居酒屋甲子園

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居酒屋甲子園

居酒屋甲子園とは、飲食店オーナーが劣悪な労働環境を改善することなく、社員を低賃金・長時間働かせるための洗脳方法の1つである。

イベント概要

居酒屋甲子園

外食産業の活性化を目的に設立されたNPO法人「居酒屋甲子園」が主催するイベントである。「公開朝礼」がおなじみの居酒屋チェーン店「てっぺん」の大嶋啓介氏がNPOの代表である。

20席以上、客単価が2千~5千円の居酒屋なら参加できる、2006年から始まったイベントで、全国からエントリーされた居酒屋の中から、選ばれた優秀店舗が、年一回数千人が集う会場に集結し、自店の想いや取組みを発表し、日本一の店舗を決める大会。

建前

「居酒屋甲子園」とは、“居酒屋から日本を元気にしたい”という想いを持つ全国の同志により開催された、外食業界に働く人が最高に輝ける場を提供する大会です。

全国からエントリーされた居酒屋のうち、独自の選考基準で選ばれた優秀店舗が、年一回、数千人が集う大会場に集結します。ステージで自店の想いや取組みを発表し、 居酒屋甲子園における日本一の店舗を決定、外食業界で働いている人が夢や誇りを持てる大会にすることを目指しています。

2006年の第1回大会は236店舗、2007年の第2回大会は739店舗、2008年第3回は770店舗、2009年第4回は、1,103店舗、2010年第5回は1129店舗、2011年第6回は1369店舗、2012年第7回は1332店舗の参加店舗様で予選を勝ち上がった優秀店舗6店舗が5,000人観客の前で熱いメッセージを伝えた感動の大会になりました。

今年2013年第8回は参加店舗数1392店舗でスタートしました。居酒屋甲子園は非営利活動法人(NPO)として設立しました。居酒屋甲子園をきっかけとして全国各地で生まれた、外食業界を皆で活性化しようとする取組みを支援しています。

NHK『クローズアップ現代』で特集され世間に知られる

居酒屋甲子園

愛、希望、勇気、絆、仲間、笑顔――。

震災以降、J-POPの歌詞のような優しくポジティブな言葉の多用が、若い世代を中心に広まっている。2014年1月14日放送の「NHK クローズアップ現代」では、こうした「ポエム化」現象に焦点を当て、日本一の居酒屋を決める「居酒屋甲子園」の様子を伝えた。

ポジティブな言葉を叫ぶ居酒屋店員たちの姿が紹介されたが、多くの視聴者がその様子に違和感を覚えた。インターネット上には「衝撃的だった」といった声が上がり、反響が広がっている。

16時間労働でも年収250万円
「夢はひとりで見るもんなんかじゃなくて、みんなで見るもんなんだ!人は夢を持つから、熱く、熱く、生きられるんだ!」

金髪の若き男性が声を張り上げ、ステージ上で熱い思いをぶちまける。「居酒屋甲子園」の一風景だ。

外食産業の活性化を目的にスタートしたこの大会は今や約1400店舗が参加する一大イベントに成長し、2013年11月に行われた第8回大会には5000人以上の来場者が訪れた。決勝で競われたのは、料理の味や接客ではなく、居酒屋で働く夢や希望を語る「ポエム」調のスピーチだった。

「変わりたい。今の自分は嫌だ!みんなから愛される店長になりたい!」

と過去の葛藤を振り返り、目を潤ませながら訴える店長。

「私にガンが見つかりました。どうして私が、なんでこんなつらい思いを…」

と自らのつらい体験を打ち明ける女性店員。決勝に進んだ5店舗が、思い思いのスピーチで聴衆の心に訴えかけた。いくつかのスピーチはインターネット上の動画でも確認できるが、いずれも「感動」や「笑顔」、「仲間」、「感謝」といった前向きな言葉で溢れている。一緒に涙ぐみ、笑顔をみせる店員たちの姿も印象的だ。

