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2023年8月13日 (日) 21:32時点における最新版

PTAParent-Teacher Association)とは、各学校ごとに組織された、保護者と教職員による社会教育関係団体のことである。根拠法は、社会教育法である。各自が任意で入会する団体で、その本旨は保護者と教員が学びあうことで、その成果を児童生徒に還元することである。学習成果の還元場所は、家庭、学校、地域となろう。同時に、民主的な方法でPTAを運営するという設計思想があり、PTAは民主主義の演習の場であるという側面を併せ持つ。

寄付金を集めたり、教職員を支援することなどは、日本のPTA設立当時本来の理念にはなかった。それゆえ、PTAの「後援会機能」は「従」の位置に属する(『PTA読本』(文部省内PTA研究会、時事通信社共編1948))。

  • この項では、各学校のPTA(単位PTAとも呼称される)を主な対象として記述する。PTAが協働するために集まった、全国から都道府県・地方自治体の各レベルに存在するPTA連合体については、軽く紹介する程度にとどめる。
  • メディア等で単に「PTA」と記述される場合、それが単位PTAを指すのか、PTA連合体を指すのか、包括概念であるのかは、判別がつきづらいケースがあるので注意を要する。

日本におけるPTAの法的位置づけ[編集]

根拠法[編集]

社会教育#日本の社会教育関係団体 も参照

管轄官庁[編集]

  • 文部科学省 生涯学習政策局 社会教育課(組織図参照

PTA規約・細則の法的位置づけ[編集]

【法令の階層構造】

  • 憲法―法律―政令―省令―告示等 <国が定める法令>
  •        ―条例―規則等    <地方公共団体が定める法令>

法令には、相互に矛盾することなく、法秩序を保持するため、上下の関係があり、その効力に差があります(このことを「法令の階層構造」といいます)。わが国の最高法規は憲法であり、立法府である国会が制定する法律は憲法に反することはできません。また、同様に法律の規定に違反するような政令、省令、条例、規則等を制定することはできません。(引用終わり)

社会教育法に定められるところの任意団体であるPTAが制定する規約・細則は、あくまで団体内部のみに通用するルールである。

規約・細則を運用する際には、上位法である社会教育法教育基本法憲法、また地方公共団体の制定する子どもの権利条例等の理念を理解したうえで行うべきである。ましてや上位法等をはずれた慣習を勝手に制定するべきではない。

  • 「『慣習』を全面に押し出すのは、近代法への全面対決」(木村草太 2013)

日本におけるPTAの概要[編集]

名称[編集]

今日においてはParent Teacher Associationの略称、PTA が一般的表現である。

語源[編集]

Parent   :親

Teacher   :教師

Association :共通の関心で結びつく集団のこと(対語はコミュニティアソシエーション (社会思想) も参照

PTAの日本語表現[編集]

第二次世界大戦後すぐ存在した表現としては、当時の文部省(現在の文部科学省)が「父母と先生の会」と訳したほか、「親と教師の会」「保護者と教職員の会」などとも訳され、あるいは「育友会(いくゆうかい)」とも呼ばれるところもあった。

単位PTAの名称[編集]

学校各単位のPTAの名称として、PTAをかならずしも使うとは限らない。「〇〇会」といった公立校PTAが存在する。例えば、志摩市立磯部小学校では「愛育会」と称する。

名称は、規約に明記された割合の会員同意を得れば、変更可能である。また最近では、これまでの教職員・保護者による組織から発展させる意味で、PTAにC「地域社会(Community)」を加えたPTCAと称するところも出てきた。

導入時の歴史[編集]

PTAのルーツ[編集]

1897年、アメリカで2人の女性により自発的に結成された。

詳細は #アメリカにおけるPTA を参照

PTA以前[編集]

第二次世界大戦終戦以前、日本のPTAの前身は、学校運営を財政的労力的に支える目的の「後援会」「保護者会」、「母の会」等が組織されていた。 少なくとも大阪では、ひとつの学校に2つの学校支援団体が組織されており、男女別の組織であった。

