「アンタレス」の版間の差分
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非常に美しい[[連星|実視連星]]で、0.96等(但しごくわずか変光する)の主星(アンタレスA)から2.6[[秒 (角度)|秒]]離れたところに5.4等の伴星(アンタレスB)が輝いている。2つの星の[[スペクトル分類|スペクトル型]]はアンタレスAがM1.5Ⅰab-ⅠbでアンタレスBがB2.5ⅤeなのでアンタレスAが赤く、アンタレスBが青白く見えるはずだが、実際にはアンタレスAとの色の対比効果によりアンタレスBは緑色に見えることが多い。またアンタレスAも「赤」とはいっても「真っ赤」というよりはオレンジがかった赤色に輝いて見える。但し2つの星の光度差が大きいため、[[天体望遠鏡|小望遠鏡]]では分離できない。 | 非常に美しい[[連星|実視連星]]で、0.96等(但しごくわずか変光する)の主星(アンタレスA)から2.6[[秒 (角度)|秒]]離れたところに5.4等の伴星(アンタレスB)が輝いている。2つの星の[[スペクトル分類|スペクトル型]]はアンタレスAがM1.5Ⅰab-ⅠbでアンタレスBがB2.5ⅤeなのでアンタレスAが赤く、アンタレスBが青白く見えるはずだが、実際にはアンタレスAとの色の対比効果によりアンタレスBは緑色に見えることが多い。またアンタレスAも「赤」とはいっても「真っ赤」というよりはオレンジがかった赤色に輝いて見える。但し2つの星の光度差が大きいため、[[天体望遠鏡|小望遠鏡]]では分離できない。 | ||
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アンタレスはかつて[[直径]]が太陽の230倍とされていたが、実際はもっと大きな星で、直径は太陽の600倍ないし800倍である。以前は明るさと表面温度から大きさを推定していたが、現在は干渉計によって実測しており、過去と現在の直径の違いはこれを反映している。明るさは太陽の8000倍ないし1万倍と考えられている。なお、赤外線を含めて計算すると明るさは太陽の6.5万倍である。非常に大きな直径と太陽よりはるかに明るい光度、そして表面温度が3500[[ケルビン|K]]であることからアンタレスが[[赤色超巨星]]であることがわかる。また、地球からの距離は約600[[光年]]と考えられている。 | アンタレスはかつて[[直径]]が太陽の230倍とされていたが、実際はもっと大きな星で、直径は太陽の600倍ないし800倍である。以前は明るさと表面温度から大きさを推定していたが、現在は干渉計によって実測しており、過去と現在の直径の違いはこれを反映している。明るさは太陽の8000倍ないし1万倍と考えられている。なお、赤外線を含めて計算すると明るさは太陽の6.5万倍である。非常に大きな直径と太陽よりはるかに明るい光度、そして表面温度が3500[[ケルビン|K]]であることからアンタレスが[[赤色超巨星]]であることがわかる。また、地球からの距離は約600[[光年]]と考えられている。 | ||
− | ==アンタレスと関連のある天体== | + | == アンタレスと関連のある天体 == |
− | ===IC4606=== | + | === IC4606 === |
アンタレスの周りを取り囲んでいる赤く輝く[[散光星雲]]で、別名'''vdB107'''とも呼ばれる。散光星雲には[[HII領域|HⅡ領域]](自ら発光する星雲)と[[反射星雲]](近くの星の光を反射して輝く星雲)の2種類に分けられるが、IC4606は後者である。HⅡ領域は[[水素]][[原子]]が発する6563[[オングストローム]]の[[バルマー系列|バルマー線]]('''Hα線'''と呼ばれる)を放つため赤く見えるものも多いが(例:[[ばら星雲]])、IC4606はアンタレスの光を反射して輝いているのでHⅡ領域の赤い輝きとは本質的に異なり、HⅡ領域は深紅もしくはピンクがかった赤色のHα線で輝いているのに対し、IC4606はオレンジがかった赤色の連続光で輝いている。 | アンタレスの周りを取り囲んでいる赤く輝く[[散光星雲]]で、別名'''vdB107'''とも呼ばれる。散光星雲には[[HII領域|HⅡ領域]](自ら発光する星雲)と[[反射星雲]](近くの星の光を反射して輝く星雲)の2種類に分けられるが、IC4606は後者である。HⅡ領域は[[水素]][[原子]]が発する6563[[オングストローム]]の[[バルマー系列|バルマー線]]('''Hα線'''と呼ばれる)を放つため赤く見えるものも多いが(例:[[ばら星雲]])、IC4606はアンタレスの光を反射して輝いているのでHⅡ領域の赤い輝きとは本質的に異なり、HⅡ領域は深紅もしくはピンクがかった赤色のHα線で輝いているのに対し、IC4606はオレンジがかった赤色の連続光で輝いている。 | ||
− | ===Cr302=== | + | === Cr302 === |
