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2017年8月18日 (金) 09:29時点における最新版
浦島太郎(うらしまたろう)は、日本各地にある龍宮伝説の一つ。また、日本の伽話の一つで、その主人公の名前でもある。
目次
あらすじ[編集]
現在一般的に流通しているストーリーはおおむね以下のようなものである。
浦島太郎は漁師だった。ある日、太郎は子ども達が亀をいじめているところに出くわした。太郎が亀を助けると、亀はお礼に竜宮城に連れて行ってくれるという。太郎は、亀にまたがり、竜宮城に連れて行ってもらった。竜宮城には乙姫がいて、太郎を歓待してくれた。しばらくして太郎は帰りたいと乙姫に申し出た。乙姫は引き止めたが、無理だと悟ると、玉手箱を「決して開けてはならない」として、太郎に渡した。太郎が亀に跨り浜に帰ると、太郎が知っている人は誰もいなかった。おかしいと思いつつ太郎が玉手箱を開けると、中から煙が出てきた。そして、その煙を浴びた太郎は老人になっていた。竜宮城で浦島太郎が過ごした日々は数日だったが、地上では700年が経っていたのだ。
なお、浦島太郎のその後については諸説があって定かではない。
以上で作品の核心的な内容についての記述は終わりです。
バリエーション[編集]
『丹後国風土記』にある話[編集]
『丹後国風土記』(現在は逸文のみ)にある浦嶼子の話[1]が原型とされる。ほぼ同時代に書かれた『日本書紀』『万葉集』にも記述が見られるが、『丹後国風土記』逸文が内容的に一番詳しい。
『万葉集』巻九による話[編集]
『万葉集』(萬葉集)巻九、高橋虫麻呂作の長歌に浦島太郎の原型というべき以下の内容が歌われている。
水の江の浦島の子が7日ほど鯛や鰹を釣り帰って来ると、海と陸の境で海神(わたつみ)の娘(亀姫)と出会った。二人は語らいて結婚し、常世にある海神の宮で暮らすこととなった。
3年ほど暮らし、父母にこの事を知らせたいと、海神の娘に言ったところ「これを開くな」と篋(くしげ・玉手箱の事。もともとは化粧道具を入れるためのもの)を渡され、水江に帰ってきた。海神の宮で過ごした3年の間に家や里は無くなり、見る影もなくなっていた。箱を開ければ元の家などが戻ると思いあけたところ常世との間に白い雲がわき起こり、浦島の子は白髪の老人の様になり、ついには息絶えてしまった。
『御伽草子』[編集]
「浦島太郎」として現在伝わる話の型が定まったのは、室町時代の『御伽草子』による。その後は良く知られた昔話として様々な媒体で流通することになる。
浦島太郎は丹後の漁師であった。ある日、釣り糸に亀がかかったが、「亀は万年と言うのにここで殺してしまうのはかわいそうだ」と逃がしてやった。数日後、一人の女人が舟で浜に漕ぎ寄せて自分はやんごとなき方の使いとして太郎を迎えに来た。姫が亀を逃がしてくれた礼をしたい旨を伝え、太郎はその女人と舟に乗り大きな宮殿に迎えられる。ここで姫と3年暮らし、太郎は残してきた両親が心配になり帰りたいと申し出た。姫は自分は実は太郎に助けられた亀であったことを明かし、玉手箱を手渡した。太郎は元住んでいた浜にたどり着くが、村は消え果ていた。ある一軒家で浦島何某の事を尋ねると、近くにあった古い塚がその太郎と両親の墓だと教えられる。絶望した太郎は玉手箱を開け、三筋の煙が立ち昇り太郎は鶴になり飛び去った。
『御伽草子』では竜宮城は海中ではなく、島か大陸にあるように書かれている。春の庭、夏の庭、秋の庭、冬の庭の話はメインストーリーの付け足し程度に書かれている。
「鶴亀」バージョン[編集]
室町以降の『御伽草子』系の一部に浦島説話の変形版があり、以下のように結末を結ぶ。
浦島は鶴になり、蓬莱の山にあひをなす。亀は甲に三せきのいわゐ(苔)をそなへ、万代を経しと也。(中略、両者は)夫婦の明神になり給ふ。
一説に、ここから能楽の「鶴亀」[1]などに受け継がれ、さらに、鶴亀を縁起物とする習俗がひろがったとする。
横浜市神奈川区に伝わる話[編集]
昔、相模国三浦に浦島太夫とよばれる人がいた。彼は仕事のため丹後国に赴任していた。その息子太郎は、亀が浜辺で子ども達にいじめられているところに出会う。(全国版と同じなので中略)老人になった太郎はある漁師から両親の墓が武蔵国白幡にあると聞いた。
この情報を聞いた太郎は急いで子安の浜に行った。子安に着いた太郎は両親の墓を探したが、なかなか見つけられない。それを見かねた乙姫は、松枝に明かりを照らして場所を示した。やっとのことで墓を見つけた太郎はその地に庵をつくり、太郎はそこに住んだ。この寺は後に観福寿寺と呼ばれるようになった。
沖縄に伝わる話[編集]
本土のものと若干道具立てが異なる。
