「山口女子高専生殺害事件」の版間の差分
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2019年11月27日 (水) 10:53時点における最新版
山口女子高専生殺害事件(やまぐちじょしこうせんせいさつがいじけん)は、2006年8月28日、山口県周南市にある国立徳山工業高等専門学校の研究室で、この学校に通う5年生の中谷歩さん(20歳)が、絞殺死体で発見された事件である。
概要[編集]
経緯[編集]
2006年8月28日、中谷歩さんの姿が見えなくなったのを友人の女子学生が不審に思い、教員と共に探していた。当日は夏休み中であったが、被害者等は卒業論文作成のため、自主登校していた。
午後3時頃、歩さんの所属する研究室で、荷造り用のビニール紐で首を絞められた状態で発見される。この研究室には鍵が掛かっており、密室状態であった。なお、事件が起きたと見られる研究室の鍵は、海外に出張中の女性教員の他に、この研究室に所属する5人全てが合い鍵を所持していた。
犯人と見られる少年は前日にメールで課題を教えて欲しいと伝えており、あらかじめ待ち構えていたとみられる。歩さんの爪には、抵抗した際に付いたと思われる犯人の血液と皮膚片が残されていた。死体の着衣には一部乱れがあった。
山口県警察本部は、歩さんの死体などに付着していた毛髪をDNA鑑定し、毛髪がこの研究室に所属する19歳の男子学生・藤村元紀のものであると判断、翌日の8月29日に藤村を殺人の疑いで逮捕状を山口地裁に請求。即日発付され、9月1日に藤村を殺人の疑いで全国に指名手配した。
藤村は、自身が保有しているホンダ製の青い原付バイクが自宅から無くなっていることから、これを使って逃走していたとみられていた。
その後9月7日に学校からほど近い山口県下松市の山林脇に藤村のものと同じ青い原付バイクを発見、さらにそこから入った山林の中で藤村の遺体が発見される。側の2本の木にロープがかかっており、首吊り自殺とみられる。この遺体は指名手配中であった藤村と確認された。遺体は一部が白骨化しており、事件から程なくして亡くなったものとみられている。
9月7日の週刊新潮(9月14日号)では捜査関係者の話として歩さんの死体に精液が付着していたという話が載せられた。藤村は「レイプもの」のビデオ・DVDを大量に保管しており、特に「本物の強姦シーン」を映して警察に摘発され、バッキー事件として有名となった「バッキービジュアルプランニング」のビデオはほぼ一通り揃えていた。
山口県警察捜査本部は、藤村が前日午後に歩さんの携帯電話にメールを送っていた事、自宅からビニールひもを持ち込んでいた事などから「確定的な殺意があった」と断定し、10月31日に死亡した藤村を山口県警察が被疑者死亡のまま強姦致死及び殺人容疑で山口地方検察庁に書類送検した。被害者の両親は「強姦致死」の罪名について「事実をしっかり伝えてほしい」と警察に対し要望した。その後、11月27日付けで、被疑者死亡のため起訴の条件を満たさないとして、不起訴処分となっている。
殺された中谷歩さん[編集]
被害者の中谷歩さん(20)は誰もが「きれいな子」と口を揃えるほど評判の美少女だった。
特に、文化祭のファッションショーでの姿は、「お姫様のようにかわいかった」と多くの人が証言している。
楽しくて明るくて太陽みたいな子だった。
– 高専の同級生
凄く美人な子でした。男女問わず同級生みんなの憧れの存在だったんです。
– 中学の同級生
9月2日の葬儀には800人以上が参列し、歩さんの交友関係の広さと人望をうかがい知ることができた。 徳山高専の同級生や後輩たちは、葬儀直前にバスで到着。一団となりうつむきながら終始無言で会場入口に向かった。会場内では、小さい頃から習っていたピアノの発表会の映像が繰り返し流されていた。
ピアノが上手で家に遊びに行ったとき、大きなグランドピアノが部屋の真ん中にあったのが印象的でした。
– 小・中学校の同級生
棺を霊柩車に運んだのは、歩さんがマネージャーをしていた野球部の部員たち。立派な体格の彼ら全員が、人目をはばかることなく号泣、中には大きな声をあげるものもいた。歩さんが彼らの中で、大きな存在だったことがわかる。
少年という壁[編集]
指名手配の際、山口県警は藤村が未成年であることと、再犯の可能性が薄いことを理由に匿名のまま藤村を指名手配したが、これに対して一部専門家の間で「手配中は氏名と顔写真を公表すべきだ」という意見がなされた。少年法には「家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者」の推知報道を禁止しているが、手配中の未成年者に関しては公表してはならないという条文がないので、文言通りに解釈すれば「家庭裁判所の審判に付されるか、少年のとき犯した罪により公訴を提起される」までは公表しても違法ではないが、報道各社は協定により自粛していた。
だが9月7日には週刊新潮が重大事件を起こしかねないと独自に判断し、顔写真と氏名を掲載したものの、発売当日の午後になって藤村の遺体が発見されることとなった。また、結果的に指名手配された藤村が亡くなったため、一部マスコミ(テレビ朝日と日本テレビ・読売新聞など)では「(匿名とする理由としている)少年の更生の機会が失われた」との理由で容疑者として藤村の実名を報道した。そのほかの新聞社によっても対応が分かれており、朝日新聞社では朝日新聞は匿名であったが、週刊朝日は実名報道をした。また産経新聞社は藤村が発見されない段階では少年犯罪者の匿名報道に批判的な記事を掲載していたが、実名報道は最後まで自粛した。
これらの実名報道の実施に対しては報道機関としてのスタンスよりも自社の視聴率・売り上げを重視したための方便ではないかとの批判の声も多く、賛否両論が巻き起こっている(特に日本テレビは盗撮により逮捕された自社アナウンサーを他局が実名報道を行ったのにもかかわらず実名報道を行わなかったため、特に批判が多い)。また、この事件が記載されている新聞・雑誌を保管する一部の図書館などでは、事件に配慮し実名や顔写真を黒く塗りつぶしたりして保管したり、該当号の閲覧制限を行った例が見られた。