頭髪
頭髪(とうはつ)は、ヒトの頭部に生える毛である。毛髪(もうはつ)、髪の毛(かみのけ)、また単に髪(かみ)ともいう。
構造[編集]
頭髪はケラチンという硬質たんぱく質で形成されている。3重構造になっており、中心部にあるのが髄質で、その周囲を皮質が取り巻き、その外側を毛表皮(クチクラ、キューティクル)が覆っている。ただし髄質は、ないものもあり、その役割ははっきりしない。
頭髪の直径はおよそ0.05mmから0.15mmの範囲であるが、個人差及び人種差が大きい。一般に白色人種と黒色人種においては細く、頭皮1平方cm当たりおよそ400本前後、黄色人種では前二者に比べて太く、1平方cm当たり250本ほどである。頭髪の断面も人種差があり、黄人では一般的に円形で、白人では楕円、黒人は更に細長い。このため黄人は直毛であり、白人では波状毛と呼ばれるゆるく波打った髪から巻き毛まで変異を示し、黒人では縮れ毛になりやすい。
生理[編集]
成長の速度もやはり個人差や人種差があるが、日本人でおよそ11 cm/年 = 0.3 mm/日 = 3 nm/秒である。
頭髪の色は、皮質に含まれるメラニンの量によって決まる。人類の大部分は多量のメラニンを含んだ黒色の頭髪であるが、白人の一部は二次的に生じた色素脱落により、金髪(ブロンド)・茶髪(ブルーネット)が見られる。
毛の根元にある毛胞は非常に速く成長する。そのため抗がん剤投与などの化学療法によりしばしば頭髪を失うことがある。抗がん剤は速く成長する細胞に働くため、癌細胞だけでなく毛胞にも作用する事による。
毛は丈夫である。1本の毛は100gの重さを、頭髪全体では12トンの重さを支えることができるとされる。これはアルミニウムの強さに匹敵する。京都の東本願寺では、明治初期の建築工事に際し、通常の綱では用をなさない重い建材の運搬移動に、信者の女性が寄進した髪の毛によって作った綱を用いた事はよく知られている。
毛はその環境および、機械的、化学的な経歴に対応する。例えば、湿っている毛を成型し乾燥させると、その型を保つ。その型は再び毛が湿ると失われる。さらに恒久的なスタイリングのためには、化学的な処理(パーマネントウエーブ)によってジスルフィド結合を破壊し、再構成する。
加齢による毛の変化[編集]
老人は毛の内部の色素が失われるため、灰色(実際には色の無い)の毛に発達する傾向がある。これが生ずる年齢は人によって異なるが、一般的に75歳以上になるとほとんどの人が灰色の頭髪になり、一般に男性は女性よりも灰色になりやすい。
さらに年齢が進むと、灰色の毛になる可能性は大きくなり、85歳までにほとんどの人が元の毛の色を失う。灰色の毛は通常の加齢の特徴として考えられる。
非常に薄い色の金髪の人々は、加齢に伴って灰色の毛の代わりに白い毛が成長する。
漢方薬としての人髪[編集]
人髪を黒焼きにしたものを乱髪霜と呼び、止血効果があるとされる。
文化史[編集]
頭髪は、単に人体の一部という役割を超えて、神聖視されたり、特別な意味合いを付与されたりすることもあった。旧約聖書の士師記においてサムソンは髪を切られたためにその力を失った。現在でも正教会においては、地域によっては気候・習慣等の要因から髪を切る修道士もいるが、修道士は頭髪を切らない事が基本的伝統とされる。
日本の平安時代の貴族女性において、髪の長さは美しさであった。村上天皇の宣耀殿の女御の髪の長さは、大鏡に記述がある。
黒人では、頭髪をそのままにしておくと、きつく曲がって成長し、アフロと呼ばれる独特の髪形になる。アメリカ合衆国においては、1960年代までは白人の黒人に対する差別が根強く、黒人自身も差別される事を嫌って、化学処理や装置を使って毛を真っ直ぐにする場合があったが(いわゆるストレートパーマ)、60年代以降、公民権運動が成果を上げて黒人の地位が向上すると彼らの考えも変化発展し、アフロヘアを誇示するようになり、白人にも浸透するようになった。
関連項目[編集]
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