみ)も装備している。最近ではレオパルド2A6Mと同様の地雷防御改良を施したStrv 122Bという車両が発表されている。

またPz 87 Leo(レオパルド2A4)を導入したスイス陸軍では、Pz 87 Leo WE(Panzer 87 Leopard Werterhaltung)と呼ばれる改良型を独自に開発中である。隔壁装甲(ショト装甲)とは異なりAPFSDSに対する防御力を持った強固な垂直の増加装甲を砲塔前面及び側面に装着しており、砲塔部の防御力はA5やA6よりも優れている。車体底面にはレオパルド2A6Mと同様の物と考えられる地雷防御改良が施されている。装填手用ハッチ後方には全周旋回可能な遠隔操作式銃架を設置し、12.7mm重機関銃を据え付けているのが特徴的である。

改修による強化

ファイル:Leo2A5.JPG
レオパルド2A5(ドイツ陸軍)

1980年代後半、KWS(Kampfwertsteigerung = 戦闘能力強化)という改良計画が立案された。計画は三段階あり、一つ目のKWS Iは既存の44口径120mm滑腔砲を55口径120mm滑腔砲に換装し攻撃力の強化を目的としたもの、二つ目のKWS IIは隔壁装甲(Schottpanzerung)と呼ばれる楔形の空間装甲板を砲塔前面の左右と砲塔側面前部の左右の計4箇所に取り付け(砲塔側面前部の左右に取り付けられた隔壁装甲は、外側に90度以上可動させる事ができる。これは側面の出っ張りがエンジンを着脱する際に障害になる為である)、更に全周旋回可能な車長用熱線暗視サイトを砲塔上に増設し防御力と索敵能力の向上を目的としたものである。そして三つ目のKWS IIIは主砲に140mm滑腔砲に採用するかを決める試験的なものであった。

開発の末、先行して実用化されたKWS II改良を行った車両はレオパルド2A5となり、レオパルド2A5にKWS I改良を行った車両がレオパルド2A6となった。KWS IIIだが実際にレオパルド2のプロトタイプ車両にラインメタル社製140mm滑腔砲(NPzK-140)を搭載した試験車両が作られ実験が行われたが採用されなかった。(その後スイス陸軍でも国産140mm滑腔砲をPz 87 Leo(レオパルド2A4)に搭載し実射試験などを行ったという)。

A4までの車両の砲塔正面装甲が垂直面で構成されていたため避弾経始上の欠陥と揶揄されたが、特殊砲弾技術が発展した今日において主に使用されている戦車砲弾のAPFSDSは、装甲を傾斜させても跳弾しないため避弾経始は過去のものとなったと言える。A5以降の改良型で隔壁装甲と呼ばれる楔形の空間装甲板が取り付けられたが、APFSDSは装甲を傾斜させても跳弾しないため隔壁装甲の形状はAPFSDSに対する避弾経始の効果を狙ったものではないと考えられている。以前、APFSDSを主装甲(複合装甲)中央部の最も丈夫な部分へ誘引させる効果があるのではという説があったが、現在はその説を唱えていた人物が公表された実験結果などから誤りであったと自ら否定している。現在の説では成形炸薬弾の貫通力を低下させたり、小口径弾から主装甲(複合装甲)を保護する等の効果を狙ったものと考えられ、隔壁装甲自体にAPFSDSに対する防御力は殆どないとみられている。

A5とA6の違いは44口径120mm滑腔砲から55口径120mm滑腔砲に換装した事による砲身長の延長である。約1.3m長くなった事で砲弾の初速が向上し、有効射程が向上した。また同時に命中精度と砲身寿命が若干低下したとも伝えられている。ドイツ連邦軍のA5は全てA6に改良する予定であるという。A6及びA6の改良型はオランダギリシャスペインも導入している。

A5及びA6への改良により戦闘能力が強化された事は間違いないと考えられるが、重量増加に伴い機動性や航続距離が低下した。また、55口径120mm滑腔砲に換装したA6では命中精度と砲身寿命が若干低下し、取り回しが良くない事から乗員の評判はあまり芳しくない模様である。

スイスではPz 87 Leo WE、ドイツではレオパルド2PSOという、低強度紛争(LIC)などにおける市街戦等に対応する為の最新改良型が開発されている事からも、本車がまだまだマイナーチェンジに耐えうるゆとりを残している事が伺える。ドイツの次期主力戦車については全く発表が無い事から、ドイツ連邦軍は当分レオパルド2を主力戦車として運用するものと考えられている。