「ポエム化」しているのは店員の思いだけではない。居酒屋の店内で、相田みつをさんの作品を連想するような毛筆で書かれたメッセージを目にしたことがある人も少なくないだろう。番組で取り上げたある居酒屋チェーンも、店内の壁やトイレ内の張り紙、取り皿など、至る所に「ポエム」が書かれていた。

入社4年目の男性店員(27)は、客に喜んでもらうためにチョコペンを使って皿に自作のポエムを書き込むことに力を注ぐ。1日の労働時間は長い日で16時間になるものの、年収は250万円程度。ネット民からは即「ブラック」認定されそうな労働環境だが、本人は「楽しいんで」と言い、こうした働き方に満足している。

「同調できない人間は排除される」との懸念も
しかし、こうした店員たちの姿は、多くの視聴者の目には異様に映った。インターネット上にはVTRに関する意見が数多く寄せられ、「違和感通り越して戦慄を覚えた…」「『部活の悪い面』が、そのまま社会人若年層に持ち込まれているような」「愛も幸福も希望もそんな声高にぎゃんぎゃん主張するものじゃないと思うんだ」「居酒屋甲子園は『20世紀少年』の『ともだち』の集会みたいに見えて本当に衝撃を受けた」など、否定的な声が目立った。

番組では「ポエム化」の危険な側面も指摘し、「目にしたくない現実を覆い隠す道具になりかねない」とも伝えていた。VTR後には識者らもコメントしている。

甲南大学准教授阿部真大氏は「一見すると異様で騙されているようにも見えるが、彼らの労働状況を考えると『そう思わないとやっていけない』というのも事実」という一定の理解を示した上で、「やりがい」に重きを置くのではなく、搾取されないよう労働者としての自覚を持つことが大切だとした。

コラムニスト小田嶋隆氏は「ポエムの言葉の内容は読み手の読解力に委ねられている。読み手の側で同調していくという、求心力になっている」と話す。だが、その結果として「現場では、同調できない人間は排除する力になってあらわれてしまうのではないか」との懸念を示した。

これを見たネット住民反応

  • 画像見るだけで…うわあ(;^ω^)
  • なんか皮膚とか疲れきってるのに目がギラギラして張り付いた笑顔で恐いよ
  • これ、従業員は洗脳されてるみたいだった
  • 美徳を楯に過剰な労働させてるだけじゃないか。
  • 労働力の安売り。こうやって「好きでやってるから」を盾に労働を安売りするから労働市場の相場がどんどん値下がりしていく。
  • 低賃金、重労働、長時間拘束でぶっちゃけ違法労働形態なのに、 自分に酔っていくんだろうね。
  • キモいっすね(´・ω・`)
  • 飲食なんか短期バイト以外でやるもんとちゃうで
  • 未成年にアルコール提供させるの?何でも甲子園つければいいと思ってる?
  • これ見たけど一日16時間労働って言ってたな
  • キモすぎだろ・・・何を思ってこんな所で働こうって考えるんだろう
  • 自己実現を労働と結び付けてるんじゃねぇの?雇用側は笑いが止まらんだろうな。まぁそういう馬鹿にはこういう仕事しか無いって現実はあるけどね。
  • 居酒屋は学生のバイトなら、ナンパ出来るしまかないつくし結構いい仕事なんだけど、社員やフリーターには最悪だよね(´・ω・`)
  • 飲食業の終わりの始まりのような気がする。誰が見ても変なことを気づかず信じてる業界が相当毒されてることが伺える。こんなことやっても誰も幸せにならんしおそらく淘汰される。
  • ありがとうを集めましょうって和民も言ってるよね。どこが大元なんだろ
  • 居酒屋甲子園なら料理やサービスの内容で競って欲しいけど、ポエムて…
  • 精神論か。こういうことやるより新しいメニューの開発でもしてた方がいいと思うが
  • 社訓まで居酒屋ポエムフォントかよ。よくこんなぐにゃぐにゃした読みにくいフォント開発できたな。暗号だぞもう
  • 給料貰えないと幸せになれないよ
  • こういうのこそ、軍靴の音がするわw
  • NHKがこんな洗脳番組やったらあかんよ
  • 上手いこと洗脳するよなあwwwこれぞ悪知恵
  • 所詮バイトだろ?使い捨てなのにここまで頑張るのか・・・・
  • キモすぎて途中でみるのやめた
  • 東陽町にある自己啓発系のセミナーに似てるんだよなぁ。てっぺんの社員さんとか行ってたみたいだし大きい声出して叫んで、泣いて、みんなでなんかする。意味ないよね。富士宮の管理者養成学校みたいな
  • 低賃金で過剰サービスを押し付けるなよ。
  • 前向きで優しいコトバ。こういう片仮名表記って気持ち悪い
  • いかに洗脳するかだな
  • 世の中何も考えない労働ロボットを欲しがってるからな
  • BE HAPPY 吹いたwwwなにこれw
  • 洗脳させるのが一番労働力上がるだろうね
  • だめだろこれ。頑張って働いてる人の汗は美しいみたいなきれいごとが、こんな不健康な人たちを作り出しているなんて見るに堪えない・・・
  • こういう番組は子供に見せるといいな。「勉強しないとこういう人になっちゃうよ」だ
  • じゃ底辺レベルの学校で放送すればよい「このままだとおまえらの未来はこれだ」