PTA導入[編集]

日本のPTAは第二次世界大戦後に、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ/SCAP)の提案で半強制的に導入された。

導入目的[編集]

PTAの導入目的は、教育民主化の一手段であり、一般成人に対して民主主義の理念を啓蒙することである。

急速な普及[編集]

しかしながら、当時の文部省等により強力にPTA結成が推進された。PTAの理念を理解することなく、旧来の団体の看板を掛け替えたところも多いという。そのため、日本ではPTA活動を自由意志ではなく、義務や強制で奉仕活動をさせられているという意識が強い。

日本のPTAの組織[編集]

単位PTA[編集]

日本では、単位PTAと呼ばれる学校単位でのPTA活動が基本である。

PTA会員[編集]

PTA(親と先生の会)という名称通り、会の事務局を置く学校に児童生徒を通学させる親(保護者)教師が会員である。 児童生徒は、会員ではない。彼らは等しくPTA活動の還元対象である。 従って、親がPTAに入会しないとか活動参加が少ないとかいう理由を持って、特定の児童生徒を差別するようなことがあってはならない。それは、憲法や教育基本法等の理念を理解していれば、おのずと判断がつくことである。

詳細は #PTA規約・細則の法的位置づけ を参照

PTA連合体[編集]

単位PTAのうち、学区内のPTAがある単位ごとに組織され、市区町村単位のPTA連合体を形成する。オブザーバーとして教育委員会がつくようである。

市区町村単位のPTA連合が組織され、都道府県のPTA連合(協議会とも称する)を形成する。東京都のように、加入率が30%前後のPTA連合もある。

日本には、小・中学校を対象とした全国組織の日本PTA全国協議会(通称、日P)が存在し、北海道、東北、東京、関東、東海・北陸、近畿、中国、四国、九州の9つのブロックに分かれている。なお、政令市の中には、都道府県単位のPTA連合には属さずに、直接、日Pに属するものもある。しかしすべてのPTAが日Pに属しているわけではない。日Pに属さず独立して活動していてもPTAを名乗れる点が、アメリカ組織との違いである。

また、高等学校を対象とした組織として、社団法人全国高等学校PTA連合会(通称、高P連)が存在している。

なお、国立学校、私立学校は、独自のPTAを組織している模様である。PTAとは称さず、「○○の会」や「○○校保護者の会」といった名称のところもあり、公立学校のPTAとは一線を画す活動内容であるそうだ。

日本の「PTA問題」[編集]

運営の現状[編集]

PTAは任意で結成し解散でき、会員参加も任意である団体のはずである。 つまり、PTA活動は義務ではない。しかし、これがあたかも義務であるかのような誤解がまかり通っている。

強制加入(自動加入)の問題[編集]

「保護者を会員とする」という規約を定めて、強制的に会費を口座振替させている事例も多く入会申込書も大抵の場合存在しない。法律上では非会員保護者の同意無しに個人情報を第三者に提供してはいないという判例が出されている。 子の入学直後に保護者からいきなり役員委員を決めるケースや、会費を一律ではなく寄付金のように口単位で徴収するケースが存在する。

バランスを欠いた参加の問題[編集]

何としてでもPTAを避けて活動に参加しない保護者がいる一方、あまりにも熱心すぎて周りまで巻き込んでしまう保護者もいる。PTA役員が立候補で決まることは珍しく、専業主婦、姑と同居、一人っ子といった条件面だけを見て指名されてしまうこともある。

社会的背景[編集]

社会的背景は、共働きひとり親家庭シングルマザー等)や介護をする保護者が増えPTA活動ができるほど時間的精神的余裕のある母親が減っている。一方、父親の参加が以前より増えている。余裕を持って活動できる保護者が年々減っている現実がある。保護者代表としてPTAが行政・学校から扱われ、活動が増大するPTAがある一方、逆にPTAの職務を押し付けられて学校が業務過多になるケースもある。

