北海道教職員組合
北海道教職員組合(ほっかいどうきょうしょくいんくみあい)は、北海道の教員およびその他の学校職員による労働組合・政治団体である。略称は「北教組(ほっきょうそ)」。日本教職員組合(日教組)に属する。
目次
概要[編集]
教育関係者によると、北教組はその活動の激しさから広島、大分とともに「H2O」と並び称される日教組の牙城。文科省の施策にことごとく反対してきたことでも知られ、教育委員会も手出しできない学校が多い。このため、北海道出身者で特異な教育体験をした人は少なくない。
高校卒業まで札幌市内で過ごした30代の男性会社員はこう語る。
「小学校と中学校の卒業式では日の丸を見たことはなく、君が代を歌ったこともない。職員室には選挙候補者のポスターが平然と張られ、1時間目はストライキだと言って授業をしない先生もいた。いまから思えばむちゃくちゃな教師がたくさんいた」
授業内容も、各学校には「『国家のための教育』は許さない!」と題した資料が配付され、社会科では「『国を愛する心情を育てる』は論外」などと書かれている。 その結果、“独自”の歴史観や国家観を持つ教師が多い。
北海道教育委員会(道教委)によると、公立の小中学校教諭を中心に約1万9000人が加入し、組織率は34.2%(2009年10月現在)。組織率は年々減少傾向にあるものの(2006年時点では36.9%)、道内の教職員組合の中では最大の組合員数を誇り、「管理職を除いた小中学校の教諭では7~8割が組合員」とされ、「非常に力が強い組織」と評される。
反日・反社会的行為を組織的に行っていると指摘され、後述の小林千代美に関連する選挙違反事件により逮捕者も出ている他、職務怠慢と指摘される様な行為(後述調査拒否、違法ストライキ(係争中)、AED導入反対など)が常態化している。
主な活動・主張[編集]
主任制反対[編集]
1975年の学校教育法施行規則改正により導入された主任制は、「教員に対する管理体制の強化であり、手当を支給し管理職意識を植え付ける事により、組合組織の弱体化を図るものである」と主張。1981年2月24日には、それまで支給された組合員の主任手当およそ1億1千万円を道教委に返還するものの、道教委はそれを拒否。互いに押し付けあうという騒動が起こっている。それ以降も北教組は組合員の主任手当相当額を毎月徴収し、道教委に返還する運動を2007年まで続けていたが何れも拒否されている。北教組側は「道教委に返還拒否された金は金融機関に預けている」と説明している。 主任の命課は、市町村の学校管理規則(校内組織)に基づき、通常入学式の前日までに行われるが、校長の命課はその場で返上され、主任は実質的に機能しない。入学式にかかわる提案は、教務(主任)からなされるが、「式次第」に「国歌斉唱」が含まれることはなく、校長の意向は無視され、公然と職務命令違反が繰返される。
いじめの実態調査への協力拒否[編集]
滝川市立江部乙小学校いじめ自殺事件をきっかけとして、北海道教育委員会が2006年12月、いじめの実態調査を実施したが、北海道教職員組合の執行部が21ヶ所の支部に対して、調査の項目について問題があるとして調査に協力しないよう指導していたことが、2007年1月に報道された。
AED導入反対[編集]
AED(自動体外式除細動器)の学校への配置について2007年定期大会で「一方的な導入に反対する」との方針を表明した。反対理由については以下の3例を挙げ、講習の強要などの問題が生じていることを理由に「一方的導入」に反対し、いのちへの意識を表明した。
- 配備より、学校の安全体制づくり
- AEDは医療行為であり有効性、必要性、安全性に疑問がある(救急蘇生国際ガイドラインによりAEDの高い有効性が実証されている。一方事故も多く総務省と厚生労働省が共同事務局を担う「全国メディカルコントロール協議会連絡会」 (会長=小林國男・帝京平成大教授)が全国の消防機関を対象に実施した調査(2010年12月から2011年1月に実施)で、AED(自動体外式除細動器)の不具合が疑われた事例の報告が計328件あった。奈良県では死亡事故も報告されている))
- AEDがまれに火災を起こすと主張(日本では実際には火災を起した前例は無い)。
なお、AED以外にも虫歯予防のために進めるフッ化物を使ったうがいについても一方的な導入に反対としており、「単に仕事をしたくないだけではないか」という意見もある。
竹島問題[編集]