宗教的「やりがい搾取」の罠~気持ち悪い、洗脳

J-POPの音楽が流れるパシフィコ横浜のステージ。5000人の満場の客が注視する。

スポットライトに照らされて一人の従業員が「夢をあきらめない!」と涙ぐめば、店長が笑顔で「みんなを幸せにしたい!」と叫ぶ。そして最後には従業員一同並んで、「ありがとうございました!」と深々とお辞儀――『クローズアップ現代』(NHK総合/1月14日放送)の「あふれる“ポエム” ?! ~不透明な社会を覆うやさしいコトバ~」で紹介されたイベント「居酒屋甲子園」が議論を呼んでいる。

番組では、震災以降、シンプルで聞き心地のいい言葉が社会で多用されている「ポエム化」現象を紹介したのだが、その中でも「居酒屋甲子園」の異様さが目立つことになった。

「居酒屋甲子園」とは、ホームページによれば「“居酒屋から日本を元気にしたい”という想いを持つ全国の同志により開催された、外食業界に働く人が最高に輝ける場を提供する大会」「全国からエントリーされた居酒屋のうち、独自の選考基準で選ばれた優秀店舗が、年一回、数千人が集う大会場に集結します。ステージで自店の想いや取り組みを発表し、居酒屋甲子園における日本一の店舗を決定、外食業界で働いている人が夢や誇りを持てる大会にすることを目指してい」るのだという。

厳しい労働環境の中で自己肯定する若者たち

しかし、従業員たちがアルバイトの制服姿でアツく語るその姿は、新手のカルト宗教か自己啓発セミナーかといった印象だ。このため、番組放映後、ネット上では「気持ち悪い」「ブラックのいいわけ」「洗脳されてる」といった批判が噴出。放送内容に不満を抱いたイベントを運営するNPO法人・居酒屋甲子園が、「思いが伝わらず沢山の方々に不快と感じられる報道があった」「このような報道になったことは誠に残念」とし、イベント参加店やサポーター企業など関係者に謝罪するコメントを発表する事態となった。

確かに、離職率の高い外食産業にあって、居酒屋側も労働に夢や誇りを持ってもらうこと、従業員側も自分の仕事にやりがいを見いだすことは悪くない。低収入の若者たちは、厳しい現実を生き抜くために現状を肯定せざるを得ないのではないか、などといった擁護の声もある。

しかし、この違和感はどう見るべきか――。2008年に刊行された『軋む社会 教育・仕事・若者の現在』(本田由紀/双風舎)によれば、こうしたケースは「やりがい搾取」の典型的な例だ。「やりがい搾取」とは、低賃金労働であるにもかかわらず、いろいろなまやかしのやりがいがあり、従業員は自発的に自己実現に邁進しているように見えるが、実は気がつかないうちに搾取されているのだ。

