公認会計士 (日本)
日本における公認会計士(こうにんかいけいし)とは、公認会計士名簿に登録し(公認会計士法17条)、主として、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明をすることを業とする者をいう(2条1項)。単にCPAとも、ISO 3166-1 alpha-2を用いてJPCPAともいう。
資格取得法、試験合格者の待機合格者問題については公認会計士試験を参照。
目次
概要
公認会計士は、監査及び会計の専門家として、独立した立場において、財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することを使命としており(1条)、監査対象たる会計主体からの独立性に特徴がある。
なお、公認会計士の独占業務は会計監査であり、会計業務自身は誰でもできる自由業務とされる。会計を監査する立場である以上、会計に精通していることは当然であるが、立場としては正反対であることから、公認会計士という名称は非常に紛らわしいものとなっている。
沿革
- 1948年 計理士法を廃止する代わりに公布された公認会計士法によって公認会計士制度が確立。当時、企業会計や税務を担当していた計理士のうち、特別試験に合格したものについて計理士業務に加えて監査業務をさらに行うことができる資格として公認会計士資格が計理士資格に替えて与えられた。公認会計士法公布以前は、企業内部の会計監査人が公認会計士と類似した業務を執り行っていたが、独立外部性をより必要としたことから、会計監査人を企業から独立した公認会計士へと限定された。
- 2006年5月 会社法施行にともない、公認会計士・税理士は会計参与という株式会社の機関のひとつとして、その会社が会計参与を設置する場合は、会社に参加しうることになった。
就職できない! 食えない! 会計士、税理士、弁護士・・・「士業」総崩れ
かつては試験は難関だが、合格すれば高額な報酬を得られると人気だった公認会計士や税理士、弁護士といった「士業」が「総崩れ」している。
たとえば、公認会計士試験は2006年に社会人など多様な人材の受験を促すため、大幅に簡素化したものの、資格を得るために必要な、肝心の就職先が見つからない。「旗振り役」だった政府もさすがに掲げた合格者目標などを見直さざるを得なくなっている。
日本弁護士連合会によると、弁護士の人数は現在3万2088人(2012年3月末)。公認会計士は3万2985人(13年3月末、、日本公認会計士協会調べ)。税理士は7万3725人(同、日本税理士会連合会調べ)となっている。
ちなみに、司法書士は2万0670人(12年4月1日時点)。行政書士は4万2177人(同)いる。行政書士を除き、どの「士業」もこの10年は増加傾向にある。
そうしたなか、景気低迷の影響もあって、就職できない「サムライ」が増えていて、問題視されている。たとえば、公認会計士が最終的に資格を手にするためには2年以上の実務経験が必要。
ところが、一般企業で会計士試験の合格者を採用する割合はきわめて低い。試験に合格したからといって就職に有利に働くこともなく、監査法人にも就職できない合格者は就職先が見つからず、そのために資格も得られないという人が増加。事態は深刻化している。
「週刊エコノミスト」(2013年4月16日号)は、「食えない税理士・会計士」を特集。そこでは、「税理士によって得意分野がある」ことが指摘されていて、取材を受けた税理士が相続申告などでのミスが少なからずある、と証言している。
企業会計では、公認会計士は大手企業の法定監査と税務申告が主たる業務。それ以外の登記法務や行政法務、税務などは税理士や司法書士、行政書士が業務を行える。大手企業の法定監査以外の会計税務の多くは税理士が請け負っているので、そう考えるとそもそも公認会計士を増やしても仕事が増えるわけではなかった。
もちろん、公認会計士が税理士の仕事(登録が必要)をできないわけではない。つまり、「士業」同士で仕事の奪い合いが起こっていて、どの「サムライ」も仕事を確保するのに躍起になっているようなのだ。
弁護士も例外ではない。日本弁護士連合会によると、2012年12月に司法研修所を卒業した2080人のうち、裁判官や検察官になる人を除いて、約540人がこれまでに弁護士会に登録しなかった。全体の4人に1人にのぼり、これまでに最多だったという。
弁護士事務所に就職したり独立して事務所を開いたりできず、入会金や会費を払えないために弁護士会への登録をあきらめた人が多いのではないか、と日弁連はみている。
日弁連はこれまでも「司法試験の合格者数が多すぎる」と訴えてきたが、政府も司法試験の合格者数を「年3000人程度」とした目標の撤廃や法科大学院の統廃合など、是正に向けて検討に入っている。
ただ、「士業」を取り巻く厳しい環境は「就職難」だけではない。今後ますます「食えなくなる」背景には環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)がある。
日本税理士会連合会は、「日本経済の発展に資するものであるなら異論はない」との立場だが、一方でTPPの協議で税理士制度の自由化が対象になることを懸念している。
会計士や税理士、弁護士の「自由化」は、TPP加盟国同士が自国の国家資格の保有者が互いに活動することを認め合う。言語の壁などがあるものの、米国の弁護士が日本で訴訟活動ができるようになるかもしれない。会計士や税理士も同様だ。
もちろん、逆に日本の公認会計士が海外で活躍できる可能性もあるわけだが…
業務
公認会計士の業務は、監査証明業務、コンサルティング業務、その他の業務に大別される。
監査証明業務
監査証明業務とは、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明をすることである(2条1項)。公認会計士は、独占業務として財務書類の監査・証明業務(通称1項業務)を行える。
コンサルティング業務
コンサルティング業務とは、監査業務の外、公認会計士の名称を用いて、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の調製をし、財務に関する調査若しくは立案をし、又は財務に関する相談に応ずることである(2条2項)。公認会計士は、財務書類の調整、財務に関する調査・立案、財務に関する相談等の業務(コンサルティング業務)を行うこと(通称2項業務)ができる。但し、自己監査は監査に非ずの法諺のとおり、他の法律においてその業務を行うことについて様々な制限が設けられている。
その他の業務
公認会計士は、無試験で税理士、行政書士登録を受けることができ(税理士法3条4号、行政書士法2条4号)、各団体に登録すれば、それぞれの名をもって各業務を行える。
識見の範囲
日本国によって担保される識見の範囲を把握するためには、公認会計士試験の受験資格、出題基準、合格基準が参考となる。詳細は、公認会計士試験を参照されたい。
外国公認会計士
各国において日本の公認会計士に相当する資格を有する者のうち内閣総理大臣による資格の承認を受け、かつ、日本公認会計士協会による外国公認会計士名簿への登録を受けた者は、外国公認会計士と呼ばれ、公認会計士と同様の業務を行うことができる(16条の2)。
コンバージェンス
公認会計士に相当する職能資格よる監査制度は、証券市場における投資家からの直接金融制度には欠かせない制度であり、多分に共通要素がありながらも、各国における経済諸事象を反映して個々別々に発展している。他方、経済の国際化と情報通信技術の急速な発展に伴い、会計基準と同様に国際的コンバージェンスが課題とされることがある。詳細は、公認会計士制度或いは次に掲げる個々の職能資格を参照されたい。