司法書士

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司法書士(しほうしょし)とは、不動産の権利に関する登記供託及び訴訟等に関する手続の適正かつ円滑な実施に資し、もつて国民権利保護に寄与する事を目的とする職業、またはその資格者である。(司法書士法1条)

概要[編集]

司法書士は、他人の依頼を受けて、不動産の権利に関する登記又は供託手続きの代理、登記又は供託に関する審査請求手続について代理、裁判所検察庁法務局に提出する書類の作成、成年後見人、不在者財産管理人、相続財産管理人等の財産管理業務などを業として行う。  また法務大臣の認定をうけた司法書士(認定司法書士)はこれらの業務に加えて簡易裁判所における訴訟代理及び紛争の目的の価額が裁判所法第33条第1項第1号に定める額(140万円)を超えないものについて相談に応じ、又は裁判外の和解について代理することを業として行うことができる。

司法書士、30歳を過ぎても年収200万円台はザラ[編集]

合格率は3%と言われ、10年落ち続けるケースもザラだという司法書士試験。

だが、この超狭き門を通過しても前途は多難だというのが現実のようだ。5年前に司法書士資格を取得し、現在は司法書士事務所に勤務する吉川夏樹氏(38歳・仮名)が複雑な胸の内を明かす。

「司法書士事務所っていうのは、絶望的に待遇が悪い。ひどいところだと、30歳を過ぎても年収200万円台とかですから。あれだけ苦労して合格したのに、なぜ?って普通は思いますよね。これは司法書士事務所が独立のための“修行の場”と考えられているためです。

さらに司法書士は何歳で合格しようが新人として扱われるので、給与ももちろん“新人”。合格して、年収500万円の会社勤めを辞めて司法書士事務所に入った30代の男性であっても、初任給は20万円台前半だったりすることはザラなんです」

だからといって、独立しても成功が約束されているわけではもちろんない。それどころか、生活苦で業界から足を洗うケースも多い。

「警備員のバイトをしてるとか、1年もしないで出戻りしたとか、奥さんの扶養家族になっている人もいますね。おそらく年収は100万円前後じゃないでしょうか」

司法書士事務所の待遇は劣悪だが、さりとて独立するのはリスクが大きすぎるとも吉川氏は言う。

「独立開業1年目は経費を引いて300万円あればいいと言われています。独立すれば事務所の管理からバイトの管理もしなきゃいけないから、仕事が増えます。同じ給料なら雇ってもらってたほうが楽ですよ。だから中には“フリー”として活動する人もいるくらいです」

これは事務所を構えず、携帯ひとつで業務を行うというスタイルだ。なんとも胡散臭ささがつきまとう。

独立に憧れていた吉川氏も、独立失敗のケースを見せられ、現在は事務所におとなしく勤務する日々。夢の残骸が虚しく横たわっている。

こうした実例は司法書士だけではない。例えば、司法修習生の修習期間中の給費制が廃止されたために、弁護士になった途端に借金を抱える人などもおり、「金持ちしか弁護士になれなくなる」などという声も挙がっているという

司法書士の業務[編集]