2008年11月28日に機関紙「北教」で、「竹島問題は韓国の主張が正しく、島根県などが竹島の領有権を求める行為は、日本の侵略・植民地支配を正当化する不当極まりないものである」と厳しく非難、2009年12月28日に朝鮮日報の取材に対し、昨年「韓国側の主張が正当だ」という学習資料を配付した北海道教職員組合の信岡聡書記次長が「(独島が)明確に日本のものだと主張できるだけの根拠は発見できなかった。生徒の正しい判断を助けるため、われわれが判断したことを学習資料に盛り込んだ」「日本の竹島領有権主張は、(日露)戦争中に用途が生まれ、主張し始めたものだ。明確に日本の領土だと主張できるだけの(歴史的)根拠を探し出すことはできなかった」「日本の教育には、“近隣諸国条項”というものがある。教科書を叙述する際、教室で生徒たちに教える際、近隣の国に配慮しなければならない、という原則だ。まだ解決していない問題を教科書に載せることは、この原則から外れている」と語った。(韓国に領有権があるとは主張していない)
これら主張に対し、拓殖大学教授の下條正男は「竹島が韓国の領土で日本の領土でないという歴史的見解を示せ」という趣旨の公開質問状を示した。また、維新政党・新風とも連携し、北海道教職員組合の竹島問題に関する見解など4項目からなる公開質問状を送付した。
「国旗国歌排除マニュアル」[編集]
2010年3月4日、北教組日高支部において国旗・国歌を入学式や卒業式から排除するため「『日の丸君が代』強制に反対するとりくみについて」という闘争マニュアルを配布していたことが発覚。
同問題が国会で取り上げられ川端達夫文部科学大臣は「学習指導要領から国旗国歌を大事にと指導しており、北海道教育委員会と連携して指導する」と述べた。なお、北教組日高支部は国会で批判した議員を呼び捨てにして批判する文書を配布、自民党馳浩議員は国会でこの文書について「こういうのを蛙の面に小便というんです」と批判した。
道教委調査で北教組員ら4169人不適切勤務が発覚。給与1318万円返還要求[編集]
北海道教職員組合(北教組)による勤務時間中の組合活動問題に絡み、北海道教育委員会が道内の全公立小中高校の教職員を対象に実態調査したところ、平成18~22年度の5年間に、北教組組合員ら4169人が、勤務時間中に帰宅するなどの不適切勤務をしていたことが2012年11月23日、関係者への取材で分かった。不適切勤務は計4418時間に上り、給与約13188万円が不当に支給されていた。道教委は近く調査結果を公表し、返還を求めるとともに関係者の処分を検討する。
4169人のうち9割近い3588人については、本人の証言が得られなかったケースで、時間と給与支給額を算出していない。このため、実際の不当支給額は数千万円規模に上るとみられる。
調査は2011年11月以降、2350校、5万497人を対象に実施。出勤簿などを精査し、疑いのある教職員には事情を聴くなどした。
不適切勤務で最も多かったのは、夏休みなどの長期休業中、勤務時間が順守されなかったケース。各学校舎の警備システムの記録を調べた結果、例えば始業の1時間後に解除されたり、退勤の1時間前に作動されたりして183校の384人が計2472時間、勤務時間を守らず、給与計約720万円を不当に受けていた。
このケースでは3588人が不適切勤務を認めず、大半が「システムを作動させた後、校内巡視などを行い終業時間後に退勤した」などと説明しているが、道教委は同一校でほぼ全員が同じ回答をするなど、「明らかに不自然」としている。
また、夏休みなどに「校外研修を行う」と校長に届けたにもかかわらず、実際には行っていなかったケースが、110校で154人に上り、不当支給額は計約498万円だった。
北教組をめぐる不適切勤務問題 平成22年3月に起きた民主党衆院議員への北教組の違法献金事件を契機に、北海道教委が教職員の実態調査を実施したところ、勤務時間中の組合活動など、延べ400人以上に法令違反の疑いが発覚。さらに会計検査院が昨年、全教職員の1割を抽出調査したところ、延べ647人の不適切勤務が判明した。このため文部科学省は2011年10月、道教委の調査は「不十分」として、検査院と同様手法による全道調査を指示していた。
小6女児自殺。110万円の支払い命令(2013年)[編集]
北海道遠軽町で2008年4月、町立小6年の今野彩花さん(当時11歳)が自殺したのは担任教諭の行き過ぎた指導が原因だとして、両親が町と道に対して約7800万円の損害賠償を求めた訴訟で、札幌地裁(千葉和則裁判長)は6月3日、町と道に連帯して110万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
彩花さんは小学5年のとき、担任の教諭から夏休みの宿題のやり直しや楽器の居残り練習を繰り返しさせられ、精神的苦痛を受けた。春休みには両親に「担任が嫌だ」と何度も訴え、6年に進級して間もなく自宅トイレで首をつって死亡した。
両親は、学校側が不適切な指導を黙認し、教諭の行き過ぎた指導に絶望して自殺したと主張。道と町は「指導は適切だった」として全面的に争っていた。
千葉裁判長は判決で、指導と自殺の因果関係は認めなかったが、その後の対応で両親に精神的苦痛を与えたとした。
道内の子供の学力下位「北教組に原因」文科相(2014年4月)[編集]