カルト的雰囲気の中で仕事にのめり込む

社会学者である著者の本田氏は同書の中で、「やりがい搾取」の1つに、「サークル性、カルト性」という要素を挙げる。

「仕事の意義についてハイテンションなしばしば疑似宗教的な意義付けがなされ、時には身体的な身振りなどをも取り込みながら、高揚した雰囲気の中で、個々の労働者が仕事にのめりこんでいく」「これがしばしば見聞されるのは、飲食店などの接客アルバイト労働においてである」という。

そして、ある居酒屋チェーンの模様を紹介する。

「代表取締役を『師範』、店舗を『道場』、教育・研修を『修行』、採用を『入門』と呼んでいる。各店舗には『師範』が書いた相田みつを風の色紙が飾られており、そこには『夢は必ず叶う』『最高の出会いに心から感謝』『おとうさんおかあさん産んでくれてありがとう』『共に学び共に成長し共に勝つ』などと書かれている」

「同店のスタッフの離職率はたいへん低い。『うちはお金を稼ぐことができないバイトです。でも、夢を持つことの重要性を感じ、自分自身が成長したことを感じることができます』と副社長」

「サークル的、カルト的な『ノリ』のなかで自分の『夢』や『成長』を目指して結局は『働きすぎ』に巻き込まれている若者たちが存在するのである」

『夢』や『成長』があれば、『時給』『労働条件』は二の次になる。でも、それは仲間のためだから……これって、まさしく居酒屋甲子園そのものだ。

「てっぺん」の「やりがい搾取」の仕組み

同書では店名は伏せられているが、参考文献を見てみると、この居酒屋チェーンは「公開朝礼」がおなじみの「てっぺん」であることがわかる。

宗教がかったアツい「本気の朝礼」がテレビや雑誌等で数多く取り上げられ、2008年当時話題となっていた居酒屋チェーンだ。「てっぺん」の経営者は大嶋啓介氏。実はこの大嶋氏がNPO法人・居酒屋甲子園の初代理事長なのだ。

大嶋氏は、起業支援ポータルサイトドリームゲート」に掲載されたインタビュー記事で、「僕は居酒屋で働き始めたことで、人生を好転させることができた。そして、『共に学び、共に成長し、共に勝つ』という夢が生まれました。同じように居酒屋で働いている人たちに、夢を持ってチームで目標を達成することの素晴らしさを知ってほしいと思ったんです」と、居酒屋甲子園の狙いを語る。

NPO法人の理事長は2年ごとに交代の仕組みのために、表立つことはないが、本田氏に批判された「てっぺん」の「やりがい搾取」の思想が居酒屋甲子園に流れていることは間違いがない。本田氏は著書の中で、こう警鐘を鳴らしている。

「若者たちのなかにも、こうした『<やりがい>の搾取』を受け入れてしまう素地が形成されている。『好きなこと』や『やりたいこと』を仕事にすることが望ましいという規範は、マスコミの喧伝や学校での進路指導を通じて、すでに若者のあいだに広く根付いている」

「日本の若者のあいだでは、自分の生きる意味を他者からの承認によって見いだそうとするためか、『人の役に立つこと』を求める意識がきわめて強い。『夢の実現』などの価値に向かって、若者が自分を瞬発的なハイテンションにもっていくことによってしか乗りきれない、厳しく不透明な現実も歴然と存在する。これらの素地につけいる形で『<やりがい>の搾取』が巧妙に成立し、巻き込む対象の範囲を拡大しつつあるのが現状だと考えられるのである」

「やはり不可欠なのは、こうしたからくりを明るみに出し、職場や職種という集団単位で、そのいきすぎに歯止めをかけていくことであろう」

「冷静で客観的な現実認識に基づいてクールダウンしていくことが必要である」

本田氏の指摘から5年、しかし「やりがい搾取」は確実に社会に広がり始めている。

関連項目

外部リンク