業務内容は、司法書士法第3条及び第29条に次の通り規定されている。

司法書士法第3条第1項
司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。
  1. 登記又は供託に関する手続について代理すること。
  2. 法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第4号において同じ。)を作成すること。ただし、同号に掲げる事務を除く。
  3. 法務局又は地方法務局の長に対する登記又は供託に関する審査請求の手続について代理すること。
  4. 裁判所若しくは検察庁に提出する書類又は筆界特定の手続(不動産登記法第6章第2節の規定による筆界特定の手続又は筆界特定の申請の却下に関する審査請求の手続をいう。第八号において同じ。)において法務局若しくは地方法務局に提出し若しくは提供する書類若しくは電磁的記録を作成すること。
  5. 前各号の事務について相談に応ずること。
  6. 簡易裁判所における次に掲げる手続について代理すること。ただし、上訴の提起(自ら代理人として手続に関与している事件の判決、決定又は命令に係るものを除く。)、再審及び強制執行に関する事項(ホに掲げる手続を除く。)については、代理することができない。
    民事訴訟法の規定による手続(ロに規定する手続及び訴えの提起前における証拠保全手続を除く。)であつて、訴訟の目的の価額が裁判所法第33条第1項第1号に定める額を超えないもの
    ロ 民事訴訟法第275条の規定による和解の手続又は同法第7編の規定による支払督促の手続であつて、請求の目的の価額が裁判所法第33条第1項第1号に定める額を超えないもの
    ハ 民事訴訟法第2編第4章第7節の規定による訴えの提起前における証拠保全手続又は民事保全法の規定による手続であつて、本案の訴訟の目的の価額が裁判所法第33条第1項第1号に定める額を超えないもの
    民事調停法の規定による手続であつて、調停を求める事項の価額が裁判所法第33条第1項第1号に定める額を超えないもの
    民事執行法(昭和54年法律第4号)第2章第2節第4款第2目の規定による少額訴訟債権執行の手続であつて、請求の価額が裁判所法第33条第1項第1号に定める額を超えないもの
  7. 民事に関する紛争(簡易裁判所における民事訴訟法の規定による訴訟手続の対象となるものに限る。)であつて紛争の目的の価額が裁判所法第33条第1項第1号に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は裁判外の和解について代理すること。
  8. 筆界特定の手続であつて対象土地(不動産登記法第123条第3号に規定する対象土地をいう。)の価額として法務省令で定める方法により算定される額の合計額の2分の1に相当する額に筆界特定によつて通常得られることとなる利益の割合として法務省令で定める割合を乗じて得た額が裁判所法第33条第1項第1号に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は代理すること。
司法書士法第29条第1項
司法書士法人は、第3条第1項第1号から第5号までに規定する業務を行うほか、定款で定めるところにより、次に掲げる業務を行うことができる。
  1. 法令等に基づきすべての司法書士が行うことができるものとして法務省令で定める業務の全部又は一部
  2. 簡裁訴訟代理等関係業務
司法書士法施行規則第31条

法第29条第1項第1号の法務省令で定める業務は、次の各号に掲げるものとする。

  1. 当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、管財人、管理人その他これらに類する地位に就き、他人の事業の経営、他人の財産の管理若しくは処分を行う業務又はこれらの業務を行う者を代理し、若しくは補助する業務
  2. 当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、後見人、保佐人、補助人、監督委員その他これらに類する地位に就き、他人の法律行為について、代理、同意若しくは取消しを行う業務又はこれらの業務を行う者を監督する業務
  3. 司法書士又は 司法書士法人の業務に関連する講演会の開催、出版物の刊行その他の教育及び普及の業務
  4. 法第3条第1項第1号から第5号 まで及び前3号に掲げる業務に附帯し、又は密接に関連する業務

司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(協会を除く。)は、第3条第1項第1号から第5号までに規定する業務を行つてはならない(司法書士法第73条第1項)とされている。

認定司法書士の業務[編集]

通常の司法書士の業務のほか、簡易裁判所における(1)民事訴訟手続,(2)訴え提起前の和解(即決和解)手続(3)支払督促手続(4)証拠保全手続(5)民事保全手続(6)民事調停手続(7)少額訴訟債権執行手続(8)裁判外の和解について代理する業務(9)仲裁手続(10)筆界特定手続の各手続きについて代理をする業務等を行うことができる。(第3条第1項第6号から第8号及び第29条第1項第2号)

業務制限[編集]

司法書士は、他の法律により制限される業務は行えない。

司法書士試験[編集]

第一のルートは、法務省が実施する司法書士試験に合格することである。司法書士試験は、まず「筆記試験」が実施され、次に筆記試験に合格した者を対象にした「口述試験」が実施される。

筆記試験は、毎年、7月の第1週(又は第2週)の日曜日に各法務局管轄の受験地で行われている。

午前の部は、多肢択一式35問を2時間で解答する。科目は、憲法民法商法会社法その他の商法分野の法令を含む)、刑法から出題される。

午後の部は、多肢択一式35問と記述式2問を3時間で解答する。科目は、択一では供託法民事訴訟法民事執行法民事保全法司法書士法不動産登記法商業登記法から出題され、記述式では不動産登記商業登記から出題される。

これら11科目が試験科目であり、民法、不動産登記法、商法、商業登記法はまとめて主要四科目と呼ばれ、出題数の大半を占めている。

口述試験は、毎年、10月中旬頃に実施される。試験科目は、筆記試験と同一の範囲からの出題となっている。(ただし、通年受験者のほぼ10割が合格する試験であり、形式的なものである。)