バリエーション

ファイル:Leopard 2 A6M.JPG
レオパルド2A6M(ドイツ陸軍)
レオパルド2AV
Leopard 2 AV
原型車両。
レオパルド2A0
Leopard 2 A0
第1バッチ生産車両。
レオパルド2A1
Leopard 2 A1
第2~3バッチ生産車両。
レオパルド2A2
Leopard 2 A2
第3バッチに改良した第1~2バッチ生産車両。
レオパルド2A3
Leopard 2 A3
第4バッチ生産車両。
レオパルド2A4
Leopard 2 A4
第5~8バッチ生産車両。A4以前の車両も改良が行われ全てA4扱いとなっている。
レオパルド2A5
Leopard 2 A5
A4にKWS IIという改良を行った車両。隔壁装甲と呼ばれる空間装甲板を砲塔前面及び側面に付加。射撃統制装置を改良し、車長用ハッチ後方に全周旋回可能な車長用サイトを増設した事によりハンターキラー能力を獲得した。重量は59.7tに増加。
レオパルド2A6
Leopard 2 A6
A5にKWS Iという改良を行った車両。主砲をA5までに搭載されていた44口径120mm滑腔砲から55口径120mm滑腔砲に換装し、専用のAPFSDSであるDM53(LKE II)を使用する事により有効射程が向上した。重量は60.1tに増加。
レオパルド2A6M
Leopard 2 A6M
A6地雷防御強化型。車体底面に対地雷用の装甲プレートを装着。
レオパルド2A6EX
Leopard 2 A6EX
A6装甲防御強化型。輸出向けデモンストレーション車両。車体前面及び砲塔上面に装甲を追加する事で防御力を強化し、空調システムも改善させた。重量は62.5tに増加。
レオパルド2PSO
Leopard 2 PSO
A4又はA5の改良型。紛争地での活動や都市環境における軍事作戦での運用に最適化させた型で、2006年6月に初公開された。主砲は市街地での運用を考慮してか、44口径120mm滑腔砲を装備。砲塔側面後半部及びサイドスカート前半部にRPG-7対策用の増加装甲を装着。車体底面には対地雷用の装甲プレートを装着。装填手用ハッチ後方に設置された全周旋回可能な遠隔操作式銃架には、40mm自動擲弾発射器、又は12.7mm重機関銃、又は7.62mm機関銃を据え付け可能。非殺傷兵器を搭載。小型カメラ経由の情報による近接観測能力の向上。主砲同軸にサーチライトを設置。偵察能力を改善。車体前面にドーザーブレードを装着。車両全体への都市迷彩。以上が主な改良点であるという。

派生型

ファイル:PSB 2 with bridge.jpg
パンツァーシュネルブリュッケ2(ドイツ陸軍)
ベルゲパンツァー3ビュッフェル
Bergepanzer 3 BÜFFEL(BPz 3)
レオパルド2の車体を流用した装甲回収車
パンツァーシュネルブリュッケ2
Panzerschnellbrücke 2(PSB 2)
レオパルド2の車体を流用した架橋戦車
  • この他にも操縦手訓練車などの派生型が存在する。

各国の最新鋭戦車との比較

55口径120mm滑腔砲を備えるレオパルド2A6イラク戦争で実戦投入されたM1A2エイブラムスチャレンジャー2、高い射撃能力を持ち強固な複合装甲を備える90式戦車、52口径120mm滑腔砲を備え機動性の高いルクレール、都市戦闘と対成形炸薬弾防護に最適化されたメルカバ Mk 4、旧ソ連ロシア系戦車の集大成と言えるT-90、高度なアクティブ防御システムを持つ99式戦車。これら代表的な世界の最新鋭戦車は各国それぞれの運用思想と要求仕様等により開発が行われており、何れの戦車も長所と短所が存在する。投入される戦場の状況などによって、その戦車への評価は異なり、一概に最強の戦車を決める事は困難であろう。レオパルト2はKFORとしてコソボに派遣されたものの実戦投入の機会がなく、他の実戦投入の機会がない戦車と同じく真の実力は未知数であるとも言われる。だが、21世紀初頭の現時点における、これら世界の第三世代主力戦車の中で、レオパルド2A6が世界最高水準の戦車であると世界的に評価されている事は事実である。

採用国及び配備モデル

関連項目

外部リンク

テンプレート:現代戦車

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