昔、南風原間切与那覇村に正直者の漁師が居て、ある日与那原の浜で髢(かもじ。髪の毛)を拾った。探している娘を見つけて渡すと感謝され、竜宮に招待したいと言う。漁師が娘と一緒に歩くと海が二つに割れて道が開け、竜宮に通じていた。娘は乙姫と素性を明かし、漁師は竜宮で歓待の日々を過ごすこととなる。三ヶ月ほど経つと漁師は故郷が恋しくなり、娘から紙包みを渡されるが「開けないように」と念を押される。やがて漁師が郷里に帰り着くと辺りは変わり果て、人間でおよそ三十三代かかるほどの年月が経っていた。漁師は開けるなと言われた紙包みを開いたが、中には髢が一束入っているのみで煙が沸き立ち、彼は白髪の老爺と化して倒れ死んだ。地元の者が老爺に敬意を払い墓を建て祀ったのが、穏作根嶽(うさんにだき)であると云う。
近代における改変[編集]
竜宮城に行ってからの浦島太郎の行状は、子どもに話すにはふさわしくない内容が含まれているので、童話においてはこの部分は改変されている。これは、明治時代に国定教科書向きに書き換えられたためである。
解題[編集]
河合隼雄によると、浦島太郎の伝説は、非常に日本的な風土を表しているという。それによると、水底のヘビや竜は母親を象徴するものである。西洋のおとぎ話では竜を殺し、囚われの姫を救出して結婚する、という筋書きになり、これは象徴的な母親殺しであるという。つまり、母親の影響を廃して男子は独立する、ということを意味するものである。それに対して浦島太郎はその竜の住みかで姫と暮らしてしまう。これは、男性が母親の影響を断ち切ることなく成人してしまう日本的なあり方を示しているというのである。
ゆかりの神社仏閣[編集]
- 観福寿寺(神奈川県横浜市神奈川区) - 明治時代に焼失。また、乙姫が枝に光を照らした松も大正時代に、枯死。慶運寺に聖観世音菩薩像が現在も残る。
- 浦嶋神社(京都府与謝郡伊根町) - 浦島伝説の中では最も古いとされる丹後国風土記逸文ゆかりの地域にある。社伝では天長2年(825年)に創建。丹後半島にはこのほかにも浦島伝説に基づく神社がある。
- 浦島神社(香川県三豊市) - 荘内半島一帯には、太郎が生まれたという生里、箱から出た煙がかかった紫雲出山ほかたくさんの浦島伝説に基づく地名が点在している。太郎が助けた亀が祭られている亀戎社もある。
- 寝覚の床・臨川寺(長野県上松町) - 寝覚の床は竜宮城から戻った浦島太郎が玉手箱を開けた場所といわれ、中央の岩の上には浦島堂が建つ。臨川寺は、浦島太郎が使っていたとされる釣竿を所蔵する。境内からは景勝寝覚の床を見下ろす。
派生したもの[編集]
唱歌[編集]
唱歌「浦島太郎」は、1900年の「幼年唱歌」に掲載された『うらしまたろう』(作詞・石原和三郎、作曲・田村虎蔵)と、1911年の「尋常小学唱歌」に掲載された『浦島太郎』(作詞・乙骨三郎、作曲者不明)とがある。現在でも歌われている「昔々浦島は助けた亀に連れられて」で始まる歌は、「尋常小学唱歌」の『浦島太郎』である。
ウラシマ効果[編集]
複数のSF作家(豊田有恒など)がこの話を浦島太郎が宇宙人に攫われ、亀(宇宙船)に乗って、竜宮城(異星)へ光速移動したために地球との時間の進み方にずれが生じたとする解釈を提示している(双子のパラドックス)。この時間の遅れのことをウラシマ効果と呼ぶこともある。
「浦島太郎(花子)状態」[編集]
竜宮城から故郷に戻るとまったく見知らぬ土地になっていたという浦島太郎の立場になぞらえ、長い間離れていた所に久しぶりに戻ると別世界になっており面食らうことを「浦島太郎である」「浦島太郎状態にある」などと言う。女性の場合は浦島花子(うらしまはなこ)。「日本国外に住み日本の流行に疎くなったり違和感を覚えてしまう」「出向先から戻って本社の変貌ぶりにまごつく」「世間から離れていたために時事ニュースや新しい技術を知らず、時代に取り残されたと感じる」などの状態を自虐的に表現する際に用いる[2]。
テレビCM[編集]
ヴァリグ・ブラジル航空は、自社のサンパウロ〜羽田線のテレビCMをブラジル国内において放映したが、これには浦島太郎をモチーフにしたストーリーが付加されていた。これらのCMは日本人の目からすると、若干違和感を覚えさせるものである。
脚注[編集]
参考文献[編集]
- 三浦佑之 『浦島太郎の文学史』恋愛小説の発生 五柳書院 ISBN 4906010369
- 林晃平 『浦島伝説の研究』おうふう ISBN 4273031531
- 水野祐『古代社会と浦島伝説 上』 浦島伝説の歴史的形成 雄山閣
関連項目[編集]
このページはウィキペディア日本語版のコンテンツ・浦島太郎を利用して作成されています。変更履歴はこちらです。 |