アンタレスは'''さそり─ケンタウルスアソシエーション'''('''さそり─ケンタウルス運動[[星団]]'''或いは'''さそり─ケンタウルス星流'''とも呼ばれる)の最も明るいメンバーであるが、そのなかでアンタレスを中心としたさそり座周辺([[てんびん座]]、[[へびつかい座]]も含む)の星を特に'''Cr302'''('''さそり座OB2'''または'''アンタレス運動星団'''とも呼ばれる)と呼ぶ。Cr302は[[渡部潤一]]が著した『図説 新・天体カタログ─銀河系内編』([[学習研究社|立風書房]]、[[1994年]])によると[[散開星団]]に分類されるが、明るい星が多いものの散開星団としてはまばらなので見応えはあまりない。 | アンタレスは'''さそり─ケンタウルスアソシエーション'''('''さそり─ケンタウルス運動[[星団]]'''或いは'''さそり─ケンタウルス星流'''とも呼ばれる)の最も明るいメンバーであるが、そのなかでアンタレスを中心としたさそり座周辺([[てんびん座]]、[[へびつかい座]]も含む)の星を特に'''Cr302'''('''さそり座OB2'''または'''アンタレス運動星団'''とも呼ばれる)と呼ぶ。Cr302は[[渡部潤一]]が著した『図説 新・天体カタログ─銀河系内編』([[学習研究社|立風書房]]、[[1994年]])によると[[散開星団]]に分類されるが、明るい星が多いものの散開星団としてはまばらなので見応えはあまりない。 | ||
− | ====Cr302の主なメンバー一覧==== | + | ==== Cr302の主なメンバー一覧 ==== |
− | *アンタレス(Antares、α Scorpii) | + | * アンタレス(Antares、α Scorpii) |
− | *[[アクラブ]](Acrab、β Scorpii) | + | * [[アクラブ]](Acrab、β Scorpii) |
− | *[[ジュバ]](Dschubba、δ Scorpii) | + | * [[ジュバ]](Dschubba、δ Scorpii) |
− | *[[ピリ・エラ・ウア]](μ Scorpii) | + | * [[ピリ・エラ・ウア]](μ Scorpii) |
− | *[[ジャバハー]](Jabbah、ν Scorpii) | + | * [[ジャバハー]](Jabbah、ν Scorpii) |
− | *[[アルニャート]](Al Niyat、σ Scorpii) | + | * [[アルニャート]](Al Niyat、σ Scorpii) |
− | *[[ジャバト・アル・アクラブ]](Jabhat al Acrab、ω Scorpii) | + | * [[ジャバト・アル・アクラブ]](Jabhat al Acrab、ω Scorpii) |
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+ | == アンタレスの画像 == | ||
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+ | == 関連項目 == | ||
+ | * [[さそり座AH星]] - アンタレス同様さそり座に位置する赤色超巨星。 | ||
− | ==外部リンク== | + | == 外部リンク == |
− | *[http:// | + | * [http://yumis.net/space/star/k_image/st-ant.htm さそり座 α Scorpii Antares(アンタレス)] |
− | *[http:// | + | * [http://homepage2.nifty.com/turupura/guide/star/antaresu.html アンタレス] |
− | *[http://www.fixedstar.jp/Scorpius/antares.html アンタレス(Antares)] | + | * [http://www.fixedstar.jp/Scorpius/antares.html アンタレス(Antares)] |
− | *[http://hoshihoshi.web.infoseek.co.jp/astro3/star/HTML/star/aSco.htm アンタレス(さそり座)] | + | * [http://hoshihoshi.web.infoseek.co.jp/astro3/star/HTML/star/aSco.htm アンタレス(さそり座)] |
− | *[http://www.dudeman.net/spacedog/const/sco.html SPACEDOG - Scorpius -(アンタレスについてのデータも載っている)] | + | * [http://www.dudeman.net/spacedog/const/sco.html SPACEDOG - Scorpius -(アンタレスについてのデータも載っている)] |
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2018年12月18日 (火) 17:10時点における最新版