財政的な問題[編集]

PTAが会費や事業収入等を学校へ寄付する問題がある。 その背景要因として、戦後の貧しい予算、また現在はOECD諸外国より低い教育予算を補完するために、金銭的または人的支援が暗に求められてきた(前述『PTA読本』)。

私費会計であるPTA会費を学校運営に流用することは、法令で保障された「教育の機会均等と義務教育費負担の原則」を害する。このため、戦後はPTAが教員の給金を補てんしていた時代もあった(前述『PTA読本』)が、徐々に是正され、自治体によっては「義務教育における私費負担の解消について」[1]という指針を通達し、改善されたところもある。しかしその一方で、依然として、PTA会費を学校運営に流用する自治体もあり、2012年5月9日に、文部科学省が実態調査に乗り出している。

地方行政側のPTAの位置づけ[編集]

世田谷区のように、PTAを家庭教育への支援と位置づけ、教育委員会が委託金を各PTAへ渡して最低でも年4回の研修会を開催させたり、区のPTA連合体で研修を設ける自治体もある。

なお、杉並区立和田中学校藤原和博、代田昭久)のように、公立学校でもPTA自体を廃止し、地域のボランティアの住民でつくる「地域本部」に統合しようとする動きもある。

その一方で、PTAを本来のボランティア・生涯学習団体(社会教育関係団体)として捉え直し、サークル活動や、固定した定員を設けず参加希望者だけで活動する委員会(委員会とは呼ばず、広報ボランティア、家庭教育ボランティアなどと称する)での活動を、中心に据えるようになった単位PTAも存在する。

近年の傾向[編集]

近年の傾向としては、PTAが本当に必要かどうか、あるいは、PTAのあり方を整理すべきでは、という議論が起こっている。 PTAが本来、自由に入退会できる任意加入の団体であることを周知徹底することで、会の正常化をはかるべきとの声も聞かれるようになった。

2009年から現在に掛けて、インターネットでのPTAに関する議論が充実してきており、有志が東京大学構内でシンポジウムを開いている。また2012年に入り、PTA問題を体系的に取り上げる新聞が出ている。

PTA会費(学校徴収金)の流用問題[編集]

2012年、公立学校においてPTA会費が流用され、教職員の人件費や校舎の修繕費などに流用されている実態が明るみに出、報道が多数相次いでいる。

2012年5月9日、文部科学省がこの流用問題について調査を開始した。2013年1月29日現在、文科省サイトにて結果が確認できる。その概要は「PTA等学校関係団体が実施する事業に係る兼職兼業等の取扱い及び学校における会計処理の適正化について調査しましたので、その結果について公表します。」とあり、詳しくは外部リンク・その中のPDF文書を参照されたい。

今後、PTA会費を学校運営に流用することは、全国的な議論および規範設定が必要となろう。PTA会費を学校運営に流用する背景には、教育予算に地方格差が反映されるからである。地方自治体が学校に教育予算を執行し、実際にかかった費用の一定割合を、国が負担する仕組みである。

【熊本】PTA強制加入は「不当」父親が会費返還求め提訴(2014年7月)[編集]

子どもが通う小学校のPTAが任意団体であるにもかかわらず、強制加入させられたのは不当として、熊本市内の男性(57)がPTAを相手取り、会費など計約20万円の損害賠償を求める訴訟を熊本簡裁に起こした。男性が2日に会見して明らかにした。

訴状によると、2009年に2人の子どもが同市内の公立小学校に転校した際、PTAに同意書や契約書なしに強制加入させられ、会費を約1年半徴収されたと主張。これまでもPTA側と話し合ってきたが、平行線だったという。

「PTAは原則、入退会が自由な団体なのにもかかわらず、なんの説明も受けなかった」と指摘。2012年に退会届を出したが、「会則の配布をもって入会の了承としている」などとして受理されなかったといい、「憲法21条の『結社の自由』の精神に反している。会則には入退会の自由を明記するべきだ」と訴えている。

関連項目[編集]