年度 出願者(人) 受験者(人) 合格者(人) 合格率
平成元年度 18,234 406 2.2%
平成2年度 18,533 408 2.2%
平成3年度 18,599 408 2.2%
平成4年度 18,339 403 2.2%
平成5年度 18,044 405 2.2%
平成6年度 18,266 440 2.2%
平成7年度 17,682 479 2.7%
平成8年度 19,090 504 2.6%
平成9年度 21,158 539 2.5%
平成10年度 21,475 567 2.6%
平成11年度 21,839 577 2.6%
平成12年度 22,715 615 2.7%
平成13年度 23,190 623 2.7%
平成14年度 25,416 701 2.8%
平成15年度 28,454 790 2.8%
平成16年度 29,958 865 2.9%
平成17年度 31,061 883 2.8%
平成18年度 31,878 26,278 914 2.9%
平成19年度 32,469 26,860 919 2.8%
平成20年度 33,007 27,102 931 2.8%
平成21年度 32,558 26,774 921 2.8%
平成22年度 33,166 26,958 948 2.8%
平成23年度 31,228 25,696 879 2.8%

職務従事経験者[編集]

第二のルートとして、一定の職にあった者の中から法務大臣による考査を経て司法書士資格を得ることである。法務大臣の「司法書士の資格認定に関する訓令」第1条に、次に掲げる者は、法務大臣に対し、資格認定を求める事ができるとあり、 (1) 裁判所事務官裁判所書記官法務事務官又は検察事務官として登記、供託若しくは訴訟の事務又はこれらの事務に準ずる法律的事務に従事した者であって、これらの事務に関し自己の責任において判断する地位に通算して10年以上あった者(2) 簡易裁判所判事又は副検事としてその職務に従事した期間が通算して5年以上の者が規定されている。その者が資格認定を求めた場合の判定は、口述及び必要に応じ筆記の方法によって行うと規定されている。

資格取得後[編集]

筆記及び口述試験合格後、または法務大臣の認可を受けた後、事務所所在地を管轄する都道府県司法書士会へ入会して、日本司法書士会連合会が行う司法書士名簿への登録を受けなければ司法書士としての業務を行うことができない。また、二人以上の司法書士を社員とする司法書士法人を設立することもできる。なお、司法書士は予備自衛官(法務職)の任用資格になっている

なお、法律上資格取得後直ちに入会・登録ができる制度にはなっているが、多くの試験合格者は業界団体の主催する研修を受け、先輩の事務所に入所し数年間の訓練を受けた上で登録・開業するのが一般的である。

罰則[編集]

司法書士会に入会している司法書士または司法書士法人でない者(公共嘱託登記司法書士協会を除く)が、司法書士の業務を行ったり、司法書士または司法書士法人の名称またはこれと紛らわしい名称を用いたりした場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられる(司法書士法第73条、第78条)。なお、第3条第1項第1号から第5号までに規定する「業務」の定義は反復継続する意思で第3条第1項第1号から第5号の事務を行なうことであり、反復継続する意志があれば、報酬を得る目的は必要ではないとされている。(注釈司法書士法、最高裁昭和39年6月11日第2小法廷判決、大審院昭和9年3月16日判決(司法代書人法時代))

司法書士の徽章[編集]

司法書士の徽章バッジ)は、「五三桐花」(意匠である「五三桐花紋」は、日本では比較的ポピュラーな家紋でもある)。直径13mm、厚さ約3mmで、裏に通しのナンバリングが施されている。司法書士徽章は、司法書士会に入会後交付され(実際には、貸与される。貸与料は、返還まで6500円)、退会届提出時、あるいは業務停止の処分を受けたときは司法書士会に返還しなければならない。

呼称等[編集]

やや蔑称的な含みもあるものの、古くから行政書士と同じく『代書屋』と称されることもある。また、講学上弁護士などの法律家と比して『準法律家』とされることもあり、近年においてはその職域の拡大などに鑑み『第四の法曹』と言われることもある。

近年、前述の職域の変化などから司法書士という呼称を変えようという議論が起きている。候補として『法務士』『法務弁事士』『司法士』などがあげられているが、今後の動向が注目される。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

テンプレート:法務省所管の資格・試験