アンタレス(Antares)はさそり座のα星で、よく知られる恒星の一つである。地球からは火星に次いでよく見える赤い星であることから、ギリシャ語で「火星に対抗するもの」を意味する名が付けられている。他に火(か、中国語)、大火(たいか、中国語)、コル・スコルピイ(Cor Scorpii、ラテン語)、ル・クール・デュ・スコルピヨン(le Coeur du Scorpion、フランス語)、カルブ・アル・アクラブ(قلب العقرب、Kalb al Acrab、アラビア語)と多くの固有名を持つ。そのうち「火」と「大火」は「アンタレス」同様この星の赤い色に由来し、「コル・スコルピィ」「ル・ケール・デュ・スコルピヨン」「カルブ・アル・アクラブ」の3つは「さそりの心臓」を意味する。学名のアルファ・スコルピイ(α Scorpii、略号α Sco)で呼ばれることもある。
物理的性質[編集]
非常に美しい実視連星で、0.96等(但しごくわずか変光する)の主星(アンタレスA)から2.6秒離れたところに5.4等の伴星(アンタレスB)が輝いている。2つの星のスペクトル型はアンタレスAがM1.5Ⅰab-ⅠbでアンタレスBがB2.5ⅤeなのでアンタレスAが赤く、アンタレスBが青白く見えるはずだが、実際にはアンタレスAとの色の対比効果によりアンタレスBは緑色に見えることが多い。またアンタレスAも「赤」とはいっても「真っ赤」というよりはオレンジがかった赤色に輝いて見える。但し2つの星の光度差が大きいため、小望遠鏡では分離できない。
アンタレスはかつては0.9等から1.8等まで変光する脈動変光星といわれていたが、実際はそれほど大きな光度変化は見られず、変光範囲は0.9等から1.2等くらいである。従って眼視観測ではアンタレスの変光はほとんどわからない(ちなみに眼視観測で変光が分かるのは変光範囲が0.5等以上の星である)。むしろジュバ(δ Sco)の方がアンタレスより変光範囲は大きい(ちなみにジュバの変光範囲は1.7等~2.3等なので、眼視観測でも変光が確認できる)。
アンタレスはかつて直径が太陽の230倍とされていたが、実際はもっと大きな星で、直径は太陽の600倍ないし800倍である。以前は明るさと表面温度から大きさを推定していたが、現在は干渉計によって実測しており、過去と現在の直径の違いはこれを反映している。明るさは太陽の8000倍ないし1万倍と考えられている。なお、赤外線を含めて計算すると明るさは太陽の6.5万倍である。非常に大きな直径と太陽よりはるかに明るい光度、そして表面温度が3500Kであることからアンタレスが赤色超巨星であることがわかる。また、地球からの距離は約600光年と考えられている。
アンタレスと関連のある天体[編集]
IC4606[編集]
アンタレスの周りを取り囲んでいる赤く輝く散光星雲で、別名vdB107とも呼ばれる。散光星雲にはHⅡ領域(自ら発光する星雲)と反射星雲(近くの星の光を反射して輝く星雲)の2種類に分けられるが、IC4606は後者である。HⅡ領域は水素原子が発する6563オングストロームのバルマー線(Hα線と呼ばれる)を放つため赤く見えるものも多いが(例:ばら星雲)、IC4606はアンタレスの光を反射して輝いているのでHⅡ領域の赤い輝きとは本質的に異なり、HⅡ領域は深紅もしくはピンクがかった赤色のHα線で輝いているのに対し、IC4606はオレンジがかった赤色の連続光で輝いている。
Cr302[編集]
アンタレスはさそり─ケンタウルスアソシエーション(さそり─ケンタウルス運動星団或いはさそり─ケンタウルス星流とも呼ばれる)の最も明るいメンバーであるが、そのなかでアンタレスを中心としたさそり座周辺(てんびん座、へびつかい座も含む)の星を特にCr302(さそり座OB2またはアンタレス運動星団とも呼ばれる)と呼ぶ。Cr302は渡部潤一が著した『図説 新・天体カタログ─銀河系内編』(立風書房、1994年)によると散開星団に分類されるが、明るい星が多いものの散開星団としてはまばらなので見応えはあまりない。
Cr302の主なメンバー一覧[編集]
- アンタレス(Antares、α Scorpii)
- アクラブ(Acrab、β Scorpii)
- ジュバ(Dschubba、δ Scorpii)
- ピリ・エラ・ウア(μ Scorpii)
- ジャバハー(Jabbah、ν Scorpii)
- アルニャート(Al Niyat、σ Scorpii)
- ジャバト・アル・アクラブ(Jabhat al Acrab、ω Scorpii)
- ο Scorpii
- π Scorpii
- ρ Scorpii
- τ Scorpii
- 1 Scorpii
- 2 Scorpii
- 13 Scorpii
- 22 Scorpii
- ζ Ophiuchi
- χ Ophiuchi
- ζ Librae
- λ Librae
- τ Librae
- 47 Librae
- 48 Librae
アンタレスの画像[編集]
関連項目[編集]
- さそり座AH星 - アンタレス同様さそり座に位置する赤色超巨星。