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陰核(いんかく、クリトリス)は、ヒトを含む哺乳類の雌の性器に備わる小さな突起で、発生学的には男性の陰茎(ペニス)に相当する。クリトリス (clitoris) は、鍵またはネジのような封じるものを意味するギリシャ語のクレイス (κλείς) を語源とする。陰梃(いんてい)とも。
構造[編集]
女性性器の上部にある器官で、非常に敏感である。クリトリスの大部分は体内にあり、男性のペニス同様、海綿体組織である細長い陰核体および陰核亀頭から成る。
- 大きさ
- 成人女性では、陰核体の上端から陰核亀頭先端までの長さは通常3 - 5センチほどであるが個人差が大きく、稀な例では幼小児のペニスほどにもなる。陰核体から左右の陰唇内部に続くやや大きな海綿体組織もクリトリスの一部と見なす考え方もあり、その場合は全体で10センチ前後の比較的大きな生殖器官ということになる。
- 陰核亀頭
- 陰核亀頭は小陰唇が合わさる所にあり、性感を得る陰部神経終末が高密度に分布しているため性感帯であることが多い。陰核亀頭の色はピンクから暗褐色までさまざまであり、性的興奮により変化する。陰核亀頭のサイズは個人差があるが、成人女性で5 - 7ミリくらい。
- 陰核亀頭と包皮の間には恥垢がたまりやすく、不潔にしておくと炎症を起こすことがある。
陰核の機能[編集]
陰核は、存在場所とその構造から「性的興奮を高めるためにのみ特化した器官である」と考えられ、相同器官である男性のペニス(陰茎)が泌尿器および生殖器としての両方の機能があるのと大きく異なっている。陰核には泌尿器としての働きはない。男性のペニスと同様、陰核も心理的あるいは直接的な刺激による、性的興奮により充血し勃起する。
- 陰核の勃起
- 勃起時には陰核体や陰核亀頭は膨張し、やや固くなる。また、陰唇内部の海綿体や小陰唇も充血・膨張する。性交時には、膣に挿入されたペニスの動きにより、これらの海綿体組織や皮膚が連動して動き、陰核亀頭に刺激を与え、快感をもたらすといわれている。
- オーガズム
- 一定の性的刺激が継続すると、やがてオーガズム(性的興奮の最高潮)に達する。
- 一方、男性のペニス同様、睡眠時(レム睡眠)に性的興奮とは関係なく勃起することが知られている。詳細は 朝立ち (生理現象) を参照
陰核の肥大[編集]
陰核はペニス同様男性ホルモンの濃度に敏感な組織であり多嚢胞性卵巣や副腎皮質過形成、薬物投与(筋肉増強剤を使用した女性ボディービルダーなど)等で肥大する。元々大きなクリトリスであった性同一性障害者(Female to Male)がテストステロンの投与を受けた結果、膣へ挿入することにより女性との性交(ピストン運動)が可能になった例もある。
陰核の包茎[編集]
男性のペニスとの比較から、陰核亀頭が包皮に覆われ完全に露呈していない状態を包茎と呼ぶ場合がある。成人女性では通常、陰核亀頭は包皮や陰唇によって保護されており、性交時などの場合にのみ露出する、いわゆる仮性包茎の状態であることが多い。しかし、一部の女性は陰核の露出が極めて困難な、いわゆる真性包茎の状態である場合がある。性交時に痛みを感じる場合や、不衛生になり炎症を起こしやすい場合などは、包皮切除手術等の治療が必要である。
各国地域の風習[編集]
中世ヨーロッパの陰核迷信[編集]
中世、キリスト教社会では、女性の性的快楽は禁止された。貞節な女性には陰核がないと信じられていたようである。1593年の魔女裁判で、裁判官(男性)は被告(女性)の陰部を詳細に観察し、陰核をついに見いだした。そして裁判官はそれを「悪魔の乳首」と信じ、有罪を宣告した。
アフリカの陰核切除風習[編集]
- 宗教的、民族的な儀礼として、陰核の一部または全部を切除する行為が多くの民族に見られる。現在でもいくつかの民族においてこの習慣は残っており、女性への重大な人権侵害であるとして問題視されている。割礼、女子割礼の項目を参照。