内閣官房長官
内閣官房長官(ないかくかんぼうちょうかん)は、内閣法に基づき内閣に置かれる内閣官房の長。国務大臣をもって充てられる。
職務[編集]
内閣官房長官は、内閣官房の事務を統轄し、所部の職員の服務につき、これを統督する(内閣法13条)。 執務室は総理大臣官邸5階にあり、特別職の国家公務員である国務大臣秘書官1人が割り当てられている。具体的には、以下の役割を担当する。
- 内閣の諸案件について行政各部の調整役。
- 同じく諸案件について、国会各会派(特に与党)との調整役。
- 政府(内閣)の取り扱う重要事項や、様々な事態に対する政府としての公式見解などを発表する「政府報道官」(スポークスマン)としての役割。
閣議では進行係を務める。官房長官の権限は強く他の国務大臣の管轄の内容についても調整という形で介入することができる。
内閣府設置法の規定に基づき内閣府(大臣委員会及び特命担当大臣の所掌部署を除く)の事務の総括整理も担当している。
概要[編集]
マスコミ報道等では内閣総理大臣と並んで国民に対する露出度(認知度)が高い重要ポストである。首相の側近が任命されることが多く、首相の懐刀、総理の女房役ともいわれる。自民党内閣では首相出身派閥から任命される事例が多い。
報道において、「政府首脳」という言葉は慣例的に内閣官房長官を指す。これは取材記者との懇談など、公式ではない発言などについて用いられる表現である。
また国政の運営上必要な場合、内閣官房報償費を内閣官房長官の判断で支出できる。
2000年4月から2009年9月まで、内閣総理大臣臨時代理予定者第1位に指定されており、2009年9月以降は副総理に次ぐ内閣総理大臣臨時代理予定者第2位に指定されている。危機管理を担当している閣僚として様々な危機に対応しなければならないため、基本的に官邸にすぐに駆け付けることができる体制が望ましいとされており、海外訪問がほとんどできないポストとされている。
補佐職[編集]
内閣官房長官を補佐する職として次のような官職が置かれている。
沿革[編集]
- 1879年(明治12年)3月12日 - 太政官の「内閣」に内閣官房長官の前身である内閣書記官長が初めて設置され、下僚として大書記官・少書記官が置かれる。
- 1885年(明治18年)12月22日 - 内閣制度の発足とともに正式の常設職となる。
- 1890年(明治23年)6月30日 - 内閣所属職員官制の公布により、内閣所属の勅任官とされ、職掌が定められる。当時の職掌は「命ヲ内閣総理大臣ニ承ケ機密ノ文書ヲ管掌シ閣内ノ庶務ヲ統理シ及属以下ノ任免ヲ専行ス(内閣総理大臣の命令により機密文書を管理し、内閣の事務を監督し、内閣所属の判任以下の職員の人事権を執行する)」ものとされた。
- 1898年(明治31年)10月22日 - 内閣所属各局の局長に対する書記官長の指揮権が命令権に改められる。
- 1924年(大正13年)12月20日 - 内閣所属職員官制が全面改正され、書記官長直属の部局が内閣官房に改組。また、職掌に「内閣総理大臣ヲ佐ケ」が加わり、内閣総理大臣の補佐が明文化される。
- 1947年(昭和22年)5月3日 - 日本国憲法の施行に伴い、それまでの内閣書記官長を廃し、後継の職として、行政官庁法に基づく内閣官房長官が設置される。国務大臣の補職ではなかったため、国務大臣である者を内閣官房長官とする場合は「内閣官房長官に兼ねて任命する」との辞令表記となる。国務大臣でない者の場合の辞令は「内閣官房長官に任命する」。
- 1949年(昭和24年)6月1日 - 行政官庁法の失効に伴い、内閣法に基づく職となる。国務大臣をもって充てることができる旨が同法に明記されたため、その場合は「内閣官房長官に命ずる」との辞令表記となる。国務大臣でない者の場合は以前と同様「内閣官房長官に任命する」。
- 1963年(昭和38年)6月11日 - 内閣法の一部改正により、条件付きの認証官となる。国務大臣である者が内閣官房長官となる場合は国務大臣としての認証を受け、国務大臣でない者が内閣官房長官となる場合は内閣官房長官としての認証を受ける。
- 1966年(昭和41年)6月28日 - 内閣法の一部改正により、内閣官房長官は国務大臣をもって充てることとなる(単独の認証官ではなくなった)。
- 1984年(昭和59年)7月1日 - 総務庁の設置に伴い、内閣官房に加えて総理府(大臣庁等を除く)の総括整理をも担当することとなる。
- 2000年(平成12年)4月5日 - 複数の発令方法があり不備が指摘されていた内閣総理大臣臨時代理予定者の指定が、組閣時に第5順位まであらかじめ発令する方式に改められ、原則として内閣官房長官たる国務大臣がその第1順位に指定されることとなる。
- 2001年(平成13年)1月6日 - 中央省庁再編に伴い、総理府に引き続き内閣府(大臣庁等を除く)の総括整理を担当することとなる。
内閣官房長官の一覧[編集]
- 歴代の内閣官房長官を参照。
現在、最も長く内閣官房長官を務めたのは福田康夫の1289日間である。2000年10月27日、第2次森内閣に途中入閣し、第2次小泉内閣途中まで在任。2004年5月7日に国会議員の年金未納問題の責任を取る形で辞任した。
内閣官房長官表彰[編集]
内閣官房長官は内閣官房の所管する業務に対する国民の功労に対して「内閣官房長官表彰」((内閣官房長官賞・内閣官房長官感謝状を含む))を行っている。これは「内閣総理大臣表彰」に準ずるもので男女共同参画や青少年健全育成に関する功労者などに授与されている。また、交通安全境界の標語やコンテストなどで内閣官房が共催・後援しているものについては内閣官房長官賞を授与している。また、これ以外に世界で活躍したオリンピック選手などに「内閣官房長官感謝状」を贈呈するなどの例もある。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- 内閣制度と歴代内閣 - 首相官邸