下村文部科学相は5日、北海道旭川市で開かれた今津寛衆院議員(自民、道6区)の政経セミナーで講演し、道内の子どもの学力や体力が全国でも下位であることについて、「北海道の教育には問題がある。一番の原因は北海道教職員組合にあり、北海道に求められているのは教育の正常化だ」などと語った。
また、五輪相として、2020年東京五輪・パラリンピックの参加国が行う事前合宿について「日本全体で受け皿となるよう調整する」と述べ、道内の自治体も事前合宿を誘致できるよう、内閣府で調整する考えを示した。
ストライキ[編集]
特に1970年代から1980年代にかけて度々ストライキを実施しており、道教委から処分を受けている。処分を受けた一部組合員らは、「労働争議を禁じた地方公務員法は労働者の団体交渉権などを保障した憲法に違反している」として、処分の取り消しを求め提訴したものの、2006年7月8日、最高裁は「地方公務員の争議行為を禁じた地方公務員法の規定は違憲ではない」として訴えを退けている。その後、2008年には「政府が公務員にストライキ権を含む労働基本権を与えないのは条約違反だ」として、国際労働機関に提訴している。(ILOからは是正勧告が出されている)
- 1969年 - 組合員の教諭・事務職員53人がストライキを実施。戒告処分を受ける。
- 1977年5月19日 - 全1日ストライキを実施。北海道警察は当時の委員長ら幹部3人を地方公務員法違反で検挙。組合員約2万3000人が道教委から処分を受ける。
- 1981年 - 役員9人がストライキを実施。停職1か月の懲戒処分を受ける。
- 1984年 - 人事院勧告の早期完全実施を求め、2時間の「公務員共闘」統一ストライキを実施。
- 2001年 - 労使協定(四六協定)撤廃を巡り、29分間の時限ストライキを実施。
- 2008年 - 査定昇給制度導入などを巡り、1時間の時限ストライキを実施。約1万2700人が戒告または減給処分となった。
選挙運動[編集]
国政選挙への関与[編集]
小林千代美参照
2009年の第45回衆議院議員総選挙において、民主党の小林千代美(北海道第5区選出)の選挙運動の中核となり、当選に大きく貢献した。2010年2月15日、本組合が「選挙対策費用」として小林陣営に1600万円を渡したことに関して、札幌地検が「政治資金規正法第21条違反の疑いがある」として、本組合本部や、選挙対策委員長を務めた本組合委員長代理の自宅マンションなどへのを家宅捜索をおこない、3月1日には本組合の委員長代理、書記長、会計委員と財政局長の4名を逮捕した。また、両罰規定により、団体としての本組合も起訴された。これに対し本組合は「不当な組織弾圧」と表明し、事件には言及せず「外部からの問い合わせには一切答えないように」と道内支部に対しかん口令を敷いた。
この事件に対して、北海道教育委員会は、教職員に加え保護者、住民に対して、北教組が教育公務員特例法に抵触する政治活動や学習指導要領に反する行為をしていないか、就業時間内に組合活動をしていないかなど多岐について情報提供を求める(公務員特例法に抵触しない政治活動について聞く項目もあった。北海道教育委員会・教職員の服務規程に関する調査報告参照)が、北教組は「政治的行為の自由を過度に規制するもので人権侵害。指導要領の徹底は教職員の思想・良心の自由、ひいては子どもの教育を受ける権利を侵害する」と反発し、道内の教職員計約6300人が北海道の4弁護士会に人権救済を申し立てた。
四六協定維持闘争[編集]
- 1971年に、北教組・道高教組(北海道高等学校教職員組合連合会)と道教委との間で結ばれた労使協定(通称・四六協定)は、「勤務条件にかかわるものはすべて交渉事項とする」「長期休業中の帰省の場合は自宅研修扱いとすること」などの違法性の高い文言が含まれていた。
- 2001年 - 道教委が違法性の高い部分を破棄。それに抗議した北教組側はストライキを実施。
- 2007年 - 「道教委が全面破棄を検討 高橋知事も道教委を全面支持」と報道される。
- 2008年 - 「四六協定破棄を道教委正式提示 北教組反発」と報じられる。同年12月26日、道教委の吉田洋一教育長は「時間をかけ、誠意をもって交渉してきた。これ以上、議論を続けるのは難しい」と破棄を通告。北教組の住友肇委員長は、「不当通告に屈せず、協定は存在するという思いで、子供の側に立つ教育をしたい」と述べた。翌12月27日失効。
- 2011年 - 「四六協定」の破棄を認めず、北教組は支部・支会・分会単位での闘争継続を行っている。特に長期休業中の自宅研修、図書館での校外研修について、校長に承認させることを強いる闘いを継続している。2011年の会計検査院の勤務実態調査では、研修場所を図書館としていた校外研修計画書・報告書の期日が図書館休館日であった事例などが明らかにされている。研修報告が、教材研究など数行の記述であったり、成果物も本のコピー1枚であるなど、研修の実態を伴わないものであることから、勤務実態調査は、10月全道の悉皆調査へと移行した。